リズと青い鳥のレビュー・感想・評価
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ハイクオリティ・アニメ映画
美しい映像(現実パートと寓話のパートを使い分けている)やBGM(後半の吹奏楽演奏のシーンは本当に良かった)も素晴らしかったけれど、進路、愛する人との別れ・・・
寓話で語られる”飛び立たなければいけない鳥の少女”と”それを見送る少女”
見送ることしかできない少女と重ねていた”みぞれ”が実はものすごい才能があって飛び立たない鳥だと気づく・・・”のぞみ”との別れを予感させる切ない終わりだけれど明るい未来が待っている、進路や将来について悩む学生の姿を上手く描いている、そう考えさせられる映画だった
限定空間での繰り広げられる想いと束縛。
数ある京都アニメーション作品としても、映画としてもとても好きな一編。
テレビアニメ『響けユーフォニアム』の番外編的位置付けのほぼ独立した作品だが、個人に京都アニメーションの若手山田尚子監督が有能なスタッフたちと特に感性と才能を最大限発揮した作品。
絵本の世界感から現実世界に移る冒頭の登校場面から、ただ歩いて友人を待つだけなのに、惚れ惚れする様な描写と音楽で奏でられる心地良い進行で、タイトルが出るまでで主役である鎧塚みぞれと傘木希美の関係性と性格を観客に伝える巧みな導入部に魅入られてしまう。
物語は、みぞれと希美の片想いの愛情にも近い関係をベースに、演奏科目である「リズと青い鳥」の絵本世界を交差させてゆく。
正直な話し、2期目のテレビシリーズにも登場している本作二人のキャラクターだが、実はあまり印象がなく映画に感心してから、2期を見直して確認した次第だが、物語の視点が変わるとこれほど良い意味で違いが出るのかと改めて思う。
アニメーションの人物表現は、俳優が演じる実写と違い、演出と作画と声の演技が融合してゆくものなので、細かくて微妙なニュアンス的な表情や動作を見せるのには、不利な面が多々有るが、逆にどんな描写も制約のない絵で表情することが、可能で作り手のイマジネーション次第の側面もあり、この作品はとてもタイトだか美しく豊潤である。
アニメキャラの記号的表現の一つに、照れると顔か赤くなる描写があるが、この作品でも最初の僅かなカットにみぞれが頬を染める場面が、控えめにあり、恋愛感情の様なミスリードを誘っている。
キャラクターデザインについて
テレビシリーズの『響けユーフォニアム』でのキャラクターデザインを担当した池田晶子に代わり、「聲の形』で山田監督と組んだ西屋太志が担当したこの映画用のキャラクターデザインは、いわゆる肉感的で可愛いらしい今時女子高生なデザインの池田晶子より、少女漫画的繊細さと制服の丈の長さや、一部カットにある特徴的な伸びた首筋など、ニーム感もありテレビ版とは違うの独特の雰囲気や表現を際立たせている。
背景や彩色について
季節は夏に限定されているが、主な舞台である学校の場面は、青い鳥や夏服の色である青で彩色設定が統一されており、季節に関わらずクール印象で作品全体の落ち着いたトーンを作品に与えている。
声の演技について
最初に鑑賞した時に、主役二人の声の演技も通常のアニメ作品より抑揚を抑えており、静かな作品世界に合わせてトーンを変えていると感じる。
2期目のテレビシリーズにも登場しているキャラクターだが、実はあまり印象がなく映画の後に見直しで確認した次第だが、希美役の東山奈央は、多くのアニメ作品で、演じている明るいトーンでの活発な女性キャラなどの延長線にある役だか、多くの近しい友人で、同格だと思っていたみぞれの才能に複雑な感情や焦りを抱く希美を、巧みに表現している。
個人的に発見だったのは、人見知りで無口だが、徐々変わってゆく主人公みぞれ役を種崎敦美が、静かで抑制をきかせた演技で見事に演じていて、普段のややハスキーな声から分からない声質に変えていて驚く。
2014年のテレビアニメ『大図書館の羊飼い』でのハスキーボイスで小悪魔的な立ち振る舞いが印象的だった小太刀凪の声の人と配役を見てから気付いたくらいだった。
