ボーはおそれているのレビュー・感想・評価
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不安症にとっては居心地のいいファンタジー。
個人的には冒頭のパートがコメディとしてべらぼうに面白く、そこから先は3、40分ごとにスタイルを変えていくこともあって、振り落とされないように、ほどよく刺激的かつときおり退屈を感じながら最後までたどり着いた。明らかに、観客を戸惑わせ、右に左に振り回すのが目的の映画だと思うので、まんまといい観客をやりました!とアリ・アスター監督に報告したい気分。
ただ、大好きな映画かと自問するとそこまででもないのだが、アリ・アスター作品では一番しっくりと身近に感じられる作品でもあった。というのも、不安症のあり方に非常に親近感が湧く描写が続き、とにかく最悪のことを想像し、実際に起きることを想定して覚悟することが人生を無事に生き抜く方法だと思っている者として、この映画の心配性は他人事ではなく、でも1/1000くらいの確率でしか起きないはずの最悪の事態が、ここではほぼ100%の確率で発声するのだから、むしろカタルシスを感じて気持ちいい。
この映画は「イヤな想像はすべて映画の中に置いていけ!」というアリ・アスターなりの親切なのかもしれない。たぶん違うと思うけど、そういう効能は確かにある。
尽きることのない悪夢的イマジネーションの連鎖に心酔
生きることは悩ましくおそろしい。どうやって生まれたのか、いかに毎日を生きるか、家族の問題にどう向き合うか。そんなことを考えだすともう頭がおかしくなりそうだ。過去のアスター作品からやや趣向を変え(でもやっぱり”家族”が関係するのだが)、本作はホアキン扮する中年男が抱える”おそれ”をじっくり我々に突きつける。ある意味、カフカ的でもあるし、フロイト的、ギリシア悲劇的とも言いうるだろう。序盤のアパート生活のカオスな日常描写には勢いがあり、声を上げて笑ってしまうシュールさに溢れ、目が離せなくなる。そこからいざ帰郷というモチーフが起動するも、案の定、不条理の鎖が足に絡まりボーはなかなか帰れない。この一連の物語をどう解釈すべきか。私は途中から意味に囚われすぎるのをやめた。水辺の小舟に揺られ、アスター流の”おそれ”巡礼を体験するかのように、悪夢的ながら美しさに満ちたイマジネーションの連鎖を心から楽しんだ。
ずっと浸っていたい、妙に笑える悪夢のような旅
アリ・アスター監督作品については、長編第1作「ヘレディタリー 継承」の独創的な世界観とホラー描写に震撼し驚喜したが、カルト教団の閉鎖的コミュニティーを訪れた若者たちを描く2作目「ミッドサマー」はストーリーの独創性という点でやや期待外れだった。そんな経緯もありこの3作目は期待と懐疑が相半ばする気持ちで臨んだが、結論から言えば「ヘレディタリー」を超える一番のお気に入りになった。
不安症の主人公ボー(Beauの発音は「ボウ」と表記するのが正確で、字幕もそうなっているのになぜタイトルと不一致なのだろう?)に次から次へと災難が降りかかり、母親の葬儀に出るための旅もトラブル続きでなかなか目的地にたどりつけないのだが、展開が予想外すぎて笑えてしまう(特にバスタブと屋根裏の両シーンで爆笑した)。「ミッドサマー」にもユーモア要素はあったが、本作は格段にいい。ホアキン・フェニックスによる不安と困惑と恐怖と苦痛の演技が絶品で、アスター監督の演出との相乗効果もあり、地獄めぐりでありながらドタバタ喜劇のようにずっと楽しめる、飽きることのない2時間59分。監督の次回作「Eddington」にもホアキンの出演が決まっているようで、今から楽しみでならない。
不安症がゆえの物語
不安症すぎるボーの妄想をぎゅっとした物語のように感じました。
