至福の映画体験! “音のプロ”が創出する、極上の音響空間で楽しむ「オーディオルーム新文芸坐」

2023年7月9日 10:00


世界的音響エンジニア、オノ セイゲンさんによるプログラム
世界的音響エンジニア、オノ セイゲンさんによるプログラム

「目指すはラグジュアリーなオーディオルーム。」をテーマに、今年4月から開催されている東京・池袋の新文芸坐で世界的音響エンジニア、オノ セイゲンさんによるプログラム「Seigen Ono presents オーディオルーム新文芸坐」。これまで、「ニュー・シネマ・パラダイス」完全オリジナル版、「真夏の夜のジャズ」4K修復版をはじめ、エンニオ・モリコーネ坂本龍一関連作品などを上映しています。今回、映画.com編集部が「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」の上映を体験しました。

作曲家、アーティストとしてキャリアをスタートし、その後録音エンジニアとして、1982年の「坂本龍一/戦場のメリークリスマス」から、ジョン・ゾーン、アート・リンゼイ、デイヴィッド・シルヴィアン、マンハッタン・トランスファー、オスカー・ピーターソンキース・ジャレットマイルス・デイビス、キング・クリムゾン、渡辺貞夫加藤和彦ら多数のアーティストのプロジェクトに参加という輝かしい経歴をお持ちのオノさん。

オノさんと新文芸坐の映写技師長・梅原浩二さん
オノさんと新文芸坐の映写技師長・梅原浩二さん

録音エンジニアという仕事は、音楽ファンでないとなかなか知る機会のない職業ですが、もちろん映画でも音楽は重要な要素。オノさんは最近では「ニュー・シネマ・パラダイス 4Kレストア版 Blu-ray」「ヴィム・ヴェンダース ニューマスターBlu-ray BOX」などを手がけており、まさに日本を代表する音楽界の縁の下の力持ちです。「オーディオルーム新文芸坐」は、新文芸坐の「BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM」をダイレクトに調整し、極上の音響空間を作り上げ、オノさんがリマスターしたBlu-rayだけでなく、音楽や音の素晴らしい映画を紹介していく企画です。

この日の上映前にはDJタイムがあり、オノさん選りすぐりの楽曲が流れました。上映作品がジャズ映画ということで、フュージョンをメインとしたナンバーと新文芸坐の赤い座席があいまってムーディな雰囲気に。映画館をまるでラウンジにいるかような心地の良い空間に変身させる音楽の力ってすごい。アルコール類の販売もあるので、早めに入場してリラックスしながら上映前のひとときを楽しむのも一興ではないでしょうか。

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スクリーンの後ろに設置された「BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM」のフロントLCRスピーカーは、大型4ウェイシステム、中高域には同軸型ドライバーを搭載した大型ホーン。中低域と低域およびサラウンドスピーカーのドライバー口径をすべて15インチに統一。SL、SR各4台、BSL、BSR各2台の計12台を導入。サブウーファーは、1台当たり18インチドライバー2本を搭載した強力なサブウーファーを4台設置しています。

スクリーンの後ろに設置された「BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM」のフロントLCRスピーカー
スクリーンの後ろに設置された「BUNGEI-PHONIC SOUND SYSTEM」のフロントLCRスピーカー

そして、お待ちかねの「ジャズ喫茶ベイシー Swiftyの譚詩(Ballad)」本編がスタートです。本作は岩手県一関市にある「ジャズ喫茶ベイシー」(※現在コロナの影響で休業中)にスポットを当てたドキュメンタリー。約50年営業を続けるベイシーは、開店以来使い続けるJBLのオーディオシステムで、マスターの菅原さんが生み出す“音”が、日本はもとより世界的にも大きな評判を集めており、連日多くのジャズファンやオーディオファンが訪れます。そんなベイシーと菅原さんのこだわり、日本ならではのジャズ喫茶文化の変遷をアーティストや関係者などのインタビューを交えて、名曲と共に映し出します。