専業の声優の演技の多くは、正確な発音を台詞に沿って演技することが、多くの場合に求められると思うが、そこにある種の媚びやあざとさを持ち込んで、ウンザリする作品もあるが、この映画に関しては、抑えられており、それが音響監督の指示だとしても、多くの作品にある分かりやすい萌や媚び演技は、そろそろ一考した方がいいのではと思う。(それ求める一定のアニメファンいるのも判るが個人的見解です)
童話の世界について
劇中の童話「リズと青い鳥」の描写や世界観は、絵本を思い起こすカラフルな美しさだが、抑えられており本編の淡い色と統一されており、主な舞台である学校の場面と並べても違和感なく観れる。
そして動きの少ない学校本編とは、違い欧州を連想するの街の様子や月夜の静けさと一転した嵐の夜の風と木が荒れ狂う描写とリズと青い鳥の娘が、生活描写の中に動きを取り入れてあり、特に小さな丘の斜面で戯れる浮遊感に満ちて描写などは、ジブリなどに見られるものに近く京都アニメーション陣の技術と演出の確かさが判るところだと思う。
キャラクターの配置と物語について
テレビシリーズから一新されたキャラクターがありの本編とは違い鎧塚みぞれの視線で描かれる部分が多くて、本編でお馴染みの葉月や緑輝達がみぞれ視点だと関心が薄くて見切れていたりするのは、苦笑だが、彼女の心境を炙り出している演出だと思う。
その辺はみぞれの親友との想いとは裏腹の無意識無関心な距離感がある希望の心境とも重なる。
暗い話にややもするとなりそうなだか、希望とみぞれと同じ三年生で吹奏楽部の部長と副部長コンビであるデカリボンの吉川 優子と中川 夏紀のやり取りや、みぞれを慕う同じオーボエの一年生剣崎 梨々花のちょっとまったりとした雰囲気がみぞれに心境の変化を与えて和ませてくれるので、全編を通して明るい。
本編の主役である二人の久美子や麗奈も完全に脇に廻っているが、所々に重要ポイントや影響を与えているストーリーラインと脚本は、近年の質的な充実が驚異的でもある吉田玲子。
初期はテレビアニメ界がメインで活躍していた人だが、テレビ出身の脚本家が映画を担当すると、今一つな作品が多い中、良作を多数手掛けており、実写作品『のぼる小野寺さん』は、まだ未見だが信頼できる見巧者達からの評価が高いので楽しみにしている。
余談だがテレビと映画には、視聴環境や制作方針フォーマットの違い以外に個人的に思うのだか、テレビの名脚本家が中々映画で結果を出せないのには、何か特有のものがあるのか?
監督の山田尚子は、これまで3本の劇場用映画を監督していて、どの作品も明らかに高い出来栄えの水準で、標準的な出来の映画『けいおん』以外では、テレビシリーズの扱いが中途半端で報われない少年モチゾーに焦点を当てて作品世界を完結させた良作『たまこラブストーリー』と個人的に引っかかるところあるが傑作『聲の形』と女性としては、多くの良作アニメーション映画を監督している。
女性らしい繊細な演出と書くと近年では問題あるかもしれないですが、特徴的な画面演出で足元をアップにして各キャラクターの性格を見せる描写は、多くの作品に共通する特徴で、作品順に鑑賞すると変化や思考錯誤が分かり今作では、音楽の融合も良くて最も洗練されたカタチで使われている。
アメリカの名匠ジョージ・スティーヴンス監督は、第二次世界大戦で陸軍映画班として多くの戦場や強制収容施設を映像に記録してから作風が変化したとの指摘もあり、悲しい出来事を受けてからの山田監督の変化については、次作品を期待していると同時に、受けてしまった影響に言葉が上手く出ません。
願わくば、悲しい出来事で亡くなったスタッフの方々への想いも含めて語り継ぎ、まだ書込みたい部分もある本作なので、思いついたら追加していきたいと思うほどにお気に入りです。
アニメーションだからできること
凄いよ。この映画は凄いところが沢山あります。
まず作画が凄い。表情の微妙な変化や歩き方、姿勢だけでキャラクターの性格や関係が分かるって本当に凄いことだと思う。さすが京都アニメーションって感じですね。アニメだからこそ目だけをドアップで映し出されても嫌悪感はないし目で演技もできる。悲しいかな実写化は不可能でしょうね。
