プロミシング・ヤング・ウーマンのレビュー・感想・評価
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変わった作品ですね。
アカデミー脚本賞を受賞した本作なんですが、あんまり上映してるとこがないんですよね。で、公開から半月、やっと見る事が出来ました。
受賞は逃したけど作品賞や監督賞、主演女優賞何かにもノミネートされてました。
脚本賞を受賞しただけあって一筋縄では行かない変わったストーリーで、中々面白かったです。
アニメばかりじゃなくてこういった映画もヒットしてもらいたいものです。
うーん…
もっとクソ男たちをボコボコにする映画かと思ってたら暴力で解決する話じゃなかった。それが出来るのがフィクションのいいところやと思うのに。
それはそれとして、ラストで主人公(女性)が死ぬってゆーのが、「女は命をかけないと復讐することすら出来ない」てメッセージになってしまってない?てゆーのが引っかかる。ストーリー的には別に死なんでも復讐出来たやろ。
現実には復讐なんて実現できひんけど、過去を葬って これからものうのうと生きていくぜみたいなクソ男共に、そうは問屋が卸さんぜよ的なオチつけることで溜飲下げさせる感じなんかな。
過去をなかったことにして生きてる現実のクソ野郎に対して、震えて眠れ的なメッセージなんやろか。
まあそうは言っても男性は観た方がいいと思うし、男の自分は観てよかったと思う。
あーゆークソな振る舞いとか行為、見て見ぬふりはしないようにします。
最高の結婚式へ
夜な夜な酔ったふりをして男にお持ち帰りさせ、そんなクズ男たちに制裁を加えるキャシーの復讐劇。
彼女は何故男を誑かして復讐をするのか?
前途有望なはずの彼女の身に何が起きたのか?
バー→酔うふり→お持ち帰り→復讐のワンパターンで終わると思っていたら、ラストで思いっきりカウンターパンチを食らった。
正直、淡々と続く前半は退屈で、復讐モノにしては弱い印象。
ウトウトしてしまったこともあってなかなか設定が入ってこない。
でもそれが後の復讐へと活きてくるとは⁉︎
淡々としたプチ復讐が、ラストにかけて加速するテンポに上手い具合に効いてくる。
そして、あの展開はあまりにも呆気なくて、「まさかそのまま終わるってことはないよね」と思っていたらそのまま終わった。
そして、予想とは違う形での最後の復讐に嬉しくもあり悲しくもあり。
気持ち良いようで気持ち悪い、あのラストはなんと形容すれば良いか。
ただのフェミニズム映画で終わらせたくない。
ってかフェミニズム映画でも、復讐映画でもない気もする。
流石に自分はこんなじゃないと思いたいけど、現場に居合わせたら、気づけば傍観者になっているかもしれないし。
クズ男どもは口を開けば言い訳ばかり。
「あの時はガキだった…」
本当に男辞めたい。男女どうこうの問題ではないかもしれないのだけど。
キャリー・マリガンはおばさんにも少女にも見える年齢不詳さとなんとも言えない色気。
彼女の行き場のない叫びや苦しみが、あのナース姿に全て現れているような気がした。
またすごいもん観させてもらいました。
すごくいい
始まりから終わりまで、他ごとを考える隙もないくらいに観入ってしまった。久しぶりにいい映画だった。主人公のキャシーを演じたキャリーの演技が際立って上手いと思った。華麗なるギャツビーの時はとても可愛い女優さんだと思ったけれど、素晴らしい演技ができる女優さんだと思う。サスペンス好きな人にはかなりお勧めできる映画かな。ラストはあれでよかったのかな?悪かったのかな?もう一度確かめたくてじっくり観たいけれど、近くの映画館は上映が終わってしまうので、DVDで見直したい。
なぜアカデミー賞取れなかったのかと思うほど感動した。セリフがいい...
