アンダーカレントのレビュー・感想・評価
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役者陣の妙と独特の空気感で観る者を惹きつけるミステリー
人が一日の体の疲れや汗や汚れを洗い落とす銭湯という場所。ここで働く主人公の女性は、かつて蒸発した夫への「なぜ?」という思いを抱えたまま生きている。また、臨時で雇った従業員の男もここで働きたいのか理由を明かさぬまま、ただ寡黙に仕事に打ち込む。お互いに深くは語らないし、聞かない。だからこそ二人はどこか居心地がよく、互いにとって程良い温度の「お湯」のような存在になり得ていくのかもしれない。本作は彼らの関係性を軸に、常連客たちや同級生や私立探偵らが入り乱れ、飄々とした人間ドラマを奏でる。不在や記憶をめぐるミステリーも顔を覗かせるが、「なぜ?」を深追いしないところが本作の特徴か。主演の二人はセリフの少ない場面に言葉未満の「想い」がそこはかとなく漂う様子をナチュラルに作り出す。決して急がず焦らず醸成されゆくその空気が心地良い。不思議な透明感に吸い寄せられつつ、思いがけない感情へ誘われていく一作である。
人間再生の素晴らしさ
人は嘘をついてしまうことがあります。しかし、人はその嘘を明かさなければいけない時があるように思います。そしてその嘘を明かすことによって、人間は再生すると思っています。この映画は、人間再生がテーマの素晴らしい映画だと思いました。
真木よう子さんの演技は、情感にあふれていました。リリーフランキーさんの柔らかくユーモラスな演技が光っていました。カラオケボックスのシーンでは爆笑させられました。井浦さんが最後に自分のことを話してくれて嬉しかったです。サスペンスの要素もしっかり入っていますので謎が好きな方にもお薦めします。この映画を製作した今泉監督及びスタッフの方々に深く感謝申し上げます。
井浦さんが印象深かったです
見逃していた『アンダーカレント』がレンタルになっていたので鑑賞しました。
大変良くて映画館で観ればよかったと思いました。近くでは私の苦手な新宿バルト9でしかやっていなかったので、次からは別の街にも足を伸ばします。
バルト9…行きつけの美容院の人も嫌いだと言っていたっけ…何かあるな。
行間を味わう文学的な作品。人をわかるってどういうこと?
原作漫画は読んでいて、映画向きの話、と思っていましたが、原作と同様に行間から滲み出るものを掬うように味わう文学的な作品。個人的にはとても好みでした。
どういう話?と聞かれて、あらすじを説明しても主題が伝わる類の映画ではないのは確か。
人をわかるってどういうことですか?
これはとても深い問いで、私もすぐには答えられません。
また、わからないことはわからないし、わかることはそのうちわかる、それでいいんだと思います。
それにしてもリリーフランキーが最高です。カラオケのシーンはいま思い出しても笑えてきます。
井浦新もこういう役がハマりますね。
ちょっとひなびた銭湯や常連客の雰囲気がたまらなく懐かしく、どこかへ帰りたい気持ちになりました。
「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚
劇場鑑賞するかどうかの判断基準について、最も重要な要素と言って過言でないのが「監督」です。これは通を気取っているわけでなく、自分にとっての作品に対する好き嫌いが予想しやすく、特にご自身で脚本を書かれる監督ならなおさらです。そんな「見過ごすことができない」監督の一人が今泉力哉監督です。
ただ、候補にまで上がっていても、最終的に無視できないのが作品が掛かっている劇場と、その上映時間によっては気にはなっても諦めることがあります。また、年間100作品以上は劇場鑑賞する私にとって、やはりコストは無視できません。例えば、新宿バルト9は自宅からも職場からも距離があり、さらに安く鑑賞できる方法が基本平日のサービスデイとなると、結果的に「配信待ち」してしまう作品も少なくありません。そしてこの『アンダーカレント』もバルトか、、と思っていたら、今回角川シネマ有楽町で掛かると知り、喜び勇んで参戦です。
で、感想なのですが、、、正直まとまらないんですけど、うなりましたね。当然良い意味で。「なんか、すげーな」の一言です。