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オノさんは「試写会で観たときから、これはカッコイイ音、世界中で上映されるべき映画だ! と個人的に思っていました」「自分が制作に携わった映画ではないけれど、星野監督も言うように映画館の良い環境で聴かせたい、あ、ここでできる」とコメントし、この日の上映のために「ベイシーで聞いた感じを再現するように、感覚的なものだけれど、0.2デシベル単位で調整した」と話します。

筆者は特別に音楽に詳しい方ではありませんが、映画本来の音と楽曲の構成、そしてオノさんの作り上げた音響空間が相まって、上映中は本当に伝説のジャズ喫茶を体験している気分に。本作のオープニングとラストでかかるカウント・ベイシーの名曲よろしく「ワンモアタイム!」と、叫びたくなるほどの満足度です。これは、ぜひいろんな映画で体感してみたい!と素直に思う至福の経験でした。

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また、この日は、元ステレオサウンド編集長の小野寺弘滋さんと、神田のオーディオ専門店ダイナミックオーディオのアドバイザー厚木繁伸さんという“オーディオ”のプロふたりを招いてのトークが行われました。厚木さんは、「身体で感じる、もう脳がビリビリ反応するような」上映だったと感想を語り、小野寺さんは、ステレオサウンド誌で連載を通しての菅原さんとのやり取りをふり返り、“ジャズな人”というキーワード、音楽と自由ということについて「菅原さんは『4分音符一つに永遠を見る』とよくおっしゃっていた。自由を見られる人がジャズな人」と評するなど、ベイシーでの思い出やオーディオ機材の話題などで盛り上がります。映画の監督やキャストとは異なる、オーディオや音、音楽に関係する方々の専門的なトークが聞けるのも「オーディオルーム新文芸坐」の特徴です。

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そんな大充実の上映後、お客さんが退場した後に、翌日からスタートの坂本龍一さんの特集用の調整を見学しました。「Ryuichi Sakamoto: CODA」本編、「シェルタリング・スカイ」などのほか、本企画で特別上映の、坂本さんが監督を務めた「東北ユースオーケストラ演奏会2023@オペラシティ」で3月26日に収録されたばかりの5.1ch Blu-ray、マーラーの交響曲 第5番から第4楽章「アダージェット」(『ベニスに死す』などで印象的に使われていますね)を、オノさんと新文芸坐の映写技師長・梅原浩二さんが、専門の機材を用いてそれぞれに合った音に合わせていきます。オノさんの繊細な感覚でコントロールされた音を通すと、映像から届く視覚情報がより一層強く深く脳に刻まれる感じがしました。

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「東北ユースオーケストラ」の終演後に坂本龍一監督から「Superb! Bravissimo(拍手×5)素晴らしかった!! よかったです。みんなありがとう(拍手×3)お疲れさまでした♪」とメッセージが届いた様子も映し出されました。ニュースなどによると坂本さんは、この34時間後の3月28日未明にお亡くなりになりました。心よりご冥福を申し上げるとともに、さまざまな形で残してくださった坂本さんの作品、お仕事をこれからも後世にも伝えていきたいですね。東北ユースオーケストラ(https://tohoku-youth-orchestra.org/)は今後も活動を続けるために寄付を募集しています。

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今後は、7月29日(土)に「Seigen Ono presents オーディオルーム新文芸坐」vol.6として、ヴィム・ヴェンダース監督の大ヒット作「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」が上映されます。新作映画の鑑賞料金が値上がりした今、スペシャルな音環境と大スクリーンで見る不朽の傑作が一般1700円、各種割引1300円とお手頃価格なのもうれしいポイント。自宅で映画を簡単に見られる時代になったからこそ、「オーディオルーム新文芸坐」では、特別な体験ができる場所として映画館の新たな楽しみ方を発見できるはずです。

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(執筆者:松村果奈)

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