万引き家族のレビュー・感想・評価
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家族を失った男の物語
この映画は、優しいだけで父親としての資格はあるのか?という思考実験なのかもしれない。
そして、その答えとして、優しいだけの男は家族を失った。
以下激しくネタバレ
この映画は、今の日本にありそうもない不思議な家庭が舞台になっている。開始5分で、松岡茉優演じる女性のような聡明そうでいくらでも金の稼げそうな女性がこんな家族の一員に留まって、さらに何もしていないのはおかしい、と思ったが、開始20分での展開が腑に落ちると同時にショックを受けてしまった。この映画は、そんななさそうであるリアリティがしみ込んでいるような映画だ。
男は、社会的には最底辺ともいえるような存在だ。
仕事に対しては、放棄しない最低限の責任感はあるが情熱も何もないし、題名の通り、万引きを子供に教え込んでいるような倫理観のゆがんだ人間だ。
しかし、拾ってきた子供に対する優しさ・愛情は本当に見える。
わが子を虐待するような子供の元の両親とは対照的に描かれているが、男は極めて貧しい環境にあるにもかかわらず子供たちを飢えさせるようなことはしないし、可愛い服を着せ、拙い手品で子供たちを楽しませようとするようなシーンも印象的に描かれている。
ではなぜ男は家族を失ってしまったのか。
男の生き方が、社会の標準的な生き方と乖離してしまったため、
育つにつれて自我が確立してきた少年と相容れないものが生じてきたということもあるだろう。
しかし、少年は男に万引きをやめさせようと思っても、家族の一員でなくなろうとはしなかったのだと思う。
少年が最終的に彼をあきらめてしまったのは、男が、入院した彼を簡単に見捨てて逃げてしまったことだ。
男にとってみれば、逮捕されるかもしれない自分より、警察と病院のお世話になっていたほうがいいという気持ちもあったと思うが、
あそこで少年を見捨てたことが、拠り所のある家というものを家族が信じることができなくなり、家庭が崩壊する最終的な契機となってしまった。
優しいだけでは家庭は維持できなかった、のだ。
社会で生き抜く力、我慢する心…そういった自己犠牲のようなものが必要なのではないかと、
この思考実験は結論付けているような気がしてしまう。
最終的にバラバラになった家族の印象が強烈であればあるほど、
家族で海水浴に行った幸せな思い出が、より幸せに感じられてしまう。
色々問いが残る、考えさせる良作
最後のシーンで女の子は何を見ていたのか、男の子はバスに乗って何処へ行ったのかなどなど、問いが残る。単純に言えば、「血縁より人情のつながり」がテーマかと思えるが、色々なメッセージを込めているのだろう。
是枝監督が問う善悪の彼岸…安藤サクラが!
安藤サクラの存在感がすごい。善悪の彼岸を問う今作で真実の語り部となった。彼女こそが善だとさえ思ってしまう。ぜひ女優賞を総ナメにして欲しい。
邦画のベストワン候補に一番乗りだ。
凛ちゃんが最後に見たものは?
パルムドール受賞、おめでとう 🎊
是枝監督が、日蔭に寄り添う血の繋がりのない家族をテーマにした新たな挑戦。痛く、切ない物語でした。
格差社会や児童虐待の問題が根底に流れているだけに、カンヌでは、日本のこうした社会問題がどのように映ったのかな…❓
でも、安藤サクラが凛ちゃんを、ぎゅーと抱きしめる場面こそが、世界共通の愛の証なのかもしれませんね。
子役の2人をはじめ、リリーさん、安藤さん、希林さん、演技と思えない、素の表情は素晴らしかった。松岡さんも、ひと皮剥けました。
最後に凛ちゃんが、覗いた先には何が見えたのかな…?