そして音楽。本作は吹奏楽部での青春のため必然的に音楽シーンが多くなるわけです。それがねまた凄い。劇場で見なかったことを後悔するレベル。「映画けいおん」を見たときにも思ったんですが本当に凝られているんですよね。一度目の演奏と二度目の演奏は本当に違うし音質もオーケストラがすぐ間近にいると錯覚するレベルのクオリティです。
そして声優さん達の演技ですよね。主役からモブまで違和感なく聞けるので映画に没頭できます。特に東山奈央さんにはびっくりしました。「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」のガハマちゃんしか知らなかったのでこんなに静かな役もできたのかと驚きました。(ガハマも静かなシーンはありますけど所々ギャルっぽさが出ているのでね。)
二人が本音で話すシーンでは自然と涙が出てきます。
是非ご覧ください。
あまりに繊細ででもしなやかな細い糸のような。
登場人物の瞳の動き、一束の髪の揺れ、歩き方。
作中で説明的な描写はほとんどなくとも、そこから様々な心の動きが伝わってくる。
そしてそれを受け手がじっくり受け取って考える間(ま)もたくさんとられている。
作画の美しさ、繊細さ、あまりに丁寧な人物の描き方。
すさまじく美しいアニメーション映画だった…。
特に人物の目。目の描き方。素晴らしい…。
繊細で静かな作品ながら、メイン人物のみぞれと希美の関係は最初から危うさがあって、作品全体にずっと緊張感がある。静かに、でもハラハラしながら2人の関係のゆらぎと行く末を見守る90分だった。
あと2人をそばで見守る夏紀と優子の同学年コンビが本当に良い。こんな良い同級生に恵まれたらいいよね。
2人の関係に重なりながら展開していく「リズと青い鳥」というストーリーと楽曲もとても素敵だった。
弱く儚く強く脆い
この作品を観るとき、覚悟をしてから観始めた。
今作を観る前に『響け!ユーフォニアム』の二期を観ていて最終回に別れのときの意味分からないけどなんか泣けてくる感覚に陥り泣く寸前だったからだ。
そんな状態で観たら涙腺崩壊しそうだったので覚悟した。
冒頭の友達と歩き朝練へ行き楽器を吹く。そんな日常を淡々と描き、特に感動要素無いのに何故か泣きそうになる。
『聲の形』のときにもなったけど、何故だか山田尚子監督作はどうってことない日常を描いているだけなのに喉が締め付けられて涙が溢れそうになる。
短編映画的な情緒深いカットで観ているだけで画面に引き寄せられる目に見えない「力」がある。
その力は繊細で優しくて儚い。
この「力」はいったい何処から来ているんだろう?と気になって作品を分析しようとしたがこりゃダメだ。
分析すればするほど何故だか胸を締め付けられて泣きそうになる。そしてどんどん力の正体は離れていく。
本当にこの力はなんだろう。
美しいアニメーションと繊細で弱く美しく強い少女の心情を言葉ではなく、演出として表現していたり、軽く楽しいようでいて、何処か切ない牛尾憲輔の音楽によって創りだされている「力」だと思う。
でもどんな力かは分からない…
分析するために作品を思い出す度に泣きそうになるし。
とにかく断言出来ることは山田尚子監督の才能は素晴らしいということだ。
あと音がめちゃくちゃいい!
家の2.1chのスピーカーでもまるで映画館みたいに音が駆け巡っていた。
それとオーボエね。
自分がリズではなく、青い鳥なんだと気づいたときの演奏が半端ない。
素人が聴いても「さっきと全然違う」と感じるし、「繊細で力強い」とも感じる。
あのオーボエの音は確実に脳天をぶち抜かれた。リコーダーすら怪しい自分がオーボエを吹いてみたくなった。
全体的にジブリ作品とも通じる絵本のような世界観と画で夢のようであり現実的でもある幻想的な作品という印象。
とにかく繊細で美しい。
ん〜。やっぱり京アニは刺さるな〜。
なんでか知らないけど、『聲の形』を観てから涙腺が弱くなった気がする。
汚れた心を浄化されたからかな。
だとしからこの『リズと青い鳥』を観たあとは更に涙腺が弱くなるじゃないか!?
