苦い涙

劇場公開日:

苦い涙

解説

フランスの名匠フランソワ・オゾンが、ドイツのライナー・ベルナー・ファスビンダー監督が1972年に手がけた「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」を現代風にアレンジし、美青年に恋した映画監督の姿をシニカルかつユーモアたっぷりに描いたドラマ。

恋人と別れたばかりで落ち込んでいた有名映画監督ピーター・フォン・カントのアパルトマンに、親友である大女優シドニーがアミールという青年を連れて訪ねてくる。艶やかな美しさのアミールにすっかり心を奪われたピーターは、彼を自分のアパルトマンに住まわせ、映画界で活躍できるよう手助けするが……。

「ジュリアン」のドゥニ・メノーシェがピーター役で主演を務め、「王妃マルゴ」のイザベル・アジャーニが大女優シドニー、「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」にも出演したハンナ・シグラがピーターの母を演じる。2022年・第72回ベルリン国際映画祭コンペティション部門出品作品。

2022年製作/85分/PG12/フランス
原題:Peter von Kant
配給:セテラ・インターナショナル
劇場公開日:2023年6月2日

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第72回 ベルリン国際映画祭(2022年)

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コンペティション部門 出品作品 フランソワ・オゾン
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(C)2022 FOZ - France 2 CINEMA - PLAYTIME PRODUCTION (C)Carole BETHUEL_Foz

映画レビュー

3.5Unsettling

2023年5月8日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

In La Dolce Vita a director found appreciation with all the beautiful people who surround him. Ozon’s drama, on point with the complexities of reality as always, is the opposite: a director collapses under the weight of being accomplished, and homosexual too. There’s nothing good to feel about; it’s depressing and the character is revealed to be rather unlikeable. Maybe not a first date movie.

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Dan Knighton

3.5【著名な仏蘭西監督が、若く美しい青年への愛に翻弄され悩む姿を面白可笑しく描いた作品。劇中の著名監督がフランソワ・オゾン監督に見えてしまった作品でもある。】

2024年1月27日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

知的

幸せ

■恋人と別れて落ち込んでいた映画監督のピーター・フォン・カント(今や、仏蘭西の名優ドゥニ・メノーシェ)。
 助手のカール(ステファン・クレポン)をしもべのように扱いながら、事務所兼アパルトマンで共に暮らしている。
 ある日、親友で大女優のシドニー(ナント!イザベル・アジャーニ)が美青年のアミール(ハリル・ガルビア)と訪ねてきて、ピーターは彼に一目で恋に落ちる。

◆感想

・ご存じの通り、フランソワ・オゾン監督は50代ながらも既に仏蘭西映画監督の巨匠である。
 そして、一年に一回新作を発表するという驚異的な多作監督である。
ー 私事で恐縮であるが、2017年公開の「2重螺旋の恋人」を劇場で鑑賞し、一気に引き込まれ、それ以来昨年の「私がやりました」まで全て劇場で鑑賞して来た。
  只、一作、今作を除いては・・。-

・今作の作品の作りは、フランソワ・オゾン監督としてはシンプルなコメディ劇であるが、ドゥニ・メノーシェの演技が只のコメディではない作品に仕立て上げている。

・それにしても、今作で主役のピーター・フォン・カント監督が、フランソワ・オゾン監督に見えてしまったのは私だけであろうか。

・ピーター監督の助手カールへのぞんざいな物言いの仕方。
それに対し、慇懃なまでに忠実なカールの姿。だが、全てに裏切られた時にカールに縋るピーター監督に対して取ったカールの分かりやすい溜まりにたまった怒りのレスポンスには笑ってしまったぞ!。

<今作は、フランソワ・オゾン監督作品の中では、軽い作品に分類されると思うが、テンポ良い展開なども含めて、面白く鑑賞した作品である。>

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NOBU

4.5恋は盲目

2023年11月6日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

恋に狂った映画監督が見せる
《人間の虚飾を剥いだ実像》
本音満載のセリフ劇が面白く、そして衝撃でした。
ドイツ映画のリメイクだそうですが、
室内のラファエルかなんかの壁全体を覆う裸の絵画や、
台詞を歌詞にして歌う楽曲など、挿入歌もパワフルで
引き込まれる映画でした。

