アンダーカレントのレビュー・感想・評価
全128件中、21~40件目を表示
誰かのことを「わかる」ってどういうことか?
【古いアカウントで投稿していたので、削除して再投稿します】
映画館の予告編で見ただけなので、主演が誰か以外の予備知識ゼロで観ましたが、それが正解でした。(まぁ、これは全ての映画に言えることですが。)
と、言いながらこのような説明を加えるのもいかがなものか、ではありますが。
ネタバレとまでは言えないと思いますが、予備知識を一切入れたくない方は、以下、読み飛ばしてくださいね。
劇中の私立探偵のセリフ「他人をわかるってどういうことですか」がこの映画のテーマを完璧に表している。
映画の全シーンにわたって実にゆっくりとした「間」が取られているので、登場人物や物語を追いながらも、劇中の状況やセリフを自分自身や人生経験に当てはめて思いにふけるだけの時間がある。
主題の「問い」は物語のかなり序盤で示されますが、物語が進むにつれ、徐々に個々の人物像や取り巻く環境、過去の出来事が見えてくる中で、繰り返し、繰り返しその答えを問われる感じです。
最後には、自分自身でさえ自分のことを本当にわかっているのか、自分が"本心"だと思っていることさえ都合のいい"解釈"でしかないのでは、などと考えさせられます。
なお、他のレビューにもありましたが、私も終盤のじーさんが話す説明しすぎる、決めつけすぎるセリフは興ざめに感じました。(お前は誰やねん!という感じ。)
あれは必要ない、というか、映画全体の中であそこだけが不自然な感じがしました。
ま、個人的な”意見"をさも"事実"のように語る人間が現実にいるのも事実ではありますが。
少なくとも、この映画にはやはり必要ないシーンだと思います。
(原作にあったのかどうかは知りませんが。)
ちなみに、同じ日に見た2本の映画にリリーフランキーさんが出てきてコーヒーを淹れるシーンがあったのですが、妙なデジャヴを見ることになった不思議な1日でした。
かなえの幼馴染を殺した犯人があの人ならラストはゾッとする
2023年映画館鑑賞60作品目
10月22日(日)フォーラム仙台
スタンプ会員1500円
原作未読
監督と脚本は『愛がなんだ』『アイネクライネナハトムジーク』『mellow』『his』『街の上で』『あの頃。』『愛なのに』『猫は逃げた』『窓辺にて』『ちひろさん』の今泉力哉
脚本は他に『影裏』『愛がなんだ』『Arc アーク』『ちひろさん』の澤井香織
銭湯屋月の湯の共同経営者で婿養子の悟が組合の旅行中に失踪した
組合の紹介で堀が面接にやってきた
その日から働くことになった
アパートが見つかるまで同居することに
友人の菅野の紹介で失踪をした悟の調査を探偵の山﨑に依頼した
両親は子供の頃に交通事故で亡くなり兵庫県の施設で育ったと聞かされていた悟の過去は嘘
本当は最近まで両親は生きていて悟は山形出身
悟は子供の頃から嘘つき
嘘で塗り固めた人生だった
嘘に耐えきれずかなえの元から去り失踪したのだ
今泉監督の要求だろうけど真木よう子の芝居に不満がある
もう少し悲壮感がほしい
『ある男』の安藤サクラのような
客商売だから表向き明るく振る舞う必要があってもあれはない
真木よう子だって無名塾出身なんだからやればできる子のはず
今泉監督の意図がわからない
原作もあんな感じなんだろうか
カラオケ屋で重要報告したあとにオハコを熱唱する山崎とかなえのツーショットが面白い
悟も山﨑も含蓄のある発言をいくつかしてるのだが今となっては全く覚えていない
知的で弁が立つ男はちょくちょく女を言いくるめてしまうものだが女だって納得してるわけではない
ヒスを起こしてブチギレるのはクールな大人の女としてはみっともないという羞恥心のあらわれだろう