社会問題詰め込みすぎ問題
今世間をにぎわせてる社会問題を詰め込んだだけ
少年だけがこの作品の良心
それ以外は全員社会のはみ出し者
性描写があるため家族というタイトルがついているが家族と見に行くと気まずくなるので気を付けて
キャスティングが神
生まれ変わったら安藤サクラになりたい。物語の終わり方、大々的でなくて逆にハッとさせられた。子役たちが神。池松壮亮の贅沢使い。あの「家族」の空気感。生活感。なんなんだ。松岡茉優もよかった。樹木希林のような往年になりたい。それでも生活は続いていく。
キャスティングが完璧!
この家族は、もうありえんめちゃくちゃな生活してる家族で、家汚くて、血の繋がりもなくて心配事は山盛りなんだけど、なんだろぅ、あったかい家族で… 子供たちも可愛くて…
おばあちゃんの年金を頼りに居候し、ロクな収入もない、まぁだらしない大人たちが悪いんですが、それでも、なんか愛がいっぱいで。
あの女の子を元の家庭に戻して大丈夫なのか?と心配で…
色々考えさせられました。
キャスティングは完璧。中でもとにかく安藤サクラさんが上手かった!母オーラでてた〜
リリーさんも手堅いし、樹木希林さんの柔らかな演技も素晴らしいし、子役の子も上手かったですね。特に城くん、これからが楽しみです。
この是枝(これえだ)監督の作品には「そして父になる」で泣かされて。「潮街diary』も観ましたが、あえて家族のコアな部分にまっすぐに触れるテーマが得意ですね。どれも見応えありますね。
重過ぎて消化し切れない
もっと気軽に感動できる映画かと思ったが、なにやらメッセージが込められており、しかも重たくて…メッセージも読み取れない。
普段から考えごとしがちな自分にとっては、考えごとが増えそうで思いを馳せるのも面倒くさい。
明るい映画。映画は、こうでなくちゃ!
感想は最高です。
是枝作品は今回が3作目という是枝弱者ですが…。
「誰も知らない」で柳楽優弥君の名演技を引き出した是枝監督は、今回も最高の子役使いでしたね。
祥太役の城カイリくん、リン役の佐々木みゆちゃん、最高です。
ラストの安藤サクラの泣きの演技。
ダメ男、適当男を演じさせたら右に出るものなしのリリー・フランキー。
食べ方が凄い樹木希林。
松岡茉優は、「桐島部活…」の時も絶妙の嫌な奴を演じきりましたが、今回もいい子なんだけど褒めれない子、でも、可哀想、という微妙なキャラクターを演じてましたね。
リンに「私も名前が2つあるの。」は、「お前、その話五才の子にする??」とかね。
ファンになりました。
貧困問題、社会保障問題を取りあげて、「こんな恥ずかしい日本の姿を海外に見せるな!」だの、「文化庁から助成金を受けて日本批判をしている。」とか叩いてる人がいるみたいですね。
まず、是枝監督は元々テレビのドキュメンタリー番組を作られていた方だそうで、その時から一貫してテーマは「貧困・社会保障問題」だったそうです。
そして、日本の恥ずかしい姿を見せるなって、事実を隠して良く見せる事を日本がやってしまっては、北の方の国みたいになっちゃいます。
映画や音楽と言った芸術が政治批判しなくなると、つまらないし。(今作品に、その意図があるかは、さておき)
この映画お涙頂戴の感動映画ではないです。
割と笑えたり、明るかったり、幸せを感じるシーンの多いので、それがまた不思議な感じ。
絶対観るべき映画です。
リアル
貧困の描き方もリアルではあるのですが(カップラーメンなど、その場しのぎのような炭水化物が増えていく)、あの世界に生きている、登場人物の空気感が非常にリアルだった。
演者の人々の実力が際立つ一本。
パンデミック
何にせよ、人聞や人気には臨界点があって、そいつを超えれば爆発的に拡がり、超えなければフェイドアウトの憂目に会う。
過大評価と過小評価が生まれる構図は単純なれど、制御不能であることはみんなよく知っている。
ちょっと拡がり過ぎかなぁ。
