TAR ターのレビュー・感想・評価
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ノリがよくわからない
伸るか反るかの映画だと思った。
ところどころ生々しい表現は面白かった。文脈を所々、外しているのは狙いだろうけど、ハマるかどうかは微妙なところ。
ラストも解釈は判然としないが、それも狙いなんだろうな。
生きるとは現実と反面してどこか擬態めいた世界にあるということだろうな。
ケイト・ブランシェットの熱演が最大のみどころ だが…
本作はケイト・ブランシェットの独壇場だ。主演女優としての鬼気迫る演技はとにかく大迫力で圧倒された。そして紆余曲折を経て、余韻を残すラストシーンへ。上映時間158分も、さほど長くは感じないほど引き込まれる。
ただし、実話だと思い込んで観ていたので、観終えた後にフィクションだと知り、ちょっと微妙な気分に。全体を通してとても良い作品だとは思うのだが、うーん…そうなると本作の趣旨がよくわからんなぁ的なわだかまりが残ってしまった。
また、ストーリー中に多くの伏線が張られていたと思うが、結構ディテールへのこだわりが強く、正直なところついていけなかった(汗)1度の鑑賞では本作の真髄は見えないのかも知れない。
評価されている作品だが、好みは分かれるだろう。個人的にはやはり星3つが上限かな。
ケイト・ブランシェットは性別を超えた特別な魅力がある。
最初は筋が見えなくてどういう展開になっていくのか予想がつかずに見ていた。
だんだんそういうことか、となり、
冒頭のシーンの意味が結びついていくのが楽しい。
重苦しい展開かと思いきや最後はなかなかユーモラスな着地。
物語みたいに権威を盾に傍若無人に振る舞う人が、
現実でもちゃんと堕ちてくれる世の中ならまだ救いがあるだけど。
ハンサムウーマン
指揮者としての絶頂期から、セクハラパワハラでの転落。どん底から異国での再起。たくましい。
絶頂期のリディアにしたら、考えられないジャンルであろうラストの場面。それでも指揮者としての自分の居場所を見つけたリディア。たくましい。
ケイト・ブランシェットがとにかく素敵。ハンサムウーマンって言葉がピッタリ!
こんなに人の気持ちがわからない人、自分の事もわかってない人が人の心...
こんなに人の気持ちがわからない人、自分の事もわかってない人が人の心を打つ音楽が作れる気がしない。この分野で頂点に上り詰める?人としては情け無い。
彼女の生き方
冒頭から対談~大学の講義頃まで
話して三十分近く時間を要して
見るのをやめるか考えていた
こういうの苦手だな~と思いながら。
やっと動きだしてからも
彼女の話はとまらない
マエストロの映画なので
♪オーケストラの演奏が聞けると
思っていたら練習風景だけ
初めから主役のターの人生
生き方を描いていることがわかった
吹替えで見ているのに
なかなかわかりずらかった
音楽界の頂点を極めた
ターの生き方
ベルリンフィルのマエストロ
昇り調子の時は何をしても
上手く進むけど
いつまでも……続かない
誰かを蹴落とせば
やがては自分に返ってくる
絵に描いたような人生
彼女の人生は輝かし時があったが
充実した時間もあって
何も怖いことはなかった
常に…闘って生きていた
喜びも味わったが
それ以上に苦しみも味わう
主役のケイトブランシェットの
台詞の量は分厚い台本だったと想像します
演技は素晴らしかった。
ラストは
音楽を知らない人たちを
相手に指揮してるってことですか?
わからないところが沢山ある映画でした
繁栄、陥落、再生
頂点を極め、
頂からの陥落。
落ちてもなお再生し、這い上がろうともがく。
その物語の中には、年齢による衰退、若さゆえのエネルギッシュさ、人生そのものの繁栄と衰退まで絵ががれているように思った。
私的鑑賞映画史上No.1:トッド・フィールド監督×ケイト・ブランシェットに脱帽!!