殆どが主役の有名監督ピーター・フォン・カントの部屋。
お客が扉を開けて入って来て会話する
【舞台劇】のような映画です。
カメラが戸外に出るのはラストの2〜3シーンのみ。
キャスティングの完璧さ!!
醜く太った腹・・・アルコール依存・・・
(ゲイなのにバイセクシャルで娘もいて、監督としての成功もして、
お金もたんまりあるピーター(トゥニ・メノーシュ)

大女優シドニー(イザベル・アジャーニ)が連れて来た青年
アミール(ハリル・ガルビア)にピーターは一目で恋に落ちる。

翌日には同棲を始め、
アミールに「1日中ベタベタしていられない」と言われてしまう。
この映画のなんとも言えない本音で話す言葉の品のなさが
強烈に響くのだ。
(オリジナルも口汚い言葉だけれどオゾン監督が更に輪をかけた感じ)
綺麗事が人生ではない。
アミール以外に価値観を見出せない、恋に狂ったピーターには、
カンヌの映画作品の成功も虚しいだけ。
アミールに恋焦がれている筈なのに、
「誕生日おめでとう」の電話を受け、なぜか会うことを避ける。
あんなに電話を待ち侘びていたのに。
何故?
恋に恋してる?
それにしてもカール‼️
助手のカール(ステファン・クレボン)の存在。
罵詈雑言を浴びせられた罵られても、文句一つ眉ひとつ動かさないカール。
ラスト含め怪演。
強烈な印象を残す。

遂にピーターを捨てて出て行く!!
(うーん、この映画のオリジナルを観たい、観なければならない)

ピーターはアミール(ハリル・ガルビア)への痩せるほどの悶えも苦悩も、
愚かな者にしか見えないが、
そこが人間に幻滅するオゾン監督のシニカルな視点なのか?
ラストの20分はピーターの狂乱、
そして口汚い本音
(娘や母親や友人をあそこまで悪し様に言うか!?)
本音満載の独壇場。
涙ぐんでアミールの思い出に耽るピーター役のトゥニ・メノーシュが
むさ苦しい太めの中年男なのに
恋に翻弄される乙女のように愛らしく見えた。
快作でした。

コメントする 3件)
共感した! 6件)
琥珀糖

5.0討ち死にして号泣するみっともないおやじに憧れる

2023年9月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

あの「聖セバスティアンの殉教図」。
イタリアの画家グィード・レーニの「殉教者・聖セバスチャン」です。
矢で射られて死んだ聖人の大きなポスターを前に、アパートの二階で繰り広げられるワンシチュエーションの舞台劇でした。
アミールと同じポーズの再現は、三島由紀夫もやっていますから、検索してみて下さい。

恋愛は何かを手中にし、支配することではないですね。
ぜんぶ無くして、壊されて、新しくその相手との人間関係を始めるってことなんです。

そしてもちろん逆もしかり、「結婚」も、誰かのものになったり誰かからの支配を受け入れることではありませんよね。

でも男って、誰かを好きになる時って無我夢中。
ピーターの頑張りが可愛いんですわ。
猛然と自分をアッピールして目の前の恋人を自分の魅力で惹きつけようとする。そして恋人を我が物にしようとする。
( 諸氏、あなたにも覚えがあるでしょう?笑 ) あの“反応”と“衝動”は、動物の生態学としてはDNAの発動するプログラムですから、これは求愛行動としては恥じることでもなく、仕方が無いのですが、「つがい」を作るとき、春先のウグイスのようにオスはさえずり、メスの周りをくるくると舞い踊り、あんなふうに胸を張ってメスの前で良く喋りますよねー、ピーター。(笑)

慈母ハンナ・シグラはピーターを抱きしめてたしなめ、
女優シドニーはピーターに呆れ返り、
娘ガブリエルは父親のそんな姿に涙。

アミールに気に入られようとして飾り羽根を広げて迫り寄るピーターは、雄孔雀そのものなんです。
インテリらしさを見せつけます。理路整然と、理詰めで相手を説得し、知識と経験とトロフィーのありったけを総動員して、他の男たちよりも優れている風を装ってね。あれは絵に書いたような男の性なんです。
美青年アミールをキャメラで撮りながら、その瞬間、男ピーターはアドレナリン爆出です。自分が恋人の前で心身ともに“バージョンアップしていく快感”に、自分自身でも酔っているのです。