ああなったらどうなるんだろう、こうなったらどうなるんだろうの妄想が可視化されて全体的に不愉快で、私はボーをおそれています。
お母さんが死んじゃったらどうしよう、薬局にあってる間に扉が開いたままだったらどうなるんだろう、事故に遭って運ばれた先が病院じゃなかったらどうしよう、お父さんが人間じゃなかったらどうなるんだろう、などなど、そもそも現実世界では家に出る前、お母さんの電話に出る前から何にも進んでないのではないかと思いました。
3時間にも及ぶ長尺の映画を初めて見たのが、この作品だったので、長い時間ずっと不愉快な気持ちになりました。
ホラーというより不条理コメディ
主人公ボー(ホアキン・フェニックス)が必死であればあるほど滑稽な不条理コメディ。
怪死した母のもとへ帰省しようとする男の「オデッセイ・スリラー」と題されていますが、ほとんどコメディです。
ホラーを期待して観る人はがっかりするかもしれません。この監督の過去作とは趣きが異なる作品だと思います。
章立ててシーンが大きく展開していきます。
冒頭のシーンがサイケデリックでぶっ飛んでいてめちゃくちゃ面白いです。この世界観で1本映画にしてみてほしいくらいです。
冒頭の勢いが良すぎたので中盤失速したようにも感じられました。
終盤は母子の関係に迫り、待っていましたというシーンがやってきます。ゾッとするような、心臓がギュッとなるようなスリルがあります。
冒頭から最後まで何から何までおかしいまま、納得できるような回答はない(と思う)ので、観る人は選びそうな気がします。
ボーが感じている世界、観ている世界を体感するような作品なのかなと思います。
それでいいんだよ、アリ・アスター
些細なことでも不安がる怖がりの中年男性、ボー。
彼にとって母親は特別な存在だった。
そんなある日、突然母親が怪死したという訃報を受けるボー。葬儀のためになんとか帰省しようとするのだが、様々な災難がボーを襲い……
全世界待望のアリ・アスター監督最新作。
不穏には不穏なんだけど、前2作とは明らかに毛色が違う。
母親からの圧迫、近隣住民からの嫌がらせ、薬を間違えて服用し、母親の怪死を知る。殺人鬼や謎の男に追い回され、ようやく治安の悪すぎる街を走って逃げ出したと思ったら車に轢かれる。保護されたと思ったらそこの娘にいじめられ、さらには殺人容疑でまた追われることに。森の劇団で癒され、父親らしき人物に出会ったと思ったら追手が合流し、阿鼻叫喚の地獄。現実でも夢の中でも悪夢を見続ける。
ようやく実家に着いたら葬儀は終わっており、初恋の人と再会して初めてセックスをするも彼女は腹上死、結局母親は生きており屋根裏部屋にぶち込まれる。そこには双子の兄弟と変わり果てた姿の父親が監禁されていて、脱出して母親を絞殺、逃げ出したら何故か裁判にかけられ、脱出した船は爆発し、ボーもろとも沈没して終了。
ストーリー内容文字起こしするだけで面白いし、あまりにも不憫で可哀想。
ここまで主人公いじめてる映画もあまりない。
今までのアリ・アスター映画って、鑑賞中に恐ろしさを体感して、鑑賞後の考察でさらにゾクっとするみたいな感じだったのだが、今作では本当に何もかもどうでも良くなる。
あまりにボーが可哀想なので途中までは笑っていいのか微妙だったけれど、ペニスお化けのお父さんが出てきた時点でこれは笑っていいやつだと思えた。
治安の悪すぎる街も、次々と降りかかる災難も全て心理状況が投影された幻想と思われる。
現実がとか悪夢がとかそういう話の前に、現代の寓話的な“おはなし”として観た方がいいのかもしれない。
いつもの「あの!ミッドサマーの!」の宣伝のせいでだいぶ期待外れだった人も多そう。
実際、観にきてたお客さんたちの反応が絵に描いたような苦笑いって感じで面白かった。
そりゃ爆破エンドからの静寂エンドロールは何も言えなくなるよな笑。
