あのこは貴族のレビュー・感想・評価
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素敵な作品(あと、三姉妹描くの上手すぎる岨手由貴子監督)
これは傑作だった◎
これまで全く違う人生を歩んできた、都会に暮らす女性2人のそれぞれの人間ドラマ。お金持ちの部類に属するお嬢様育ちの華子を門脇麦、地方から上京し頑張って勉強して入った大学で学生生活を送るが実家の金銭面が逼迫し、中退を余儀なくされた美紀を水原希子。この設定と予告だけじゃどんな映画かあまり予想出来なかったけど、岨手由貴子監督の最新作なんて滅多に観れないから、もう大興奮でいきましたよ…
私が溺愛している「グッド・ストライプス」の岨手監督。大好きだから。そりゃ待ち望んでましたよ。グッド・ストライプスとは、内容も全然違うしそもそも原作のある映画だから勿論ジャンルやテイストは違ったけど…丁寧に作られた愛すべき作品だった…!
立場の真逆な2人を描く作品って、金持ちと貧乏人とかアイドルと一般市民とかこれまでも沢山あったけど、その中でもなんか新しいし観ていて気持ちの良い、それでいて可愛らしいところや信念のある2人で、魅力的だった。
2人を取り巻く周囲の人達も良かったなぁ。まず親友が◎過ぎる…!華子(門脇)の親友逸子(石橋静河)も、美紀(水原)の親友里英(山下リオ)も、それぞれすっっごいすっっごい良き友。この2人を比較したとしてもかけ離れた人生だけど、そもそもの人間性が良くて…性格も良くて、人柄も良くて、かわいらしいところも沢山あるし、強さと優しさが同居しているし、好き。個人的に、石橋静河さ…「映画夜空はいつでも最高密度の青色だ」の時も(あれは新人を起用する事に意味があったから)もちろん新鮮さが良かったんだけど、ここ最近演技めちゃくちゃ上手くなってるし、表情とか仕草が可愛いしきれい。ぐんぐん素敵になってて目が離せないうちのひとりになった。
周囲の人達の話に戻るが、華子の家族がまた良い。花子の立場になったら色々縛られててキツいなぁと思う事も沢山だけど、冒頭の正月の家族での高級ホテルでのお食事シーンで既に心鷲掴みにされた。一人一人、皆金持ち育ちだからベースはそうなんだけど、個性が割とあってくすくす笑いはじめて気付いたら沢山笑ってた。2人の姉、特に長女最高◎石橋けいキャスティングはずるいよ…!石橋けいやっぱり好きだわ。山内ケンジ作品を見返したい。てか岨手監督、三姉妹を描くのあまりにうま過ぎやしません?笑。グッド・ストライプス然り。両作品ともに面白い三姉妹が出ててどちらもめちゃくちゃ良いキャラした人達集まってる…特に長女笑。出会ったことがあるようで出会った事ない、妙にリアルで妙に面白いこの感じ。素晴らしい。
今回は、この石橋けいさんの旦那の山中崇もすごい好きな役どころだった!山中崇そもそも好きだけど、今回の役は好きですね〜。家族にも恋人にも緊張しがちな華子だけど、この義理の兄さんには割とナチュラルに接してて、この2人が話すシーンは何か好きだったなあ。癒された。劇中にて、華子は長女と歳が離れててちっさい時に長女と義兄さんが結婚したから義兄さんとは一緒に居る時間が長いと言ってて、納得したけど、にしても良かった。
そして観た人みんな思ったろうけど、華子と美紀の出会い方。意外だし、出会ってからの関係値への流れも意外と新鮮さが入り混じってて…結果凄く良いなと思った。展開がいちいち良いのよ。(2人の出会いとか、あとそれ以外にも、華子が幸一郎と出逢うまでの色んな男との出会いや…多分人と人との出会い方がいちいち色んな意味で面白い◎)
また、2人を出会わせた逸子ちゃんの言い放った「世間は女同士を戦わせようとし過ぎ」みたいな発言も、目からウロコだったな。パンフに寄稿してたきょんきょんの感想がまさに私や皆んなが思ったこのえもいわれぬ感情を言葉にしてくれてて、凄く良い感想だったよ。
原作ありきの良さかもしれないけど、一見普通に見えるこの作品の他とは違うところのひとつは、この状況の2人が次に言うセリフや展開…これまでの映画ドラマセオリーを考えりゃあどっちかが叫んでそしてもう片方も泣き叫ぶね…と思うようなところで、叫ばないし怒らないし変なドラマティックなキレ方もしない。ところ。リアリティを追求とかじゃなくて、それがなんか心地良くて好きだなと思った。そう、人間って、(国民性もあるかもだけど)思ってる以上に言いたい事ばんばん言える人ばかりではないし、思ってる以上に簡単に人に向かって叫んだらしない。結構本当の気持ちを飲み込んでしまったりするけど、ひょんなところで吹っ切れて次へ進めたりもするもんなんだなと。
