フィッシャー・キングのレビュー・感想・評価
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祝30周年、ギリアムの忘れがたい傑作
気づけば、この映画が世に出てから今年でちょうど30年。奇想天外な作風で知られるギリアム監督だが、彼がこれほど「ドラマ」にフォーカスした作品を私は他に知らない。コミカルにもシリアスにも振り切れることのできるロビン・ウィリアムズの存在感もさることながら、それにしっかり呼応し手綱を握りしめるジェフ・ブリッジスの巧さも際立っている。特筆すべきは、多くの通勤客が行き交う地下鉄駅のコンコースが巨大な社交ダンスのボールルームへと変貌するシーン。リアリズムからファンタジーへの流麗な移り変わりが実に見事で、人々がすれ違いざまに手を取り合い、華麗なステップを踏み始める姿にうっとりしてしまう。押してダメなら引いてみればいい。その精神を実践したのかどうかはわからないが、少なくとも苦難続きだった当時のギリアムが従来と異なる方法論で新たな表現性を切り開いた、見事な人間ドラマ。何度も見たいし、大切に受け継ぎたい一作だ。
ことばのささいなミスで誰かを傷つけてしまって、落ち込んだことがある...
ことばのささいなミスで誰かを傷つけてしまって、落ち込んだことがあるなら、この映画がとびっきり愉快にはげましてくれる。
そして、呆れるほどかんたんに取り戻せるって、教えてくれる。
どんな映画か、ひとに説明してるだけで涙が出てくる一本。
ギリアム監督のメッセージが優しくって、めちゃくちゃ悔しい。
「もし僕の映画で君の一日を台無しにしたのなら、次の作品で最高に幸せな気分にしてあげると約束する。だから、任せてくれ!」
(ブラザーズ・グリム制作時のインタビュー)
そんなこと言われたら、イヤでもずっと付いて行くしかない。
ったく、わかりましたよ。ずっとあなたのファンで居ますよ。
私はこの映画が大好きで、だからこそ、ロビン=ウィリアムズが許せない。
1つが損なわれたら、別な幸せを見つけられると教えてくれたのはあなたじゃないですか。
一緒に芝生に寝そべって、たのしいことを考えてくれる友達もいたはずなのに。
家族やたくさんのファンを泣かせてさ、なんだよ。がっかりだよ。
馬鹿、死なないでよ。
破壊されても愛は再生し続ける。尽きせぬ泉のように
NYの超売れっ子DJジャック(ジェフ・ブリッジス)はある日ラジオで不用意な発言をし、それがもとで大量殺人事件がおこってしまう。事件の3年後、今はうつ病でビデオ屋の店員におちぶれた彼は例の事件で妻を亡くした元大学教授のホームレス、パリー(ロビン・ウィリアムス)に出会う。パリーはキリストの最後の晩餐の聖杯を探しており、それを探すカギがジャックにあるという。パリーとつきあううちにジャックの人生は変わっていく。T・ギリアム感動の傑作!
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R・ウィリアムスはこういう作品がいい!と思います。気のよさそうなホームレスの彼が、奥さんの死んだ場面を思い出すシーンは胸をつかれます。「ガープの世界」のアマンダ・プラマーがここでも印象的な役で登場しています。
ジャックが「金を払って救われるものなら!」と苦しむところはよくわかります。人からとりかえしのつかないものを奪ってしまった重さ、それは故意でなくても関係ないですね。
う~ん、テリー・ギリアムらしい!ファンタジックだし映像も・・。ロビン・ウィリアムス若い!2回見たんですが前に感動したところと同じところで(;_;)ウルウルきましたね。破壊されても生きている限り愛は再生する!再生し続ける・・そんな感じですねえ。まるで本を読むような、素敵な一作です
悔恨と贖罪と救済の聖杯記