観客が求めるものはヘレディタリーのエグさとかミッドサマーのキモさなのかもしれないが、多分アリ・アスターがやりたいことってまさにこの映画詰まってるようなことなんじゃないだろうか。
アリ・アスターのオナニー映画。
それをお金払って観させてもらってるんだ、我々は。
実はこの脚本が10年以上前から練られていて、デビュー作の予定だったけどプロデューサーに「良いと思うけど、君は映画を作りたくないのか?」と言われて断念したってエピソード好きすぎる。
他人のオナニーなんてつまらないように、この映画の内容も正直つまらないけれど、映画ってものはやっぱり快楽物質が分泌されるわけで、この歪みまくった不条理な世界で哀れな主人公が惨めに死んでいく姿を見るだけでちょっと気持ちいいような、なんだか胸が苦しいような。
人の不幸は蜜の味。
この作品も君のことも、大好きだよ♡アリ・アスター。
やや中だるみしましたが楽しめました
めちゃくちゃ面白かった!酷評を多く見たので鑑賞を避けていたのですが、もっと早く観ればよかった。何食べてたらこんな映画作れるようになるんや、、と終始戸惑いっぱなし。母の死という、物語の中核というか大前提の部分が嘘でしたなんて、そんなのありかよ〜と思いつつ、まんまと裏切られて楽しかったです。
とにかく悲観的で自信がなく常に怯えているボウが情けない、、、誇りと責任を持って、自分で決断する人になろうと、自戒もこめて、思いました。
子どもの時よく迷子になった人は共感できると思う
ボーはやたら治安が悪い所に住んでいる。何の仕事してるんだろう?カウンセリング受けてるからお金はあるのかなあ。カウンセリングって効き目あるのかなあ。私は懐疑的だ。物語を勝手に作られてしまう気がする。記憶は記憶。特に家族に関する記憶に正しいも間違いもないと思う。整合性とか正誤なんかどうでもいいのが家族にまつわる記憶なんだと思う。自分に都合よく記憶は形成されるんだ。
迷子になると子どもは不安になるが、何度もそういう経験をすると迷子状態に慣れてくる。自分からデパートの然るべき所に行って「迷子になりました」と告げて自分の名前と年齢、母親の名前、住所などを言う。なぜ迷子になるのか?母親が子どもの手も繋がず振り向きもせず、満員のデパート地下フロアを先にどんどん歩むからだ。子どもにとって昔のデパ地下には夢のようなお菓子やディスプレイが山のようにあった。だから立ち止まりたい。そういう子どもの気持ちを母親はまるでわからず理解しようともしない。想像力の欠如。
迷子アナウンスが流れてしばらくすると鬼の形相の母親が来る。迷子になった子どもをやっと見つけて母親は嬉しい顔もしなければ心配してたんだよ、とも言わない。子どもだって母親の顔が心配とほっとした顔でなくて怒っていることは見てわかる。だから、自分も嬉しい顔もしないし泣かないしまして笑顔なんてありえない。なんで迷子になるのよ、ちゃんとついて来ないからでしょ、と言いながら母親は子どもをつねるのだ。
そんな子どもの頃の迷子話を大人になって母親にしても忘れている。か、忘れたふりをする。迷子話以外でもとにかくよくつねられた。夫や姑や舅との関係でイライラしていたんだろう。まだ20代の若い母親。かわいそうに。でも子どもの私もかわいそうだったのだ、と言いたい。
自分はこれこれのつもりなり意図をもって何か話したり行動するけれど、必ずしも親なり家族は同じように理解してくれるとは限らない。それは相手もそうだろう。自分だって親や家族や親戚のことを「正しく」理解しているとは限らない。だからボーは誤解されるのだ。誤解されるから不安でいっぱいになってしまうのだ。
不条理な不安でいっぱいのホアキンの顔、情けなくも笑うしかない。咆哮ばかりのメノーシェ、可哀想だけど笑えて仕方なかった、でもいい役だった!最後かっこいい!そしてボー " Mr. Wassermann" はその名にふさわしく水に戻った。
あのチンポは何?
