夢売るふたりのレビュー・感想・評価
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愛おしく恐い女と馬鹿で愛おしい男
序盤から中盤にかけては馬鹿で善良な男が、しっかり者の女に依存して生きているかに見える。それが物語が進むなかで、次第に揺らいでくる。一見、センセーショナルな展開のなかに、主人公ふたりの関係性の機微がとても丁寧に描かれていて、泣き笑いのような複雑な感情に支配されていく快感がある。
終盤のドタバタは少し雑な気もしたけれど、幕切れの鮮やかさにそんなことはどうでもよくなってしまった。
ラストシーンのあの表情を前向きに捉えるか後ろ向きに捉えるかで、物語に対する感想はかなり変わってくるように思う。個人的には希望を見たと思っている。
贅沢な。
せっかく阿部サダヲと松たか子なのに、
暗くて暗くて、重い映画。
宣伝だけを観て面白そうだから
観てみたけど、想像してたのと違って。
脇役もいい人、沢山出てたのにもったいない。
まさかチンピラに伊勢谷友介が出て来るなんて。
あれはあれで似合ってたけど、笑
そして、そんな簡単に世の中お金かしてくれる人いるのかな?
楽してお金稼ごうとして、よっぽど精神的に辛くなって淋しくて。
だったら地道でもこつこつ貯めて行った方が
絶対幸せだったのに。
夫婦になるって怖い。
すこ~しだけ、素敵な夢を見せてあげれば・・
映画「夢売るふたり」(西川美和監督)から。
火事で店を失くした夫婦が、店を再建するために、
「結婚詐欺」という方法で資金を集めるストーリー。
そんなにうまくいくのだろうか、と思っていたら、
映画とわかっていながらも、なるほどなぁ、と感じた。
「結婚詐欺」というよりも、この人のために
お金を提供してあげよう、という気持ちにさせるテクニック。
そのコツを妻役の松たか子さんが呟く。
「夢なんて、ほんの少しで充分よ、ほんの少し。
すこ~しだけ、素敵な夢を見せてあげれば・・
やさしい星たち、まばゆい星たち、そのきらめきに、
ほんの少しだけ色を付けてあげましょう。
そうすればみんなきっとあなたのために、輝いてくれるわよ」
言い方を変えれば、こんなことだ。
「みんな寂しくて、みじめな想いを抱えているのよ。
立場もお金も、人間関係も、今あるものはもう何一つ、
自分の人生を変えてくれはしない。未来も見えない。
十年後の自分なんて、考えるのもイヤ」
そんな人たちに、タイミングを外さず、声をかければ、
「あなたは星たちを照らす、小さな太陽になれるはず」
詐欺って、こんな人間の心理をうまく操作するんだなあ。
松たか子。阿部サダヲの名演技。
役者がとてもあってました。夫婦感が半端なくありますね。みてて起こる事一つ一つに衝撃が走りますね。悪いことをしたらアザとなってかえってくる。その言葉通りですね。
結構深い終わり方で、離れても夫婦愛は変わらないという感じでしたね。
悲しい仮面夫婦
火事で無くなった店を取り戻すために、夫が女性を騙し、金を巻き上げる。シナリオは妻が書く。
設定がリアルで、こんな風に近づかれたら騙されるかもしれない、と、正直怖くなった。それくらい、感情描写がうまく出ているし、エグい。わざわざ癌の本を読んで勉強したり、どうやって金を巻き上げるか試行錯誤していくところが、気味悪く思った。
結局、夫が詐欺をしている間にお互いの心が離れて行き、お金のためなのか、復讐のためなのか、心の隙間を埋めるためなのか、全てが分からなくなっていく。
破滅型のシナリオで、救われない気持ちになったが、貫也が子供の罪を自分が被るシーンは、やっぱり悪くなり切れない彼のキャラと、どこかこの泥沼から逃げ出したい感情を描いていたように思う。
物語はゆっくりと流れていき、盛り上がりも少ないので、正直後半は退屈だった。私自身は好きな映画ではないが、こういう描写が好きな人がいるのはわかる作品だった。
こういうダメな男はけっこういる
男ばかりではないが、ここに登場した人物は結構いる。
特にリフティングをしている女の子はとても痛くて好きだった。
話は途中からテンションが下がってゆくが、この女の子のはとてもよかった。この子がその間のテンションをつないでくれた。
だから、ぼちぼちの作品。
夫婦の境界線