『TAR/ター』は劇場で3回、Blu-rayで1回観ている。
本作は2回以上観る価値がある。
本作はトッド・フィールド監督16年ぶりの新作であり、
アカデミー賞主要6部門にノミネートされながらも無冠に終わっているが、
主人公TARを演じるケイト・ブランシェットの演技はただならぬ迫力があり
彼女自身引退をにおわせたくらい心身を削って演じているのがわかる。
初見ではセリフやストーリーを追うので精一杯で、
正直、映像や音に集中できていなかったと思う。
であるがゆえに、あのシーンはどういう意味だったのか、あの音は?と
疑問が尽きなかった。自分の仮説をもって終わった。
その仮説が正しかったのか、ストーリーを知り、
セリフもだいたいわかった上での2回目の視聴は、
本作を理解する解像度が格段に上がったと思う(回を重ねるごとに気づきが増える)。
本作は主人公TARがかつて指導した若手指揮者が自殺をしたことに端を発し
自殺した両親から告発されてしまうのだが、
どうもTARに対する悪意を持った人物や、TARを利用してのし上がろうと
する人物など、複雑に色んな人の思惑が絡み合っていて、
それがTARを陥れていく物語だ。
TARも権力があるがゆえに、傍若無人な側面もあるが、
ある意味、自分の思いに率直なのだろうと思う。
キャンセル・カルチャーに巻き込まれていくが、
そこで終わらないところがTARの真の強さだとラストでわかる。
ただ、後半のTARの狂いっぷりには圧倒される。
オーケストラでのライブ音源録音シーンはそれが顕著なのだが、
もはや笑えるくらいに気持ちいい狂いっぷり。
そこが魅力でもある。
ラスト近くで、TARの実家で彼女がバーンスタインのビデオテープを観て
涙を流すシーンがあるが、ここで原点回帰したTARの表情が変わるのが
とても印象的だ。険しい表情から悟りの表情に変わるのだ。
そして兄トニーとの会話も心があったかくなった。
(TARはリディア・ターという名前だが、本名はリンダだということもわかる)
ラストは唐突とも思える終わり方だが、
きっとTARの再生の物語であろうと思う。
これは1回目と同じ所見だ。その確認ができた2回目だった。
3回目も4回目も所見は変わらなかった。
本作は説明的なセリフ・字幕は一切ない。
したがい、物語をどう解釈するかは視聴者に委ねられている。
おそらく観終わった人同士が話すと、違う見解や所見が行き交うはずだ。
そこがこの映画の面白さであり、私が沼にハマった所以だと思う。
ちなみにTARのドイツ語でのセリフの字幕もない。英語のみ。
本作を面白いと思うかどうかはその人次第だが、
絶対観て損はないと思う。必ず語れるのは間違いない。
2時間45分なんてあっという間だ。
アーティストの狂気を感じられてよい
予告編では、ケイト・ブランシェット演じるストイックな指揮者が芸術の極北に到達するために正気を失う話かと思っていた。
たしかにそういう映画ではあるのだが、想像していた展開とだいぶ違っていて驚かされた。
リディア・ターという女性指揮者の物語。
彼女はペルー東部の先住民音楽を研究し、彼らと5年間ともに暮らした、という経験もあるが、その後、華々しい経歴を重ねて、ついにはベルリン・フィルの首席指揮者にまでのぼりつめる。
マーラーの5番のライブ録音を控え、リハーサルを重ねる。演奏は順調に仕上がっていく。しかし、ターが過去に指導した若手女性指揮者の自殺をきっかけに、彼女自身の人生が大きく狂わされていく。
映像は洗練されている。コンクリート打ちっぱなしの家や、インテリア雑誌にでてきそうな仕事部屋、もしくは高級ホテルやレストランといったロケーションは、知的で高級なイメージとともに、どこか無機質な空気を醸し出している。これはターという人間をうまく表現している。
彼女は天才的な音楽家だが、エキセントリックで人間性に欠ける部分がある。演奏しているときだけ感情を持った人間になるのだ。
その性格ゆえに破滅していくのだが、なにかが変わるということはない。
本作で繰り返し述べられるのは、「音楽を演奏するときに重要なのは、本質を理解することだ」というフレーズだ。
ターは作曲者がなにを考えてその曲を作ったのか理解しているのかもしれないが、自分の周りにいる人間のことは理解していなかった。そして、これからも理解しないだろう。
性差別についても何度も言及される。女性の権利やLGBTといった問題について声高に語るのだが、それもパフォーマンスだったのかもしれない。
天賦の才能というものは魅力的で、そんなものがあればいいとは思うが、本作のターのようになる可能性もある。
それでも彼女は彼女にしか見えない世界を見ていたのだから、その点については前向きにとらえたい。
2023年観た映画の中でやたら鮮明に記憶に残っている映画
あまり宣伝もされず、上映場所も少なかった作品ですが、結果的に2023年1番印象に残っている、シーンが沢山思い出せる映画が、このTARでした。
映画を見ている最中は、終始、うぅ〜ん…と唸るしかなかった社会派な内容の作品でしたが、そこには一貫性があり、作り上の矛盾がなく、映像としても印象に残るシーンが多かったです。最後はアジアが少しだけ出てきますが、それもかなり突拍子もない展開の中、それでも納得感があり、さらに現在の世界情勢も表しているような場面展開とも言え、シーンの突拍子もないインパクトも重なって、結末までしっかりと蘇ります。
