アルゴのレビュー・感想・評価
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アメリカ映画なので普通はアメリカの人を応援するけど、この映画ではなんとなくイランの人を応援したくなりました。
米国のアカデミー賞は、昔は信用していたけれど、今はほとんど信用していない。
結局、仲間内の利害関係や、誰が好きか嫌いかレベルの人気投票の結果出てくるもので、純粋に選ぶものではないような気がする。
でも本作は面白かった。こういう社会派のエンタメ系の作品は大好きです。
映画後半の脱出劇は、ハラハラドキドキで、緊張感がすごかった。
本作を見ていたら、パニック映画の「ブラック・ホーク・ダウン」(ソマリアで、米軍の攻撃用ヘリが、敵地のど真ん中で墜落する話)を思いだした。
「ブラック・ホーク・ダウン」では米軍を応援していたけれど、本作はなんとなくイランの人を応援したくなった。
時代が違うけれど、イランの人はえらいと思う。
肝が据わっている。
北朝鮮や中国が米国に対抗しているのは、現体制を守りたいからだけれども、当時のイランの人は違うような気がする。
組織化されたテロリストが、自分の主張、あるいは金のためにやっているわけでもなく、純粋に米国を憎んでいる感じがする。
でなければ、デモの延長で、米国大使館を乗っ取れる訳がない。
他の国ならいざ知らず、米国大使館。
時代が違うので、当時のソ連とのパワーバランスとかいろいろあるだろうけど、普通だったら海兵隊の特殊部隊とか、ネイビーシールズとかが出てきて、皆殺しにされるところ。
悪くすれば、米国が国ごと攻め込んできて侵略される。
米国に常に土下座で、「何卒よろしくお願いします。」と言うしかない国の国民にとっては、よくやったとしか言いようがない。
日本でも、入ったことはないけれど、アメリカ大使館は最も警戒の厳しいところで、周りに日本の警察官が大量にいるし、不法侵入でもしようものなら、問答無用で瞬殺されそうな雰囲気がある。
右翼や左翼の人が、アメリカ大使館の前で抗議しているのも、見たことがない。
ちなみに中国大使館は、なぜか入ったことがあるけど、意外なくらいフレンドリーでびっくりしました。
「アメリカとCIAは世界最大のテロリストだ。」という本作のイランの人のセリフは名言だと思う。
「しくじれば、我々は死ぬんだぞ」「彼も死ぬわ」
映画「アルゴ」(ARGO)(ベン・アフレック監督)から。
イランの革命で、アメリカ大使館から脱出したアメリカ人が
カナダ大使の自宅で身を潜め、出国の機会を狙っているが、
見つかれば当然殺される、そんな現状の中で決行された、
人質救出作戦である。
当初、いろいろな案が提案されるがどれも現実的ではなく、
残ったのは、カナダの映画撮影スタッフに扮して出国する計画。
作品のタイトル「ARGO」も、ニセ脚本の1つ。
他にも「我らの家」「監視」「よき人生」「鎮魂歌」など。
「ARGO」とは、辞書によると「ギリシャ神話」の一部、
「アルゴー船」のことを指すようだ。
(JasonがArgonautsを率いてこの船で遠征し、
金の羊毛(Golden Fleece)を獲得した)とある。
何か、この事件解決を匂わせるような単語だなぁ。
(完全な読み違いの可能性もあるけれど・・(汗))
選んだ一言は、助けに来た主人公が、人質たちに呟く。
「この作戦を絶対成功させる、僕を信じて欲しい」と。
しかし、失敗の可能性が高く、死の恐怖が襲う。
「しくじれば、我々は死ぬんだぞ」と消極的な意見もわかる。
それを納得させたのは「彼も死ぬわ」という女性の台詞。
彼は、自分の命を捨ててまで、私たちを救いにきてくれた。
本気になって「他人の命」を守ろうとしてくれているのよ、
私たちこそ、彼の勇気に感謝し、信じましょう、
そんな気持ちが伝わってきた。
これが実話だというのだから妙に説得力がある台詞である。
P.S.
