劇場公開日 2021年2月26日

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「雛人形と貴族」あのこは貴族 あささんの映画レビュー(感想・評価)

4.0雛人形と貴族

2021年3月1日
iPhoneアプリから投稿

大学の内部生と外部生、東京出身と地方出身者、タクシー移動と自転車移動、婚約者とセフレ…

対比しながら進んでいく中で共通するのは、東京のアッパー層も田舎のマイルドヤンキーも根本的には同じだということ。

本作は渋谷区松濤で生まれ育ったお嬢様の華子と地方から上京し逞しく自由に生きる美紀。同じ空の下、生まれも育ちも異なる二人が出会うことにより華子の人生が解放されていく。

▶︎東京で生きる地方出身の女性にはとくに共感されるのではないだろうか。女性だけでなく、東京で長く住んでいる人はわかりみが深い話ではないかと。

かくいう私も美紀 側の人間、東京に憧れ地方から上京した者で、これまた大学で出会った友人に広尾の豪邸で生まれ育ったお嬢様がいる。まさに彼女は貴族、これは自分の話ではないかと思ってしまうほど。

▶︎本作は人物の描写や会話、服装やバッグなどもリアル。シェラトン都ホテル東京の天井の高いラウンジでお茶をする華子たち、実際にあのようなお嬢様達がホテルのラウンジでアフタヌーンティーを楽しむ姿はよく目にする。
美紀の地元の富山での“地元あるある”もリアルすぎて思わず笑ってしまうほど。

▶︎東京の階層
東京といっても舞台は港区、中央区、渋谷区、千代田区中心に進んでいく。
ホテル椿山荘、シェラトン都ホテル東京、日本橋のマンダリンオリエンタルホテルなど優雅なシーンも多く華やかである。
美紀が劇中話すように東京は場所によって棲み分けされており、違う階級のものが出会うことはない。暗黙の了解、はっきりと分断されていて今後もその分断は続いていくのだろうか…。

▷東京でお受験を経験したことのある人ならわかる話ではあるが、有名私立幼稚園や有名私立小学校では親が東京出身(上流階級に限る)か地方出身者かでも子どもの合格率が違う。(その学校出身の親族がいるか否かで決まる)親の中でもヒエラルキーが存在するのである。

▶︎本作を通して感じる自分らしい生き方と幸せの価値観

アッパー層にはアッパー層なりの苦悩(生まれた時から決まった道、選択の自由がない)が描かれていて、幸一郎からは諦めのようなものも感じられる。

▶︎女性の中には 結婚=幸せという価値観が未だに罷り通っているが、多様な生き方が選べる今、改めて自分らしく自分の幸せを追求して生きていく幸せもある。

▶︎美紀と華子、華子の友人の逸子が会うホテルのラウンジでのシーン、逸子の言葉が個人的に刺さった、そしてこれからの女性の一番賢明な生き方ではないだろうか。

▶︎ドロドロシーンになるかと思いきや、なんとも穏やかで相手を受容するかのような対応。金持ちケンカせずって本当で、育ちの良さが現れている。好感持てるなぁ。

▶︎脚本も監督も女性の監督が手がけたからゆえに女性の視点で描いている。だからこそ女性は共感できる。爽やかで瑞々しい、秀作です!

あさ
あささんのコメント
2021年3月4日

コメントありがとうございます。
共感していただき嬉しいです!
映像センス抜群ですよね。美しかったなぁ。

私も次回作が楽しみです♪

あさ
iwaozさんのコメント
2021年3月3日

良きコメント解説ありがとうございます。非常に同感です。男ですが、男なりに共感しました。f^_^;
小津監督のような文学的映像センスを感じました。次回作が本当に楽しみですよね!

iwaoz