強烈な悪夢のような映像が持ち味のテリー・ギリアム監督にしては、珍しくストレートなドラマでした。放送中の暴言がきっかけで乱射事件が起きてしまったショックで人生を見失ってしまったDJと、その事件で最愛の妻を失い、精神を病んでいるホームレスとの奇妙な友情と救済を描いた佳作です。痛烈な悔恨と自責の念に押し潰されそうなDJの苦悩をジェフ・ブリッジスが見事に演じていて、いきなり映画の世界に引き込まれます。そこに事件の犠牲者であるホームレスが登場することで、ストーリーは現実と幻覚を交えながら、贖罪とも友情からの善意とも思える奇妙な展開を見せますが、ロビン・ウィリアムスの目まぐるしい感情の変化と動きが圧倒的です。途中でややダレるところもあるけど、ギリアム監督らしからぬ粋でハッピーな幕切れが心地よいです。主演の二人は、まさに渾身の演技で間違いなく代表作と言えます。
ロビン・ウイリアムズのパリーがとにかく最高
キャストがはまっててストーリーがしっかりしてて音楽がマッチしてる映画が好きで、これもそう。DJジャックのテーマの不穏な感じもジャズの名曲「how about you」も素敵で、パリーが恋している情景の駅のダンスシーンも、赤の騎士の禍々しさも魅力的。
この作品は奇跡を描いていると思うのだけど、ただ喉が渇いているとそそがれた漁夫王の杯が聖杯だったように、奇跡はだからこそ奇跡で、悲しみと苦悩が昇華されることは簡単じゃなくても、奇跡はおきたっていい。そういう光景と世界がとにかく貴重。
改めて今回観て思ったのは、パリーはジャックの顔を初めて意識的に見るシーンで特別な反応をしているんだなと。これは「(聖杯をとりにいってくれるのは)彼だ」と思うきっかけでもあるけど「(事件のDJは)彼だ」という意味があったのかもしれない。どこまでパリーがその前の記憶を意識しているかはわからないけど、あれはそう解釈していいんじゃないか。
ジェフ・ブリッジスもアマンダ・プラマーもとてもいいけど特にロビン・ウイリアムズのベストアクトかっていうくらいパリーはもうとにかくパリーで、パリーのロビン・ウイリアムズが大好き。彼はずっとわたしの心に残っていくと思う。淋しさも勿論あるけどでも心に残り続ける特別な作品。
聖杯
ロビン・ウィリアムズの出演作の中でも好きな方のロビン・ウィリアムズ作品
テリー・ギリアム作品の中では解りやすい作品
ジェフ・ブリッジスがまだカッコイイ頃で、アマンダ・プラマーがとってもキュート♥
中華料理屋のシーンは爆笑!!
ロビンウィリアムズとアマンダプラマーが面白い
午前十時の映画祭12にて。
過激なトークで人気の売れっ子DJジャックが、ある日の発言で銃乱射事件が起き、仕事を辞めてしまった。3年後、落ちぶれたジャックは、暴漢に襲われたところをホームレスのパリーに助けられた。パリーが3年前の銃乱射事件で妻を亡くしたことを知ったジャックは彼の力になりたい、パリーが好きな女性・リディアとの間を取りもち・・・てな話。
登場人物個々に見れば面白いのだが、全体を通してイマイチよくわからなかった。
ジャックの彼女のアン役のマーセデスルールが良い女だったし、パリー役のロビン・ウィリアムズもなんかほのぼのとして良かったし、リディア役のアマンダプラマーのコミカルな演技も面白かったんだけど。
映画史に残るシーン
グランド・セントラル・ステーションのシーンはまさに映画史に残る名シーンだと思う。今ならCGでなんでもできちゃうけど、どうやって撮影したんだろう。
東京駅や渋谷スクランブル交差点で、みたいなもんですよ。
他にも、レストランでの焼そば餃子食べるシーンや、ロビン・ウィリアムズのなにのぶらぶらとか、忘れられないシーンがたくさんある。公開から30年以上経っててもしっかり覚えてた。いい映画なんだろうな。
あのまだまだイケイケの時代に、言わば負け組(嫌な言葉だな)の癒し?をテーマにしてた。傷ついた者の再生。今なら珍しくないけど、テリー・ギリアムはやっぱり普通じゃないな。
辛いストーリーだけど、しあわせになってほしい人がみんなしあわせになる。いつまでも心に残る作品。
ロビン・ウィリアムズは唯一無二の俳優でしたね。
なぜか
なぜか「ソード・フィッシュ」と勘違いして
観てしまった一作。何故だ。
ヘビーで不思議な映画だった。
あの中華料理店でのシーンからの、
家の前でのキス、そして転落。
あの一連が印象深かった。
だいぶ重いストーリーではあるが、
時折挟まれるテリー・ギリアム感と、
愛やファニーさで全て解決しようとするのが
なんだかいただけなかった。
昨日チャゼルの「BABYLON」を観た後だったので、