後半に明かされていく登場人物たちにまつわる謎は、観ている段階で「ひょっとしたら」と想像ができて特に意外性はありません。それはミステリーでありながら、流行りの「伏線回収」を狙ったようなものでなく、登場人物に自分を重ねつつ「でも、何で?」と理由を聞きたくなるような感覚。
人は他人のことを解らないばかりか、自分のとった言動に戸惑ったり、説明がつかなかったりすることがあるように、自分自身のことだって解ってはいないと気づくことがあります。今作『アンダーカレント』はまさにそういう部分の興味深さに、ついつい「あの場面って」と他の人の意見を聞いてでも、理由を確かめ合いたくなる作品な気がします。何なら正解なんて一択な結論はなく、観る人によって作品や登場人物に自分を重ねるからこそ、それぞれ解釈が異なるような複雑で面白いと思える構造に思わず感嘆するのです。
そして、そのストーリーをいつしか「リアリティー」と錯覚して見えてくる演出と、役者たちの演技がまた素晴らしいですね。それぞれのキャラクター性に明確な役割を感じ、この人しかありえないと思えるキャスティングの気持ちよさがあります。中でも、キーマンは「サブ爺(じい)」こと田島三郎を演じる康すおんさんですね。なお、私は今回も原作未読なので、もし原作ファンに異論があればご容赦いただきたいのですが、少なくとも、この映画の中ではいろんなものが「見えている」老人であり、若者たちの拠り所ととして聖職者のような存在感に観ているこちらも救われます。
さて、今まで敢えて聴かずにとっておいた某ラジオ番組の映画評論と、ネタバレありの番外編を楽しもうかな。そして、時間をおいてもう一度観て、その時々の見え方や想い方を比べて楽しむような「しゃぶりつくせる」旨味を感じる一作です。感嘆。
青色、水がずっと頭から離れない
美しいポスター、真木さんの表情 このポスターやチラシだけでも引き寄せられる さらに今泉監督となれば、緊張感を持って劇場に向かいました かなり以前の原作があって、それだけに皆さんの評価も様々でありましたが、現実的であってもなくても、このテーマは常に私たちにはあります 最も近くてわかっているはずの夫婦が実は最も遠くてわからない関係・存在であることに気づいてしまうこと、知りたくない気づきたくなかった「事実」
に直面すること、こうしてスクリーンで観ると、改めて「真実に蓋をしている」観る者に突きつけられるものを感じます 井浦さんは常に安定、言葉が少なくてもその思いが感じられます 最初の日にあれだけ吠えていた犬が穏やかになるのも、犬にすら彼の思いが伝わっているかのような場面でありました ラストをどう解釈するか、「希望」を感じずには、祈りたい、願いたいと思いました 随所に出てくる「水」、彼女にとってしまい込んでいた記憶が呼び起こされたのも水、しかしこれからの生活も水に向き合っていかなくてはならない 井浦さんのバッグ、真木さんの鮮やかなお出かけ着は鮮やかな赤色でありましたが、アンダーカレントは青色そのものです (11月2日 イオンシネマ茨木にて鑑賞)
静かに流れてゆくもの。
とても淡々とした静かなストーリー。声を荒げそうな場面でも登場人物たちはそっと現状に向き合い、現実を受け入れてゆく。突然夫が失踪したかなえ。何故?どこへ?その気持ちを引きずりながら夫婦で経営していた銭湯をなんとか再開する。
そこへ働き手としてやって来た謎の男、堀。まるで湯船にお湯がはられるように時間が流れてゆく。堀の正体とは。かなえが封印した過去を巡るミスリードの要素もあり、大人の会話劇でもあり、実に今泉監督らしい時間の使い方だなと思いました。
正直真木よう子は作品によって波がある印象ですが、今作はとても良かったです。リリーフランキーのちょっと下品だけど的確な探偵も良い味出してました。夫の行動の真意がよく分からなくてその辺もう少し説明してほしかったです。
リリーさんは有能(役柄)
この間見た「福田村事件」の二人がまた同じ映画に出ている!と鑑賞。
「湯道」や「ブギウギ」などお風呂屋さんが舞台の映画・ドラマを今年はよく見る。スタイリッシュな感じなのかなとチラシなどのパッと見の印象で思っていたら。。
だいぶヘビーな思いを抱えた人たちの話だった。。だから心に蓋をしてしまったんだろうかと。真木よう子演じる主人公の過去はショックだった。
筋とあまり関係ないけど、リリーさんは歌上手い。そして、赤ちゃんが可愛かったわ。
誰かのことを「わかる」ってどういうことか?