「なに言ってんの・・・」内心では怒りを通り越して呆れてるのかもしれない
田島の爺さんがまさかの名推理ぶりを発揮するわけだが詰めが甘かった
金田一耕助が毎回毎回やる「しまった!」みたいなものである
かなえが子供の頃に幼馴染だった女の子が殺された
堀の妹だ
かなえも現場にいて逃げた
殺した犯人はまだわかっていない
犯人はおそらく彼だろう
そうなるとラストがゾッとする
配役
銭湯屋月の湯を経営する関口かなえに真木よう子
銭湯組合の旅行中に失踪するかなえの夫の白石悟に永山瑛太
危険物取扱資格とボイラー技能士の資格を持つ月の湯の新従業員の堀隆之に井浦新
失踪した白石の調査をする探偵の山崎道夫にリリー・フランキー
かなえの大学時代の友人で康平というまだ赤ん坊の息子がいる菅野よう子に江口のりこ
堀の正体を見破った煙草屋の老人の田島三郎に康すおん
月の湯のお手伝いをしているオバさんの木島敏恵に中村久美
月の湯によく来るみゆという小学生の娘を持つシングルマザーの藤川美奈に内田理央
温泉組合の世話役に諏訪太朗
堀さんの涙
豊田徹也さんによる原作が大好きである
上流の肩の力が抜けた自然さ 穏やかさ 素朴な生活感
それらの下流に確かにある偽り 疑念 他人や自分への諦念
誰しもが持ち合わせ、コントロールしあぐねている心の波の断層を
静かに温かく それこそ映画のような美しさで切り込んだ一冊に 思春期の私は完全に陶酔し、瞼に映像を映しては余韻に浸りまくっていた
そのアンダーカレントが映画化、監督は今泉監督、音楽は細野晴臣という文句のつけようがない布陣が報じられ ドキドキしながら観に行ったが
期待を裏切らない143分でした
ふとした会話の合間合間にギリギリまで溜め込む間
全体的に寒色が強めな静かな色調
年季の入った銭湯兼自宅の美しい庭と調度品
再会と最後の会話に相応しい海辺のロケーション
台詞も概ね忠実で、とても原作の独特な空気感を大事にしつつ
あやとりや蛙でのシーンの繋ぎ方はとても上手だなと思った
そんな原作へのリスペクトが感じられる中、一番驚いたのが 堀さんの涙である
クールで無表情で飄々としていて
クールで(2回目)かっこいい堀さん
原作では涙なんて想像できなかった
映画での井浦新演じる堀さんは 終始どこか困り顔で 背負う哀愁がものすごい
(35.6歳設定にしてはキャストの年齢が少し高すぎないかな…と薄々感じながら観てました)
バスを見送った堀さんが一度目頭を抑えてから静かに歩き出す原作のラストがたまらなく好きなので
その終わり方を踏襲してくれるだろうと勝手に思い込んでいた自分は 家でかなえと食事をするシーンまで続いたことにかなり驚いた
けれど、本当はドジョウが苦手だけれど好きだと勘違いされ続けちゃって もう本当のこと言い出せないんだよね 、と笑うかなえを前に涙と隠していた真相を零す堀さんを観て
ああ これはこれで なんて綺麗な終わり方なんだろうと思った
これは個人の解釈だが、この作品のテーマは「人の多層性、人を分かるということの不確かさ」
そしてこんなにも好きな所以は、美しさもさることながら「悲しみや嘘、本音を下流にたたえながら 静かに 時に激しく流れ続ける今を生きていかなければならない市井の人々による日々の営みへの 作者の眼差しの優しさ」である
言葉にできない ありのままに表せない 本当が分からない「嘘」を
ドジョウのささやかな一件でさらりと表現し
かなえは笑い
堀さんは泣いた
そこには今泉監督による生活への優しい眼差しが見えて、この人が実写化をしてくれて良かったと思えたのだった
素晴らしいアンダーカレントをありがとうございました
(原作との比較雑感)
・湖で堀さんが石を投げるシーン
漫画で狂おしいほど好きなシーンなので、一瞬で終わって残念だった…あそここそたっぷり間を使って映像化してほしかった…!