クリントン大統領がアルゴ作戦の機密扱いを解除
期待して正解だった!
作品賞おめでとうございます
いや、ベンアフレックはすんばらしい。
ARGO、最初は期待ほどではないかなと思ったけれど、どんどんスケールに合ったスクリーンタッチになっていった。穽陥を突こうというARGO作戦の緊迫の決行を緩急で繋ぐ、つまり静謐さを持って描くことで臨場感を増している。ベンの監督の手腕に拍手だ。
だからこそ、監督賞にノミネートすらされなかったのが残念です。
アカデミー賞授賞式での司会、セスマクファーレンのジョーク
「あまりに秘密裏に制作が進められたために監督の名前がわからなかった」
というのには失笑
いろいろなレビューを読ませてもらいましたが、難しい。当然イランが悪、アメリカが善といった描き方になってしまうでしょうね。脚本は凄く面白いんですが。モティーフ自体が映画にするには最高のものだとは思うんですが。中立で描くのが難しい。
それに関して思ったことなんですが、偏見のあるような、ごく一般にこうだ、と決めつけられたように演じられる中東兵をもっとリアリスティックに演じさせれば傾米の風潮を少しは消せたのではないかなと。
まあ、なににせよ
ARGO,fuck yourself!
俳優としてだけでなく監督としても魅了してくれるのは素晴らしい
秀逸な作品 映画のような実話とはこのこと
こんな想像もできない作戦を人命と巨額の資金をかけ、実際に決行したとはなんとも、すごいの一言 当時の本人らは到底自分にはわからない不安と緊張と恐怖の毎日を過ごして、こんなふざけた救出作戦を持ちかけられさらに動揺と不安感が増しただろう 6人の命を託されましてや自分の命も賭けて、丸腰で突拍子もない安全も確定されていない作戦を頼りに敵地に乗り込む 想像しても想像もできない思いで過ごしたことだと思う この事実を映画化したことは国家間の親交や、当事者たちの名誉のためにも素晴らしい
若干の着色や映画的表現はあるだろうが、すごく事実に忠実に作りこまれているのが良く分かる それでも飽きさせない作品に仕上がっているのは素晴らしく秀逸な作品だと思う
ソダーバーグ好きなんだろうな
良いシナリオだっただけに進行にもたつきがあったのが残念。
ソダーバーグ的なアプローチが多数あり、好きなんだろうなぁって思ったが、いっそのこと招き入れたら良かったのに。
史実に忠実に作るかエンターテイメントよりに作るか迷ったとこだろうが、
史実に忠実に作るを優先した映画だと思う。
レッドフォードのスパイゲームのようなスリリング感かつどんでん返し的な演出が個人的にはもうちょっとあったら良かったのになぁて思ってしまいました。
撮影は良かったです。
秀作ですね。
アカデミー賞おめでとうございます。 ベン・アフレック監督
予告編を見て、これは!と思って最新作で見ました。
1月のアルジェリア人質事件もあってとても興味がありました。
デモを起こした一般市民が暴徒化してアメリカ大使館に人が雪崩れこむところから話が展開していきます。
特典映像で脱出した6人とCIAのトニーと人質救出作戦に関わった人の当時の話を聞く事ができて、作品の面白さが倍増しました。
劇中の場面と、当時の写真の画がシンクロしていたのも面白いです。
他のコメントを読んで同意なのが、どうしてもアメリカが善でイランが悪という偏った描き方なのが残念です。
もう少し、中立的な立場で描く事ができればリアルに出来上がったのではと思います。
やっぱり、脚色が大袈裟すぎるとやっぱりフィクションだなぁと萎える所がありました。
優れた映画作品
事実に基づくドラマであるだけでなく、他の方も書かれているとおり、映画人へのオマージュでもあるという面白い作品。
サスペンスとしてもよくできていて、オスカーを獲得したのも頷ける素晴らしい作品でした。
ただし、イラン兵の描き方などにステレオタイプ的な部分もあって、本作品の受賞にイスラム世界から抗議の声が上がったのも理解できます。
その点は、政治的&宗教的な観点を離れて楽しむ映画だと割り切ったほうがよさそうです。
ARGO fuck yourself!
