哀れなるものたちのレビュー・感想・評価
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「動き」で描かれる主人公の成長
アニメーション的な視点でこの映画を観たくなる。ヨルゴス・ランティモス監督の作品はいつもそういう感じを抱くのだけど、今作は特にそう。エマ・ストーン演じる主人公の「動き」にやっぱり注目して見た。彼女は胎児の脳を成人女性の身体に移植したため、スムーズに歩いたりできないでいる。身体と脳の働きのバランスが悪いためだろう。この「動き」が、成長するにつれてどんどん洗練されていく。本を読み、様々な人々と触れ合うことで脳が身体の成長に追いつくと、彼女の動きはスムーズになっていくわけだが、その運動の違いによって主人公の成長度合いを描き分けるという点、運動の描写をことさらに重視するその姿勢にアニメーション的な感覚を感じる。
人工的かつ幻想的な舞台設定もアニメーションとの親和性は高いだろうが、人物の「動き」をいかに組み立てるかに注目している点がことさらに面白い。
物語も、自分の身体は誰のものか、身体のコントロール権をめぐる物語とフェミニズムを結び付けた話とも言える。身体の自己決定はフェミニズムの重要なテーマであり、それを描くには「運動」による描き分けは有効だということだろう。
原作小説とヨルゴス・ランティモス的幻想風味の親和性に驚喜
ギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス監督が自ら脚本も書いた「ロブスター」と「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」では、リアリスティックなドラマが進行しているかのように見せつつ、神話のようにファンタジックな設定や現象が強烈な味付けとして加わってくるような、ある種の中毒性さえ感じられる独特の作風が“お気に入り”だった。続く「女王陛下のお気に入り」は英国人女性デボラ・デイビスによる初脚本の時代劇がベースになったため幻想風味はなかったものの、この最新作はスコットランド人作家アラスター・グレイの小説の映画化でありながら、ランティモス監督らしい幻想が復活しているのが嬉しい驚きだ。
大勢が指摘するように、顔につぎはぎの傷を持つ天才外科医ゴッドウィンと、脳移植され電気ショックで新たな生命を与えられるベラは、2人ワンセットで「フランケンシュタイン」を思わせる。その作者メアリー・シェリーの伝記映画「メアリーの総て」で描かれていたように、19世紀初頭は女性が小説を発表するのに苦労したことを考えあわせるなら、人造人間キャラが男性から女性に置き換えられた点は、見下され抑圧されてきた女性の復権と解放という歴史的推移にも沿うと感じられる。
それにしても、知能が乳児から賢人へと急速に発達するベラを熱演したエマ・ストーンのインパクトが圧巻だ。ベラの精神的成長と反比例するようにマーク・ラファロ演じる遊び人の弁護士がだんだん情けなくなっていく感じも実にいい。
The Weirdest Film on Sex, Love, and Gender
Poor Things is the gothic sex oddysey of Bella, a reanimated body created by a Promethean morgue doctor. The film is a scattershot homage to Burton, Von Trier, Fincher, and Kubrick. Lanthimos himself may be top auteur status. It takes some patience but the film's dark, hideous world reveals to be tongue-in-cheek charm you will want to stay. The weirdest major production since Clockwork Orange.
最高傑作
ヨルゴス監督のスーパーノヴァな才能を余すところなく見せつけられた傑作でした。
私はヨルゴス監督に尊敬と共に畏れを禁じ得ない。
このまま健康でアクシデントがなく映画制作を続ければ、
スタンブリー・キューブリックに匹敵する鬼才になり、
このまま進化すれば我々は更なる頂きを見る事になるだろう。
過去作「籠の中の乙女」「ロブスター」「聖なる鹿殺し」
「女王陛下のお気に入り」
その複雑な形態に不穏、不快、不条理などを感じたが、
この「哀れなるものたち」にも一筋縄ではいかない複雑な余韻を感じた。
ヨルゴスが「女王陛下のお気に入り」の成功により、
豊かな資金力と各階の才能を結集して、
エマ・ストーンという勇敢で才能ある女優の協力を得て、
現段階での「哀れなるものたち」という最高芸術が生み出された。
しかしこの映画は単なる女性賛歌ではあり得ない。
ラストのシーン。
自由を得たベラは、ゴッドの後継者たる解剖医になり、
ゴッドがベラに試したような人間改造を進めようとしている。
元夫の暴君のアルフィー将軍は犬のように4足歩行をして、舌で水を飲む
犬人間に成り下がっている。
この結末を喜べますか?
