ある男のレビュー・感想・評価
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こりゃなんだ コリアンダー
2022年映画館鑑賞64作品目
11月20日(日)イオンシネマ石巻
ACチケット1000円
原作未読
原作は『マチネの終わりに』の平野啓一郎
ヤフーニュースでお馴染みの人だ
村上春樹も政治的発言はするがTwitterはやらない
コタツ記事ライターは生活費の足しのためTwitterを見るが本は読んでいる暇はない
監督は『愚行録』『蜜蜂と遠雷』『Arc アーク』の石川慶
脚本は『リンダリンダリンダ』『マイ・バック・ページ』『ふがいない僕は空を見た』『愚行録』『マイ・ブロークン・マリコ』の向井康介
再び幸せを掴んだのも束の間に再婚してから数年ののち夫を事故で亡くした谷口里枝
一周忌に訪ねてきた「夫の兄」は遺影を見て夫の谷口大祐は別人だと里枝に告げる
里枝は離婚裁判のときにお世話になった弁護士の城戸に偽の谷口大祐「X」の正体の調査を依頼した
調査の結果Xの本名は死刑囚の息子で元プロボクサー(リングネーム緒形勝利)の原誠
本物の谷口大祐と闇業者小見浦の仲介で戸籍交換したのだ
冒頭はマグリット風の絵画
最後の方で妻夫木の後頭部の前に例の絵というシーンはわりと好き
死刑囚の父も演じた窪田正孝は今回の作品がこれまでの俳優人生の集大成と言える
さまざまな窪田正孝が『ある男』に詰まっている
窪田正孝ファンは必ず映画館で観よう
窪田正孝以上に良かったのは安藤サクラ
彼女の演技力がとにかく素晴らしい
谷口里枝の悲哀と苦悩を安藤サクラが見事に表現した
文房具の店番でひょっとこのように顔を歪ませて涙する里枝
飲食店で病気で亡くなった次男について谷口大祐こと原誠に話す里枝の一連のシーン
などなど
親になったことがない自分でも安藤サクラのチカラで貰い泣きしてしまった
二世俳優というだけでバカにする人は世の中に少なからずいるが「かかってこんかい」とキレたくもなる
奥田瑛二を完全に超えたね
原誠は谷口大祐の前に曽根崎義彦という男と戸籍交換しており谷口大祐は原誠ではなく曽根崎義彦を名乗っていた
原作では登場するであろうヤクザの曽根崎と原誠を名乗る知的障害者田代正蔵は映画には出てこない
城戸弁護士はいわばミステリーものの探偵的役割を担っている
一応城戸弁護士が主役のようだが谷口里枝と谷口大祐こと原誠中心に描かれるべきである
だからこそ城戸が日本に帰化した元在日朝鮮人というエピソードも思い切ってカットするべきだった
作品をより骨太にするため必要だったのかもしれないが曽根崎や田代をカットするなら必ずしも必要とは思えない
古畑任三郎や湯川学や江戸川コナンは朝鮮半島がルーツだろうか
人権派を気取りたいのはわかるが詰め込みすぎだと感じた
在日差別を取り上げることに猛烈に反対するわけではないが扱いによっては在日や帰化人にとても不快な思いをさせてしまうのでないか
『パッチギ』の井筒和幸もそうだったし被差別部落問題を取り上げた平田弘史の漫画『血だるま剣法』にしても然り
差別問題はより慎重さが求められるわけでたとえリベラルの良心だとしても当人たちからすればありがた迷惑になることもある
リベラルが天下を取ったとあまりにも調子にのれば狂信的な保守派を生み出し性的マイノリティーに対する乱射事件が起きてしまう
衝撃的なことは確かだが修復不可能になりつつある分断状態に銃社会では充分に起こりうることだった
あっちを立てればなんとやら人の世は簡単にはいかない