実話ベースで外連味は無く確りした、アカデミー賞好みな作品というと穿ち過ぎか。緊迫感の緩急で繋ぐ手腕はお見事。ただやっぱり地味なため中弛みで、途中やや眠くなる人も居るかも知れない。僕の事だ。
本当にあった話なんですね
見たかったが私の街では上映されなかった。アカデミー賞受賞で上映される事になり見てきました。確かに始まりの画面からお金を使っていないのかB級映画の様に見えました。ところが、段々に物語に引き込まれていき、最後は計画中止になりそうなところをベン演じるCIAのエイージエントが初志貫徹でホワイトハウスを動かし、危機を乗り切りながら脱出させる場面は手に汗をにぎる勢いで素晴らしかった。本当にあった事件だが諸事情から数年後に明らかにされた事に驚きを感じた。アメリカはそういう国なのですね。とにかくこの映画を製作した人たちに拍手を贈りたい。
アルゴ クソ食らえ
祝!本年度アカデミー賞作品賞受賞!
昨年10月の公開時は僕の住んでる町では上映されなかったのだが、有り難いリバイバル上映でようやく見る事が出来た。間もなくレンタルもされるが、そんな事は関係ない。劇場で見たかったのである。
イランのアメリカ大使館員を国外へ脱出させるCIAの奇想天外な作戦。
映画に打って付けのユニークな話だが、これが史実なのは周知の事実。
まさに、事実は小説より奇なり、だ。
確かにこの映画は面白い!別にアカデミー賞を受賞したから言ってる訳ではなく、純粋にそう思えた。
冒頭からグイグイ引き込み、緊張感は失速する事なく、最高のカタルシスへ。特に終盤の空港におけるハラハラドキドキは映画を見る醍醐味に溢れる。
当時のイランの時代背景は複雑だが、冒頭で簡潔に説明し、後はすんなり作品世界に入って行ける。
CIAの活躍はアメリカの正義だけを訴えているのかと思うと、作戦の背景にはアメリカとカナダの協力があり、また、イランの治安の悪化はアメリカの罪である事も忘れずに描き、アメリカの独り善がりの正義ではない点にも好感。
所々挿入される映画ネタやハリウッドへの皮肉や風刺にニヤリ。毒舌映画プロデューサー役のアラン・アーキンと「猿の惑星」で知られる特殊メイクの第一人者ジョン・チェンバース役のジョン・グッドマンのやり取りは、張り詰めた緊張感を一瞬和らげ、メリハリを利かせる。
そして、人命を救う作戦が映画である事が、何より素晴らしい映画讃歌。
エンターテイメント性、社会派メッセージ、映画愛…それらを見事にまとめ上げたベン・アフレック監督の手腕は“賞”に値する。
受賞式で司会のセス・マクファーレンも言っていたが、作戦が極秘だったからアカデミー会員は監督名を知らなかっただけなのだろう、きっと(笑)
面白さは近年のアカデミー賞作品賞受賞作の中では最上。
何はともあれ、アカデミー賞おめでとう、ベン!
次は是非、作品賞・監督賞をW受賞を!