なぜアカデミー賞取れなかったのかと思うほど感動した。セリフがいいし、脚本賞は納得。映像、衣装、音楽もいい。主演が最高。もともとファンだったから彼女を見に来た。
人生を変えて恋人とサイコーの時間を過ごす中に現れた映像のトラウマ。すごいトラウマを描いている。ノマドランドなんかぶっ飛ばすくらいの力、フラフラになって女が立ち上がってる話なのに。十七歳が評価されるヨーロッパと、これが評価できないアメリカの差だ。
死んだ後、男たちを震え上がらせるのもサイコー。
彼女を殺した男たちが処理し抹殺する場面でロマンチックな音楽が流れるところがすごい。男性の幻想で世界を覆う物語性。
彼女は、強くもないのに、正気だったと見せるだけで男たちが萎えるという設定が面白い。
酒に入れるドラッグの話も、医学部の話も、過去なら許されたとされる話も、男の未来を奪うなという話も、トレンディなのに。
胸糞でも痛快でもない
過去の出来事に縛られていた女性が過去に折り合いをつけ幸せを掴もうとしたが掴めず幸せを諦めた話で不運で悲しい話だと感じた。
良い作品だし見て良かったとは思うが傑作とまではいかないかな。
意図的に現在の主人公の視点のみで描かれているので主人公の行動や言動から過去を推察するしかなく一歩引いた視点で見ることになってい感情移入があまり出来なかったし、驚きがあったのは冒頭部分位で後半は予想内の展開で少しだけ退屈だった。
何一つ男にはわからない
男性の友人と見に行き、はっとしたのが彼の「ニーナの動画が実際に観客には見れないので、アルたちがやったことの酷さの程度がわからない」という言葉。
現実でも、女子中学生がレイプされれば同情されても、酔わされたセックスワーカーがレイプされたら、そんな仕事をしているから、隙があったから、仕事でしてることなのに?なんて言われる。
怪我の有無や、抵抗したかしないか、相手が顔見知りかどうかなんて関係ない。
レイプされる側がどんな人間であろうが、どんな状況であろうが、事後にどんな態度であろうが、レイプはレイプ、魂の殺人なのである。
そこがわかってないと、上記のような無神経な感想が出る。
説明はしたが、友人はピンと来ないようだった。
彼には一生わからないだろう。
元恋人ライアンの誠実さのない態度も、死んだはずのキャシーからのメッセージに裁かれる。
「これで終わったと思ってる?」
SNS全盛時代、これからの彼のキャリアは終わったも同然だろう。
ひょっとしたら、メッセージはまだ続くのかもしれない。ライアンが着信拒否にしたとしても、着信拒否にしたからありえないと思っていても、いつ来るかわからないキャシーのメッセージに脅かされ続けるだろう。
アルたちも、キャシーを殺してすぐに警察に連絡していれば、つまり自分達のしたことを今回こそは真摯に受け止めて行動していたなら、裁判で一級殺人はくらわないだろうが、証拠隠滅を図った悪質な殺人ということで重罪確定となるだろう。
キャシーの名前が、キャサリンではなくカサンドラなのも象徴的だった。
カサンドラは呪いにより、予言を人に信じてもらえなくなったトロイの王女でもある予言者の名前だ。
キャシーの言うことも、きっと誰も信じてくれなかったのだろう。
ただの幼なじみで親友と思われたニーナとキャシーの関係が、聡明なキャシーをなぜあそこまでの復讐に駆り立てるか最初は不思議だったのだが、ラストで納得。
キャシーにとってのニーナは、単なる幼なじみや姉妹のようなものではなく、崇拝の対象であったのだ。
聖なる存在を冒涜され壊されれば、信者はキレるに決まっている。
だがそれも、その信仰の外にいる者からは理解のできないことなのだ。
最初から最後までずっと釘付け
始まりで一気に引き込まれて、その後中だるみもなく、ずっと面白い!
キャシーがなぜそうなったのか、段々とわかっていくストーリーもいいですね。
伏線回収が見てて気持ちいいですね。
この後どうなるの!?と目が離せなかったです。
本当によくできてる良い作品です!
久しぶりに落ち込む映画を見た。
私は女性だけど共感しにくい部分も多かった。なぜ弁護士は許す?なぜ関係ない男を誘う?あの誘い方は男性だけが悪いのだろうか。ちょっとわかんない。
復讐のラインが曖昧。復讐を理由に死にたかったのかな?とさえ思った。本人の情緒が狂気なのは理解はするけれど、映画ならば最後はこんな終わりじゃダメでしょ。
私ならちゃんと奴等の貶められた姿を観るまで死ねない。手錠が外れないように入念に薬で抵抗できないようにしておく。動画をとって脅してでも自首をさせる。それじゃダメなの?他にやり方あったでしょ。
自分が死んだあと、もし弁護士が裏切ったら?もし思ったような制裁が奴らに下されなかったら?どーーすんの!死に損じゃん!
