劇場公開日 2022年9月16日

  • 予告編を見る

「☆☆☆★★ 原作読了済み。ちょっとだけの感想。 荻上監督の描く『フ...」川っぺりムコリッタ 松井の天井直撃ホームランさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5☆☆☆★★ 原作読了済み。ちょっとだけの感想。 荻上監督の描く『フ...

2024年3月15日
iPhoneアプリから投稿

☆☆☆★★

原作読了済み。ちょっとだけの感想。

荻上監督の描く『ファーザー・ウォーター』

(映画『マザー・ウォーター』に関するレビューを少しだけ参照願います)

ネットにて時々見かける「死ぬのを考えた…」とゆう意見。
それに対しての意見として、しばしば用いられるのが、、、

〝 下を見ろ! まだ俺がいる! 〟

…との言葉。

予想通りに(原作を読んでるので)監督の死生観が、良くも悪くも出ているのかな?…と。

主な登場人物

【山田】
父親の顔は知らず、母親からは数万円の手切れ金(ちょっと違うのだが)で捨てられた男。
最早、人生は投げやり。特に「生きたい!」との思いも持たず、「餓死するのもやむなし!」の境地になっていた。
だが、何とか死なずに給料日を迎え、念願の白米にありつけた事で、この世へしっかりと根っこを張る。

【大家の南さん】
美人の未亡人。

この人物像に関して、あくまでも個人的な意見として、勘違いを承知の上で〝 或る昭和の大女優 〟の存在を意識しながら見ていた。

それは『東京物語』の原節子。

『東京物語』の中で原節子は有名な台詞を言う。

「わたし…狡いんです、、、」

当然、監督は観ていない筈がない。
本編中に、満島ひかりは突然「妊婦の腹を見ると蹴りたくなる」…と言う。
原作を読んでいて思わず「何だこれ!」となった瞬間だった。
だが、こうも言っている。

「何故か無性にアイスが食べたくなるの!」

(この台詞だけでいいのに…とも思う)

愛する人はもう帰ってはこない。
この先の長い人生、果たしてアイスを我慢し続ける事が出来るのか?
思わず夜中に旦那さんの《アレ》を使って、、、

満島ひかり=原節子 穿ち過ぎだろうか?

【溝口さん】
半分〝 片足を突っ込む人生 〟を、息子と共に続けている。《いつその時》が来てもおかしくない。
現実に【赤い金魚の話】で思いとどまってもいる。

【ピアニカ少年(溝口さんの息子)】
幼くして【生と死】の狭間を隣り合わせにして行き来しているかの様な存在。
文明の発達によって〝 死んでしまった 〟 まだ使おうとすれば何とかなる物質を守る立場を担っている。

【非常識な隣人の嶋田】
いささか常識に欠ける人物。
…とは言え、現実には常識を知っているからこそ、山田の根っこをこの世に張らせた大事な人物ではある。
そして彼こそ主な出演者の中で、1番《生に対する執着》が強い。
よって、彼の目の前にだけ『蜘蛛の糸』がスルスルと垂れてくる。
この糸こそは、執着の強さの象徴であり、だからこそ彼だけが〝 アレ 〟を見ることが出来ない。

他にも、坊主のガンちゃんは勿論、役所の堤下さん等。《生と死》とを隣り合わせに仕事の生業とする人達がいて。画面には映らないが、川っぺりにはブルーシートを屋根として生活を営んでいる人達もいる。
そんな人達は、、、

〝 確かに川っぺりだけれども、まだ崖っぷちでもない 〟

例え水に流されたとしても、大海原ならばほんのすこしだけ可能性がなくはない。
まだ、ほんのすこしだけだけれど、、、
だから、父親を弔いながら彼等の無事も祈る。

原作を読んだ時に比べて、 作品中には《生と死の狭間感》がより一層感じられた。
…られたのだけれど。原作自体も最後は唐突に終わってしまう為に、「だから何?」…と言った思いは強かった。
本編には、そこに音楽を当て込めているだけに。より不思議な雰囲気を持つのだけれど、何か1つ突き抜けるだけのモノが足りない感じは否めず、最後の最後で一気に迷走してしまった気か、、、

江口のりこ・薬師丸ひろ子・田中美佐子等。見せ場もないのだからちょっと出演した意味があったのか?…とも。

監督曰く 「映画が撮れないから小説を書いてみた」らしいのだけれど。
昨年テレ東で放送された『珈琲いかがでしょう』自体も、全体的に今ひとつだっただけに。ファンとして、今後に少し不安感が募る。

2022年 9月16日 TOHOシネマズ錦糸町オリナス/スクリーン7

コメントする
松井の天井直撃ホームラン