地獄の真ん中で課せられた一世一代のドッキリ大作戦
先週の『ゼロ・ダーク・サーティ』に続き、アメリカとアラブとの厄介なトラブル収拾に右往左往する災難を描いた実話を観賞する流れとなったが、印象も世界観も面白さも全て真逆の迫力に終始、呑み込まれていった。
ソ連のアフガン侵攻問題と共に、アラブ諸国に反米感情を根付かせる根本を生んだ事件のため、やり取りが常に痛々しい。
当時のニュース資料を素材に綿密に再現した映像美のざらついた質感が、服装、時代性etc.全てにおいて、ギャップを感じさせず、展開にリアリズムを一致させる。
そして、緊張の波が押し寄せてくるにもかかわらず、つい笑いそうになってしまう油断こそ今作最大の魅力を形成している。
それは、アメリカ職員という身分を隠すべく、ロケハン中のカナダのB級SF映画製作スタッフやとデッチ上げるという奇想天外なプランに尽きると思う。
欺き通すために用意周到かつ、破れかぶれに仕組まれた計画に映画を選ぶ価値観は、如何にもアメリカらしく、身分や国籍なぞお構いなしに皮肉たっぷりな毒で丸め込む開き直り精神もアメリカらしさが光る。
殺気めいた空気が充満している中、スケールの大きいドッキリ感覚で進むトンデモない格差が、窮地に追い込まれた人間の業を浮き彫りにし、牽引力のエンジンと化すのだ。
事前の情報で作戦が成功したのを承知なのに、常に先の読めない緊迫感に襲われたのは、周りのありとあらゆるイラン国民が敵か味方なのかはおろか、何を考えているのかサッパリ解らないからやと思う。
人種に対する偏見以外の何物でもない不気味なオーラは、イラン・イラク戦争、湾岸戦争etc.衝突する度に誇大化し、9・11で大爆発を生じる。
崩壊し複雑化を辿る影を象徴したのが、『ゼロ・ダーク・サーティ』
その闇の原点に位置するのが今作
2本を照らし合わせて観ると、アメリカを取り巻く渦の深さを伺い知る事ができると思う。
では最後に短歌を一首
『星の灰 フィルムを巻いて 二枚舌 ロケに追われし 客の帰路かな』
by全竜
工作員はギラギラしていない
実際にあった人質解放劇。結果はわかっているのに、息の詰まるような緊迫感、面白かったです。
全部が当時の記録映像のような、時代感のある映像がいい。
華やかな世界にそっと混ぜこまれた極秘作戦、そこまでやるか?のハリウッドとの繋がりにワクワクします。
立案者トニー・メンデス、最初はちょっと違うなんて思ってたけど納得。工作員は気配を隠しギラギラしてないもの、終始冷静で温厚に演じるベン・アフレックが良かったです。
リミットまでのカウントダウンのように描かれる、過激派集団の米国人探査活動。予告編の細かい縦線の書類の意味がよくわかった、情報に迫ってゆく過程にも二転三転する脱出劇にもドキドキでした。
時代を忠実に再現した佳作。「ミュンヘン」と合わせてどうぞ
飛行機の機内で見ました。アカデミー賞関係で話題になってる作品なので、期待しつつ。
映画全体の雰囲気としては、以前スピルバーグが撮った「ミュンヘン」に近く、70年代、革命後のイランで起こったアメリカ大使館人質事件と、それに対するCIAの動きをていねいに描いています。リアルタイムで認識していた事件ではないので、事件の背景もよく知りませんでしたが、一通りの解説がしっかりされているので、時代背景がわからなくてもちゃんと理解できます。しかし、まさかこんな作戦が実行されていたとは驚きました。
映画の雰囲気も70年代の実写そのままといった雰囲気で作られており、非常におもしろかったです。最後の逃亡劇は本当にハラハラで、あそこまでではないにしても、相当な緊張感だったことは想定できます。主役のベン・アフレックの役柄もよく、娯楽作としても十分楽しめると思います。
ただ、個人的には「ミュンヘン」のほうが好きだったなあということもあり、やや辛めの点数としました。
上司がやんちゃな部下をかわいい、という健気さ満開の映画
他人のゲームを横で見てて、プレイヤーの息遣いをよそに、
「ああ、ねむ~~」
そんな経験あるだろう。そんな映画。
他人のゲームに「ガンバレ~」って応援できる人は楽しめる。