109シネマズのポイントで見て良かった。
コストが0の時点でコストパフォーマンスは無限に発散するのだが、個人的にはパフォーマンスも0に漸近しており、コストパフォーマンスが1に収束するかとも思われた。
自分は難しい映画は得意でないので、この映画には不向きだったのだと思う。
主人公がずっと上手くいかず、最後詰む映画。阿保の将棋指しが高難易度のコンピュータにボコボコにされるプレイ動画みたいだった。
でも予想のできなさは逸品で、実は開始から結構後半まで夢中で観てた。
母親の登場くらいまでは神展開だと思った。
さっきの将棋の例えでいうと、一体どれだけアクロバティックな詰み筋で魅せてくれるのかと思いきや、いきなりディルドで頭をはたかれてチェックメイト、みたいなラストだった。
こんなの褒めちゃいけないだろ。
友達は結構好きだったというので、好みによるのでしょう。
凡人には測りかねる映画のことだから、もしかしたら「この映画を不快に感じるのは親離れができていない証拠」みたいな心理テスト的ニュアンスも潜在的に含まれているのかもしれない。「男性的象徴を揶揄する表現がどうのこうの」とか?
だったらこの映画、親と観てみろこの野郎。
難しく考えるのがよくない。
射精したら相手が死んだとこと、チンポ怪獣のとこが凄く面白かった。おじさんが天井に張り付いてたとこは面白かったけどちょっと長かった。
個人的にはあとはクソ、というかチンポだった。
なんなん
感想を一言で言うと、なんなん。
映画は好きだけど、たくさんは見てない私からすると
そんな感想です。
分からなさすぎて考察サイトも見ましたが
そこまで映画に詳しくないので、へえ〜で終わってしまいました。ある意味、考察は見ずにモヤモヤしてた方が良かったのかも。
妄想と現実が入り交じってる映画はたまにありますが、そこまで狂った感もなくリアルに辛い。ラストもよく分からず。
でも、普段書かないクチコミを書きたくなったし
こんなに不快感を持たせてくれる主人公の演技はすごいと思います。
あと、自分にも子供がいるので過干渉には気をつけようって思いました…。
↓の人にはオススメです。
・監督大好き!監督が好きな映画は見てる!
・後味悪い、訳分からん映画好き!
・俳優さんが好き
・母性強すぎな人(反面教師という意味で)
これはやっかいな
好きな監督なので期待していましたが
3時間いったい何を見せられているのか。
かなり難解な作品です。
鑑賞後に、Youtubeで誰かの考察を見てからでないと、
この映画について知人とも語れない状態でした。
色々わかると、凝りにこっている設計がわかって色々つながります。
とはいえ、考察で語られるのは映画の部分的なところにしてほしかった
全編、理解できないのはかなり珍しいケースです。
また、映像中の背景にかかれている英文などにも
ヒントが隠されているのですが
英語力の高い人でないと、読み解くのは
難しいかもしれませんね。
お口直しにスカッと単純な映画でも観ようかな。
坊はおそれている
3時間近くあることを危惧しなかなか見れてなかったけど、公開終了日にしてようやく足が動いた。アリ・アスターの映画を見たことなければ、それほど評判がいい訳でもないし、A24×ホアキン・フェニックスのタッグは個人的に苦手だったので期待してなかったけど、自分の映画癖と監督の作家性がびったりハマって、予想外にもめちゃくちゃ楽しめた。これならもっと早く見とけば良かった。
奇妙かつ不気味で、理解が追いつかないストーリーなのに、次なる展開とホアキンの顔芸が見たくて仕方なくなってしまう。まさに見る薬物。40分置きに切り替わる映像に、一瞬たりとも目が離せない。ちょっと違うのかもしれないけど、過激なウェス・アンダーソンって感じがして、すっごいワクワクしました。周りの感想からして、酷評する気満々だったから驚き。これ、超好物😍
ラスト付近から画面が真っ暗で失速気味になるんだけど、179分間一瞬たりとも睡魔が襲ってこなかった。っていうか、こんなあっという間な3時間初めて。怯えて、走って、ぶつかる!躍動感溢れる、ある意味アクションのようなロードムービーに虜になってしまう。そんな中で、全く成長しない、子どものまんまなホアキン・フェニックスに笑いっぱなし。ちゃんと大人になりきれないって、怖いことなんだな〜。
緊張感にどっぷり浸かりながらも、音や映像に刺激され、全感覚が研ぎ澄まされる。風邪の時に見る夢レベルMAX。ひたすら不安でいっぱいになる。でも、何故だかそれが癖になってしまう。薬物中毒を擬似的に体験できる、今年ベスト級のスリラー。音響が素晴らしく、劇場で見ることに価値のあるという点においても、最高の映画だった。
究極の親子共依存ホラー!
