時計じかけのオレンジ

ALLTIME BEST

劇場公開日:

解説

原作者のアンソニー・バージェス自身が”危険な本”と語った同名の小説を映像化。非行少年による暴力が横行する近未来のロンドン。アレックスも仲間を引き連れ、喧嘩とレイプに明け暮れる日々を過ごしている。ある夜、中年女性を死に至らしめた彼は刑務所行きに。しかし2年後、とある治療法の被験者になることを条件に、社会に戻ることを許されるが……。アレックスが心酔するベートーベンの第9交響曲や、レイプシーンに流れる「雨に唄えば」など、音楽による効果的な演出が随所に見られる。

1971年製作/137分/R18+/アメリカ
原題:A Clockwork Orange
配給:ワーナー・ブラザース映画
劇場公開日:1972年4月29日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第29回 ゴールデングローブ賞(1972年)

ノミネート

最優秀作品賞(ドラマ)  
最優秀主演男優賞(ドラマ) マルコム・マクダウェル
最優秀監督賞 スタンリー・キューブリック
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映画評論

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写真:Album/アフロ

映画レビュー

5.0今なお我々はこの映画に追いつけずにいる

2017年7月29日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

笑える

怖い

ミルクバーのソファからじっと画面のこちらを凝視する青年アレックス。その表情はまるで観る者をことごとく目で切り刻んでいるかのようで戦慄が走る。奇想天外で、挑発的で、人を思い切り不快な気持ちに陥らせる場面も多い本作には、今見ても常人には真似できない色彩、美術、衣装、カメラワーク、すべてにおいて時代の20歩くらい先を突っ走ってる凄みが満ち満ちている。公開45年を超えた今もなお、我々はこの映画に追いつけずにいる。

クライマックスでに突きつけられる「社会」へのアンチテーゼも鋭く突き刺さる。ただ、当のキューブリックは、自身が脅迫状を受け取ったのを機に「家族の安全が保証出来ない」として強気な態度を変え、73年に英国内の上映を禁止した。その後本国では長らく上映が叶わなかったと言われる。「博士の異常な愛情」ではないが、凄まじい爆弾を作り出したことに最も思い悩んだのはキューブリック本人だったのかもしれない。

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牛津厚信

4.5完全なる暴力肯定の世界観

2024年4月19日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

怖い

興奮

感想

この作品でます注目するところは、
劇中の社会設定と美術装飾全般である。

写真家でもある監督のきびしい設定要求に
制作側が見事に応えている感がひしひしと
感じられ、当時最先端のポップカルチャーと
前衛芸術をエスプリの効いたセンスでまとめ
上げた、決して明るい未来とは言えない殺伐
とした世界を創造していて、現実的な社会科学
の水準は映画制作当時よりも低く、同時に経済
状況も悪化している貧富の差が激しい、
近未来の閉塞観に満ち溢れた世界を見事に
現出させている。

21世紀の今現在、鑑賞しても、
シチュエーション的、モード的、また、映像的
なものを含め、古さを全く感じさせない。
映画自体の完成度合いが高く、特筆に値する。

次は原作と脚本である。原作者が危険な本と
喧伝した理由が、主人公達不良グループの
人間性が極端に暴力に偏っている事。また、
そのような人間に対して反社会性を矯正する
治療と称して、人間性を根本から否定し、
破壊する心理的拷問と、極致的な名を変えた
暴力の応酬を行う、人間の精神破壊がテーマ
となっている。

キューブリックは原作の要点を押さえ、
映画脚本をよりデフォルメしているため、
さらに強烈な印象を作り出す事に成功している。
不良グループ内だけで共感されるスラングを
会話に多用して不気味な存在感と雰囲気を
増大させている。英語の意味的と発音に韻を
ふんだスラングなので英語に精通していない
と深く本意を理解できない。外国人にして
みると、その訳の解らなさがまた恐ろしく感じる。

主演のマルコムマクダウェルは当時無名に
近い、舞台出身の新進気鋭の俳優であった。
そのエキセントリック且つ、二重人格者的演技は
全世界に衝撃を与えた。
アレックスはこの俳優でなければいけない。
というより、この俳優しかいない。

真面目に何でも真にうけてしまう人は、
この映画を観ない方がいい。真に受けると
あまりにも危険で恐ろしい。

映画を観終わった後、
なんとも言えない後味の悪い気分になるが、
時間が経つと再び怖いもの観たさで観たくなる
中毒性の高い映画である。

⭐️4.5

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Moi

5.0犯罪者の更生を皮肉った傑作

2024年4月19日
スマートフォンから投稿

怖い

難しい

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ゆい

4.5映画で魂を統治せよ、そんな世界はいらない

2024年4月19日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

スタンリー・キューブリック監督作品。
不朽の名作だ。

本作の主人公・アレックスが暴力と無秩序が蔓延る社会で、不良少年から善良な「社会」人になるために、懲罰から治療へと向かう。それは魂の統治といっても過言ではない。その統治において採用される治療法が、映画鑑賞である。目を瞬きができないように固定器具で見開き、バイオレンス映画やポルノ映画をひたするみる。そして映画におけるイメージと現実世界を「連係」させ、現実の暴力とポルノに吐き気を催させる。治療手段に映画を取り入れるメタな視点と危険性の指摘に驚きつつ、この「連係」は重要な概念である。

例えばアバンクレジットで赤と青のショットを連係させて別の色のイメージを産み出していたり、「雨に唄えば」のような陽気な音楽と暴力に満ちた映像を連係させて不穏なイメージを想起させる仕掛けをしている。このように物語における鍵となる概念とともに映画とは何か、イメージとは何かを問いかける重要な概念なのである。

治療による連係によってイメージは創出できたが、倫理観は育まれない。
かつての懲罰では内省による改心、それによる倫理的な行為が目指されていた。しかし心を治療し終えたのなら、正常であることが暗黙の了解になってしまう。だからアレックスの社会復帰後の行動原理も分かる。

物語の終盤では、アレックスが暴力とポルノに回帰する。これは退行とも解釈できるが、善く生きるために、生権力を握らされず私たちが社会を統治するためには、肯定的に受け止めなくてはいけないのではないだろうか。暴力とポルノを社会から、一個人から抹消するためには、本作のような魂の治療が必要になってくる。しかしそれは倫理観を醸成することはない。ましてや連係によって別様の暴力やポルノをイメージさせることだってあり得る。だから暴力やポルノを懐柔させながら、社会に組み込む遊びの仕掛けが必要だと思うのである。

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