・山崎さん
リリーフランキーが山崎さんすぎてとんでもなく良かった 自己紹介時の「釣りバカ日誌のハマちゃんと同じです」の言い方で最高のキャスティングだと痺れた
・下着を盗んだ少年を諌めるシーン
ここも堀さんがかっこよくて好きなので、なくて少し残念だった
でも連載作ではない1本の映画で、映画の堀さんの描き方では不要だったのかもしれない
・CharaのDuca
初見の時Ducaを知らなくて、後々聴いた時に カラオケでいきなり振るには難しすぎる!と笑った
どうしてこの曲を歌ったのか不思議だったので、映画にはなくて笑った
Charaを好きになったきっかけでした カラオケでは歌わないけどね
人をわかるって、何ですか
2日連続井浦新、ご馳走様です。
今泉力哉監督最新作。ようやく見ることが出来ました。久々のレイトショー、既にテンション爆上がりです。昨年公開の「窓辺にて」はこれまでの監督の作品と打って変わって、かなりビターで大人な渋い映画でしたが、本作もかなり落ち着いたトーンで、更に文学的で考えさせられる作品に仕上がっていました。
「死にたくなってことってありますか」
前日に、人生に詰んだ元アイドルは赤の他人のおっさんと住む選択をした(通称:つんドル)を見ていたため、この言葉にニヤリ。まさかの逆転してる!豹変した井浦新に驚くばかり。ここ1ヶ月で3回も出演作が見れるとは...贅沢です。真木よう子も、今までに見た事がないくらい表現力豊かで上手かったし、この作品の主人公としてこれ以上ない役者だったと思う。心に深い傷を抱えた人物を、2人とも見事に演じていました。
かなり行間が多く、文学的な色合いが強い作品であるため、この尺は中々に長い。緊張感の途切れない、静かで重いカット。そんな中で唯一の癒しがリリーフランキー。実際にこんな人が居たらくっそ腹立つだろうけど、画面越しだとめちゃくちゃ笑えちゃう笑 主人公が落ち込んでいる最中、更に追い詰めるかのように1人で熱唱。しかも歌う曲が...笑 原作の漫画でも、この"ヤマサキ"はリリーフランキーをモデルにして描かれたらしく、おかげで最高にハマっている。文句言う割には、自分言っちゃうんかい!
人間の醜いところや弱いところ、普段考えないような現実を、一切の綺麗事なしに映し出す、今泉力哉監督。彼の映画の主人公は、いつも寂しくて孤独。見ている人の等身大で、決して主人公ぽくない。本作は、最近の監督にしては珍しく、原作があり、かなり色の違う作品ではあるけれど、匂いはしっかりと今泉力哉。今を生きる人々に、疑問をなげかけてくれます。人は嘘をつく。嘘をついて生きている。それなのに、人を分かるって何なんだろう。
まるで水の中をさまよっているような、息苦しくて途方に暮れそうな世界。それなのに、何にも囚われていないような自由も同時に感じる。アンダーカレントというタイトル通りの作品で、文学的でありながら、自分の心にすごく刺さりました。旦那の気持ちを理解するのは難しいし、説明口調になって若干興ざめしてしまう場面もあったけど、監督のファンとしては今回もまた最高でした。いやぁ、にしてもすごいペースで撮るよね。無理をなさらず、たくさん世に映画を届けて欲しいです。
浮かび上がるもの
お見事。監督のテイストが如何なく発揮され、静かな中にも確かに感じる熱量が心地良い作品になっておりました。煙草をやめて暫く経ちますし全く吸いたくはならないのですが、とある縁側のシーンでは久々に「うまそうね♪」って思いました。そういう何気ないシーンが上手いんですよねぇ。そこにシビれる!あこがれるゥ!。…ゴホン、失礼。原作を知っていても楽しめるであろうことは間違いないのですが、知らないので観て頂きたい。未読(情報も遮断)の私は、後半の畳み掛けで色んな感情がないまぜになって、物凄く楽しめたので。
何の話か解らないまま観るべき映画
映画評を見てもどういう映画かよく解んないし、あまり期待してなかったんですが…
面白かった。そうか、だから何の話か書かれていなかったのか。
主題自体を説明すると、もうネタバレ。
とにかく、なぜ旦那は失踪したのか?
なぜ堀が風呂屋を手伝いに来たのか?
なぜ主人公が闇を抱えているのか?
すべてが同じ主題に集約していく。
無感情、よくわからない、淡緑のimage
「人を分かる」とは何か?