アットホームの判りやすさではダメだったのに、パルムドールの意味も知らない人たちが受賞作品に群がる。決して批判しているのではない。とにかく劇場に人を集めるコンテンツは貴重だから。
パルムドールと聞いて、どんなに素晴らしい映画かと思っていたのに期待ハズレだった、と言う人も多いでしょう。終わった後の顔を見れば分かるが、これは良い映画だよ。
松岡茉優を見直した一品でもありました。手脚の動きで心象、痛みまで伝わるもんなんだ。時間で性を切り売りしている時。時間を惜しみ痛みを共有しているとき。その違いは、素振りだけで、高い浸透圧で胸に染み入って来ます。見直しました。良かったです、凄く。
ほんものとは何か
本物とは何だろう、正しさとは何だろうと思う。薄い板切れの上で、細い糸を皆で握り締めながら穏やかな海を漂っているような時間が流れていく序盤。正しいとは言えない家族の形が、ひたすら優しくて、けれどそれが周囲から孤立して成立しているものだと思うほど哀しかった。中盤以降はずっと涙が止まらない。切なくて苦しいのに、主要人物たちの優しい温度が残っているままラストへ向かっていく。語っていることは少ないのに、多くの感情が散りばめられていた。心のどこかで「救われた」と思うのはなぜだろう。
貧困 家族 親子
東京下町の家族。
是枝監督作品は「そして父になる」のみ鑑賞済。それに比べると、単調にも思えた。上映時間の大半が彼等家族の日常を描いたものと考えれば、当然かもしれない。
現代日本における貧困を描いた作品。貧しさ故の家族の繋がり。そこには金銭等の打算的目的だけではなく、寂しさや愛情も含まれていたと思いたい。
後半の正論、そして終幕が胸に響く。その論理は確かにほとんどの家族に当てはまるだろうが、例外をどう補うのか。あぶれた方達を、どうケアするのか。
単純な「面白い」ではなかった、問題提起的作品。
『教えられることは◯◯◯くらいしかなかった』という寂しさの衝撃
難解なイメージもありますが、問題提起と回答は明確な作品だと感じました。「万引き家族」というキーワードの前半「万引き」が目立つので貧困や犯罪や日本社会にも思いを巡らせましたが、メインの問題提起は「家族」の方かなと思いました。この家族の大人は収入がありますので、本当の貧困だから万引きをするわけではないのだと思います。コロッケは普通に買っているし。
これは万引き(もしくは他にも明らかになる犯罪)によってつながっていた家族の物語です。
【問題提起】
家族の絆とは何か?何によって人と人はつながるのか?
【回答】
お互いが家族であることを確認しあうことで家族はつながれる、というメッセージなのだと私は読み取りました。
この映画を見ていると様々なパターンのつながりが示されています。
血のつながり、
金のつながり、
身体のつながり(男女関係だけでなく子供をぎゅっと抱きしめるスキンシップも含まれる)、
一緒に食事したり海に出かけたりという時間を共有するつながり、
助け合うことによるつながり、
教える/教えられるのつながり
そして犯罪を共有するというつながり。
「万引き家族」というタイトルそのものかもしれないけど、万引き以外にも過去に犯罪を共有しているという衝撃、そんなつながりもあるのか、と、驚いた。
しかし、血以外では全てつながっている治(リリー・フランキー)と祥太は、最後まで家族になりきれなかった、と、私は読み取りました。でも、その理由は血がつながっていなかったからではありません。
「お父さん」と呼んでほしい治も、わざと見つかるように万引きをして警察から家に連絡させる祥太も、お互いが家族であることを確認しあいたいのだと思うのです。
駄菓子屋(柄本明)の言葉に動揺する祥太は、悪いことだから万引きを辞めたいのではなく、治に父親として世の中のことを教えてほしいのだと思います。「お店に売っているものは、まだ誰のものでもないから万引きしても良い」という理屈と同じように、車上荒らしをやっても良い理屈を治から教えてもらうことで、祥太は安心したかったはずです。ですが、きちんと祥太と向き合わない治。
