劇場公開日 2024年2月16日

ボーはおそれている : インタビュー

2024年2月16日更新

「みんな、どん底気分になればいいな」笑顔で発言の真意は? アリ・アスター監督が語る新作

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へレディタリー 継承」「ミッドサマー」のアリ・アスター監督が、ホアキン・フェニックスとタッグを組んだ「ボーはおそれている」が、本日2月16日から公開された。本作の特報映像には、ピュアな笑顔を浮かべたアスター監督が「みんな、どん底気分になればいいな」と話す姿が収められていた。ぞわぞわするメッセージだが、その真意とは? 昨年12月にプロモーションのため来日したアスター監督に、話を聞いた。


【「ボーはおそれている」あらすじ】

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日常のささいなことでも不安になってしまう怖がりの男ボー(ホアキン・フェニックス)は、つい先ほどまで電話で会話していた母が突然、怪死したことを知る。母のもとへ駆けつけようとアパートの玄関を出ると、そこはもう“いつもの日常”ではなかった。その後も奇妙で予想外な出来事が次々と起こり、現実なのか妄想なのかも分からないまま、ボーの里帰りはいつしか壮大な旅へと変貌していく。


インタビュー部屋に入ってきたアスター監督は、とても気軽に挨拶をしてくれた。室内は暖房がしっかり効いていたが、にこにこの笑顔で握手しようと差し出してくれた手は、驚くほどひんやりしていた。

前作「ミッドサマー」では「みんなが不安になるといいな」と願いを込めていたアスター監督。今回の「みんな、どん底気分になればいいな」のメッセージも、SNS上で「今から怖い」と話題になった。

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「僕自身あまり居心地がいいと思える人間じゃないので、みんなにも本作を観て、居心地の悪い思いをしてほしい。それでこそフェアだと思うので」と、ここでも笑顔を見せながら、「どん底気分」発言の真意を明かす。

「これは負け犬で優柔不断、自分が何者なのかよくわかっていないボーの物語ですが、観客にもそういう彼の人生を追体験してもらいたいです。人の一生を生きている感覚を味わってほしい。人生は“疲れるもの”なので、この映画を観ても疲れてほしいんです。それと同時に、豊かな映画であり、面白おかしい映画でもあり、感動させるような映画でもあることを願っています」

「ボーの抱えている不安を開放させたい」という思いもあったそうで、「作品作りは何かのセラピーのような側面もあります。でも、何よりまずは自分が楽しいと思える映画を作ろうという気持ちがあります。世界観を構築するときはリミッターやルールを設けず、まずは自分の直観に従って作るようにしています」。

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「A24」とタッグを組むのは本作で3回目。「脚本が長くて、ヘンテコな映画なので、きっと大いなる実験だったと思います」と完成までを振り返り、「でも、自分が作ったなかで一番好きな映画」と大いに気に入っている。

「極端な映画なので、この作品が大嫌いだという人もいれば、大好きだという人もいます。そういう映画なんだと思います。周波数が合えば気に入ると思います。でも、自分が作った映画で一番好きな映画です。これだけのことに挑戦できた初めての映画であり、映像作家としてもベストなものを作ることができました。幸せだと思います。予算が大きいほど古典的な作品になりがちですが、そうではない方向性で作らせてもらえたのでラッキーでした。日本の皆さんに受け入れてもらいたいです。きっと、受け入れてもらえると予測しています」

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来日時にはさまざまな場所を観光で訪れたそう。最後に、旅の思い出を教えてくれた。

「京都が大好きで、毎日お気に入りのコーヒー屋に通いました。能を観劇して、とびきり美味しいうどんを食べて、哲学の道を何度も歩きました。そのほか(香川県の)直島にも行ったし、富士山の近くにも行って感銘を受けたり、歌舞伎を見たりと本当にいろいろ楽しみました。普段ショッピングはあまり好きではないですが、日本だとよくショッピングします。青山の辺りをサイクリングしたり、根津美術館の美しい庭園を眺めたりもしました」

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