それをこの映画は投げかけようとしている。
その過程において、人の苦しみを知ること
は重要だろう。しかし答えはわからない。
映画の流れは単調である。しかし飽きない。
単調たらしめてるのは、私(鑑賞者)の心に
機微がなかったからだろう。映画を見て、
可笑しさも、感動も、苛立ちも、何も感情が
起こらなかった。だがそれで良い。
スクリーンを観ながら、耳を傾かせれば
言葉が自然と身体に沁みてくるようだ。
たばこ屋のおじいさんのあの語り口調は
監督の嗜好だろうか。この映画で唯一
苛立ちの予感を覚えたシーンであった。
原作通りの雰囲気
映画を観た様な読後感のある原作で、凄く好きな作品だっただけに、映画化を知った時、今更?とかあの雰囲気壊して欲しくないな、という不安を感じながらも、期待と喜びは隠せなかった。キャストも納得出来る配役(特に山崎探偵はたしかにコノヒト)なだけに、原作の持つ特徴的な雰囲気が損なわれて無かった。削られたエピソードもあったけど、原作ファンとしては納得出来るイイ映画だと感じた。
自分の中では大注目作品だっただけに、観客2人での上映は少し寂しかったな…。
いい湯だな‼️
ヒロインは夫に蒸発され、おばちゃんと一緒に銭湯を切り盛りする女性。そんな時一人の男が住み込みで働くことになったり、友人より紹介された探偵と一緒に夫を探したりするヒロインだったが・・・要はこの作品はトラウマの映画ではないかな⁉️ヒロインは幼い頃、仲の良かった友達と共に事件に巻き込まれ、友達を死なせてしまった事‼️夫は自分が嘘をつくことで、いろんな人を不幸にしてきた過去‼️住み込みの男はヒロインの死んだ友達の兄‼️それぞれがトラウマを受け止め、頑張ってトラウマと向き合っていこうという物語だと思います‼️終盤、ヒロインと夫との海辺での会話シーンや、ラスト、ヒロインの後ろを井浦さんが見守るように歩いていくシーンがホント素敵です‼️「パッチギ!」から18年、いつまでも魅力的な真木よう子さん‼️
嘘の本音
今泉監督久々の新作という事で鑑賞。遅めの上映だったので人入りは少なかったですがゆったり観れました。原作は未読です。
スローなテンポでの日常ドラマを見せるのかと思いきや、ミステリーの方向へと舵を切っていくという斬新なスタイルの作風に良い意味で振り回されました。
旦那が失踪したため一時期銭湯を休業していたかなえ、近所のおばちゃんと共になんとか営業再開したタイミングで堀さんという方が銭湯に働きに来て…といった感じのゆったりした作品です。
堀さんは寡黙で不思議な人ですが、仕事はしっかりしてくれるし、ご飯は一緒に食べてくれるし、休日でも用事があれば付き合ってくれる、互いに好意は無いにしても少しずつ信頼関係が生まれてくる様子の描き方が本当に上手いなと思いました。
構成自体は前半と後半でガラッと変わるのですが、大きな事件の描写がほぼ無いので怪しげな雰囲気を混ぜつつも根幹にある"嘘と本当"をテーマ的に貫き通していたのには好感を持てました。
失踪した旦那の失踪した理由がその場所にいられなくなった、嘘をつき過ぎて何が何だか分からなくなった、という共感できなさそうで、意外と引っ掛かるところがあるという不思議な共感の仕方ができました。思いっきり引っ叩いていい?と聞くシーンは笑えました。
堀さんがかなえの元にやってきた理由もなんとなくは分かっていましたが、かなえの友達が堀さんの妹で、仕事でふらっと寄った時にかなえが当時のあの子と1発で分かって、どこか罪滅ぼしのような事をしなきゃという使命感だったんだろうなと思いました。優しい人だからこそ忘れようとしても忘れられないというのがビシバシ伝わってきました。
兄だという事を明かしてからのシーンは多く映さず、犬の散歩をするかなえを後ろから見守るようについていく姿と共にタイトルを出して終わるというなんともオシャレな終わり方でした。物語に余韻も残していましたし、今泉監督らしさを再体験する事ができました。
役者陣も今泉組の面々から珍しい人選などなど様々な面で楽しむ事ができました。キチっとした役の多い真木よう子さんが少し抜けた感じな役割が好みでしたし、井浦さんの感情を表に出せない感じがプンプン伝わってくるのも好きですし、出番は多くないけれど存在感バッチリな江口のりこさん、胡散臭さの中にある優しさが沁みるリリー・フランキーさんと豪華な顔ぶれを贅沢に起用していて不思議な感覚に陥る事ができました。
ここ最近は原作準拠の作品が多いので、ここいらで今泉監督のオリジナル作品が見たいなと思っている今日この頃です。
鑑賞日 10/17
鑑賞時間 19:45〜22:15
座席 C-11
題目 "undercurrent" には意味が2つあること、物理と...