ターゲットを見つけシナリオを書くのは妻、妻のシナリオ通りに女たちの心の隙間につけ込み金を引き出すのは夫。最初は浮気した夫に対する腹いせ半分。しかし、妻はこの人には自分しかいない、という絶対的な自信があったはず。ところが、妻の不用意な発言から、夫婦の間の信頼が揺らぎだす…。
ストーリーも前提となる設定がまず巧みだし、相変わらず、この監督は仕草や目線といった言葉に頼らない感情表現が巧い。監督の要求に応える役者もいい。特に夫に騙される個性豊かな女たち(夫婦にとって“運命の女”となった鈴木砂羽も含めて)を演じた女優陣が素晴らしい。ただ、妻がマスターベーションするシーンやトイレで生理に気付くシーンは夫が別の女と寝ている状況で、夫婦生活がどうなってるかという遠回しな表現なんだろうが、これはもっと直接的でもよかったかも。
東京の下町の風景が柔らかく見える撮影はとても好みだった。
いいシーン、いい台詞、いい役者のオンパレード。
観終わったあとは、寝付けない映画です。
非常に映画的で、情熱的で、知的な、野心作であることに間違いはありません。
とりあえず、見て欲しい作品であります。
観終わったあとに、ああだこうだといつまでも頭から離れてくれないのは、やはり西川作品です・・・。
育児中なので映画館には行けなかったのですが、夫と一緒に見たかったので(笑)、夫婦で見ました。
(以下、少しネタバレ)
それを踏まえて、傑作になれなかった失敗作であったとも、言い換えられる作品でもあります。
『何が言いたいのか分からない』という感想が見受けられますが、それは、いいシーン、いい台詞、いい役者が多過ぎるに加えて、クライマックス(夫婦間であったり貫也と女たちとのシーンであったり)が幾度も差し込まれるので、どこに焦点を当てて観ればいいのか迷わせるのです。
脚本も監督自身が書かれているので、削れなかったのでしょうね。しかしこのテーマで、ほぼラストが想像つくにも関わらず、二時間以上引っ張るのはムリがあったように思います(『ゆれる』よりも20分弱長い)。
で、この映画では、なんだか色々なメッセージが語られちゃうのですが(それが鼻につくという人もいるでしょう。私も、カラッとブラックだった『蛇イチゴ』が好きだったなあ)、里子がモノローグのようにつぶやく「他人の人生に乗っかってると、卑怯な生き方になるよ」が西川監督の、映画を通じて女性に対するメッセージと受け取りました。
不倫、恋愛、結婚、人と同じように何かに乗っかってかないととやりきれないながらも、そんな中でもがく女性たちへのエール。
ただ、後半、ラストに向けて、夫婦関係の機微(詐欺を続けているうちに、2人の方が詐欺みたいな仮面夫婦になってしまった)という重く興味深いテーマと、↑のメッセージの持つフェミニズムが、里子という1人のキャラクターの中で平行して展開してしまったことで、里子の持つマグマのようなエネルギーが二分化してしまい、それに加えて貫也と女たちの一悶着やら子供までが絡み、ストーリーが破綻してしまったように思います。そしてラストを地に足を着けて働き始めた里子のまなざしに一気に収束させたのは・・・うーーん。それこそ役者に乗っかり過ぎに感じてしまいました。
(ロバートアルトマンなら、点でしかない女たちを線で繋げただろうし、スコセッシなら里子と対になるサブキャラを据えるとか、映画として構築しただろうな・・・別に彼らに倣うことはないんだけど、いいシーンのオンパレードだけでは映画にならないことを残念に思う。西川監督が大好きなだけに)
ちなみに私は、青空を番(つが)いの鳥が飛ぶのを眺めながら妻を想う貫也と、朝まだ人が夢を見ている時間に働き一人で生きることを選んだ里子、に、対照的なものを感じました。
夫婦は元に戻らないと思う。どうです?西川監督。
でっかい?が出ました
面白くありませんでした。
だけれども、見終わってから色々と思考を巡らすと、始めのそれとは違ってきます。
独特な視点の作品を作り続ける西川美和監督。コメディイメージの強い俳優を据えての最新作ということで、期待して鑑賞しました。
夫婦による結婚詐欺を主軸にした映画で、あまり良い印象は受けませんでした。
何しろ、主役二人が犯罪を犯す側ですから、どうあっても倫理的に誉められるわけがありません。
しかし、その行為はさておき、この映画の面白さは、どうやらその心内にあるようです。
物語が進むにつれ、登場人物の思惑が垣間見れるのですが、それは善意なのか悪意なのか?