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映画館の予告編で見ただけなので、主演が誰か以外の予備知識ゼロで観ましたが、それが正解でした。(まぁ、これは全ての映画に言えることですが。)
と、言いながらこのような説明を加えるのもいかがなものか、ではありますが。
ネタバレとまでは言えないと思いますが、予備知識を一切入れたくない方は、以下、読み飛ばしてくださいね。
劇中の私立探偵のセリフ「他人をわかるってどういうことですか」がこの映画のテーマを完璧に表している。
映画の全シーンにわたって実にゆっくりとした「間」が取られているので、登場人物や物語を追いながらも、劇中の状況やセリフを自分自身や人生経験に当てはめて思いにふけるだけの時間がある。
主題の「問い」は物語のかなり序盤で示されますが、物語が進むにつれ、徐々に個々の人物像や取り巻く環境、過去の出来事が見えてくる中で、繰り返し、繰り返しその答えを問われる感じです。
最後には、自分自身でさえ自分のことを本当にわかっているのか、自分が"本心"だと思っていることさえ都合のいい"解釈"でしかないのでは、などと考えさせられます。
なお、他のレビューにもありましたが、私も終盤のじーさんが話す説明しすぎる、決めつけすぎるセリフは興ざめに感じました。(お前は誰やねん!という感じ。)
あれは必要ない、というか、映画全体の中であそこだけが不自然な感じがしました。
ま、個人的な”意見"をさも"事実"のように語る人間が現実にいるのも事実ではありますが。
少なくとも、この映画にはやはり必要ないシーンだと思います。
(原作にあったのかどうかは知りませんが。)
ちなみに、同じ日に見た2本の映画にリリーフランキーさんが出てきてコーヒーを淹れるシーンがあったのですが、妙なデジャヴを見ることになった不思議な1日でした。
人をわかるって、何ですか
2日連続井浦新、ご馳走様です。
今泉力哉監督最新作。ようやく見ることが出来ました。久々のレイトショー、既にテンション爆上がりです。昨年公開の「窓辺にて」はこれまでの監督の作品と打って変わって、かなりビターで大人な渋い映画でしたが、本作もかなり落ち着いたトーンで、更に文学的で考えさせられる作品に仕上がっていました。
「死にたくなってことってありますか」
前日に、人生に詰んだ元アイドルは赤の他人のおっさんと住む選択をした(通称:つんドル)を見ていたため、この言葉にニヤリ。まさかの逆転してる!豹変した井浦新に驚くばかり。ここ1ヶ月で3回も出演作が見れるとは...贅沢です。真木よう子も、今までに見た事がないくらい表現力豊かで上手かったし、この作品の主人公としてこれ以上ない役者だったと思う。心に深い傷を抱えた人物を、2人とも見事に演じていました。
かなり行間が多く、文学的な色合いが強い作品であるため、この尺は中々に長い。緊張感の途切れない、静かで重いカット。そんな中で唯一の癒しがリリーフランキー。実際にこんな人が居たらくっそ腹立つだろうけど、画面越しだとめちゃくちゃ笑えちゃう笑 主人公が落ち込んでいる最中、更に追い詰めるかのように1人で熱唱。しかも歌う曲が...笑 原作の漫画でも、この"ヤマサキ"はリリーフランキーをモデルにして描かれたらしく、おかげで最高にハマっている。文句言う割には、自分言っちゃうんかい!