あまりに浅はかな復讐劇に情けなくなった。
あとは親の気持ちを思うといたたまれない。彼女は死に場所をさがしていたのかもしれない。失望の中で復讐を自分が死んでもやり遂げたかった‥のかなぁ。無理やり納得させながら帰ったものの‥とにかく落ち込んだ。
ものかなしい
町山智浩が「この作品はコメディです」って得意げに言う作品はコメディではない。
この作品も得意げにコメディだと言い切っていた。
ブラックウィドウもコメディだと言い切っていた。
違うじゃん。
もの悲しい。
最後までハラハラさせられた。
みなさんが語るメンタルな部分は割愛して。
衣装が可愛らしかった。
曲が印象的だった。
心を殺された側の叫びは伝わらない
キャシーにとってニーナは大切な友人であると同時に、その生き方や人格を心底尊敬している人物だったんですよね。そのニーナがレイプされ集団で見せ物にされて笑われて、訴えても弁護士に印象操作され言いくるめられ、その後(おそらく心を病んで)死に至ってしまった。
序盤のキャシーは明確な相手に復讐しているのではなく、適当に声をかけてくる男を泥酔したフリで騙していますが、ニーナと一緒に心を殺されて投げやりに生きている状態に見えました。
そこにかつてのニーナを傷つけた人間達が幸せに生きている様子を目の当たりにして、復讐劇が始まる訳ですが。キャシーからすれば復讐成功のハッピーエンドだったんだと思います。あのあと生きていたとしても、ニーナを殺された怒りや悲しみが消えることはなかったでしょう。
この映画で一番怖かったのは、弁護士以外誰も自分の過ちを悔やむ様子がないところです。特にライアンが逆ギレした様子すら見せるのには「もうやめてくれ...」という気持ちになりました。お願いだから傍観者として人の尊厳を傷つけ心を殺した一因になってしまったと後悔してくれ、と。
そしてエンドロール後、途中で少し席を立っていた正面の男性が連れの女性に「この映画ならいいかなと思って途中トイレ行っちゃった」と笑いながら言っていました。ああ、この映画に出てきた「後悔しない側」の人達と分かり合えることは一生ないんだろうなと思いました。
赦せない!!
あまり詳細を説明しないタイプの作品だったため、鑑賞直後は細かいところに囚われて「む??」となってしまったが、時間を置いて冷静に振り返ると、どうやらありきたりな復讐劇という枠には収まらないようだ。
最後のオチから察するに、どことなく『セブン』の結末を想起させる、自らの死を以って計画が完了する深慮遠謀だったように思える。
といっても、幼馴染の仇への復讐である本作と、サイコパスによる計画的連続殺人では、モチベーションがまるで違うが。
ともかく何かを望むなら、何かを棄てなければならない。そのバランスこそが、この世の理であり、主人公にはそれがわかっていたのであろう。
終盤、ロッジへ向かうときには既に、自らの死を以って憎き仇を破滅へと追いやる決め手と成す覚悟があったように感じる。
この結末を彼女が考えたのは、弁護士を罰しに行った後だろうか。弁護士だけが既に十分な罰を受けていると感じたことから、自分の死後の計画遂行を彼に委ねようと考えたのではと推察する。
彼女は、とにかく赦せなかったのだ。大切な幼馴染を死に追いやった獣たちが、まるでそんなことなど無かったかのように、今では幸せそうにのうのうと人生を謳歌していることが。
その背景にあるのは、男が女から搾取する旧態依然とした体質と、それを容認する男>女の社会的構造が抱える闇だろう。
後半、レイプ動画を突きつけられたライアンは、『ボクは何もやっていない』と言う。あくまで傍観者であって、悪事に加担してはいないと。
しかし、傍観することで、悪事を容認している。『何もやっていない』という選択を“している”のだ。
主人公は、最期にはアルからの反撃によって命を落とすが、それもまた計画の一部で──と個人的には思っている──、むしろそこからが〈終わりの始まり〉ということなのだろう。
彼女は復讐によって一矢報いたのではない。社会に一石を投じたのだ。
悲しく切ない終わり方だったが、それもまた前述の社会の闇の本質を如実に表しているといえるのかもしれない。
傍観者という罪
何とも後味が悪い。
キャシーの正義が、どうしても許せなかったのだろう。
男本人も、知っていながら止めなかった人たちも。ただ、笑って見ていた人たち。
あとから動画を見て、笑った人たち。
知っていながら、なにもしなかった人たち。
そして、罪を捏造した弁護士も。
事件を風化させないために、身体を張って 正義を貫く。
頑なといえば、頑なすぎるけど、相手がだれであれ許せない気持ちは変わらない。