上手く感想がまとめられない上に内容にはあまり触れてないのだけど…
華子も、美紀も、色々あったけれど、心の底から応援したくなる人達だったなあ。周りの人たちもそう思ってるでしょう。映画の中ではラストシーンが終わったけれど、これからも応援し続けたい2人だなと思いました。
環境の呪縛への気付きと、一歩外へ踏み出す勇気
貴族とは誇張した表現かと思いきや、ヒロインの華子は割と掛け値なしの現代貴族。
松濤の令嬢華子と富山から進学で上京した美紀それぞれの数年間の人生、二人の邂逅とその後が、5章に分けて描かれる。
ヒロイン二人の出会いは束の間で、一緒に行動して何かを成すわけではないが、ひと時の会話が華子の自我の目覚めを誘う。
深窓の令嬢だろうが苦学生だろうが、人生の岐路で惑い、悩むことはある。そんな時に幸せに繋がる決断をし自尊心を取り戻すには、環境の枷に惑わされず自分の心に向き合い、自身の足で前に踏み出すしかない。そんな主題が、分かりやす過ぎるほど対照的な二人の人生のコントラストと共に描かれる。
全体にヒロイン二人の心の動きがとても細やかに描かれている。都心での華子の移動手段が、そのまま彼女の心の状態を表しているのが印象的だ。
環境因子も取り除いて自分の素直な気持ちを見つめ、守って生きることの難しさと大切さ。日々ありのままの気持ちを話せる相手の得難さ、そんな誰かがいることの幸せ。
そんなメッセージを感じ取った。
華子の結婚相手探しを端緒として、冒頭から上流家庭の特殊な息苦しさについての描写が続く。結婚することも結婚にあたり仕事を辞めるのも、一族郎党が肩書きだけで中身のない見合い相手を連れてくるのも当たり前。
華子自身も一応ちょっとした試行錯誤をするが、閉じられた世界の外側には到底手が届かないし、耐性もない。かといって姉達のように上手いこと環境を受け入れて立ち回ることも出来ない。
見ていて何だかきついなと思ったところに婚約者幸一郎の雲上一族が登場し、家制度の化石の描写でお腹一杯になり苦しくなった。
美紀の章では、受験で慶応大学に入った彼女が目の当たりにする内部生との経済的格差が描かれ、息苦しい世界の外面の華やかさと、階級間の絶望的な線引きを見せられる。一方、美紀の故郷富山の、既視感あふれる田舎の情景で少しほっとする。
ラストで解放のカタルシスがあるのかな?スカッと明るく終わるかな?と期待をし過ぎたせいか、終盤は随分大人しめという印象。格差と上流社会の閉塞感のインパクトが強すぎて、ささやか(本人にとっては一大事だが)で静かな解放シークエンスだけでは拭いきれない胸苦しさが残った。
また、一部心情描写に違和感を覚えたシーンもあった。二人が初めて出会った場面だ。
とある不穏な展開をきっかけに、華子の友人逸子が二人を引き合わせる。
流れから考えて普通は険悪になりそうな局面だ。華子はお嬢様だから泰然としていたとも考えられるが、美紀もニコニコしながら即座に引き下がり、しゃんしゃんと話が進む。台詞で説明があるので頭では理解したが、感覚的には???という感じだった。
そもそも、美紀を呼び出しておきながら説教するでもなく、ふんわりしたことを言い始める友人逸子が一番よく分からない。
作品のテーマの都合で女性同士の諍いを描きたくないのは分かるが、それなら他にやりようがある気もした。
婚約者の幸一郎が、問題がある割にさほど因果応報な目に合わないのももやもやポイント。
これは勝手な妄想だが、この作品は後から登場する美紀を筆頭の主人公と思って観るのが、後味がよくなるという意味では正解なのかもしれない。
彼女の方が環境設定が身近だし、半生の起承転結がきちんとあり、気持ちの揺らぎや決心も描かれている。華子に着目していると、本人の意志が希薄な一方で環境のインパクトが強くて疲労する。
華子がタクシーから降りて自分で足跡を刻む物語は、ラスト近くでやっときざしたばかり。彼女の歩みのドラマは作品を越えた先で始まるのだろう。
予想外の秀作!