ありがたいような困るような…
まぁとにかく今作は文句なしの傑作です!
年がいもなく結構しみました
多感な時代の少女たちの心理描写。
おじさんには絶対理解できていないと思いますが、みぞれの心情だけでなく一見陽気で悩みなんかないような希美の繊細な心の動きが細かく描写され心にしみました。
もともと定評のある映像美も十分堪能できました。本当に美しい画面に感動しました。
京アニの再興を心からお祈りします。
絵も綺麗、演奏も良い
しかし綺麗すぎてキャラクターが人形に見える。血は汚いから抜いちゃいましょうね〜って、中身抜かれたツルツルのセルロイドのお人形。実在感が無い。
演奏に語らせる為に、声の演技で「語らせない」ことは評価すべき点だが、前述の理由でどうにも登場キャラが好きになれず。
いやいやいやいや、もっと喋れや。
コミュニケーションをサボってるようにしか見えません。しかも口を開いたらど依存だし。
(うーん、こりゃ単なる凡人の嫉妬ですなあ。)
第三楽章はすごかったですよー
切なさと温かさを感じる秀作です。
吹奏楽部部員の少女二人が織りなす、友情と微妙なすれ違いを描く物語。
劇場でも鑑賞していますが、その後BS放送を録画したものを再鑑賞。
「響け!ユーフォニアム」のスピンオフですが、単体で鑑賞に堪えうる映画でした。
みぞれの、のぞみに対する愛情に似た友情。それに戸惑うのぞみ。
のぞみの、みぞれに対する嫉妬。その嫉妬の感情に戸惑うのぞみ自身。そしてみぞれ。
決して分かり易い描き方はしていないと思いますが、そんなすれ違いが映画全体、画面全体に描かれていて、心に迫ります。
私は男性で、しかもアラフィフすから、少女の友情について「分かる」とは言えません。寧ろ理解出来ないと思います。
そんな私でも「切なさ」と、「寂しさ」と、「温かさ」を感じることが出来た、とても素晴らしい映画でした。
【京都アニメーション制作作品、初鑑賞作品。その繊細な世界観に一発で魅了された作品である。】。
- 公開から2カ月後に鑑賞。-
・理由は絵柄から、自分とは合わない世界だと勝手に思ったからである。
・が、映像が流れはじめ数分後に直ぐに自らの誤謬に気付く。
・素晴らしきアニメーション制作会社”京都アニメーション”を知った作品。
<2018年7月1日 劇場にて鑑賞>
10代ならぐっときたかなあ
誰もいない教室
昼過ぎの陽光の差し込む廊下
ひらめく制服のスカート…
光の早さで過ぎてしまう若い時間きらめく時を切り取った儚さは端々に感じるのですが音楽の話だから動きは少ないですね その分女の子の顔が可愛いので画面に華がないってことは全然ないんですけど どこかで涙をこらえてガムシャラに廊下を走るような想いと動きがシンクロするシーンが欲しかったな〜と思ってしまう
エンドロールの曲がメチャ良くて聴きながらDLしてしまいました homecomingさんファンになりそう
タイガーマスクからリズと青い鳥へ
見終わって、ため息が出た、
日本のアニメーションはどこまで行き着くのだろうか!