ただ。
その正義は、生きてこそではなかったのか。ヤツの身体にNiNAの文字を刻むことが目的だったのか。
最後、そこだけが残念。
生きて欲しかった。
ニーナの分も、生き直してほしかったな。
『若気の至り』を吹聴する態度は今すぐゴミ箱に捨てろ、と痛感させられる一作。
クライマックスにさしかかったところで、ある曲が本作独自のアレンジで流れていることに気がつき、なかなか上手い選曲だな、と思った直後、そこには「お前にとっても他人事じゃないんだぞ」というメッセージが込められているのでは、と気づいて、ぞっとしてしまいました。
表題の「若く、将来を嘱望される女性」は、たしかにかつてのキャシーを言い表しているのですが、一方で、一体誰が誰に対してこの言葉を発しているのか、ということに思い至ると、この語に込められた皮肉、陰鬱さがずっしりと肩にのしかかってきます。前述の楽曲や表題をはじめとして、本作では全編にわたって様々な要素に複数の意味が込められているため、容易にテーマの全体像をうかがい知ることができない作りになっています。しかしながら、物語の筋は決して難解ではなく、むしろキャシーの復讐譚としての筋立ては非常に分かりやすく整理されています。このように十分に練り上げられた脚本を執筆しただけでなく、自ら監督も務めたフェネル監督は、本作が長編映画デビューとのこと。その才能には驚かされます。
ラストの展開は見事のひとことなのですが、他方でここまでしないと「彼ら」を法的に裁くことが難しいという実情も反映していると言えます。そのためやはり単に「面白い映画だった」と手放しで称賛できない、してはいけない、作品だと感じました。
知的で優しすぎる復讐劇に、悲しみがとまらない
てっきり、下ネタもタップリに、どぎつく男どもをやっつける猛者女の話だと信じて疑いませんでした。最後は、ヒロインの乾いた笑いが劇場に響きわたると思いましたが、内容は悲哀に満ちたサイコスリラー。
お持ち帰り男に何もさせずに叩く、かつての同窓の女性に暴行されたと言う恐怖を味わせる、女性学部長?に娘が拉致されたのではないかと悲鳴を上げさせる……
これらは、みな大学時代の親友絡みの暴行事件に由来しているのだと、しばらくして気づくのですが、キャシーは畳みかけたりせずに寸止めしてしまう。ある意味、控え目で教育的な復讐劇。
キャシーのファッションや振る舞いなど、映像は全て刺激的でキッチュだったのに、キャシー自体は聖なる存在に近い。
人は本来は善なるものであり、遠い所からの復讐でもきっと分かってくれると信じる、天使のようなキャシー。
恋人と結ばれて、さてどんな展開になるか。
暴行事件の録画が登場するまでは、キャシーとニーナは同一人物かと思ったりもしてました。忘れるために多重人格化した…とか。
キャシーに決定的に腹を括らせたものは、当事者の男だけじゃなく、実は群衆心理で簡単に傍観者と化してしまう男ども、女ども。しかも、その中に最愛の男が含まれていた!
だが、待っていたのはむごい悲劇で、キャシーはその悲劇まで想定していたものの、悲しすぎる。ずる賢くて立ち回り上手なだけが取り柄の男どもに、負けて欲しくはなかった。
人は一人でもかなり悪く愚かだけど、集まれば更にどうしようもない存在になり得るのだと、やや肩を落として帰りました。
ゲスやろーをぶっつぶせ!!
プロミシングヤングウーマン。将来を約束された優秀な若い女性、という意味らしいです。
字幕翻訳はいとしの松浦美奈さま。
冒頭で出てきたナイスガイぶったゲス男は、ドラマOCでセスコーエンを演じていたアダムブロディでした。あのかわいかったセスがこんなゲスに、、、(いや、役だからネ)って思って悲しかったです。
ニーナは自殺したのかな?あえて明言されなかったと思われます。
学内のパーティーで酔ったニーナがアルにレイプされた。事件の一部始終は書かれなかったけど、おそらくニーナの被害の申し出は握りつぶされた。男たちに、男たちを信じた女たちに。
キャシーはその復讐をしたわけです。
女の子が酔った。それは男の子が酔ったことと変わらないはず。だけど、女の子が酔った結果、巻き込まれる悲劇は男の子の酔った後の悲劇よりも、何倍も何十倍も重い。
それは酔った女の子が悪いのか?違う。絶対違う。絶対に違う。
自分をいい人だなんて言う奴は、悪人ですよ。
ニーナとキャシーの苦しみを思うと、ぎゅっと喉が詰まる感じがする。私はあなたたちを支えたいと思う。何もできないけど。
痛快とはいかない。そらそうだ。人が死んでる。
でもキャシーのしたことを私はひとつも責めるつもりはない。泥酔キャシーを持ち帰ったゲスたちを全部殺してるんだとしても責めない。奴らのやってることは死に値する。笑って見ていた奴らを含め。