正直、訳のわからない3時間ではありましたが所々が面白いので長いなぁ〜と思いつつも鑑賞できました。
最初はコメディ映画かと思いきや、
ホラーっぽくなり、
サスペンスっぽくなり、
終盤はミステリー……?!!
いや、やっぱりホラーなのか??!
よくわからず、鑑賞後にこの映画のジャンルだけ調べてみたところ
紹介サイトによって様々でした。
謎の多い作品ですね。
自分としては不気味で狂った世界観からホラーコメディかなと思う事にしました。
そしてこの映画は
究極の共依存関係にあるボーと母親の話。
毒母の狂った愛情にボーの全ては支配されているが
実はボーには「母の支配から抜け出したい」という願望があってそれがあの不穏な世界観に反映されているのだと。
自ら不安に身を置き不幸を選ぶことで、母の愛に無意識に反発していたのかな。
それを母親はずっと気付いており「子供からの裏切り行為」だと感じながらボーへの憎しみに似た怒りを抱えていた。
そんな表に出さなかったボーの本心が終盤ついに、ガラスケースにダイブする直前の母親への仕打ちに現れたんだと思います。
これ程までに狂った親子共依存の先に、当然幸せは無いのかもしれません。
そんな母子の異常な狂気の世界をこの作品で見せてもらえたのだ!と思う事にします(^^;;
奥が深すぎて鑑賞後には頭もクラクラ…
疲労もピークになってしまう強烈な作品でした。
オデッセイになれたところで
まず冒頭で多くの人が思うこと。
それは恐らく、「んなとこ引っ越せよ」ではないでしょうか。
ゴッサムシティかと見まごうほどに荒廃した街に暮らす主人公。死体は道路に転がったまま、全裸の通り魔がうろつき、なのに警官が勤しむのはナンパばかり。
しかしなぜかコンビニらしき店の中は安全そのもので、退屈そうな店員が平然と店番をしています。
ここから始まる違和感は徐々に積み重なり、やがてひとつに繋がるのです。
作品を通して、メッセージ性の強さに驚かされました。
画面のどこを見ればいいのか分からなくなるほど隠喩や伏線に溢れ、飽きることがありません。
『オオカミの家』を悔しくも見逃してしまってから絶対行くと決めていた本作、大スクリーンであの世界観を体験できて本当によかったと思います。
……あ、医者家族は気持ち悪かったです。ここは伏線とか思考を巡らせるとかじゃなくただただ純粋に、嫌悪感で軽い吐き気がしました。
ボーは解釈されたがっている
アメリカの男の子は15歳になったら「Sex & Drug & Rock'n'Roll!」と叫びながら車やバイクをかっ飛ばし大人になるそうですが、ボーはいずれにも手を出しません。じゃあ何が好きなのか。彼の住む簡素なアパートには何の個性もありません。空虚な中年男の彼が喋るのは精神分析医とお母さんだけ。「どうして彼はこんな男になったのか?」その真実を求めて彼は地獄めぐりをやらされ、観客はそれに付き合わされます。すべての真実にたどり着いたラスト、彼は変わるのか?いえ、まったく変わることなく、ただ助けを懇願しながら水に沈んでいきます。
これまでのフィクションの常道をまるで無視する本作の筋書き。なんの成長も見せず滅んでいく主人公。大変斬新ではありますが、面白いかというと、退屈です。面白いのはソドムとゴモラのようなボーの住む街の退廃っぷりぐらい。それもすべてどこかで見たことのあるような景色ではありますが。それでもやることなすことすべてが裏目に出てしまうボーの姿は笑えます。でもボーが外科医の家に匿われて以降は、映画は失速してしまい、大風呂敷を広げた物語の世界は急速に縮んでしまいます。そして最後は母と子の罵り合戦、これまでの恨みつらみのぶつけ合いという泥試合に収束し、映画は幕を下ろします。「自分で稼ぐ力を持たない男は母親の愛情と財布の呪いから逃れられない」という当たり前のことを3時間かけて教えてくれました。
