劇場公開日 2002年5月11日

「ピーター・パーカーの物語。」スパイダーマン NandSさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ピーター・パーカーの物語。

2023年8月18日
PCから投稿
鑑賞方法:TV地上波、VOD

悲しい

楽しい

興奮

前提として
・多分6,7回目
・原作と思われるコミックは一部読後。
・サム・ライミ監督の他作品だとマーベルコミックス関連作品を視聴済。

今では伝説となった、スパイダーマン実写映画。

あの"スパイダーマン"ということで、CGを使ったスイングやクモ糸、スパイダーセンスにグリーンゴブリンとのアクション、などなどエンタメとしての見どころが満載。
なのだが、あくまで"ピーター・パーカー"の物語としてまとめているところが非常に良い。

まずはどう見ても童貞顔のピーター・パーカー。6歳の頃から好いている女の子に声もかけられない。ここの描写が絶妙に気持ち悪いんだけど、共感する人も絶対いる。特に現代の日本とかそうなのでは?
頭はいい(描写は薄め)が、いじめっ子にいじめられる高校生活。
しかし偶然手に入れたスーパーパワーから、自信もつき少しづつだがMJとの距離も縮めて行けるように(マスク越しのキスまで!)。
急にできなかったことができるようになって自信が沸き、異性との関係に強気になる感じ。めっちゃ思春期じゃん!
今でいう"なろう系"。というかこっちが元祖か。

出てくるヴィランは、ピーターの分身のような存在("グリーンゴブリン"ことノーマン・オズボーン)。一歩間違えればピーターも同じ犯罪者になっていた。
ここの岐路にベンおじさんという存在が影響している。"大いなる力には大いなる責任が伴う"。この言葉とベンおじさんの死(自分のせいというところもミソ)がピーターに大きな影響を与え、結果的にノーマンと逆の道を突き進む。
ここの対比がうまい。原作もすごいが、この映画の描き方もすごいと思う。

マスクをつけたヒーローとヴィランにより、人間の表と裏の顔(二重人格となったノーマンが顕著)もテーマになっている。デイリービューグルの社長、JJJが「なぜマスクをかぶる?」と言っていたことからも感じる。
日本の特撮好きな人にもハマる要素があり、自分が好きなのも納得。

さらに絶対に欠かせない、ヒロインのMJ、親友のハリー、唯一の家族となるメイおばさん。この三人の存在が、ピーターの成長と変化に大きく影響してくれる。

この三部作のMJ、めっちゃ嫌われてるけど、ガールフレンドって実際こんなもんじゃないの?
彼女には彼女なりの事情もあるし、夢もあるし、バイトでも色々と文句言われるし……で迫られて色々と付き合ってはみるけど、最終的には断りピーターへの好意を向ける。ヒロインって括っちゃうと変かもしれないけど、人物像としてみたらそんなに違和感はない。

ハリーもかなり良い。親友としてめっちゃいい奴。たまにピーターにとって嫌なことしてくるけど、そこも含めて友達って感じ。でもケンカするならもっと派手にケンカしてくれよ……なんでそんな陰湿なケンカするんだよ……

メイおばさんはどこまで行ってもおばさんとしていてくれる人。精神安定剤。自分もおばあちゃん子だったのでピーターの感覚が分かる。かつ、メイおばさんとの会話で、ピーターがめっちゃ良い子だってことも実感する。

上記のようにキャラクターもさることながら、映像面でもかなり良かった。
パッと頭に浮かぶシーンを考えてみると、クモの能力を手に入れて身体の変化に戸惑うシーン。有頂天になって駆けまわるシーン。逆に、ノーマンが能力を手に入れるシーン。ノーマン×ゴブリン、二重人格のシーン。キスのシーン。メイおばさんが襲撃されるシーン。ピーターパーカーとして、スパイダーマンとしての選択を迫られるシーン……などなど、演出面で見てもなかなか楽しいし面白いアイデアが詰まっている。
でもCGは微妙。当時としてはすごかったのかも。時代の変化にはかなわず……?

他のピーターパーカー作品と違うな、と感じる部分もいくつかあって、
・頭の良い描写が薄い。
・戦闘中に軽口を叩かない。
・手首から直接クモ糸が出る。
などなど、独自の解釈とか描き方があるのもひとつの魅力としてなり得てる。
MJを誘うために高級車を手に入れようとするピーターとか好き。

作品としてはすごく良いのだけれど、個人的には
・全体的にダイジェスト感がある(悪くは感じなかったけど)。
・市民を助けるシーンが物足りない(ただし、市民が協力してくれるシーンはテンションヤバい。最高!!)。
・スイングもう少し見たかった。
・大学に通っているの???
って感じた。あくまで個人的な好みの部分だと思う。

色々と書いたけど、
何度観ても安定した面白さがあるし、新しいスパイダーマンの作品が出るたびに見返したくなる、伝説かつ基準的な作品。
スパイダーマン好きはもちろん、映画好きにもぜひ観てほしい。

NandS