ところが
猛烈アタックの甲斐あって、ピーターのものになってくれたはずのアミールくん、
たった9か月あとにはすっかり雰囲気が変わってしまったョ、 チャンチャン♪という結末でした。
しおらしかったアミールが、残念ながらベッドで朝寝でゴロゴロしたり、ピーターを口汚く罵って叱りつけたりと、アミールも古女房の“鬼嫁”に変身している訳ですが。
・・ガラガラの映画館でしたが、僕はここでもなんども声をだして笑ってしまいました。

パートナーが男であろうと女であろうと、DNAの春を過ぎればみんな早晩あんなふうになってしまうのだって分かって、お付き合いをする人たちは《幻想》が払拭されて、いいのではないですかね。

オゾンは容赦しません、
熱して下さい。そして冷めて下さい。
男は 恋の季節が過ぎればさえずりが止み、女は可愛いらしいポーズを止める。
詐欺じゃないんです。そういうふうに動物として出来てるんです。
そこを楽しむのです。
だから人間は面白いのです。

アミールが去ったあとの、
映画監督ピーターの失意。あの嘆き様が、そりゃあ可哀想で可哀想で。でもドゥニ・メノーシェ、まったく素晴らしい演技でしたねー。
中年になってあそこまで人を好きになれたって凄いこと。

・・・・・・・・・・・・・

今週僕は フランソワ・オゾン鑑賞週間でした。
「スイミングプール」では女同士の確執とタッグ、
本作「苦い涙」では今度は男同士の愛と別れ。

でもすでに、世界は性別などもうどうでも良い時代に入っているのですよね。
そういえば僕の大好きな現代バレエの名作=ラヴェルの「ボレロ」は、今でこそ大きな丸テーブルの中心で踊る筋骨逞しい男を、たくさんの裸の男たちがそれを取り囲んで、激しくプリンシパルを求めて舞い狂う=モーリス・ベジャールの振り付けが決定版とされていますが、
元々はと云えば、ボレロのストーリーは、酒場のテーブルで踊る女を酔っ払いの男たちが取り囲んで囃し立てるという構図なのでした。それが原点。

それがボレロの振り付けは、後に女がテーブルに立ち、同性の女がそれを取り囲むという「女✕女」の舞台が生まれたあとに、ベジャールの「男たちだけの踊り」に変遷。行き着いたのです。

性差の壁を乗り越えて、人間の情熱と求愛のドラマはステージにもスクリーンにも爆発します。

本作、
最後には“ジャイアン”キャラクターのピーターが、召使いカールから驚きの反撃を受ける。
殉教図。そして
アミールの裸の写真が横に並び、
写真の下にピーターは倒れ伏します。
「キューピッドの矢は愛を燃え上がらせるけれど、当たりどころが悪ければ人を死なせて、愛を死なせるのよ♪」と
ずっとそのように歌うシドニーのレコードが流れていました。

支配しようとして、ぜんぶを失って、またみっともなく泣く男。そんなピーターがむさ苦しくて いじらしくて可愛い。

オゾンのやり口。いいですねー。
映画監督として、シニカルに、自分のプロフィールをピーターに重ねて映像化したのかも知れません。
オゾン。サラリと、毒を吐きます。

・・・・・・・・・・・・・

こちら長野県はすっかり秋の気配です。
長い猛暑の夏が終わり、Tシャツではもう寒い陽気となりました。
塩尻市の東座。
切符売り係兼、映写技師兼、上映前の解説者兼の東座の社長さん=合木こずえさんも、いつもはアップにしていた柔らかい髪を、細い肩に静かにおろしていました。
オータム・イン・塩尻です。

しんみりと愛を語るにふさわしい季節です。
目を血走らせてがぶり寄る春には、まだあともう少し。
しっとりと良い映画を楽しみましょう。

ありがとう。

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きりん
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