かつてのアニメーションはこうだった
①紙芝居の背景の前でペプサートを動かしてみせた「タイガーマスク」
②ぬり絵がしゃべる「サザエさん」
③メッセージ性が最前線に現れつつもその物語の真実性を裏打ちさせるため自然界描写に披写界深度を与えた「もののけ姫」
④ストーリーよりも視界に存在する光景を絵画の手法で極限まで追及する「言の葉の庭」、これは視界にありつつも見ていなかった景色を再発見する試み
そして
⑤形ないものを絵という言語で表した「リズと青い鳥」だ。
京都アニメーションは「聲の形」で“耳の聞こえない少女に聞こえている世界を語らせる”という冒険に挑戦したが今作「リズ~」ではとうとう見えない領域の、そして語らぬ思いの無言の言葉を絵において語らしめるという領域に達してしまった。
日本のアニメはもはや文学のカテゴリーに区分される時代に到達してしまった。
万年筆やキーボードで著される文学ではなくアニメーションによって表現される文学だ。
ボブ・ディランの受賞には驚いたが、いつの日か「ノーベル文学賞」をよもや日本のアニメプロダクションが受賞するのではないかと、そんな気がしてきた。
映像と音楽が素晴らしい
ブラスバンドを題材にした映画によくある青春物語をイメージしていましたが、少し意表をつかれた感じでした。
印象としては音楽と映像が秀逸です。
登場人物の仕草や表情がアニメならではの映像で繊細に描かれ、言葉に頼らずとも微妙な心境の変化を上手く表現しているなと思いました。
私は楽器に関してはあまり詳しくありませんが、フルートとオーボエという二つの楽器が二人の心情と上手くリンクしているような気がしました。
ハッピーアイスクリーム?
「ハッピーアイスクリーム」って、まだ存在してたんだ!という驚きがあった。原作者の武田綾乃は90年代生まれだから知らないはずだし、脚本の吉田玲子の世代だったんだな。死語になってたかと思ってたこの言葉が伏線として生かされていたことにも感動した(また流行るのかな?)。『響け!ユーフォニアム』は気になってはいるけど未見。そのスピンオフ作品らしいのだが、初見でも満足できる内容でした。
鎧塚みぞれという高3少女。オーボエという吹奏楽部の中でも目立たない楽器ではありますが、この作品では存在感ありすぎ。孤独で物静かなキャラなみぞれ。どことなくエヴァの綾波レイとか、涼宮ハルヒの長門有希のような雰囲気(想像してしまうと希美がアスカやハルヒに見えてくるので注意)。劇中童話のリズに自分を照らし合わせるようになり、希美をイメージした青い鳥とは対照的な孤高の女子高生。2人の関係はガールズラブの一歩手前でもあり、直接的ではないため、愛を伝えられないもどかしさを感じてしまう。
挿入される童話の世界は水彩画タッチで描かれ、ストーリーの中に溶け込んでしまい、希美目線で始まっているのにいつの間にかみぞれ目線で追ってしまう。好きだから青い鳥を解放するんだという真意がつかみ切れてないみぞれ。先生からも教えられ、音大パンフを渡されなかった希美の気持ちも伝えられ、ようやく自分の立ち位置が理解できるようになっていく。そして終盤には2人のリズと青い鳥の関係は逆だった!と・・・。
それにしてもフルートとオーボエの掛け合いは絶対的にフルート優位だと想像していたのに、これほどまでにオーボエが際立っているとは・・・。みぞれがそこまで上手いという表現なんだろうけど、音楽の作り方も上手かったのですね?と、疑問形にしてみた。
あまりにも女々しい
詳細忘れましたが…
鑑賞直後はあまりの女々しさに辟易しましたが、鑑賞後しばらく寝かせた今はこう思うのです。
こんなにみっともない映画だから、未だに私の胸に刺さっているのだと。
見てすぐに書くレビューが正解とは限らないよね?
数年後も俺の心に残ってなきゃ、名作の資格はないぜ。
学校という閉鎖環境の中で、共依存とも思えるみぞれと希美。思春期の歪...
