川っぺりムコリッタのレビュー・感想・評価
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崖っぷちを描きながらも微笑ましく優しい人間賛歌的な作品。独特な時間の流れを感じられ、これぞ荻上直子監督作品!
「かもめ食堂」(2006年)でブレイクし、「めがね」(2007年)もヒットした荻上直子監督作品の根底にある作風は、「時間の流れが違う」ということでした。どこかゆったりと優しい時間が流れている独特な作品となっているのです。
近年はそれほど映画で見ないな、と思っていたら、ようやく「THE荻上直子監督作品」の登場です。
しかも、タイトルに「ムコリッタ」と、仏教における「時間の単位」の一つが使われています。
1日は誰にでも平等に24時間となっています。
1日を24で割ったものが1時間。
ただ、「1時間=60分」という前提を変えることは可能です。
1日を30で割ったもの、それが「ムコリッタ」という単位です。
具体的には「1ムコリッタ=48分」となり、通常の時間よりは細かくなります。
ちなみに、「一瞬」を意味する「刹那(せつな)」は、仏教では「時間の最小単位」を意味します。
この「ムコリッタ」に「川っぺり」という言葉をかけ合わせると、どういう化学反応が生まれるのでしょうか?
川は台風のたびに氾濫し、川沿いで暮らす人たちは「日常でなくなる瞬間」と隣合せで生きています。そうした状況に常に脅かされギリギリを感じながら。
ただ、実は誰しもが、どこかしらでそんなギリギリを感じて生きています。
そんな私たちは、「ささやかな幸せ」を細かく見つけていったりすることで何とか持ち堪えられている面があるのです。
このような人間の本質的な面を本作は描き出すことに成功しています。
崖っぷちの厳しい状況を、どう乗り越えていけばいいのか、時にはユーモラスに語り掛けているのです。
本作は、出演者も何気に豪華で、さらに「荻上直子監督作品」らしくご飯がとても美味しそうにも感じられる、質素に見えながら贅沢な作品でした。
KADOKAWAですよ
なんとなくの雰囲気がいい、まさに雰囲気映画。
ごはんが美味しそうなのがとても良いし、
「小さな幸せを見つけるのが上手い人」と自分も過ごしているようで
とても柔らかい気持ちになれる作品だった。
なんだけど、ラストシーンがイマイチだったと思う。
弔いとして「はじまりへの旅」には遠く及ばなかったし、
いろいろ中途半端な画に感じてしまった。
そこまでが良かっただけに、ドヤ顔で滑ってる感じがして残念だった。
んでKADOKAWAですよ。
なるべくなら避けたいけど完全には避けられないやつ。
カネの臭いと切ってもきれないイメージなので
より作品とのギャップが引き立つ形に。
演者のみなさんには最大限の賛辞を送りたい。
人間の闇を映し出す。
こんな人間がよくもまあこんなに集まったなと。それはご都合上仕方ないということで目を瞑りましょう。最後の葬儀の感じが、この映画全体の雰囲気というか。暗いんだけどほのぼの。闇なんだけどくすりと笑える、的な。それにしても松山ケンイチお風呂のありがたみ、ご飯のありがたみがすごく伝わる演技でうまかったです。
☆☆☆★★ 原作読了済み。ちょっとだけの感想。 荻上監督の描く『フ...