犬にされた人間は「あなたであり、私です」
題名の「哀れなるものたち」
諸説ありそうですが、人間という愚か者たち・・・
①ベラに生きていた胎児を脳に移植手術を施すゴッド(ウィレム・デフォー〕も、
②ベラに金と自由を与えて、進化を手助けしたものの、見事に捨てられる
………………ダンカン(マーク・ラファロ)も、
③ベラ(身投げする前はヴィクトリア)も幼児期から成人して娼館で身を売る経験を
…………………積むエマ・ストーンも。
④ヴィクトリア(身投げする元妻)を束縛・精神的に虐待したアルフィー将軍も、
アルフィー(クリストファー・アボット)は連れ戻したベラの
快楽器官をを切除しろと命じるサイコな男性。
人間は存在そのものが「哀れなるものたち」
そう告げているように私には思えるのです。
いやあ、凄かったです。
端から端まで歩いて30分かかる、街ごと全部作ったセット凄かったです。CGで処理する事も出来るのに、敢えて実物のセットが最高でした。
ヨルゴス・ランティモス監督お得意の魚眼レンズ多用のカメラワークもベスの頭の中から見た世界のようで面白かったです。
エマ・ストーンの覚悟の演技、自らプロデューサーもしているので、監督に言われたからではなく自分の意思であの演技を演じきったのだと思います。あっぱれでした。
マーク・ラファエロのグズグズの演技も良かったです。ハンクー!
音楽、ベラちゃんの発音しっかり聞いて下さい。
不協和音から最後のエンディングのオーケストラまでの変化が物語にぴったりでした。エマ・ストーンのしゃべり方もベラの成長に合わせて変わっていきます。
「POOR THINGS」「哀れなるものたち」 「Poor」どうも...
「POOR THINGS」「哀れなるものたち」
「Poor」どうも、物理的に貧しいという意味で捉えてしまう事が多いけど・・精神的というか・・形而上的に「貧しい、可哀想、哀れ」という意味の方が大きいかも。で、原作者は「THINGS」に人か、人を哀れにさせている「事」を投影しているのかは・・わからないけど・・。ベラを通して「哀れな人」がいっぱい出てくる感じ?
で、凄いね・・人の創造力は・・こんな映画も創っちゃう。
フランケンシュタインの女性版かなぁ・・
良くまぁ・・エマ・ストーンは、この役を引き受けた。
成長の過程での微妙な変化を表現する演技力には脱帽・・。同じ映画をオファーされて演じられる日本人の女優はいるかしらん???
最後、なるほど、将軍をアーして、ゴドを・・コーするんだと思っていたら、ヤギだった(笑)
思ったのが・・これ男性バージョンだったら、ただの性犯罪者に育ってしまうのではないかなぁ・・と。
松本人志氏あたりは、もしかして、こんな感じで脳が成長したのかも・と・・・。
評価の高さにびっくり
アカデミーがらみなので観ました。
自分的にはいまいち。
話と言うか言わんとしてるところは
素晴らしさを感じるけど
見せ方はこれしかなかったのかな?
なんかずーっとセックス。
でも、合間に響くような言葉が出てきたり・・・
でもやっぱりそんなにセックスしなきゃいけないの?
って方が先にきてしまう。
観る人を選ぶ作品だなー。
邦題が素晴らしい
成人女性の身体をもつ、純真無垢な少女のロードムービー。
社会の常識を持たず、己が心に正直に世の中を歩いてみると歪んだ世界が待っていた。
少しづつ社会を学んでいく様を、足の運びで表現するなんてみたことない。
Poor Thingsを「哀れなるものたち」と訳した方のセンスが素晴らしい。
そう、この世は哀れなるものたちの世界だから。
現代版「フランケンシュタインの怪物」
Disney+で鑑賞。
ヨルゴス・ランティモス監督の作品は本作が初めましてだけど、「ロブスター」「聖なる鹿殺し 」「女王陛下のお気に入り」のタイトルは知っているし、監督の評判は噂には聞いていた。
本作に限れば、寓話的というか“作り物的”な世界観や色使いは、ウェス・アンダーソンっぽみを感じ?