孫悟空は頭に輪っかを付けられてお釈迦様の手の上から逃れられませんが、ボーは足に輪っかを付けられてお母様の手の上から逃げられません。妖怪退治に大暴れする孫悟空と違い、ボーは何一つ自分で成し遂げません。精神分析好きかまってちゃん監督アリ・アスターさんの作る物語は悪夢的で退廃的で閉鎖的。ユダヤ人の詩人であるという彼のおかあちゃんに、本作の感想を聞いてみたいものです。息子を愛しているならどんなに評判が悪かろうとも「史上最高の傑作だ」と褒めてあげるはずですが。監督はこの映画で母親の愛情を確かめようとしているのかも知れません。いずれにしろ、第三者の私にはどうでもいいことですが。
日本人なら隠そうとする家の恥や家族間のトラウマを映画にする勇気は恐れ入りますが、その想像力のジャンプはあんまり距離が伸びていません。本人はずいぶん遠くまで飛んだつもりでも、実際はそんなに飛べないものかも知れません。そもそも日本には「首狩り家族」という、こんなファンタジーより何十倍も恐ろしい家族の実例があるわけで。
悪趣味なコメディ(褒めてる)
設定も出来事もかなり意味不明で、品も無くて笑うしかない。でも親から精神的に虐待されて笑うか潰れるかしかないつらーい気持ちが伝わってくる。親から離れて恐怖から解放されたはずの自分は何をおそれているのか、植え付けられた恐怖から逃れられない自分は何にも値せず、「無」しか無いのか…「頑張ってもどうにもならないね(笑)」といった深い諦めと慰めの笑いを感じる映画だった。
ちょっとボーっとなった
評判がイマイチなのと丸々3時間の上映時間ゆえ、体調万全でないと鑑賞中にボーっとなるのではとおそれていたのだが、アリ・アスター新作を観ないわけにいかず、しっかり睡眠をとった週末にようやく劇場へ。
最初のアパートメントでのフルチンやら全身タトゥーやら、とにかく不安神経症的なホアキンのもろもろへの怯えっぷりはおかしかったものの、話が先に進むとシリアス風になっちゃったり、最後のトゥルーマン・ショーは答え合わせのまとめ感ありで、作中、町山智浩の言うユダヤのなんとかとかいろいろあるのだろうけど、もう考えるのが面倒くさくなった。話とは関係ないけど、巨大ぽこちんの腕が頭に突き刺さるところでスターシップ・トゥルーパーズのバグズを想起した。
あと非常に気になったのは、松浦美奈の字幕では「ボウ」なのにタイトルは「ボー」と音引きになっていること。映画業界の人はこういう不統一が気にならないのだろうか…。
無垢でいるのってめちゃ大変
不条理ギャグかよ!と、おじさんとおじさんのお尻がグルグルしてるのを見て爆笑🤣
演劇のシーンの舞台装置と映像が可愛いくて素敵。
この辺りから、宗教観と家族愛の拗らせすごいな〜って事に改めて気づいてそう思って見始めたら裁判シーンで俺の人生もうこんなんなんよ、絶望してんだわってメッセージ?←いや、そう言う割にこんなん作って絶望それなりに楽しんでるのでは、実は開き直りか!って勝手に解釈して笑っちゃいました。本人にとっては救われない事こそ大団円?
出だしの現世に怯えすぎなのは本当に笑ける。危険に合う前に家までダッシュ💨💨💨
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