☆☆☆★★
原作読了済み。ちょっとだけの感想。
荻上監督の描く『ファーザー・ウォーター』
(映画『マザー・ウォーター』に関するレビューを少しだけ参照願います)
ネットにて時々見かける「死ぬのを考えた…」とゆう意見。
それに対しての意見として、しばしば用いられるのが、、、
〝 下を見ろ! まだ俺がいる! 〟
…との言葉。
予想通りに(原作を読んでるので)監督の死生観が、良くも悪くも出ているのかな?…と。
主な登場人物
【山田】
父親の顔は知らず、母親からは数万円の手切れ金(ちょっと違うのだが)で捨てられた男。
最早、人生は投げやり。特に「生きたい!」との思いも持たず、「餓死するのもやむなし!」の境地になっていた。
だが、何とか死なずに給料日を迎え、念願の白米にありつけた事で、この世へしっかりと根っこを張る。
【大家の南さん】
美人の未亡人。
この人物像に関して、あくまでも個人的な意見として、勘違いを承知の上で〝 或る昭和の大女優 〟の存在を意識しながら見ていた。
それは『東京物語』の原節子。
『東京物語』の中で原節子は有名な台詞を言う。
「わたし…狡いんです、、、」
当然、監督は観ていない筈がない。
本編中に、満島ひかりは突然「妊婦の腹を見ると蹴りたくなる」…と言う。
原作を読んでいて思わず「何だこれ!」となった瞬間だった。
だが、こうも言っている。
「何故か無性にアイスが食べたくなるの!」
(この台詞だけでいいのに…とも思う)
愛する人はもう帰ってはこない。
この先の長い人生、果たしてアイスを我慢し続ける事が出来るのか?
思わず夜中に旦那さんの《アレ》を使って、、、
満島ひかり=原節子 穿ち過ぎだろうか?
【溝口さん】
半分〝 片足を突っ込む人生 〟を、息子と共に続けている。《いつその時》が来てもおかしくない。
現実に【赤い金魚の話】で思いとどまってもいる。
【ピアニカ少年(溝口さんの息子)】
幼くして【生と死】の狭間を隣り合わせにして行き来しているかの様な存在。
文明の発達によって〝 死んでしまった 〟 まだ使おうとすれば何とかなる物質を守る立場を担っている。
【非常識な隣人の嶋田】
いささか常識に欠ける人物。
…とは言え、現実には常識を知っているからこそ、山田の根っこをこの世に張らせた大事な人物ではある。
そして彼こそ主な出演者の中で、1番《生に対する執着》が強い。
よって、彼の目の前にだけ『蜘蛛の糸』がスルスルと垂れてくる。
この糸こそは、執着の強さの象徴であり、だからこそ彼だけが〝 アレ 〟を見ることが出来ない。
他にも、坊主のガンちゃんは勿論、役所の堤下さん等。《生と死》とを隣り合わせに仕事の生業とする人達がいて。画面には映らないが、川っぺりにはブルーシートを屋根として生活を営んでいる人達もいる。
そんな人達は、、、
〝 確かに川っぺりだけれども、まだ崖っぷちでもない 〟
例え水に流されたとしても、大海原ならばほんのすこしだけ可能性がなくはない。
まだ、ほんのすこしだけだけれど、、、
だから、父親を弔いながら彼等の無事も祈る。
原作を読んだ時に比べて、 作品中には《生と死の狭間感》がより一層感じられた。
…られたのだけれど。原作自体も最後は唐突に終わってしまう為に、「だから何?」…と言った思いは強かった。
本編には、そこに音楽を当て込めているだけに。より不思議な雰囲気を持つのだけれど、何か1つ突き抜けるだけのモノが足りない感じは否めず、最後の最後で一気に迷走してしまった気か、、、
江口のりこ・薬師丸ひろ子・田中美佐子等。見せ場もないのだからちょっと出演した意味があったのか?…とも。
監督曰く 「映画が撮れないから小説を書いてみた」らしいのだけれど。
昨年テレ東で放送された『珈琲いかがでしょう』自体も、全体的に今ひとつだっただけに。ファンとして、今後に少し不安感が募る。
2022年 9月16日 TOHOシネマズ錦糸町オリナス/スクリーン7
ムコリッタ、ささやかな幸せ
白いご飯があれば良いのです。とりあえずは。あとは卵や納豆とか、充分です!ご馳走に見えます!