愛情なのか憎悪なのか?
利己なのか利他なのか?
場面一つ一つにその両方が込められており、見る側としては混乱してしまいます。初見で面白くないと感じた理由もこの為です。
「人間は単純ではない。色々な面を持ち合わせている」と言われてしまえばそれまでですが、物語を提供するという意味で言えば、そのやり方は、どんな展開もアリになってしまうのでは…。
見ている私自身が、良心の呵責に耐えきれなくなりそうで、見終わった後は愕然としました。
しかし、時間を開けて熟考すると、初見とは違う側面も見えて来ました。「むしろ、単純なのにどちらにも転びきれない不安定な存在、それが人間」なのかと。
そして、物語後半に風俗嬢のくだりがあります。それがキーポイントに思えてきました。
もしそうだとしたら、相当意地悪な仕掛けです。(誉め言葉
私の思い込み過ぎでしょうか?
本意はどうなのかと、考えれば考えるほど混乱します。
でも、心に残る作品なのだから、やっぱり凄い映画です。
俳優の演技も素晴らしかったです。
阿部サダヲは、コメディ色を消して危うい夫を。
松たか子は、言葉少ない虚ろな妻を。
そして、脇を固める俳優陣の有り体は見事の一言です。
考えて考えて、唸りたい方にオススメです。
この夫婦は続くんだと
最後にカモメを見て、映画を観終わって、
『一生を同じくする』という決意のある夫婦の話なんだろうと
自分の中では結論が出ました。
夫から妻へ、裏切りもある。辛辣な言葉もある。
妻は夫に、執着があるのに、結婚詐欺をさせる。
結婚詐欺を繰り返し、
最後に子持ちの公務員と
関わっていったなかで。
火事という命の危機の中でも持ち出した、
板前の命ともいうべき包丁を
彼女の家に持っていく夫。
その家に忍び込み、
その包丁が雑に置かれているのを見た妻。
どんなにか心が乱れただろう。
階段を踏み外しもするだろう。
包丁は、2人の夢の象徴じゃないかと思う。
この夫婦の、危機といえばこの地点だった。
そして夫がした選択に、妻はフォークリフトを運転して
夫の出所を待つんだろう。
夫の選択は、結婚詐欺を続ける事への
ピリオドだったような気がする。
この2人、
憎んでも蔑んでも、相手がどうでも、
根っこでバカみたいに相手を愛しちゃってるのかもしれない。
結婚詐欺なんて、褒められた事じゃもちろん無い。
しかしするほうもされたほうも、
それでも生きていく。
ひとときの『夢』を確かに売ったのかもしれない。
前半をすっぱり端折りましたが、
全てのシーンに
意味があると思いました。
松たか子さんの、
全く揺らがない見る者を恐れさせる強い瞳に
惹きこまれました。
阿部サダヲさんは、夫の掴めない役所を
演じるのにピッタリな俳優だと思いました。
妻側の気持ちは、自分が女として
なんとなくわかるのですが、
夫側の気持ちが掴み切れなかった点が少し
残念でした。
結婚詐欺をはたらいているうちは、
相手を好きだという、自己暗示がかけられる
タイプだったのか。
純粋に好意を寄せている様子と、
見事に金を引っ張る様子が私の中では
一致せず、冒頭にあった
『嫁に操られている様に見せて
実は自分が操っている』という言葉どおり、
観客さえ踊らされた感じがします。
よくよく練られた、
面白い映画だと思いました。
ただ後味はあまりよくないかもしれません。
高麗屋の、お譲さんは、やはり、ただ者ではありませんでした。
松たか子さんと寺島しのぶさんは、どうしても比べられますが、たまたま、出演する作品が違うだけで、高麗屋さんのお譲さんとと音羽屋さんのお嬢さんとの実力の違いはないと感じました。