スクリーンの中のロビン・ウィリアムズの姿が
妙に神々しかった。
思いの外、感動♡
ロビン・ウィリアムズの追悼番組だと思う
フジテレビの夜中の放送を録画しておいたの
モンティ・パイソンのテリー・ギリアム監督のユニークな作品、コメディ&ファンタジー
グッとくるシーンが何カ所もあった…
一番好きなのが洋ピンビデオ「クリーマー、クリーマー」
ロビン・ウィリアムスが公園で裸になるシーンが素敵だ。役者魂を感じた。妻を失って自分を失ってしまったのに、ホームレスとなり力強く生きている様が素晴らしい。ジャック役のブリッジスと巧く対比させてあった。リディア役のアマンダ・プラマーも身体をはった(?)演技で笑いを誘う。
後半になると、クリスマス映画のように奇蹟を起こしファンタジー映画になっているのだが、ここは好きではない。もっと社会派映画のような一面を見せてくれたらもっといい映画になったであろうに。
一番好きなのが洋ピンビデオ「クリーマー、クリーマー」。
I like NY in June, how about you? テリー・ギリアム監督の大人のファンタジー
アクの強い作風で好みが分かれる監督テリー・ギリアムの中でも珍しいハートウォーミングな作品です。随所にテリー・ギリアムっぽさは出てくるんですけど、最後までスッキリと観れます。
内容としては毒舌DJだったジャックとそのジャックがきっかけで起こった銃乱射で妻を失ったパリーの再生の物語。ちょっとおかしなパリーを演じたロビー・ウィリアムズは流石に観る人を惹き付けます。ロビー・ウィリアムズってこういう役が良く似合うなぁ。失墜したDJジャック役のジェフ・ブリッジズ、最初の方の陰鬱な表情と最後使命をやり遂げ病院で楽しそうに指揮者をしている姿の違いといったら。なんとなく印象の薄かったジェフ・ブリッジズなのですが意外といい役者さんだったんだと思いました。
やはり駅で好きな女性とすれ違っただけで周囲の人が踊りだすシーンは秀逸ですね。誰かに恋をしている時の気持ちを上手く表現しています。奥手なカンジだったパリーですが即興でボトルのキャップで椅子を作りあげたりとちゃんと女の子を惹き付ける要素を心得てますね。中華でダブルデートとその後のシーンは観ているこちらまで心温かくなります。
というかアンがいい女過ぎや!この作品でアン役のマーセデス・ルールがアカデミー賞を取ったのはきっとアカデミー会員のおじさん、おじいさん方がアンに「男に尽くしてくれる理想の女性像」を見たからに違いない!!
好きな人とのキスで過去のトラウマが蘇ってきてしまうのは一筋縄でいかないテリー・ギリアムらしさといった所でしょうか?フラッシュバックに襲われたロビー・ウィリアムズが亡き愛妻を思い出し、暴漢に襲われる時に死んで妻に会える事を予感して「サンキュー」っと口してしまうシーンはちょっとゾッとしました。
「6月のNYが好き」っという全編を流れる曲が象徴しているかのような、テリー・ギリアム監督としては毒っけの少ない優しい作品でした。
友情物語
現代にディストピア表現とファンタジー要素、ソノ世界観が本当にドン・キホーテが撮りたいンだなぁ、T・ギリアムは。
随所に監督らしさが醸し出され主要登場人物のドラマ性を濃く描いていて不器用なカップルのやり取りにJ・ブリッジスの恋愛模様と感動出来る仕上がりに。
序盤から話の展開が読めずラストには友情物語とハッピーエンドで幕を閉じスッキリな終わり方。
聖杯の心
ようやっとのレビュー500本目ということで、
折角だしお気に入りの映画のレビューでもしてみる。
というわけで、
ロビン・ウィリアムズ&ジェフ・ブリッジス共演の
'91年作『フィッシャー・キング』をご紹介。監督は
『12モンキーズ』『ゼロの未来』の奇才テリー・ギリアム。
あらすじ。
毒舌がウリの人気DJ ジャックは、自身の不用意な発言
が招いたある事件のショックで世間から雲隠れ。今は小さな
レンタルビデオ屋を経営する恋人アンの家に居候の身だ。
ある晩、自暴自棄になって街をさ迷っていた彼は、
ホームレスのパリーという男に命を救われる。
パリーは、神のお告げを受けて伝説のキリストの
聖杯を現代のニューヨークで探しているという妙な男。
最初は彼をイカれた人間としか思っていなかった