題目 "undercurrent" には意味が2つあること、物理と心理、心して観られました。
人にどう見られたいかで、自身を演じる言葉の量が増える人、
人の反応を気にして、ほとんど喋らない人、
対比が象徴的な。
場面の間の暗転の都度、観ているこちら側も、各自で考えることを促されているような。
考えが内省的になってゆき、
過去の傷口を次々思い出す、
それでも一筋の光はあったような、なかったような…
答えは無いと知りつつ。
考える貴重な機会、内心穏やかではない体験でした。
今回鑑賞したシネコン(イオンシネマ市川妙典 スクリーン1)、近隣で爆音上映中だったのでしょうか? 鑑賞中作品とは合わない、外部の衝撃音が、結構届いてきました。
ロングピース
あなた〜わた~し~の〜もと~から〜突然消えたりし~ないでね〜え〜映画🎵
イコライザー観る前に、何か観ようかなぁと探してたら、今泉監督作品があるではないか!
雨ニモマケズ レッツゴ~💨
いやホントよくできた映画
ミステリー仕立てなので飽きないし、曲者揃いの役者陣の魅力炸裂
井浦新の役は昭和で言ったら高倉健ですよ(真木よう子は倍賞千恵子ね)
瑛太はサ◯◯◯スやらせたら最高だし、真木よう子はいい年して独身男性⇠オレ~オレ~オレオレ~♪連盟の支持率爆上げっすよ!
人間というものは誰でも二面性がありナンチャラカンチャラ なんてレビューをみんな書いているのだろうが、オレハそんな小難しいことは書かない(リリー・フランキーにもヤマザキとヤマサキが…ミタイナ)
ただ一つ言いたいのは、今泉作品は鑑賞後アーダコーダ語りたい映画だってこと(数々のミスリードにことごとく引っ掛かったことも追記しておこう)
池と銭湯のあいだに。
酒の席とかでよく「人に言えない話とかある?」って嬉しそうに聞いてくる人がたまにいる。
人に言えない、言いたく無い話があったとしても
そもそも人に言えないんだから
言えない話があるか無いかの有無さえも言わないのである。だから無いと答えるのが普通である。
これが嘘である。
子供の頃自分がやってしまったことで周りの大人たちが慌て出し次第に状況が一変し、
自分では手に負えない状況に急転していく様子を冷静に見ていたことがあった。それを思い出した。
普通の子供なら親に怒られるのが怖いから罪悪感なく
嘘を言い張る。
嘘がバレたら親に怒られて「どうして嘘ついたの!?」「そんな子に育てた覚えは無い!」と
突き放されたものだ。子供は親に突き放されたら寂しくなって悲しくなって結局最後には
親に「ごめんなさい…」って泣いてわめいて謝った。
嘘はいつかバレてそして怒られる。だから嘘はついてはいけない。
いつの時代もそうやって教えられてきたはずである。
それでも嘘を突き通した。そして今まで生きてきた。
ある事件での体験がきっかけで。
それにしても真木よう子の顔は違和感があり作り物のようにいつも無表情な印象。
だが最後の真木よう子の表情の変化と目の演技は最高によかった。
ようやく目が覚めて人間らしさを取り戻したようだった。
かなえは堀に真実を話すのか?
それともこれからも隠し通して生きていくのか?
かなえの迷いが最後の二人の距離間で物語っているようだった。
空白を差し出されて。
これまでも、作品ごとに空白を描いて絶妙な世界観を見せてくれた今泉監督だけれど、
今作は歴代最高の絶品さだと思う。この空白は脚本の中だったり、カットのつながりの中だったりするのだけど、それが空白である以上、言葉では説明不能だ。言えるとしたら何かが在る事に匹敵するほどの空白の存在感とでも言おうか。当然そこでは何も起きてないし、何も行われてない状況だ。今回は日本が誇る手だれの俳優たちのコラボで尚更、シーン内で人物たちが創り出す空白が心地よい。今泉監督がどんなふうにこの空白を差し出しているかなかなか判りづらいと思うけど…1箇所、真木よう子と井浦新が他所の廃業銭湯にボイラーを見に来たシーンで、案内した年配の男性と3人でダメになったボイラーを見ながら呆然とするシーンがある。長い余韻のあとに男性のキャップが風に飛ぶのだけどよくそこまでカメラを回して、それを使ったなと感心する流れがある。本番でここまで回している創作の中に空白が生まれる余地があるのだろう。家路についても、翌朝になっても、この空白を埋める楽しみを与えてくれる。この空白を埋める創造力が備わってないと、なかなかこの作品を堪能するのは至難でしょう。
空白を差し出すという意味では、リリーフランキーさんの存在感も相変わらず素晴らしすぎた!