映画の中の登場人物は危機迫る状況。作り手ベンアフレックも映画愛を振りまくのに必死。
アカデミーや映画ファンがコレを評価する気持ちはなんとなくわかる。
「ベン、映画好きじゃのう、ええやつよのう。」
上司がやんちゃな部下をかわいい、という健気さ満開の映画。
しかしオレは違う。
例え状況説明や映画愛を振りまかれても、ちっともドラマが無いので、登場人物は極めてステレオタイプにしか見えないし、アフレック監督はきっと「ミッドナイト・エクスプレス」や「遠い夜明け」のような過去の傑作へのリスペクトもあるだろうが、そのサスペンス性のみにリスペクトしているようにも思える。
実際、劇場満員(広島1月19日)の期待感バリバリの中、主人公がイランに乗り込むまでであちこちでグースカといびきが。
これは史実を丁寧に、とか、、意図的に起伏を抑えたと言うより、後半の破天荒な展開を描けているのに反し、ただだらだら作戦を説明しているだけに過ぎないからだ。
まあ、これはよかろう。
もっとも気に入らないのは、前日の急遽の作戦中止に対する主人公の決断がまるで描けていない点と、最大の緊迫シーンでこれまで作戦に否定的だった人物が窮地を切り抜ける働きをする伏線が描けていない点。
これでは、後半のサスペンスなど他人のゲームだ。
前半の劇場内を包むいびきと後半の観客の置いてけぼり感がハンパない。
けっこう貴重な体験をしたよ。
上映時間2時間ときいて、その中身のバランスが極端に悪いことばかりがめだち、描くべきものが描かれておらず、ラストのマンガのような展開だけが浮いて見える。むしろもっと上映時間を長くしたほうが救われたかもしれない。
そうしなかった点も上司としては
「興行のこと考えてるぅ(ハート)」
って、思えてかわいいのだろうか?
ベンさんのスイーツなオトコ映画愛の「ザ・タウン」のほうがまだ面白かった。
「スカイフォール」がオスカー候補になるかも、と聞いたとき、なにかの冗談かと思ったが、別の冗談が現実になり、ちょっと笑った。さすがに獲ることはないようだが、ノミニーはベンさんへの期待、ということだろう。
70年代B級映画風味の傑作
やっと観れた。何とも70年代のB級映画の匂いをぷんぷんさせる映画だった。実際に70年代に作られてるなら知る人ぞ知る傑作、というところになるんだろうけども、実際お金を賭けて時代を再現し、結果、大ヒットという訳ではなく、そのような結果になったみたいなので、なんだか個人趣味のエンターテイメントみたいで凄い。
実際、もっといろんなものを盛り込もうと思えばできそうだけど、見事脱出しか描いてない。予告編で観るよりも、実に単純なつくりで、でも、あれだけハラハラしたのは最近あまりなかったな。しかしまあ、こういう映画がベン・アフレックでなかったらどのような公開のされ方だったんだろう、という意味でも、現代の映画らしい映画は俳優からしか生み出せない気がする。がんばれ。
ベンアフレックが良い
イランは、紀元前から誇り高いオリエントの大帝国だった。
1979年のイスラム革命によって 宗教上の指導者、ホメイニ師が国の最高権力を握り、イスラム共和国を樹立、真のイランの誇りを取り戻した。
それまでのバフラビ政権は、米国の傀儡政権だった。
イランは、石油ではOPEC第2位の石油産出国、天然ガスもロシアに続いて世界第2位の埋蔵量を持つ。英国も米国も、イランという宝の山を確保しようと イランに介入し続けてきた。この1979年イラン革命で、イラン政府は、米国のパペットだった逃亡中のバフラビ皇帝の身柄引渡しを要求したが、当時のカーター米大統領は拒否、イランに対して在米資産を接収し、国交断絶、経済制裁を実施した。その結果、怒ったイラン国民と新政府によって、反米をスローガンに大規模な反米デモストレーションが各地で起きた。怒り暴徒化した市民は、テヘランのアメリカ大使館を占拠して、52人のアメリカ人の外交官を人質にとる。
このとき、ドサクサの中で6人の職員が大使館を脱出し、カナダ大使公邸に逃げ込み保護される。
