カジュアリティーズ

劇場公開日:

解説

1966年、ベトナム。アメリカ兵エリクソンの所属する小隊は敵地の偵察任務に就く。そんな中、上官のミザーブ軍曹を筆頭とする4人の兵士が現地の娘を誘拐し、レイプしたあげく射殺するという暴挙に走る。彼女を救うことができなかったエリクソンはその件を軍上層部に報告するが、それが原因でミザーブらから命を狙われることに……。上官たちの犯罪に苦悩しながらも、やがて告発へと至る若き兵士、その孤独な戦いと葛藤を実話に基づいて描く。

1989年製作/114分/アメリカ
原題:Casualties of War
劇場公開日:1990年2月10日

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映画レビュー

3.0演出は最高!

2023年12月19日
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鑑賞方法:DVD/BD

カジュアリティーズ、とは犠牲者のこと。日本語にも歪曲表現というか、直接的でショッキングな言葉をもっと柔らかで刺激の少ない言葉に代替したようなものがあるけど、英語も一緒。多分どの言語でもそう。
「戦死者」「被害者」だと強い意味を持つ漢字が入るけど、「犠牲者」「戦没者」だと少し薄れた感じがするでしょ?

ベトナム戦争に限った事じゃないけど、戦争の被害の大きさは、情報の受け手に配慮され、特に被害をもたらした側の都合で、悲惨さをダイレクトに伝える機会すら奪われる。

英語casualtyの語源には「偶然の」という意味が含まれ、拉致された少女も、偵察行軍の5名も、もっと言えばベトナム戦争そのものすら、「たまたま運悪く起こった」出来事、というエクスキューズを持たされる。
それが「カジュアリティーズ」という言葉の持つ力だ。

カジュアリティーズ、という言葉に置き換えられてしまった犠牲の、本当の中身を、この映画は描いている。「運が悪かったから、仕方ないのさ」と割りきれない主人公の目線を持って。
「犠牲者」という曖昧な表現に隠れた戦争の真実を突きつけようとする、そんな映画だと感じた。

ただ、映画としてはイマイチ。デ・パルマらしいサスペンスフルな演出は面白いし、主演のマイケル・J・フォックスも好きだし、ベトナム戦争ものも大好きなんだけと、何だかパッとしない。
これは個人的な意見だけど、ベトナム戦争という戦争自体が「不条理」である他のベトナムものに比べて、アメリカらしい「正義の戦争」をしちゃってるところがダメなんじゃないか、と思う。
兵士も家族も民衆も、誰一人喜ばない戦争、何のために戦ってるのかわからない戦争、それがベトナム戦争が「狂気」を孕んでいる根源だと思うけど、「カジュアリティーズ」の主人公は理想に燃えちゃってるんだよね。
最初から最後まで青臭いくらいの熱血正義漢だから、戦地の他の兵士たちとの違和感がすごい。

とは言え名優ショーン・ペン、ジョン・C・ライリー、ジョン・レグイザモの若々しい姿も観られて、そこは満足。

ベトナム戦争ものの入り口としては入りやすいかもしれない。皮肉にもすごく「カジュアル」な戦争映画なのかもね。

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つとみ

4.0凄惨で不毛な戦争・・・今だからこそ観て欲しい

2023年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

 合衆国史上最大の汚点である「ベトナム戦争」。アメリカ人にとって我々の想像を絶する程のトラウマとなっているこのテーマを扱った映画について感想を述べるのは野暮かなと思いました。が、この映画から伝わるベトナム戦争の狂気は当時の私にも相当ショッキングでした。ウクライナ・ロシア戦争が勃発し一年が経とうとしている今、改めて観てもやはりインパクトが強く考えさせられてしまいました。凄惨で不毛な戦争の虚しさが身近に感じられる今こそこの映画を観て欲しいという思いを込めて、今更ながらレビューさせてもらった次第です。

 内容は観てそれぞれで感じ取ってもらうとして、個人的な感想です。私の親愛なるマイケル・J・フォックスがこのシリアスな役柄を見事に演じていることに感動。テレビドラマシリーズに始まりバックトゥザフューチャーに代表されるようにコメディーの第一人者であるにもかかわらず、一切笑いのないこの映画で全くの違和感を感じさず演じ切っている。さらに圧倒的だったのがショーン・ペンの人間の醜さを最低限まで引き出す迫真の演技。というか恐らく演技ではあの迫力だせないでしょうね。何かを超越した人です、この人は。
 そして「キャリー」「アンタッチャブル」「ミッションインポッシブル」などの数々のヒット作を送り込んだデ・パルマ監督がアメリカ人の触れて欲しくないタブーを取り扱ったその覚悟に感服。同時期に公開されたベトナムものでトム・クルーズ主演でオリバーストーン監督の「7月4日に生まれて」が大ヒットしてましたが、同じ題材をきれいごととして大衆に訴えかけたこの作品(当時の私にはそう思えた)と対照的だったように思います。

 恐らく興行的には大失敗で撮った人、戦争犯罪者の役でイメージを下げた演じた人、見たくないものを見せつけられた観る人の誰一人得しなかった映画ではないかと思います。でも、力強いメッセージを持った「これからも映画ってこうあって欲しいな」と思わせる作品でした。是非。

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おまつ

3.5"192高地虐殺事件"

2022年7月30日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

興奮

公開当時、小学生の自分ですらマイケル・J・フォックスが本作の主演に起用された驚きを、今観るとそんな違和感を感じることはなく、事実を描いているとはいえ過剰な演出やエンニオ・モリコーネの音楽ですらデ・パルマの癖がノイズに感じる部分もチラホラと!?

誰も得をしない損するような役柄をショーン・ペンは救いがない程に太々しく演じ切った、デ・パルマは『カリートの道』でもゲス野郎をショーン・ペンに当て嵌める、バカ丸出しでイライラするジョン・C・ライリーの小物っぷりが印象に残り、この二人がテレンス・マリックの『シン・レッド・ライン』で共演しているのは偶然にしても面白く!?

異常な環境による戦争の狂気から連なる事件とは思えない、日常で起こってしまう事柄にも感じられ、日本の足立区綾瀬で起きた"女子高生コンクリート詰め殺人事件"を思い出してしまう、戦争による悲劇だけでは片付けられない人間の愚かさが地球上で起こる惨劇は今も昔も。

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万年 東一

3.5ショーン・ペンを観る為の映画

2022年6月27日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

俺は第1回東京国際映画祭で、観ました。
公開当時、「プラトーン」の大成功の影響で、
第二次ベトナム戦争映画ブームが起きていた。
まさかデ・パルマ監督まで、このブームに乗っかるとは思わなかった。
デ・パルマ監督は、こういう反戦映画のような
重いテーマの作品は合わないのではないか?
大御所エンニオ・モリコーネが音楽を担当しているが、
今回はとても大袈裟な感じで、浮いてる感じでしっくりこない。
公開当時、マイケル・J・フォックスがシリアス演技に挑戦すると
話題となったが、やはり完全にショーン・ペンの圧倒的な演技力に、
マイケルのシリアス演技の下手さが浮き彫りとなってしまった結果に。
撮影中、役に徹していたショーン・ペンは、マイケル・J・フォックスと
一言も言葉を交わさなかったという徹底ぶり。
ショーン・ペンの演技力に脱帽!

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おじ
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