重い退屈な映画と思いきや、重い雰囲気の中、興味深く観させて頂きました
最近は良家が廃れてきている感がありますが、もっと上の方々は安泰なのかな?
そんな上流っぽい家の微妙な関係が上手く表されているのが素晴らしい
女性二人とその友達の人間関係も良かった
あー、慶応に行かなくて良かった、と
輪郭
華子がなにも違和感なくまわりに合わせて生きていた生き方から、自分の輪郭をはっきりとさせて自分自身で決めていく生き方に変化していく。その変化をすごく丁寧に、ゆっくりと、いろんなひととの関わりや環境の変化から描いていく。じんわりと心に響く、いい映画でした。出てくる人みんな良かったなぁ。。
最後までグイグイ引き込まれました。
自分から遠すぎて想像も出来ない別の世界。
いや、そんな世界がある事すら知らず、知らなくても何ら困らず一生過ごせたかもしれない。
上流階級と一般庶民。
息が詰まりそうな人生は辛そう。
しかし、生活に追われて息が詰まるのはもっと辛い。
本当の幸せってなんなんでしょうか?
ラスト近く、何気ない事で見せる主人公の心からの笑顔。
本編以降、主人公元夫婦の関係性は変わるのでしょうか?
同じ東京タワーを観ている
岨手由貴子×門脇麦×水原希子「あのこは貴族」2人が初めて同じ光景を観るシーンで美紀(水原)が華子(門脇)に語る言葉がこの映画の全てを表していたと思う。ジェンダー、家長制度、地縁、血縁、因習、人を抑圧して可能性を奪うシステムに対して、抵抗のスタートラインに立つ人たちの物語。
当然、門脇麦と水原希子は素晴らしいんだけど、「朝が来る」でも光っていた山下リオが素敵でした。あと、「キッズ・リターン」「佐々木、イン、マイマイン」に続く、チャリ2ケツ名シーンが誕生していたことも記しておきたい。
もうひとつ書くと、「関西人はまたこんな扱いかよ!」と某シーンで少し泣いた。
平民の世の中に。
色々と考える、考えさせられる映画。
東京にある階級という見えない壁の区分け。
見えないからこそ
お互い疑問に思うところは
それぞれあるという
世の中の生き方。
貴族は生まれながらに
貴族としての人生の路線に沿う。
そんな中の
大学という人間交差点。
ステルス ソーシャル ディスタンス
大半が平民の世の中に、
貴族として生まれたからこその
立ち振る舞いや仕草が
時々出てくるのですが
とても細かくて面白かったです。
役者のキャスティングは
見たくなる役者さんばかりで
演技は勿論、最高でした。
あとは、
私は途中の漢字が読めなかったので
もっと勉強したいと思ったw
赤いスカート
そんなにめかしこんでどこに行くの?
そんな格好で行くの?