映画「アルゴ」は、ここから始まる。この出来事について米国側に正義はない。イラン政権による米国大使館占拠は、米国の利益のためにイランという国を蹂躙してきた米国の国策による結果のひとつにすぎない。そして犠牲者はいつも国からきり捨てられた 無力で一介の市民だ。
ストーリーは
カナダ大使公邸の地下に匿われた6人のアメリカ人大使館職員は、高まる反米の社会状況の中で、外に出る事も、封鎖された空港から脱出する事もできない。すべてのアメリカ人は、スパイとみなされている。イラン革命の象徴のように、街頭には処刑されたアメリカ人が、クレーンで吊るされている。空港ではアメリカで教育を受けたイラン人がチェックをして アメリカンアクセントをもつ外国人はすべて捕らえられている。
CIA工作本部技術部のトニー メンデスは、6人の大使館職員をカナダ大使公邸から脱出させるための策を考える。「アルゴ」という架空のSF映画を撮影することにして、映画監督としてイランに入国、首尾良く6人と合流し、全員を、イランから脱出させた。CIAの秘密工作だったので、事実は公表されずにいたという。これを映画化したも
ベン アフレックが監督、主演している。
この映画では、ベン アフレック以外に目立った役者は居ない。美男美女も出て来ない。名前を出しても 誰が誰かわからないから、出演キャストは省く。
ベン アフレックは40歳。バークレー生まれで、ハーバート大学卒の母親をもちリベラルな家庭で育つ。8歳の時から近所に同年のマット デーモンが住んで居て、今に至るまでずっと親友。ふたりで共同で映画制作会社ライブ ネットを設立して映画の脚本、製作を手がけている。社会活動もリベラリストとして活発に行っている。
「グッドウィルハンテイング旅立ち」は、この二人で脚本から製作、主演まで共同製作したものだが、アカデミー脚本賞、助演男優勝、ゴールデン グローブをもらっている。当時、無名だったマット デーモンは、天才的な頭脳を持った掃除夫、ベン アフレックは 彼を見出す心理学者を好演している。とても印象深い映画だ。
2001年「パールハーバー」では、ベン アフレックは恋人を寝取られる純真な青年を演じ、2009年では「消されたヘッドライン」で、たちの悪い国会議員を主演している。
でも、この「アルゴ」が、ベン アフレックの主演作のなかで一番良い。口数が少なく、ボサーとしているようで無造作に見えるが CIA工作員として緻密に計算された動きで確実を手に入れる。カナダ大使公邸の地下で陽の光を浴びることがでいないまま数ヶ月くすぶっている。その6人が6様に絶望感に覆われ不安と不信でいらだっている時 ばらばらになった6人の気持ちをひとつにまとめる度量がある。彼が少ない言葉で6人から全幅の信頼を獲得する経過は、まるで心理劇をみているようだ。迫力がある。
米国人を見つけて、公衆の前で断罪 処刑しろと 目の色をかえて米国人狩りをする群集の只中を通過するシーンや 空港でのパスポートのチェックなど、恐怖で心臓が口から飛び出てきそうなハラハラドキドキのシーンがたくさんある。
結果として、イラン革命を評価するかどうかに関係なく 映画としてCIAに救出された6人に共感できる秀作に出来上がっている。
ベン アフレックは こんないハンサムだったのか。彼の出演作を沢山見てきているが 間の抜けた顔とは感じていても、一度も良い顔だと思ったことが無かったが、今回、前髪をボサボサに下げて、ヒゲも口の周りに伸び放題にしてみると、画面で大写しになった顔をどこから見てもハンサムなのに、びっくりした。この時代、1970年代は思い返してみると みな長髪、ひげ面が主流だったんだな。いま見ると 人によっては、むさ苦しいだけだが ベン アフレックの長髪、ひげ面は高感度100%。今後もこれで行って貰いたい。
イラン国民の悲願だった米国傀儡政権が打倒されたあとも、イランは 米国を中心とする国際社会から、経済制裁や核疑惑を受け、厳しい道を歩んでいる。2005年から保守派のマフムド アクマデイネジャードが大統領になって、強権を主導しているが、米国はイラン政権を揺るがす反政府運動を裏で組織して内政干渉を繰り返している。