独特の世界観と、今泉ワールドの融合
今泉監督作品、『ちひろさん』に続き今年二本目。
最初のカットでなんとなく雰囲気がわかる。
なんだかわからないまま進むが、途中から事件が絡んできたり、過去や思いの開示がすぐに連れて、この作品のテーマがわかってくる。
原作があるからか、思ったよりはストレートに伝えてきたな、と印象。
水が重要な役割を果たしており、それをサポートする幻想的な音楽も世界観へ引き込む大事な要素になっていた。
今泉監督といえば、日常描写とクスリと笑うシーン。それもちゃんとしっかり入っていた。
ただ、真木よう子がどうしても、漫画の登場人物を演じているようで、「日常」感がいまいち感じられなかったのが正直なところ。複雑な役どころで難しかっただろうが、芯が強そうな女性という見た目しかハマるところがなかった。
作品の大半を彼女がしめるため、絵面的に惹かれなかったが、その違和感こそが狙いなのかもしれない。
脇を固める俳優陣はなかなか。井浦新ほ毎回似たような落ち着いていて秘密を抱えている役だけど、期待通りの演技。
リリーフランキーは一瞬で作る空気感、康すおんは初めて見たけど、役柄どおり、なかなか粋な演技で魅力的だった。
話の展開も面白かったが、誰しも思い当たる節があるテーマで、自分に当てはめて考えてみたくなる映画だった。
けど、漫画っぽさとわかりやすさは否めなかった。
2023年劇場鑑賞96本目
ギャグエピソード減でシリアス増
原作から、少しニヤリとしてしまうようなギャグエピソードの多くがカットされてしまっており、
それに伴いなのか、一部の登場人物の性格も変わっており、
全体的にシリアスが強調された雰囲気になっています。
堀さんは、終始、悲観的に寄り過ぎている表情、声のトーンと喋り方で、
原作を尊重するのであれば、もっとプラマイゼロというかニュートラル寄りのキャラクターにして欲しかったです。
あとラストは原作と異なる終わり方ですが、
堀さんが泣くシーンは余計かなと思いました。
また、過去のトラウマを思い出して寝込んだかなえが、
看病しに来た堀さんに対して、
自分の首を締めるようにお願いするシーンがありますが、
カメラアングルがずっと引きで撮られているせいで、
堀さんがかなえの首を締めるのでは!と、一瞬見せかける、
視聴者に対してミスリードさせるような演出が分かりづらくなっており、
非常にもったいないと感じました。
山崎も、原作よりもお笑い要素がかなり少なくなっており、
リリー・フランキーがリリー・フランキーを演じているという感じでした。
原作の、遊園地で山崎が風船を空に飛ばすくだりが個人的にかなり好きだったのですが、
違う演出になっており残念でした。
サブ爺も、原作ではチャランポランなダメ人間だからこそ、
最後に堀さんを見送るシーンが際立つのに、
ギャグエピソードがカットされてしまっているせいで、
サブ爺の人となりも掘り下げられず普通のおっちゃんになっており、
コントラストが全く無くなってしまっているのが残念です。
個人的には、原作のギャグとシリアスの絶妙なバランス
からのラストの切ないエンディングがかなり好きだったので、
総じてやや残念、なんだか物足りない、という感想です。
あくまで、原作とは別物として楽しむ事をオススメします。
旦那の失踪の何故?
今泉監督らしい、鑑賞側に問いかけてくるかのような人間ドラマ。
分かった気になっていても他人はおろか自分自身も本当にわかっているのか?
少なくともこの映画を通して改めて考えることになっただけでも意義がある。
ラストシーンはどういう風に解釈するのか?
厳しくも温かい空気が好きだった
今泉力哉監督 × 真木よう子さん
豊田徹也さんの長編コミックを実写映画化したとのこと。
厳しい話なのにこの温かさは一体?
自分のことがわからなくてもがき苦しむ。
他人のことなどわかるはずもなく。
しかし一縷の幸せが見え隠れするアイロニー。
間違いなく心地良かった。これまでの今泉作品と同様にずっと観ていたかった。
てか、今思うとこれまでの作品のほとんどが心地よいファンタジーだった.
