劇場公開日 1992年4月4日

「I like NY in June, how about you? テリー・ギリアム監督の大人のファンタジー」フィッシャー・キング アキ爺さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0I like NY in June, how about you? テリー・ギリアム監督の大人のファンタジー

2016年5月29日
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鑑賞方法:DVD/BD

アクの強い作風で好みが分かれる監督テリー・ギリアムの中でも珍しいハートウォーミングな作品です。随所にテリー・ギリアムっぽさは出てくるんですけど、最後までスッキリと観れます。

内容としては毒舌DJだったジャックとそのジャックがきっかけで起こった銃乱射で妻を失ったパリーの再生の物語。ちょっとおかしなパリーを演じたロビー・ウィリアムズは流石に観る人を惹き付けます。ロビー・ウィリアムズってこういう役が良く似合うなぁ。失墜したDJジャック役のジェフ・ブリッジズ、最初の方の陰鬱な表情と最後使命をやり遂げ病院で楽しそうに指揮者をしている姿の違いといったら。なんとなく印象の薄かったジェフ・ブリッジズなのですが意外といい役者さんだったんだと思いました。

やはり駅で好きな女性とすれ違っただけで周囲の人が踊りだすシーンは秀逸ですね。誰かに恋をしている時の気持ちを上手く表現しています。奥手なカンジだったパリーですが即興でボトルのキャップで椅子を作りあげたりとちゃんと女の子を惹き付ける要素を心得てますね。中華でダブルデートとその後のシーンは観ているこちらまで心温かくなります。

というかアンがいい女過ぎや!この作品でアン役のマーセデス・ルールがアカデミー賞を取ったのはきっとアカデミー会員のおじさん、おじいさん方がアンに「男に尽くしてくれる理想の女性像」を見たからに違いない!!

好きな人とのキスで過去のトラウマが蘇ってきてしまうのは一筋縄でいかないテリー・ギリアムらしさといった所でしょうか?フラッシュバックに襲われたロビー・ウィリアムズが亡き愛妻を思い出し、暴漢に襲われる時に死んで妻に会える事を予感して「サンキュー」っと口してしまうシーンはちょっとゾッとしました。

「6月のNYが好き」っという全編を流れる曲が象徴しているかのような、テリー・ギリアム監督としては毒っけの少ない優しい作品でした。

アキ爺