もう、公開して2か月くらいたっていると思いますが、有楽町の映画館は満席でした。
まず、脚本が秀逸。それこそ、冒頭の火事さえなければ、仲の良い夫婦が切り盛りして繁盛する小料理屋の話で終わるのでしょうが、極限まで追い詰めれた時には、奥さん(松たか子)=女性のほうが肝が据わるという、よく、有りがちな話ですが、それだけでは終わりません。
そこは、阿部サダヲ、松たか子の役者上手な登場人物。
一筋縄では行きません。最後まで、一気に、観ました。
「小さな幸せ」を守ることが、どれだけ、他人に迷惑を掛けて、涙を流し、血を流すかという、人間の業を見せつけられた作品でした。
高麗屋さん(松たか子)は、『告白』から、完全に、音羽屋さん(寺島しのぶ)に並んだと思います。
本作の続編は、ないでしょうが、北陸の港町で、つつましく、暮らしていく二人の将来を予想しながら、劇場を出ました。
今年の邦画の「当たり」のひとつです。
劇場迄行ったかいが有りました
欠点も穴もいっぱい。でも最高級のエンターテインメントです。吉川美和監督は凄い。ちっさい可憐な女の子みたいな監督がこんな人間の本性をえぐる深い闇を表現して行きます。好きな役者さんばかり‼吉川美和監督は伊丹十三監督を彷彿させますね。ひとつだけ注文を付けます。出だしからBGMにイライラ‼趣味悪く有りません?邪魔で邪魔でーーでも監督を信じてるから次回作楽しみです。
マスターベーション
この映画を一言で言えばマスターベーションかな。独りよがりと言うこと。
西川美和さんの脚本に大きな期待を持っていました。確かに惹かれる台詞もいくつかありましたが、言葉だけが一人歩きしているような印象を受けました。松さんが劇中で一人寂しく擦っているシーンにも象徴されるように、この映画はいろんな人の自己満足の映画と言えるのではないでしょうか。
悪夢と成長。
タイトルは夢売る~なんだけど、とても夢見られるような
内容じゃないし^^; これかなりの悪夢になりそうな感じ。
でも自営業を営んでるご夫婦なら、こんな苦労はおそらく、
(今のご時世)とうに越えてきましたよ、って感じですかね。
相変らず残酷な描写が巧い監督だな~と思うんだけど、
今回は夫婦を主役に持ってきて、初めて?女性の視点で
物語が描かれている。
よくこういう夫婦って見かける(存在する)と思うんだけど、
どれだけ寄り添っていようが、夫婦って他人なんだよね。
同じ夢を追っているようで、おそらくそれに対する価値観は
違っているし、お互いの想いとかけ離れているのは当然。
他人同士が肩寄せ合って、相手の欠点や弱点を補いながら、
こんなはずじゃなかったのにさ^^;でもまぁ、仕方ないよね。
なんて思いながら(騙し騙し)恋愛今昔を体感する結婚生活。
最大の局面は今回のように「危機」が訪れたことで、それを
どう受け止め対処するかの方向性がお互いにズレてたこと。
相手の「底」が見えてしまったにも拘らず、それでも諦めない
(この人はずっとこうしてきたんだろう)妻が、一世一代の
詐欺芝居(というより復讐)を夫に仕掛けたことが発端。
店が焼失したことで心身消失してしまったかのような夫が、
些細なあやまちで知り合いと一夜を共にしたことが許せない。
いや、許せないですよ。分かりますけどね、その気持ちは。
(でも本当に許せないのは自分自身の愛憎ね)
あまりに夫を愛する(やや偏執的な)妻は、その報いをどう夫に
受けさせようか、夫に見下され利用されている立場の自分を