同じ赤いスカート一つでも真逆の反応をする、そんな環境格差の表現は絶妙で見ているだけでその家族の物語が見えて来て面白い。
環境や階級に無抵抗な華子が、違う生き方の広がりを感じる。そのきっかけが美紀だった展開は、なんだか彼女たちの視野の広さみたいな、お互いを尊重するような、知性の様な凛とした印象でとても良かったし心に響いた。
埋没しない彼女たちの物語に大いに涙し、スッキリし穏やかな気分に落ち着く、最悪な日があっても持ち堪えられそう。
金持ちと貧乏の生きづらさ
東京の名家と、それよりも格下の金持ち=「貴族」たちの生きづらさと、地方下層庶民の生きづらさを重ね合わせて、端正に描く。知らない世界というより、旧態依然の世界(女=専業主婦・子育て・内助・性欲処理係)にあきれる。女性達が階層を超えて、男の作った世界を乗り超えていこうとする志向がとても良い。奇をてらわない脚本で最後まで飽きさせない映画の好例。
閉塞感からの解放で開いた優しい世界が"繰り返す日々を過ごす我々"への賛歌に
正直言って、映画を観ているときは、ぼんやりとしか掴めていなかった。しかし、見終わった今、無性に彼女たちの背中を追いかけたくなった。そして気づいた。彼女たちが主人公の映画は、たった今始まったのだと。
何よりこの作品が素晴らしいのは、ダブルヒロインでありながら、互いから見ると、人生のひとピースに過ぎないところである。松濤に住処を構えるお嬢様の華子と、富山から上京するも大学中退を余儀なくされた苦労人の時岡美紀。青木幸一郎が唯一の接点であったはずなのに、ふたりの異なる物語が並走し、互いの人生賛歌へと昇華されていく。都会に暮らしていても、田舎から出てきても感じていたのは、狭くて身動きの取れない息苦しさと、独り立ちも許されないような環境。富山では親の仕事を次ぐ人ばかり、都会では生まれながらのレールから外れることを許されない。そんな閉塞感を否定するのではなく、彼女たちの手でユートピアを拓いていくような優しさで包み込んでゆく。都会の景色は他人事で、自分の足で立てずにいた彼女たちは、ひゅるひゅると変わっていく環境に流されてしまう。そこから自分の足で立つ方法を身に付けた時、初めて見える景色がそこに広がっている。それこそ本当の都会の景色なのではないか。門脇麦を都会のお嬢様、水原希子を田舎の苦労人として描くアンバランスさは、作品内で見事に意味を成して熟れてゆく。そこがまた深くて優しい、この作品の凄みだと思う。
彼女たちを知りたくなって、ついパンフレットも買ってしまった。この作品は、単なる女性賛歌ではない。"日々を繰り返す全ての人"に次ぐ人間賛歌なのだ。山内マリコ原作にハズレなし。さて、いつもより軽くなった足で、新宿を歩くとしよう。
日本の貴族はこの映画を見て励まされるだろう
自己完結的な作品
想定以上のもの何もなかった
キャストの演技に+0.5⭐︎
むしろ章分けからは監督のテクニック不足を感じた→まとめやすくするために文章を章ごとに書くとかってよくあるじゃないか?
形式は置いといて
いい話、素敵な話だった
ただこの映画何を強調しようとするか、観る人に何を感じて欲しいか、全く掴めなかった
自分自身がこういうのに向いてないかも
どんな出身でも、自力で目の前の生活を頑張るべきだ
ってことだろう
これだけなら十分伝わったが、これだけか?
遠回りしてる気がするけど?
そもそも監督はどんな観客を想定し、どんな感情を引き立てようとしてるだろう
傍観者としては、
貴族という全く触れることのない人間の生活は、見せ物のように新鮮に感じた
それを見ながら登場人物の感情変化を吟味する映画館の時間が、華子の注文したダージリンミルクティーのように濃厚で楽しく感じた
唯一橋で手を振ったシーンだけ良かった
が
観客としての自分自身の感情に訴えられたことが何一つもなかった
後味がほとんどないことが残念
どっかの同じような貴族が、この映画を見て励まされるといいね
ps小津好きとしては
この映画、特に第一章は小津映画の面影を持ってはいるけれど、監督さんは恐らく意識して作っているわけでもないし、そもそも話が全く違うから全然似ていないかな
深い
いい映画だったなぁ〜。やっぱり結婚=幸せでは無い!!