ご飯を炊けば、隣の人が丼だけ持って尋ねてくる。そんな長屋のような暮らしも良いんです!みんなで、今日を自由に生きていられれば。
私はマンションで暮らしており、安全で快適なんだけども、この映画を思い出すと…マンション暮しは近所づきあいが欠けすぎだ。それは建物の構造もあるだろう。
かわっぺりムコリッタ!別荘として欲しい。この映画は私にとってはファンタジー。
米の飯をこんなにも旨そうに食べるシーンを観たのは初めてだ。
人類が克服したであろうと言われ続けてきた問題に「飢餓」があった。でも問題は克服はまだされていないようだ。誰もがお腹を空かせて日々暮らしているように思えてきた。この映画を観ているとそんな気分になってきたんだ。
主人公の山田が最初の給料を貰い買い物して帰るシーンでそれまで欝々としたオーラ全開の足取りが妙に軽やかになっていて、次のシーンを予感させた。それは見事に裏切られ米を揉むシーンだった。そして実に嬉し気に水の量を調整する山田の顔のアップ。
もうこれだけで充分だった。この映画を創った理由が万感の思いで伝わってきた。
米さえあればそれでいい。日本人に生まれて良かったと思えた。
人工物に囲まれての暮らしが本当はいかに暮らしずらいのか、
息苦しくないかい?生きている実感はあるのかい?頭で考えてばかりいて幸せなのかい?
そんな問いかけばかりが聞こえてきた。この映画からは・・・・・
もうすでに飽和状態に陥ってしまっている人間が作り上げた世界はこれから先の行き場をなくしてしまったようだ。通り過ぎてしまうだけの死んだ情報に惑い、腐ったものを吐き出す力も失くしてしまっている。もはや山田くんのようにノタウチながら生きていくしかないようだ。
孤独を望み都会を抜け出して静かに過ごす。身体が千切れるしまうほどの寂しさと空腹を体感してしまえば、ひょっとしたら細やかな幸せを掴むことができるかもしれない。
政治や科学では見ることのできないものをこの映画で観たような気がする。
キャスティングがいいな
川っペリに住む,いろんな過去を背負う人々の交流を描くストーリー。
何気ない日常を丁寧に描いていて、演じる役者たちの力量がすごいと思った。普通にお風呂入って着替えてみたいな日常を演じて釘付にする,マツケンの存在感に驚く。
ムロツヨシの強引さに引きずられながら,馴染んでいく。
内容的にはまあまあだったな。
死に寄り添う生
何か訳ありの山田が、北陸の塩辛工場で働き始める。社長に紹介されてハイツムコリッタに住み、つつましくするつもりが隣人の島田が図々しい。また、4歳から会っていなかった父の遺骨を引き取る。アパート管理人の南、住人で墓石の営業マン沢田らとも交流し。
ムコリッタは仏教用語で48分。序盤、島田の図々しさが笑えます。朗らかな調子で展開すると思ったら、気が付くと周囲に重いエピソードがちらほらと。つつましく生を喜び、死に寄り添っている人々に感動しました。
けっこう深い内容だけど、暗くなく、独特なキャスト陣のキャラクターに...
けっこう深い内容だけど、暗くなく、独特なキャスト陣のキャラクターによって明るめに描かれている。
時にはファンタジーっぽく、時にはシュールに、くすっと笑える。独特な世界観が緩やかに流れていく。
生きること、死ぬこと、ささやかな日々の幸せ、考えさせられる映画でした。
宙を泳ぐ金魚が見えた!! 人が亡くなること、食を通して生きていく幸せを描いた作品🎆
富山の自然の山、川べりにある電話は
亡くなった親族に通じているかのように
見えるストーリーでした。
ハイツムコリッタに来たときは
なるべく人と関わることを避けていた青年の
山田が、島田と出会ったことがキッカケに
して、段々とささやかな幸せを感じる状況が
図々しくもあり、可笑しく思いました。
人が亡くなり、見送るカタチは風変わりに
見えても心が込もっていました。
食事や作物を育てることを通して、生きていく
術を学ぶことができました。
大家の南さんや、工場の社長は山田を偏見の
無い目線で見てくれていました。
汗だくになる夏に、墓石を売る親子の姿は
人生の最期を安心感で迎えたいと思える
場面でした。
島田が食べようとしたイカの塩辛が
『別物』だったシーンも面白かったです。
夕焼けの空の下、お見送りしたシーンは
宙を泳ぐ金魚が見えた!!