本作の原作となる1992年に発表されたアラスター・グレイの同名小説は未読なんだけど、橋から投身自殺をしたエマ・ストーン演じる女性の遺体を手に入れた天才外科医ゴッドが、彼女のお腹の子供の脳を彼女の肉体に移植。ベラと名付けて育てつつ経過を観察しているという物語は「フランケンシュタインの怪物」の再構築というか、現代版アップデートという印象だった。
本作の主軸は、主に様々な男たちとのセックスを通してベラが“セカイ”を知り、やがて自己を確立するわけだけど、そこに悲壮感がないのは、それらが常にベラ自身の選択であるからなんだと思う。
逆に、父親に虐待され他の愛し方を知らないゴッドや、無知なベラを思い通りにしようと駆け落ちするも結局ベラに依存していくダンカンなど、本作に登場しする男たちは常に何かに縛られ、不自由な思いをする「哀れなるものたち」だという事が物語を通して明らかになっていく。
そういう意味では哲学的だし、フェミニズム的な物語とも言えるけど、ポップで軽やかな映像世界がそうした思想を上手く包み込んで、観やすくしていると思った。
苦手系かと思いきや。。。
話題作だったので鑑賞。
芸術作品系にありがちなエロとグロとキ○ガイ系のクソおもんない映画かなぁと思いきや。
ベラの成長っぷりがすごくてなかなか面白い✨✨
そんで映像はめっちゃ綺麗😍
マークラファロの情けなっぷりも見もの😂
人間全てが哀れに感じる映画
まぁ賛否両論あるとは思うけど、素直に面白かったよマ王は😁
てっきり「フランケンシュタイン」の亜種映画だと思って観たら全然見当違いでソコだけかなと(流石は前情報を調べないマ王)
でR18だったけどコレで成人指定は映倫厳しくないか?
エマ・ストーンのSEXシーンをエロティックに感じながら鑑賞する輩も無くは無いと思うけど、マ王は普通に観れたぞ←オカシイのかな?
ていうかこの映画で欲情する人間は哀れだ🤣←エマ・ストーンがそんなに美しくないのかもしれない
グロシーンも思ってたのとは違ったし、つくづく映倫の基準に疑問符だらけなマ王です🌀
内容は一人の女性の成長記であり一人の女性がどれだけ虐げられてるのか(現代でもね)というテーマだと感じたけど、原作読んでないからなぁ😅←感想文だからね
登場人物のほぼ全てが何らかの欠点があり、映画では殊の他に大きく誇張して描かれている😶
その姿に違和感が無いのは転じて自分自身にも存在する部分なんだろうと思ったマ王だったので、自己啓発セミナー的な映画なのかもしれない😵💫
兎に角、エログロを期待して観に行くと肩透かしに合い、内容が理解できたのならハンマーで殴られたような衝撃を受ける映画ではあります✨
でもココの舞台って地球ではないよね😳←コレも見当違いかも
最後までオチを解らせない作りはマ王的には満足でした😁
映画館での鑑賞オススメ度★★★★☆
エログロ度★☆☆☆☆
エマ・ストーンのセクシー度(★は個人に任せます)
様々な弊害が待っているかもしれない、でも自由に生きろ
この映画がフェミニズム的だとかそうじゃないとかいう議論があるみたいですけど、そうじゃない気がする。
そういう議論とか昨今の生きづらさとかそういうものからの解放というか、なんかそういうことじゃないのかなと思う。
それは痛い。いろんな嫌なことをほったらかしてしまうかもしれない。
けれどもそれでも自由の方が何倍もいいんだという映画だった気がする。
途中のダンスシーンは踊ってるだけなのに迫力があって泣けた。
映像、衣装、カメラワークなどとても好みでゆめゆめしい映画だった。
嫌な印象持つ人も多そうだけど、よかったです
熱烈ジャンプ!そして哲学する身体
前半はケン・ラッセルが作ったような映像で痺れた。衣装も室内装飾も家具も小道具も建築もリバティ・スタイル、アール・ヌーボー、ゴシックが混淆して、空の色も海の色も音楽もどぎつい悪夢のようだった。カメラが魚眼レンズみたいで自分の目もぐるぐるした。
哀れなる複数形:Poor THINGS。ゴッドは父親による荒療治で哀れなるものを持っていない。持っている者は仕事に邁進し感情を抑え他者を束縛し他者の快感を禁じ「自分の」子どもを生ませることが第一と思いこんでいる哀れな複数形。マイ・フェア・レディがどこかに居ると夢想している哀れな複数形。
ベラはピグマリオン効果からも自由、完全に解き放たれている。私のすべては私のもので誰かのテリトリーではない。自分で気持ちよくなれることも方法も知っているし、選ばれるのでなくて自分が選ぶ。男性がリードするのが決まりの社交ダンスでもベラは一人で自由に踊る。
エマ・ストーン=ベラの濃い眉毛に漆黒の長い髪はフリーダ・カーロのようで暑く熱い。知性と感性がどんどん磨かれて瞳の力も強くなる。ハンナ・シグラ(何歳になっても素晴らしい。俳優だからこそ顔をいじってはいけない)が演じる"なんでもどんとこい”マーサとベラの出会いと会話はとても笑えた。ベラはマーサから、言語化する自由、読書の楽しみ、豊かな語彙、批判能力を素早い速さで吸収した。そして死なざるを得ない多くの子どもたちに対する想像力と悲しみをもう既に自分のものとしていた。