イランの核開発について、イランが核兵器を持っていないことは、米国CIAの調査でも IAEAの調査でも明確になっているが、政治の駆け引きのために、明確にせず核兵器を持っているような扱いをして、イランの核が国際社会の安全を脅かしているような米国主導の宣伝ばかりが繰り返されてきた。
しかし、米国の経済不況と国内の失業者など深刻な問題で国際社会への影響力が少なくなるに連れて、今後はこれまでとは違った状況になってくる。イラクは力を蓄えて、今後はイスラム国家の指導的役割を与えられ、オピニオンリーダーとしてイスラム社会を拡大していくだろう。そして美しいペルシャ語を語る人々が、紀元前から営んできた過去の栄光を取り戻していくことだろう。
いろんな事を考えさせる、良い映画だ。
想像していたより面白かったです。
ベン・アフレック、俳優業だけじゃなく監督としても素敵ですね~。実話を元にした映画はとっても大好きです。実話となると、結構ハードルが上がってしまいますが、この映画はその時代の歴史的な出来事にもきちんと触れているので、とても分かりやすかった。これが本当に現実だと思うと、ほんと恐ろしいです。時に感動する場面もあり、危機迫る場面もあり、飽きずに観れました。ぜひ、お勧めしたい映画です。
本当のスパイ
ベン・アフレック監督長編3作目。前2作は良くできたサスペンスだった。さすがに3作目となると、できの善し悪しも出てくるのではないかという不安があった。しかし杞憂に終わった。それどころか彼の監督作では一番の完成度を誇る傑作だった。
今回ベンが演じるのはむさ苦しいCIAエージェントのトニー。髭はぼうぼうで、着ている服も若干よれよれだが不思議とこれが似合っている。「ザ・タウン」の彼ははっきり言って役柄にフィットしていなくて、せっかくのサスペンスがたまにメロドラマになっていた。だが「アルゴ」の彼はやり手だが、内省的で天才肌というよりは努力家のエージェントだ。だからこそ彼自身の身の丈にぴったりと合ったのだろう(ただし本物のトニーはラテン系のアメリカ人。この部分を無視したのは頂けない)。
その彼の脇を名優たちが固める。アラン・アーキンとジョン・グッドマンは映画で唯一心温まる存在。CIAの外部から作戦を手助けするのだが、この「アルゴ」の製作過程が意外と面白い。一見すると馬鹿げているのに、本気で製作(に見せかける)しようとする彼らの姿はまさにスパイ映画と同じだ。
だがなんといっても、トニーが単身イランに乗り込んでからが俄然面白くなってくる。入国した瞬間から画面は異様な緊迫感に包み込まれ、不穏な空気を漂わせる。実際の映像とほぼ同じように作り込んでいるから、リアリティに溢れている。特に大使館が襲撃されるシーンは本当に恐ろしい。デモが暴動へと変わる瞬間を上手く描いている。
そしてトニーと6人の外交官は脱出へと踏み切る。誰も銃を引き抜くわけでも、変装マスク(軽く服装は変えるが)も着用しない。だけどその脱出劇は最高にスリリングで、並大抵のスパイ映画を凌駕する。結末はだれでも知っているが、ここから先はあえて触れないでおく。是非自分の目で確認して欲しいのだ、手に汗握る最高のサスペンス映画を。
(11月23日鑑賞)
ベンアフレックが作れば作るほど
昔は俳優として映画などに出演していた彼ですが、
最近は監督業としても映画作品に取り組むことが多くなっている中
今作品では主演として出演。
内容は実話をもとにしたということでありますが、
ベンの上司から拒否されて作戦を続行するかどうか決断するところの苦悩している主人公の様子は表情だけ映されているだけで伝わってくるものにもう少しな気もしましたが、実話以上に実話である演出と脱出までのトラブルに次ぐトラブルが続きそうすんなり脱出させてくれない描写に脱帽です。
すっかりエンドロールが終わるまでスクリーンに真正面向かって席で見入って電気が付いて明るくなるまで固まっていました。
今までに無いBased on True Storyだと思います。
自分の観た中ではNo1と言ってもいいくらい。
とにかく手に汗握りました。
緊張感をものすごく感じたいのならば鑑賞の価値はあると思います。
全210件中、161~180件目を表示