学校という閉鎖環境の中で、共依存とも思えるみぞれと希美。思春期の歪な友人関係は誰しも覚えがあるのでは。二人が成長し、自分の生き方をすこし見いだす最後にホッとする。
少女たちの羽ばたき。大好きという気持ちを込めて
吹奏楽に打ち込む女子高生たちの青春を描いた京都アニメーション作品『響け!ユーフォニアム』の完全オリジナル劇場版。
TVシリーズは未見。鑑賞の一番の理由は、『けいおん!』『たまこラブストーリー』『聲の形』の山田尚子監督の新作だから。
なので、話もキャラクターも全く知らず。
しかしちょいと調べてみると、TVシリーズの続きの劇場版というより、これはこれで独立した一本の作品だそうな。
メインとなる登場人物も、TVシリーズではサブキャラ。
言わば、スピンオフ。
うむ、これならTVシリーズを見てなくとも何とか見れそうだ。
北宇治高校吹奏楽部の3年生。
オーボエ担当のみぞれと、フルート担当の希美。
迎える高校最後のコンクールと、親友である二人の関係…。
ベースであるTVシリーズは全国大会を目指す王道の青春ストーリーのようだが、本作はコンセプトを一新。
二人の少女の心情にフォーカス。
となると、少女たちの心の機微を描く事に長ける山田監督の本領発揮。
まるでキャラに寄り添うかのようにアップを多用し、何気ない表情、眼差し、仕草、息遣い、呼吸、間などで彼女たちの心情や距離感をすくい上げる手腕はいつもながら見事。
親友の二人だが、性格は真逆。
希美は明るく活発で、後輩からもとても慕われている。
一方のみぞれは、いつも独りで居て、無口で掴み所が無い。後輩に言わせると、「先輩、つれないですぅ~」。
そんな二人が親友ってのも意外な気もするが、希美はみぞれに気軽に話し掛け、みぞれにとっても希美は唯一親友と言える存在。
確かに仲良しなのだが…、この二人、微妙な距離感を感じるのも事実。仲はいいが、何か隔てた壁があると言うか、一歩懐に踏み込んでないと言うか、本当に本音や心の中全てを開けてない気もする。
また、みぞれは希美に親友以上の“好き”の感情を持っている。別に同性愛って訳じゃないが、この年代の少女たち特有の色んな感情を込めての“好き”の気持ち。
希美の方はどう思ってるか分からないが、みぞれの眼差しは常に希美に注がれている。追い掛けている。合わせている。
が、引っ込み思案な性格故、それがなかなか伝わらない、届かない。もどかしさ、歯痒さ。
それは演奏にも表れてしまう。
コンクールの自由曲で、みぞれのオーボエと希美のフルートの二人だけのソロがある。
これが上手く噛み合わない。
本当に二人は親友なのか…? 仲良く、上手くやっているのか…?
お互いを感じ合い、思い合っているのか…?
加えて、二人の過去のある出来事も。みぞれを吹奏楽に誘ったのは希美だが、一年の時、希美はみぞれに黙って一度辞めた事がある。それが未だに引っ掛かっている。
噛み合わない演奏、微妙な距離感の“仲良し”、相手に合わせただけの進路…。
何処かよそよそしく、二人の関係に非常に大きな陰が…。
みぞれが演奏に心を込められない理由がもう一つ。
自由曲を理解出来ない。
自由曲は童話で、本作のタイトルにもなっている『リズと青い鳥』。
孤独な少女リズの前に、人間の少女の姿に変えた青い鳥が現れ、二人で一緒に暮らす。
いつまでも一緒。
大好き。
しかし、リズはある日、青い鳥の少女を自分の元から放す…。
希美はこの童話は自分たちに似てるという。
即ち、孤独なリズ=みぞれ、活発な青い鳥の少女=希美。
みぞれもこの童話に自分や希美との関係を重ね合わせていた。
だから、理解出来ないのだ。
何故、リズは最後、青い鳥の少女を放すのか…?
大好きなら、ずっと一緒に居ればいいのに…。
自分も希美が大好きで、ずっと一緒に居たい。
でも、今…。
好きという気持ちだけじゃダメなのか…?
ある時みぞれは、童話の真意を知る。
好きだから、大好きだから、放したのだ。
ずっと“私”という鳥籠の中に居ちゃダメ。
あなたはこの広い、自由な世界へ羽ばたいて、あなたの幸せを見つけて。
それが私の幸せでもあるんだから。
離れても、大好きな気持ちは変わらない。
みぞれのオーボエのソロは誰が聴いても変わった。
圧巻で、聴く人を感動させるほどに。
それはまるで、希美に語り掛けてるようだ。
私は希美が大好きだよ。ずっと一緒に居たいよ。
でも、私はもう羽ばたくよ。
希美の事が大好きって気持ちのまま。
みぞれの心からの演奏を聴いて、希美は動揺を隠せない。
そして気付く。
みぞれを鳥籠に入れたままだったのは、羽ばたけなかったのは、自由で無かったのは、寧ろ自分の方だったのでは…?