高見に立たせ、双方を利用する立場に立ってしまったのだ…。
この妻、決して頭が悪いとは思えないんだけど、
計画的なように見えて感情で動いている(女性特有の)弱さが
絶対あとで命取りになるだろうなーと思ったら、案の定だった。
様々な女を騙したあと、まだ足りないと呟く妻に夫が言う一言。
これがまた大図星で衝撃的。
どれだけ騙してお金を巻き上げても、新しい店が持てようとも、
目的を見失ってしまった夫婦にはもう嬉しそうな顔は見えない。
それよりも日々の充実感を(他人を見ながら)求めてしまう。
入り浸った母子家庭に家族愛を感じ始めた夫に、妻は恐怖を覚え
ついには刃物まで握ってしまうのだが…。
見ていて悲しいのは、どうしてそれだけ愛している相手にまで
自分の気持ちに嘘をついてしまうのかというところだ。
妻は思ったはずだ。騙される女たちがなぜあんなに自ら進んで
夫にお金を差し出し、それも満面満足でいられるんだろうかと。
(違うのも一人いたけど^^;)
それは自分が夫にやってきたのと同じこと、でも夫はその女たち
よりも妻と「夢」を選んで帰ってくる。だからまだ大丈夫。騙せる。
こんな疲れる賭けに身を投じるのならいっそ、夫に
思いの丈をぶちまけてしまえばよかったのに。もっと早い段階で。
「アンタ、誰のおかげでここまで…!」って、言えるわけないか。
この妻はどれだけ夫に尽くし通してきたんだろうと思う。
借金に借金を抱え、店を持つために子供も作れず、やっとの
思いで夫婦の夢を叶えたと思ったら、あの火災だ。結婚してから
一日でも安息日があったんだろうかとさえ思える。
あるいは、こうなったら「意地でも」離れられなかったんだろうか。
自分も女だから分かる部分は多々あるが(しかもイヤな方向性で)
全くもって割り切れないのがこの時のこういう気持ちなんである。。
西川監督、ホントいい味出してるわ。
先日ある番組で嬉々として映画を語る監督に共感を覚えたばかり。
よっぽど映画が好きなんだろうな、が見えるお人柄^^;だった。
おそらく今回の松たか子への仕打ち(爆)あのリアルな下ネタ場面も、
監督が面白がってやらせたんだろうな~が、どうしても垣間見える。
で、観客は衝撃受けてるワケだからまずまずなんじゃないかと^^;
「ゆれる」では香川照之に脚上で万全の洗濯物たたみをやらせ、
「ディア・ドクター」ではカナブンを何十匹と取り揃えて撮影に挑む、
いや~松さん、あのシーン何回撮ったの?と聞きたくなる出来映え。
これだけ楽しんで映画製作する監督に対して、
いやです。できません。なんて言うわけないよね~あの二人ならば。
阿部サダヲの濡れ場も(初めて観たけど)けっこう頑張っていたしね。
観る方も演ずる方も、どっぷりと西川美和の世界に浸かっているのだ。
考えさせられる箇所は非常に多い作品だが、テーマはシンプル。
今は最悪、今後は最強のふたり(おフランスに負けず)になるでしょう。
(騙される女たちがこれまた秀逸。紀代とひとみには頭が下がるねぇ)
愛おしい作品☆
遅ればせながらやっと見ることが出来ました。^^;
一通り見て、ウチ帰って咀嚼して、やっと分かった部分がありました。
それは、どこに救いがあるのかなあ、、といういこうこと。
登場人物は、思えば皆、善人だらけです。 詐欺をする側の里子も貫也もある意味底抜けに善人。 だって詐欺でお金集めたあと、お店が成功したら倍返ししようねと、借用証書に感謝で手を合わせてるし、何といっても罪の意識がないですからね。。 それにちゃんと夢、売っています!