治は寂しい人だな。取調室での「教えられることは万引きくらいしかなかった」と発言するシーンで、私は最も寂しさを感じました。祥太を置いての夜逃げも、最後に「お父さんからおじさんに戻る」という告白も、バスに乗る前に引き止めるのでなく発車した後に追いかけるところも、寂し過ぎる。苦しい。辛い。
こうしてお互いを確認しあえなくて崩壊した家族は、この家族だけではなさそうです。貧困ではなく血もつながっているであろう、ゆりの家族も、亜紀(松岡茉優)の家族も、きっと同じ。どうやら、お互いが家族であることを確認しあえない原因は、貧困とは別のところにありそうです。
原因は、「教えられることは万引きくらいしかなかった」という言葉の奥にある治の自信の無さなのでしょうね。寒い日に外で凍えているゆりに気付いて手を差し伸べる温かさもある、遅くまで帰ってこない祥太を探しに行く優しさもある、しかも怪我をすれば(善悪は別として)高額なルアー万引きのような新しい稼ぎを思いついたり遺体を床下に埋めたりといった行動力もある頼れるおじさんだとも思いますが、きっと自分に自信が無い。
『でも、他にも教えられることはいくらでもあったでしょう?』って、治に言いたくなりました。そして、『祥太の不安を受け止めてやってよ!』とも。
いや、でも、あれだけ自分自身が寂し過ぎる治には受け止めきれないか。。。この自信の無さや寂しさを解消するには、やはり家族のつながりは必要なんだろうか。これでは理屈は堂々巡りだけど、そうなんだろうな。自信が無いから家族であることを確認しあえない、家族であることを確認しあえないから自信が無い。いつまでも寂しさのループから抜け出せない。そして、お互いが家族であることを確認しあえなければ、血がつながっていても、裕福であっても、家族は崩壊する。辛いな。
寂しさのループを抜け出したいのならば、まずは、お互いが家族であることを確認するところから始めていくのだろうな。
決して後味が良い映画とは思いませんが、いろいろ考えさせてくれる良い映画ですね。松岡茉優さんは、いつも通りカワイイです。
是枝さんの誠実さ、心で演じた俳優陣
主人公は擬制の家族。ただ、今流行りのシェアハウス的な気の合う者どうしで作る家族とは違い、治と信代以外は、なりゆき上一緒に暮らすようになった家族。
仲むつまじく暮らしているように見えながら、実はほとんどカネに関する会話しかしていない。いや、カネの話を明け透けにして、自らの釣果を誇りながらも、それを分け合う必要性を恋慕や慈しみによって認め合うことで、かろうじてギスギスしない。この関係こそ、仲むつまじさの正体なのだ。
そのことをさりげなく炙り出していく、是枝さんの細やかな作劇、俳優陣の心のこもった、それでいて自然な演技が、素晴らしすぎた。
星4つなのは、警察の聴取が家族の秘密を露わにしていくラストの展開。治の怪我や信代の解雇で露わになる綻び、祥太のスイミーの話を聞こうとしない治、治の手品の仕掛けを一人で知ってしまう祥太と、伏線はばっちりだったのに、なぜ最後の種明かしは公権力によってなされたのだろう。
確かに、あるべき家族像を押しつけてくる「常識」の象徴として、警察はぴったりだったかもしれないし、個々の共同性を公権力が壊しにかかっている現代の暗喩としては優れているのかもしれない。しかし、今の時代もっと怖いのは、ギリギリで生きている人びとの共同性が、目に見えない微細な力で内部崩壊を起こしてしまうことだ。この家族は、逮捕をもってしなくても、お互い疑心暗鬼になって離れてしまう爆弾を抱えていたのだから、より徹底した内面的な離反があってからの再生を描いた方が、観る者の心をより強く揺さぶり、明日を生きる糧にもなったのではないかと思う。
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