2023年は映画をかなり観たのですが、観てもすぐ忘れてしまう映画が多い中、なぜかこのTARだけは記憶に残り続けています。決して話が好きなわけでもないのですが、ジェンダーに真っ向から切り込んだ作品で、ミステリー要素もあり、演技が上手く、私の記憶に強く残っています。
最後はまさかの〇〇〇〇オチw
序盤の長い会話劇に睡魔に襲われたが、ケイト様の圧倒的なオーラで覚醒。
トップに登り詰めた女性指揮者がプレッシャーとスキャンダルで徐々に歯車が狂い始め、自爆のような形で転落。
最後はまさかの〇〇〇〇オチで困惑。
なかなか貴重な映画体験だった。
難解…
解説なくしてはラストは分からなかった。実際のところはあったのかは不明だが、かつての教え子へのハラスメントにより、トップ指揮者の地位のみならず、家族までも失っていく。副指揮者やソロを選ぶ際の非情な選択がTarの傲慢さと取るのか、仕事への忠実さと取るのかは分かれるところだと思うが、これでは人は付いていかないし、映画のようにやがて裏切られるだろう。この鉄壁な姿勢から崩れていく様をケイト・ブランシェットが好演している。
これのどこが2023年のベストなのだろうか。
率直に言って、2023年ワーストレベルの映画だと思った。
評論家の前評判も高かったので、期待して観たが、見事に裏切られた。
ストーリー自体は、実はシンプルと言えばシンプルで、いわゆる権力者の転落劇からの再起ものである。
誤解のないように言っておくが、べつにそういう話が嫌いなわけではないし、サイコホラーっぽい雰囲気は、寧ろ好みの話ではある。
ただ、それにしたって本編160分はいくらなんでも長尺すぎるだろう。
ダラダラと続く鈍重なだけのシーンの連続、散漫に敷かれただけの伏線。
そして最悪の元凶はあのラスト。
ラストが凄い!と言っている人が多かったが、あんな虚をつかれるような幕切れには閉口するしかなかった。
唯一、ケイト・ブランシェットの名怪演だけは素晴らしかったと思う。
テーマは何?
タイトルのTARは主人公Lydia Tár の名前、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団初の女性首席指揮者にまで登りつめたカリスマでなんとコンサートマスターの女性と同性婚しているレスビアンの設定。
二時間半を超える長尺で前半は彼女の人格や音楽への洞察が描かれます、音楽シーンは余りにも少なくブツ切れなので音楽映画と思って観た人は失望するかも。
インタビューシーンなどで延々音楽を語りますが言葉でなく演奏で示してほしいと思っていたら終盤で古いビデオに出てきたバーンスタインが「音楽は言葉ではない、音から音への変化の流れが100万の言葉以上に私たちの心を動かすのだ・・」と私の思っていたことを代弁してくれました、トッド・フィールド監督は無理を承知で主人公に語らせたのですね。
PCやスマホ画面でメールのアップが映されるシーンが不自然なので気になりましたが、古い伝統に支配されるクラシック界の対局としての若者文化、主人公がレスビアン醜聞やパワハラなどの弱味をSNSなどで晒され転落してゆく現代の象徴として使ったのでしょう。
テーマはクラシック音楽の先行きへの懸念、慟哭なのでしょうかね・・。
余りにも個性的で特殊な人物設定なので感情移入もままならず、長尺で作家性の強い映画なので私にはしっくりきませんでした。
アートとラット
ベルリンフィルの著名な指揮者リディア・ター。レズビアンを公言していてバイオリン奏者のシャロンと養女と暮らし、フランチェスカを助手としていた。新曲の創作などで多忙の中、幻聴や幻影に悩まされる。そんなとき、以前指導していたクリスタの自殺を知り。
TAR ターって、よくある名字なのかな、変わったタイトルです。浮気ばかりして権威を持った傲慢な男、TARを男に置き換えるとこんな人はよくいたなあ、と思いました。しかしTARは、純粋にARTを愛し、RATのように逞しい。なるほどアナグラムになっていたのか、上手いタイトルです。
ケイト・ブランシェトに喝采。
メタARTAR
いつの時代も偉大な芸術家がしでかした愚行は枚挙に頭がない。が、社会は変化し続ける。ネット社会は書き込み一つで作り手を容易く相対化し、マウントすることが出来る時代を出現させた。芸能人ももう、芸の肥やし、とは言っていられない情報ダダ漏れ社会が到来したのだ。画像一つで長年築き上げたキャリアが一瞬で吹き飛ぶ恐ろしい世界だ。
が、表現自体が劣っているわけではない、不倫した芸能人の表現全てが否定されたわけで
はない。表現は、時代を作る。何故なら最良の表現は我々が知覚するこの世界より一次元高いところから「降りてくる」からだ。その時表現者は、誰でも無い。ただの容器なのだ。この映画の中でターが神と呼ぶものはそれである。だからあそこまで堕ちても同じように振れるのだ。我々大衆が乗り込んでいるネット社会もまた表現の一つと考えれば、それは相互に相対化し続ける螺旋構造を描いている。この映画のケイトブランシェットの名演が、奏でられる素晴らしい音楽がそれを二重に肯定している。
メタフィクションが、ポップアートが問いかけた、創造力とは何なのか、という問いの答えは、まだ出ていないのである。何故なら、社会の基盤が変わり続けるからだ。この映画は今、もう一度、それを問う。これが表現の良心でなくて何だろうか。
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