見終わった気分は、目を細めながらゲスどもを睨みつける感じ。悲しみと怒りのパワーが体に充ちている。
ライアンのゲスさ、すっごく何処にでもいる感じで、怖くなった。エイトグレード撮ったボーバーナムさん、良いお仕事されましたね。
そして、キャリーマリガン。低い声とかわいいエクボでゲスにメンチきって、かっこよかったっす。
エメラルドフェネル、素晴らしい作品をありがとう。
エンドロールのタイトルで泣いた
反撃の鈍しが上がれば1番の武器は自分の身体だ
武器にはプライドが宿り
ぼろぼろになった武器が遺した戦いを愚かと云うのなら根源はなお愚かで
天才はその戦争を手直しして仕上げただけ
とびきり痛快でスリリングな中毒性の高いエンターテイメント
ビジネスマンがアフター5を謳歌している深夜のクラブ。
店内のどでかいソファーに泥酔してだらしなく座りこむ一人の女に男たちの好奇の目が注がれる。
ある男が介抱するフリして言葉巧みに女を店から連れ出す。
タクシーに乗った女は結局男の自宅へ"お持ち帰り"されるのだが、ベッドに横たわった女に乗っかかり、行為を始めようとした男に向かって、女は凍りつくような冷静な声で問い正す。
「あんた、何してんのよ」
実はシラフだった女がムクっと起き上がった瞬間、男の目は点になり、簡単に抱けると思っていた浅はかな自分を後悔することになるー。
彼女の名はキャシーことカサンドラ。
かつて優秀な医大生だった彼女は、ある出来事をきっかけに医大を中退し、アラサーを迎えた今では身勝手な態度でまともな接客もしないくせに小さなコーヒーショップで働いている。結婚する気もなく未だ実家暮らしで両親を心配させているが、そんな彼女は夜な夜な衣装を着替えてクラブやバーに出かけ、下心に任せて誘ってくる男たちに制裁を加えているのだったー。
自らも女優で脚本家、小説家でもあるエメラルド・フェネルが監督した衝撃のデビュー作。
彼女が生み出した独創的でセンセーショナルな物語は、アカデミー賞で監督賞こそ逃したもののオリジナル脚本賞を受賞。このタイトル同様に彼女こそ「Promising Young Woman(将来を約束された有望な若き女性)」であることを世界に証明した。
この脚本のもとに集まった女性は他にもいる。
製作に加わったのは、ハリウッドで今や推しも推されぬ人気女優となったマーゴット・ロビー。
そして「この役を自分以外が演じると思うと不安と怒りが込み上げた」とまで言い切り、主人公のキャシー役を二つ返事で快諾したキャリー・マリガンだ。
キャリー・マリガンはこれまで個人的にはそんなに好きな女優さんではなかったが、大胆で知的でどこかイカれてて何故か愛らしくもあるキャシーを見事に演じ、私の中でも好感度が爆上がりした。
これはキャシーによる男たちへの復讐劇だが、銃をぶっ放したり、「キル・ビル」さながら切った貼ったの暴力描写などは一切なく、シリアスなテーマではあるものの、ビジュアルがとにかくポップでガーリーだし、ロマンティックコメディの要素も含んでいる。
しかしどこか全盛期のタランティーノ作品を想起させる部分がある。言うなれば非バイオレンスで無駄話を省いた可愛い女版タランティーノか?
予測不能で巧みな伏線回収も気持ち良いストーリーと場面展開に加え、オープニングのフレッチャーからブリトニー、ラストのジュース・ニュートン「夜明けの天使」まで、女性らしくてカッコいい音楽が見事にマッチして胸躍らされるからだろうか。
女性の地位向上、性差別反対といった上っ面の正義の裏に歴々と停滞し続ける、男側にとって都合のいい方便と許容。その罪の重さを性犯罪のみならず、その周辺にいる心優しき傍観者たちにも突きつける。
あ、もしかして俺も復讐の対象なのか?と、自らの人生に自問自答してしまう。
「男ってそういう生き物だから」
「食べられちゃう女側にも非はある」
「酔っ払ってたからどうかしてた」
「女の方も誘ってた」
「自分は何もしてない、見てただけ」
「自分は悪い人間じゃない」
無責任に並べられる常套句に中指を立てる復讐の天使は、無力な普通の女であるがゆえ、皮肉にも女の武器を最大限利用して、静かに男たちの股間を縮み上がらせていく。
終盤に迎えるクレイジーナース怒涛の逆襲から先はネタバレ絶対禁止の破壊力。
鬱々とした緊急事態宣言下に登場した、とびきり痛快でスリリングな中毒性の高いエンターテイメント。これはマジで面白い。
もうダメだ、書いてるうちにまた観たくなった。
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