真木よう子さん、今作で好きになりました。
細野さんの音楽も好きでした。
この作品が好きでした。
30台半ばのかなえ(真木よう子)は、しばらく休業していた銭湯「月乃...
30台半ばのかなえ(真木よう子)は、しばらく休業していた銭湯「月乃湯」を再開することにした。
休業していたのは、かなえの夫・悟が銭湯組合の慰安旅行先で、突然姿を消してしまったからだ。
叔母(中村久美)とふたりで再開したが、やはり女ふたりでの営業は厳しい。
そんなところへ、組合から紹介されたと堀と名乗る男性(井浦新)がやって来た。
無口な男であったが真面目そうでもあり、雇い入れることにした。
また、ある日のこと、かなえは大学時代の友人・よう子(江口のりこ)で出会い、旧交を懐かしんでいたのもつかの間、夫の失踪をよう子に告げ、彼女から私立探偵の山崎(リリー・フランキー)を紹介される。
得体のしれない山崎がかなえに持ってきた悟の報告者、かなえの知らないことだらけだった・・・
といった物語で、正体不明の夫・・・というと昨秋の『ある男』を思い出す。
「アンダーカレント」というのは、地下水流のことらしく、ひとそれぞれの隠された一面の暗喩。
ま、誰しも相手のことはよくわかっていると思いながらも知らないことが多かった、というのはしばしばあることで、山崎が初対面のかなえに対して「あなたはどれだけ悟さんのことを知っているというのですか」と問うが、山崎はその前にかなえから提示された写真を見て悟のことをあれやこれやと推察して、テキトーなことを告げている。
この場面が結構面白い。
ひと皆、相手のことは第一印象のバイアスがかかっていて、だいたいあやふやな印象を引きずったまま、相手を見てしまう。
その態で行くと、テキトーな第一印象を翻す山崎は、意外と人を見る目がある(この時点では、そんなことは微塵も感じさせないリリー・フランキーの演技が素晴らしい)。
さて、かなえの知らなかった悟という人物が立ち上がってくると同時に、無口でほとんで何も語らない堀の過去も立ち上がってくる。
いや、このふたりよりも大きく立ち上がってくるのは、かなえの過去。
トラウマのように何度も夢でみる、水底へ落ちていく自身の姿・・・
そこにあるもの・・・
と、この繰り返される水底のかなえの図は、これまでの今泉監督の撮ってきた画と印象が異なり、パッと観たときに、江戸川乱歩の小説の一部かと思ったほど。
江戸川乱歩的、というのはあながち間違いではなく、最終的に三者三様の心底のアンダーカレントが浮かび上がってくるからね。
ということで、映画の物語的には非常に興味深く観れたのだけれど、気になったところもいくつか。
本作では、フェードアウト&長めの黒味での場面転換が多様されているが、月が変わる際の表現としてはよいものの、同一日のうちなどでも用いられると、時制が混乱してしまう。
別の技法を用いる方がすっきりしていたのではないか。
もうひとつは、堀の過去が立ち上がる際のキーパーソンとなるタバコ屋の主人。
原作での扱いがどうかは知らないが、映画中では少々しゃべらせすぎ。
主人がしゃべることで、映画自体が持つ謎性のようなものが薄まった感じ。
「どうして戻って来たんだい」というのは拙く、「まぁ、戻ってきたんだね」と堀に寄り添う台詞を言った後は聞き役に徹する方がよかったかもしれない。
で、別れ際に「にいさんの沸かした湯はよかったよ」と言って去る、とか。
ただし、そうすると脚本がすこぶる難しくなるのだけれど。
このタバコ屋主人と堀のエピソードとクロスカットで描かれるのが、かなえと悟(永山瑛太)の対峙シーンだが、ここはふたりがうまく、納得。
特に、永山瑛太の繊細な演技が光る。
「きみのことが好きになったから一緒にいるのがつらくなった、と言えばいいのかな」という悟の台詞、「と言えばいいのかな」というところが、台詞としての重み。
人物像が立ち上がってきて、いいですね。
そのほか、いくつかのロケーションを組み合わせて、「月乃湯」のある架空の町を作り上げているのだけれど、下町なのか郊外の住宅街なのか、ちょっと印象がバラついた感じになっているのも気になったところ。
と、いくつか気になる点を挙げたけれど、個人的には好きな映画です。
全128件中、21~40件目を表示