周りが結婚してるから焦ったり、家族が結婚しろって言うから結婚、みたいなのは違うと思う。自分がどうしたいかそれが本当の幸福。でも生まれてからみんな家族や環境に洗脳されてるんだからそれは仕方ないことだし自分のこれまでを否定するって怖いですよね。
私なりの生き方
門脇麦さんを久々にスクリーンで観れて感激しました。自分を映画好きに引き摺り込んでくれたのは麦さんで、2018年の「止められるか、俺たちを」でカッコいい女性を演じられ、心を奪われました。2019年の「さよならくちびる」でも再び心を奪われました。なんて素敵な女優さんだろうと。
映画の内容は自分たちのいる階層で貧富の差を表しているのが分かりやすくて良いです。最初から生活には困っていないが、家庭内に振り回されている華子(麦さん)のエピソードがスタートしますが、とことん男運が終わっているのでまともな男と出会えないです。「ファーストラヴ」と比較したくなったのが、決して良い男たちではないのだけれど、女性にリアルを求めていない奴だったり、決めつけがひどい奴だったり、そもそも華子と馬が合わなさそうだったりと、決して性に飢えている奴らばかりじゃなかったのが個人的には良かったです。
続いては美紀(水原希子さん)の物語です。華子とは打って変わって裕福ではない女性のお話になります。慶応大学に入ったは良いものの、高校から流れで入った奴らとの差をお茶の値段で表しているのも直接的でいいと思います。
そんな2人がふと出会って、決してどっちも歩み寄ろうとはしないけれど、互いのテリトリーを理解する流れが最高でした。2人が出会うまでに私生活上でのトラブルは何十何百何千と重ねていきましたが、2人が東京タワーを見てほっこりしているシーンはこっちまでほっこりしてしまいました。
今作の麦さんは非常にキュートで、今まで演じてきた役柄の中でも幼い印象が見受けられます。あんなお嫁さんいたら絶対に大切にする…
とてもいい作品でした。ぜひご鑑賞を。
鑑賞日 2/28
鑑賞時間 15:20〜17:35
座席 J-10
「見えないもの」を見せる映画
「クラス」は世の中に確かに存在する。コミュニティはそこで形成され、育ったコミュニティの中は居心地が良いけれど、別の階級との接点によって、優劣を生みやすいもの。
そうした「見えないもの」を、ごく自然に嫌味なく、それぞれのキャラクターの美しさを起点に、丁寧に表現されていた役者さんたちに脱帽です。とても静かでゆったりと時が流れる映画なのに、あっという間だし、目を離せませんでした。
物語としては、生まれた場は場として、それでも個として成長し、輝こうとするとき、ともすれば対立構造で描かれがちな「女同士」を「女同志」として成立させていたところが美しかったし、希望を感じました。
水原さんの「どこで生まれたって、最高な日もあれば悲しい日もあるよ。でも、その日あったことを喋れる人がいるだけで十分じゃない?案外そういう人に出会えることって少ないから」「(門脇さんの世界も)うちの田舎とそんなに変わらないね」というセリフ、こんな家初めてじゃない?と聞かれた門脇さんが答える「ここにあるのは、全てみきさんのものだから」この3つのセリフに全てが集約されると感じました。
(3/12追記)
小説を読んでみました。
美紀と華子が初めて引き合わされる女性3人のシーンや結婚式、離婚、一年後のシーンなど、物語の中でキーとなる部分があまり入っていなかったんだー!と驚きました。時間の都合などもあったかもしれないけれど、もしこのエッセンスが組み込まれていたら、女性たちの友情や華子の孤独感、幸一郎の人格が形成された理由、華子の解放が、違って見えたかもしれません。映画は映画として良かったです!
岨手由貴子監督恐るべし
静かながらも、心が揺れ動く特別な映画でした。
日本の女性監督で、またもや才能豊かな方が出現しましたね。
西川美和監督やタナダユキ監督、河瀬直美監督など日本映画を今や引っ張ってる存在ですが
岨手由貴子監督もその中の一員になっていくであろう存在になると今作を見て思いました。
最近の韓国映画にある女性の社会的立場の生きづらさを似た感じで描いた映画かと思いきや、そこまで女性だけにスポットを当てず
男女問わず人の人生の幸せや悲しさを上品に描いているなと思いました。
個人的に門脇麦と水原希子が初めて出会うシーンの、門脇が水原に対して若干マウントを取る感じが、意外だけどリアルでよかったです。
ラストシーンは号泣しました!