おまけ
色んな方々のレビューを拝読し不完全でも自分の考えをまとめたくなりました。この映画で最も大事なテーマは女性のセックスです。そのシーンが多いのには理由があります。ベラはいやいやでなく思わせぶりも焦らすことも媚びることも挑発も形だけの恥ずかしポーズもしません。したくなったら「熱烈ジャンプしよ!」と自分から相手に言います。思いっきり気持ちよくなって楽しみます。相手が休憩必要になったら、そうなんだ、と学習して無理強いしません。自分の体のこともよくわかっています。いきなりの人にはもう少し私の方の準備が必要なのでは・・・と言います。社会(異性愛男性メイン)が形成した枠組みに閉じこめられ内面化した人達に向かって、縛られなくていいんじゃない?自分が選ぶことじゃない?とベラは言ってる気がします。自分の体が感じることを禁じる他者は一体どこからそんな権限を得ているのでしょう?以上のことを全部伝えるには山ほど多い裸シーンは必然でした、壮大な旅と人との出会いと共に。
絶望して一度自殺したベラがその絶望の理由を知らなければならないのは、聡明に成長した彼女にとって避けて通れないことでした。だから以前の夫の元に一旦戻ったのです。このお話の最初から最後までが理路整然、私たちに大きな笑いと大きなメッセージをプレゼントして貰った思いです。
雰囲気が良かった
予告で不思議な感じのお洒落な意識高い映画だなぁ、と思って、後はアカデミー賞とかそういう権威につられて観た。
実際現代じゃなくて、でもリアルな昔ではないファンタジーがまぶしてある世界観で、色とか音とかが映画館で観ていて気持ち良い作品だった。
たまに凄くバッチいというか、直視しがたいものも沢山あった。生々しいって言葉が合ってた。エマ・ストーンの全裸を沢山観た。アメイジングスパイダーマンの時に見たかったな。
ストーリーはハッピーエンドなのかよく分からなかった。
主人公が、観ていた僕の思い通りに成長しなかったところが、ある種のリアルを表現していたのかもしれない。
死体を見つけたら、普通に通報しましょう。
悪趣味なことはしないでください。
どうレビューしようかと迷う作品。笑 まず、当然のことながら、エマス...
どうレビューしようかと迷う作品。笑
まず、当然のことながら、エマストーンが良い。良すぎます。かなり振り幅のある難しい役だったのではと思う。
(最初の脳みそ子供の頃はちょいとオーバーな感じがあったかな~なんて個人的には思ったな)
濡れ場も、エマがやってるんじゃない、ベラがヤってるって思えて、セックスシーンの奥深さを感じた。
官能的にも見えるし、コントにも見える、みたいな。めちゃくちゃかっこよかったです。
内容は、割と笑った!意味わからんすぎて、え、なになに???笑 ていうおかしさ。
(ベラの「old clitoris」っていう表現にグッときました笑)
ダークな雰囲気の割に、ユーモアがあって、その辺のセンスは好きだな。
エマもプロデューサーをやってると知って、エマ自身も面白い人だから、いい感じで作れたんだろうなと。
ただ、思ったよりエンタメだったなっていうのが正直なところ。
題名が意味深感を出しているせいだろうか。
命を軽んじているのか、大事にしようとしているのか。
女として身体を売って稼いで、女としての快楽を求めるけど、女・男ではなく平等に自由を求めるのか、いや、女は全部欲しい。笑
男だって全部欲しい。色んな矛盾もひっくるめて、「哀れなるものたち」なのでしょうか。
ベラは最初の方に「性」という、人間に備わった原始的な楽しみを見出し、色んな経験をするにつれて、知的な楽しみも見つける。
言うたら人造人間なのに、誰よりも人間らしい。言葉を覚えて、自分の気持ちを表現できるようになっていくところが、確実な成長を感じさせる。
やっぱり、不条理や悲しみを覚えてからが成長だ!って思った。ないことに越したことはないけども。
衣装も映像も申し分なく、世界観を作り上げていた。
その豪華さのせいで、中身とのバランスが、個人的には少し混乱した。
監督の頭の中を覗くような感じで、なんだかこちらも、色んな経験をした!って思えるような作品。
ひとつの別世界として考えるのならば
人が命をどう捉えるのか。
自我はどうやって生まれるんだろう。
そんな単純だけれども
誰にも答えがそれぞれにあるような疑問に対して
ひとつの答えがここにはある。
女性の視点から、男性の視点から。
若者が、年を重ねた者が。
それぞれに見え方が違う映画になるのではないかと思った。
ファッションと世界観が素敵で、
大画面で見る魅力を感じつつも、
剝き出しの人間のいろんな部分が見えてしまって、
すこし居心地が悪い気持ちにもなってしまったので、
私には合わない部分も加味しての★×3にしました。
映画としては★×4なのかもしれない。
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