ことをイメージする
人間の魂が空に舞っていたように見えました。
奥の深い作品だった
意外と泣ける作品だった。
人に過去あり。昔の長屋的なアパートの住人達は、過去に色々ありながら明るく生活している。
1人では抱えきれない事でも、ご近所の皆さんがなんとなく寄り添って、時には図々しくも思うが、励みになり当たり前になり、生きていける。優しい関係。
もっと他の作品も観たくなりました
大学でアパート暮らしの頃、敷地のいちばん手前にある私の部屋にいちばん奥の部屋の住民である同級生のK君は、毎日まず我が家にあがって冷蔵庫を開けて中の飲み物を断りもなく勝手に飲むというルーチンでした。
実家から食材が送られてきた時もなんだか鼻が効くのか必ず夕食時に訪れてきて料理を堪能して部屋には寝るためだけに帰るという毎日でした。
まさにこの映画のムロツヨシさんそのもの!図々しさもルーチン化すると恐ろしいもので、年に数回様子を見にくる両親がいても勝手に冷蔵庫を開けて飲む習慣は出てしまうもので、両親も呆れていたことを鮮明に記憶しています。ところが当の本人は「そんな事したっけか?」といけしゃあしゃあと言ってのけます。ムロさんとマツケンさんと同様(?)今も腐れ縁で何故か喧嘩しながらも付き合いが続いてます。
そう本題ですが先週『波紋』を観てとても興味が沸いた荻上監督作品を是非観たいなと思った矢先、WOWOWで狙ったかのように(間違いなく狙っていたでしょう!)この映画が放映され思わず観入ってしまいました。前半のなんだか不思議な空気感、登場人物に首を傾げながらも観ていると世間と距離を置こうとしていたマツケンさんがムロツヨシさんや満島ひかりさん、柄本のお兄ちゃん、寅さんちの満男くん(というより純の方がメジャーかな?)たち隣人たちのおかげで自分自身を取り戻す姿はとてもほっこりと気持ちのいいものでした。
緒方直人さんも大事な役どころで、かつてドラマで(今ならストーカー規制法に引っかかるだろう)キョンキョンに一目惚れしてしつこく追っかけるお兄さんも、そういえば蛍の初恋の相手でしたよね!なんだか誰にもわかってもらえそうもないのでこのあたりでやめときます。
総じていえば『波紋』とは違うものの登場人物たちの心の中を見事に描写できる類まれな才能を持った監督さんだなぁってつくづく思いました。マツケンさんもムロさんも満島さんもとってもいい役者さんですね。面白かったです。もっと他の作品も観たくなりますね!
予想を覆す堂々の22年邦画No.1
2022年劇場鑑賞77本目 名作 80点
大傑作です
当方劇場の上映前予告で公開前にやたら見るし広告力入れてるけど、テーマといい規模小さい感じがして正直つまらないだろうしスルー確定でしたが、他作品鑑賞しに劇場に訪れ会いた時間に見たら、とんでもなく大正解。
予想を大いに裏切り超えてきたという意味でも今作は2022年劇場鑑賞103本の中で純邦画1位の作品です
まず登場人物みんな過去に問題なり思いを馳せる出来事があって、その中で生きづらさを感じながら日々に幸せを感じ生きていく。その哀愁と間とやり取りがこちらに絶妙なユーモアを届けてくれます
すき焼きのシーン、隣人が勝手に忍び込むシーン、ご飯が炊けてこちらまで香りが伝わるシーン、他にも沢山名シーンがありますが、一番は満島ひかりが演じる亡き夫を今も想うシーンで、石を身体中に当てて色々なものを感じているシーンがもう素晴らしすぎる。
2022年一番はもちろん、生涯でも指折りの名シーンであり印象的なシーンになりました
早くまた見たいので、アマプラかネトフリ、Huluで配信してほしいです
是非!
映画だから笑いながら観ていたが、隣人があんな人間だとかなり鬱陶しい...
映画だから笑いながら観ていたが、隣人があんな人間だとかなり鬱陶しい。
周囲の人たちもそれぞれ個性的ながら、悪い人間が誰もいないので安心して観ていられる。
特に社長は相当に良い人。
ラストの葬式シーンはかなりシュールで最後まで退屈しなかった。
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