雛人形と貴族
大学の内部生と外部生、東京出身と地方出身者、タクシー移動と自転車移動、婚約者とセフレ…
対比しながら進んでいく中で共通するのは、東京のアッパー層も田舎のマイルドヤンキーも根本的には同じだということ。
本作は渋谷区松濤で生まれ育ったお嬢様の華子と地方から上京し逞しく自由に生きる美紀。同じ空の下、生まれも育ちも異なる二人が出会うことにより華子の人生が解放されていく。
▶︎東京で生きる地方出身の女性にはとくに共感されるのではないだろうか。女性だけでなく、東京で長く住んでいる人はわかりみが深い話ではないかと。
かくいう私も美紀 側の人間、東京に憧れ地方から上京した者で、これまた大学で出会った友人に広尾の豪邸で生まれ育ったお嬢様がいる。まさに彼女は貴族、これは自分の話ではないかと思ってしまうほど。
▶︎本作は人物の描写や会話、服装やバッグなどもリアル。シェラトン都ホテル東京の天井の高いラウンジでお茶をする華子たち、実際にあのようなお嬢様達がホテルのラウンジでアフタヌーンティーを楽しむ姿はよく目にする。
美紀の地元の富山での“地元あるある”もリアルすぎて思わず笑ってしまうほど。
▶︎東京の階層
東京といっても舞台は港区、中央区、渋谷区、千代田区中心に進んでいく。
ホテル椿山荘、シェラトン都ホテル東京、日本橋のマンダリンオリエンタルホテルなど優雅なシーンも多く華やかである。
美紀が劇中話すように東京は場所によって棲み分けされており、違う階級のものが出会うことはない。暗黙の了解、はっきりと分断されていて今後もその分断は続いていくのだろうか…。
▷東京でお受験を経験したことのある人ならわかる話ではあるが、有名私立幼稚園や有名私立小学校では親が東京出身(上流階級に限る)か地方出身者かでも子どもの合格率が違う。(その学校出身の親族がいるか否かで決まる)親の中でもヒエラルキーが存在するのである。
▶︎本作を通して感じる自分らしい生き方と幸せの価値観
アッパー層にはアッパー層なりの苦悩(生まれた時から決まった道、選択の自由がない)が描かれていて、幸一郎からは諦めのようなものも感じられる。
▶︎女性の中には 結婚=幸せという価値観が未だに罷り通っているが、多様な生き方が選べる今、改めて自分らしく自分の幸せを追求して生きていく幸せもある。
▶︎美紀と華子、華子の友人の逸子が会うホテルのラウンジでのシーン、逸子の言葉が個人的に刺さった、そしてこれからの女性の一番賢明な生き方ではないだろうか。
▶︎ドロドロシーンになるかと思いきや、なんとも穏やかで相手を受容するかのような対応。金持ちケンカせずって本当で、育ちの良さが現れている。好感持てるなぁ。
▶︎脚本も監督も女性の監督が手がけたからゆえに女性の視点で描いている。だからこそ女性は共感できる。爽やかで瑞々しい、秀作です!
(p_-)当たり前ほど難しい
幸せになるって事は水原希子が門脇麦に言った言葉、、、どのような階層にいようと今日の事をなんでも話ができる人がいる事なのでしょう。その何でも話しができる人って簡単にいる様で実は作ろうと意識すると作ることができない奇跡の様なものでしょう。物質的に恵まれていたり、権威や権力を持つとそれを感じにくくなるのでは?貴族でいる限りわかりづらくなるんでしょう。門脇麦と高良健吾の夫婦は貴族同士なのでとりわけすれ違いだったのでしょう。ラストシーン。門脇麦は元旦那をどう思い見つめたか?
観客に問うてます。
小生は門脇や高良の様に貴族ではなく、かと言って水原の様な頭がいい庶民でもなく、共感できる階層がなかった。このまま社会の波に呑まれそうな、いやもう呑まれている自分を考えるに少し不安を覚えたのだった。
役割を全うする素晴らしい人生!
この映画で登場する人物たちの階層は、それぞれ違うのですが、誰が偉いとか偉くないとかという古い価値観を払拭するテーマに、共感しました。つまりどんな生き方であろうと、全てが尊く光り輝いているということなのでしょう。もっと根源的に言えば、貧しく生まれたり、金持ちに生まれたりするのも、全て生まれる前から相談しあって生まれてきて、それぞれが嫉妬したり、尊敬したりしてそれぞれの役割を全うしていくのだと思います。門脇は貴族の階層に生まれていますが、貴族という言葉は死語なので、単なる小金持ちです。富山県から上京した水原は貧乏のために大学を断念します。高良は議員の家のレールを歩きます。この3者のに生き方の絡み合いが、なんと穏やかで清々しいのでしょうか。最終的には、女性たちは自分軸で生きることを模索し、高良は議員をまっとうして行きます。それぞれが、自分に与えられたこの世の役割に気づき、前を向いて歩き出すのです。そのことだけで、胸が熱くなるようなストーリー展開に感動します。この映画の中では、結婚という概念は古い価値観として描かれているようです。じんわりと感動が押し寄せてくるところが素敵な映画です。高良の雨男ぶりや、門脇と水原がオレンジのプリーツスカートを履いている演出には、不思議な暗示を感じる作品です。
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