ずっと自分を追い掛け、自分を慕ってくれていたみぞれが自分から羽ばたこうとしている。
自分は本当は何の才能も無い。置いてきぼり。ちょっとした嫉妬と、もの悲しい寂しさ…。
希美こそがリズで、みぞれが青い鳥の少女だったのだ。
二人はお互いの気持ちを打ち明け合う。
大好きな気持ち。
本音。
お互い、その気持ちを知って…。
アニメーションの枠に留まらない繊細な心理描写は、感情だけではなく思想までにも訴えかけてくるかのよう。
吹奏楽の音にまでも拘った現実パートが瑞々しく情感たっぷりならば、童話パートはカラフルでファンタスティック。
全体的にふわっとした作風で、人によっては好みが分かれたり、共感出来たり出来なかったりの山田ワールド。
かく言う自分もTVシリーズを見てないからかちと他の山田作品ほどではなかったが、それでもそのクオリティーの高さには感嘆させられ、心満たされるほど魅了される。
終わり方も個人的には良かった。
劇的な終わり方ではない。
コンクールや進路など、やるべき事がいっぱい。
その一つ一つを、頑張る。
少女は、羽ばたこうとしている。
もう一人の少女も、羽ばたこうとしている。
笑顔で、大好きな気持ちと共に、この広い空へーーー。
少女たちの切なくも美しい友情を描いた傑作
『リズと青い鳥』★4.5
(東京近郊の方は10月26日まで立川シネマシティで極上音響上映やっているので観に行こう!金は出す!)
傑作『聲の形』の山田尚子監督×吉田玲子脚本の最新作。京都アニメーションの人気アニメ「響け!ユーフォニアム」シリーズのスピンオフながら、前作の知識がなくても本作だけで楽しめる独立した1本の作品になっている。
物語は高校の吹奏楽部に所属する2人の少女の友情を美しい映像で描いた青春劇。
本作で描かれる少女たちの友情はガラス細工のように繊細だ。ほんの少しバランスが崩れるだけで壊れてしまいそうな儚さがある。しかし、そうであるがゆえに美しい。思春期の少女たちの間でしか成立しえないであろう、奇跡のような瞬間のきらめきを切り取っている。しかし、青春時代にはいつか終わりが来る。少女たちは高校卒業後の進路という現実に向き合うことで、それまでの関係の見直しを余儀なくされる。
タイトルの「リズと青い鳥」とは物語内に登場するオリジナルの童話と同名の楽曲からとったもの。孤独な少女リズと彼女のもとにやってきた青い鳥との出会いと別れの物語を少女たちは自分たちに重ね合わせる。内気な少女・のぞみは自らをリズ、活発な親友・希美を青い鳥だと思っていた。孤独なリズが青い鳥との別れを選択することが理解できず悩むみぞれ。しかし、とあるきっかけで自分こそが青い鳥だったのではないかと彼女は気づく。自分が翼を持つ自由な鳥だと気付いたのぞみは自らの思いを演奏にのせる。
愛しているがゆえに、相手の幸せを願うがゆえにリズは青い鳥との別れを選択する。鳥は大空を自由に羽ばたいている姿こそが最も美しく輝いているから。
そばにいることだけが愛情の形なのではない。相手が最もその人らしくいられるような距離をとることも必要なのだ。
友情とも愛情ともつかない共依存的な関係から抜け出した少女たちは異なる進路を選択する。この先に待っているのは別れである。しかし、別れを選択することで、むしろ彼女たちの関係は以前よりより強固で明るく力強いものになった。
少女たちは2人ともが相手の幸せを願い、自らの小さな幸せを手放せるリズであり、同時に幸せに向かって羽ばたける翼を持った青い鳥なのだ。
青春映画、アニメ映画、百合映画?(個人的には百合とは思わない)の金字塔であり、2018年暫定ベスト映画。12月に発売するBlu-rayはもちろん購入します。
『聲の形』『リズと青い鳥』と傑作を2本連続で送り出した山田尚子監督と脚本の吉田玲子さん(最近話題の『若女将は小学生』もこの方!)の実力は本物。一生着いていきます!
https://youtu.be/lQxwNaoFdQQ
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