ジャックだが、パリーと自身の意外な因縁を知り、
彼の助けになりたいと行動を共にする事に。
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ジャンルで言うならこの作品は人間ドラマなのかもだが、
ギリアム作品を知る人ならご存知だろうあの独特な
ユーモアと奇妙なテンションに彩られた作品だ。
グランドセントラル駅の雑踏が巨大な舞踏会へ変貌する名場面、
チャイニーズレストラン内の柔らかで暖かな色合い、
パリーを付け狙う“赤い騎士”の荒々しいデザインなど、
映像はカラフルで幻想的、時に暗く悪夢的。
酔いどれたようにアンバランスなカメラワークも手伝い、
現代ニューヨークが舞台なのに雰囲気はまるで異世界のよう。
ユニークで笑えるシーンや、ちょっとトんでるキャラも満載だ
(人によってはそのアクの強さが苦手かもだが、
どうかまずは最初の30分間を我慢してほしい)。
パリーを演じた故ロビン・ウィリアムズのブッ飛び演技と、
それに振り回されるジェフ・ブリッジスの掛け合いは
最高に可笑しいし、故マイケル・ジェター演じる元シンガー
の絶唱シーンやチャイニーズレストランでのドタバタ
なんて、思い出すだけでニンマリしてしまう。
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だけど、ギリアム監督の作品は安易な現実逃避を許さない。
彼の描くファンタジーはむしろ、無慈悲な現実をいっそう
際立たせるように機能しているのではと思える時がある。
ジャックが出会う人々の言動は滑稽に見えるが、
時々ふっと、彼らなりの論理や悲しい想いが見え隠れする。
精神病院の場面でのゾッとするような冷たさ等も忘れ難いし、
パリーの過去を描いた場面は情け容赦無く残酷だ。
幸せの絶頂の後に訪れるあの悲劇的な展開には、
本当に胸が圧し潰されそうになってしまう。
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そんなシビアさを打ち出しながらも、
鑑賞後に残るのは晴れやかで幸福な後味。
パリーが恋い焦がれる女性リディアに想いを打ち明ける場面。
断言したっていい、これは僕が今まで観た映画のなかで、
最も感動的で胸に迫る告白の言葉だった。
パリーとリディアとの会話にはこんな台詞がある。
私が出版を手掛けてるのはゴミみたいなロマンス小説よ、
と自虐的に語るリディアに、パリーはこう答える。
「時にはゴミの中から美しいものが生まれることもある」
ここだ。この映画の全編で貫かれているのはこの視線だ。
傷付いた者、打ちひしがれた者に向けられた優しい眼差しだ。
傷だらけの自分を愛してくれる人がいる幸せ。
傷だらけの自分にも居場所がある幸せ。他方、
相手の欠点も過去も含めていとおしく思える気持ち、
誰かをただ純粋に救いたいと願う気持ちの美しさ。
劇中に登場する『フィッシャー・キング』の物語が
示すよう、人間の価値は外見や名声では決して測れない。
嘘つきで身勝手だったピノキオが、初めて人を救う為
に行動したことで人間として生まれ変われたよう、
人間性とは『誰かの為になりたい』と願う純粋な衝動なのだと思う。
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正直に言うと、僕も本作が完璧な出来だとは思っていない。
終盤はやや性急だし、アクが強過ぎると思える部分もある。
だけどほら、ビリー・ワイルダーだって言ってるじゃないか。
「完璧な人なんていないさ(Nobody's perfect.)」
物事の好き嫌いはテストの採点とは違う。
演技脚本撮影音楽が見事でも好きになれない映画はあるし、
逆に、欠点があってもなぜか好きな映画だってある。
僕らが何かを好きになるのは、
それが何から何まで完璧だからじゃない。
欠点を抱えながらも必死にもがいてここに在りたいと願う、
そんないじらしさに惹かれるが故だと思う。
だから僕はこの映画を愛して止まないのだと思う。
<了>
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