人間の醜いところや弱いところ、普段考えないような現実を、一切の綺麗事なしに映し出す、今泉力哉監督。彼の映画の主人公は、いつも寂しくて孤独。見ている人の等身大で、決して主人公ぽくない。本作は、最近の監督にしては珍しく、原作があり、かなり色の違う作品ではあるけれど、匂いはしっかりと今泉力哉。今を生きる人々に、疑問をなげかけてくれます。人は嘘をつく。嘘をついて生きている。それなのに、人を分かるって何なんだろう。
まるで水の中をさまよっているような、息苦しくて途方に暮れそうな世界。それなのに、何にも囚われていないような自由も同時に感じる。アンダーカレントというタイトル通りの作品で、文学的でありながら、自分の心にすごく刺さりました。旦那の気持ちを理解するのは難しいし、説明口調になって若干興ざめしてしまう場面もあったけど、監督のファンとしては今回もまた最高でした。いやぁ、にしてもすごいペースで撮るよね。無理をなさらず、たくさん世に映画を届けて欲しいです。
浮かび上がるもの
お見事。監督のテイストが如何なく発揮され、静かな中にも確かに感じる熱量が心地良い作品になっておりました。煙草をやめて暫く経ちますし全く吸いたくはならないのですが、とある縁側のシーンでは久々に「うまそうね♪」って思いました。そういう何気ないシーンが上手いんですよねぇ。そこにシビれる!あこがれるゥ!。…ゴホン、失礼。原作を知っていても楽しめるであろうことは間違いないのですが、知らないので観て頂きたい。未読(情報も遮断)の私は、後半の畳み掛けで色んな感情がないまぜになって、物凄く楽しめたので。
何の話か解らないまま観るべき映画
映画評を見てもどういう映画かよく解んないし、あまり期待してなかったんですが…
面白かった。そうか、だから何の話か書かれていなかったのか。
主題自体を説明すると、もうネタバレ。
とにかく、なぜ旦那は失踪したのか?
なぜ堀が風呂屋を手伝いに来たのか?
なぜ主人公が闇を抱えているのか?
すべてが同じ主題に集約していく。
無感情、よくわからない、淡緑のimage
「人を分かる」とは何か?
それをこの映画は投げかけようとしている。
その過程において、人の苦しみを知ること
は重要だろう。しかし答えはわからない。
映画の流れは単調である。しかし飽きない。
単調たらしめてるのは、私(鑑賞者)の心に
機微がなかったからだろう。映画を見て、
可笑しさも、感動も、苛立ちも、何も感情が
起こらなかった。だがそれで良い。
スクリーンを観ながら、耳を傾かせれば
言葉が自然と身体に沁みてくるようだ。
たばこ屋のおじいさんのあの語り口調は
監督の嗜好だろうか。この映画で唯一
苛立ちの予感を覚えたシーンであった。
原作通りの雰囲気
映画を観た様な読後感のある原作で、凄く好きな作品だっただけに、映画化を知った時、今更?とかあの雰囲気壊して欲しくないな、という不安を感じながらも、期待と喜びは隠せなかった。キャストも納得出来る配役(特に山崎探偵はたしかにコノヒト)なだけに、原作の持つ特徴的な雰囲気が損なわれて無かった。削られたエピソードもあったけど、原作ファンとしては納得出来るイイ映画だと感じた。
自分の中では大注目作品だっただけに、観客2人での上映は少し寂しかったな…。
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