もちろん、どう考えても早晩捕まるに決まっている行為を繰り返しているあたり、いわゆる〝頭隠して尻隠さず″状態。 悪人、というより、相当愚かな人物たちでしょう。
愚か、ということで言えば、この映画に出てくる人々は、ほぼ例外なく皆愚か。 それは終盤に出てくる探偵さんや子供、さらにお父さんまで愚かです。
視聴者は、この救いがたい人々に対して〝俺はこんなことしないよ。″〝私はこんなバカじゃないわ。″とまずは拒絶反応を起こすでしょう。 しかし、必ずどこかで〝自分でもしているような愚かな行為″が散りばめられていて、視聴者は鏡を見せつけられるような心境になってきます。 おそらくそこが監督の狙い目。
飲んだくれて平気で人前で吐いてしまったり、オナニーしたり、暴力振るったり、お人好し過ぎて簡単に騙されてしまったり、自分の理想と真逆なことをして自己撞着起こしたりと・・・。
たぶん、みな、どこかで同じようなことやっています。
相手を想っていても、その相手が複数人いたらややこしいことになる。
人生、そんな単純なものじゃないし、良かれと思ってした行動が空振りどころか他人を傷付けてしまう結果を招くことだって往々にしてある・・。
そんな不可思議な宇宙に放り込まれた私達に一体救いはあるのだろうか?
そう考えると、やっぱり結論は一つしかありません。
それは、己の愚かさに気づくこと。
己の愚かさをいったん認めてあげること。
そこからしか次の人生、なかなか見えて来ません。
自分は愚かじゃないよ、と思いたいけど、つっぱりたいけど、愚かな自分に冷静になる方がちょっと楽になれるし、人に優しくなれるし、次に進める気がします。
さらに自分の愚かさにちゃんと思い至れば、この映画の登場人物全てが愛おしく感じられるし、映画館出たあとの全ての人々にも優しい眼差しを向けることが出来ます。
(相手の〝愚か″をなじってばかりだとストレスたまるでしょ?)
でも、後半になって貫也が里子に楯突くように発言する場面が二回ほどあります。私にはそこが最も重要なポイントに感じられました。
そこで初めてお互い正面から向き合ったのかもしれません。
里子は、自分の心をちゃんと見てくれる貫也に、内心喜びを感じたのだと思います。 喧嘩のようにしてやり合う言葉の応酬に、実は本音とともに真実の思いやりがあったように感じましたね。
あと、男同士で「お前にこいつを幸せにしてやれんのか?」と言われる風俗嬢は「誰に評価されなくても、自分で落とし前つけれる今の状態が一番幸せ。」と発言し、視聴者はハッとします。 暴力を振るわれ、お金を巻き上げられる可哀想な女はサイテーの人間だと、どこかで見下してしまっている〝自分″に気づくからです。 そして実は最もまっとうな考え方をしているんですよね・・。
この映画はですからとっても逆説的ながら、非常に温かみのある映画であり、表面的にはひねくれてはいても、実は監督さん最大限の〝人間賛歌″なのだということが了解出来ました。
うん、西川美和さん、すごくあったかいよ。。^^
松たか子さんの目!
阿部サダヲさんもそうですが、
松さんの目を見てるだけでもその時の心情、悲しさ、哀れさなどが
読み取れる「目」だったと思います。
旦那(阿部さん)に風呂場で問い詰めるシーンも
あえて口に出さないからかえって怖いですね。
その後から結婚詐欺の話に進んでいくのですが。
ギターの音色をBGMにところどころちりばめて、
火事でお店を焼かれるシーンから始まって
悲しさを増幅していまいした。
最後も松さんの「目」で終わってしまって
あいまいに(想像にお任せしますパターンで)終わってしまいましたが
やはり二人の好演が光っていたと思います。
ダブル主演みたいな感じですね。
全101件中、61~80件目を表示