拉致問題慰安婦問題徴用工問題領土問題に加え北朝鮮のミサイルに韓国軍のレーザー照射に旧統一教会などなど課題は尽きない
だとしても自分としては日本で生まれ育ち普通に日本語が話せる彼らを国籍だけで嫌悪することはない
元ヤクルトの上田は大好きだ
日本語がろくに話せないにも関わらずなんとかなるさという軽い気持ちで出稼ぎにやってくるベトナム人男性に比べたらよっぽど好感が持てる
あと坂元愛登の芝居が子役のわりに良かった
子役なりに細かい演技ができてる
映画はとても重い話ではあるが妹役の小野井奈々が可愛くてそれで少しは癒される
里枝からの依頼を受ける弁護士の城戸章良に妻夫木聡
バツイチ子持ちで実家の文房具屋で店番をしている谷口里枝に安藤サクラ
谷口大祐を名乗りのちに里枝と「結婚」するXこと原誠に窪田正孝
本物の谷口大祐の恋人の後藤美涼に清野菜名
本物の谷口大祐の兄で伊香保温泉の宿を経営している谷口恭一に眞島秀和
城戸の相棒をしている弁護士の中北に小籔千豊
里枝の前夫との間に生まれた長男で中学生になった谷口悠人に坂元愛登
谷口大祐こと原誠と里枝の間に生まれた長女の花に小野井奈々
里枝の母に武本初江に山口美也子
章良の妻・城戸香織に真木よう子
谷口大祐こと原誠が勤めていた林産会社社長の伊東にきたろう
ボクサー時代の原誠のガールフレンド茜に河合優実
原誠が所属していたボクシングジムの会長の小菅にでんでん
小菅が経営するボクシングジムのトレーナー柳沢にカトウシンスケ
香織の父にモロ師岡
香織の母に池上季実子
美涼が勤める店のバーテンダーに芹澤興人
香織の不倫相手に矢柴俊博
温泉宿の次男坊で本物の谷口大祐に仲野太賀
戸籍交換のブローカーもやっていた詐欺師の小見浦憲男に柄本明
人生は上書きできるのか
サスペンスやミステリを期待していたが、人間ドラマの色が濃かったかな。
演技に関しては全員素晴らしかった。
今回は特に柄本明の底知れなさを感じる怪演が残る。
脇を含めて隙なし。(河合優実はもっと観たい)
反面、脚本はややまとまりに欠けた印象。
最後に真木よう子の浮気や妻夫木くんの騙りが入ったことで、『誰もが仮面を被っているし、誰かになりたいと思っている』という有り触れた結論に見えてしまった。
「真実を知らなくてもよかった」というところで締めた方が綺麗だったのでは。
まぁそうすると、様々に描いた差別や偏見が無駄になってしまうのですが。。
しかし、窪田くんはボクシングジム周りの人間関係には恵まれてたハズなのに、それでも足りなかったのか。
そこから2回も戸籍を変えた、その背景や心情を知りたい。
鏡に自分の後頭部が写ったら?どんな世界が見えるんだろうか?
3年9ヶ月愛した旦那が、ある日突然に「ある男X」になる。そんな状況に巻き込まれて翻弄する里枝(安藤サクラ)が真相を探る為に弁護士の城戸(妻夫木聡)に依頼することから始まるミステリー。城戸はこの依頼に仕事を超えて、自らの出自と重ねるようにのめり込んでいく。
在日、戸籍、差別、なりすましが主なテーマの原作だけに、かなり複雑で重い。しかし最後まで目が離せない脚本と演出はお見事❗️
死刑囚の息子が暗い過去を塗り変えたことは全く違和感はない。自分だってそう思うだろう。
城戸と小見浦(柄本明)の刑務所のやり取りが今作の見所。城戸に向かって小見浦が言う。「先生はなんで私が、小見浦ってわかるんですか?顔に書いてありますか?」このセリフに少しゾッとすると同時に、戸籍なんてただの紙切れなんだよなあと思う。ラストの城戸のバーのシーンと奇妙な絵がなにか色んな想像をさせながら締めてくれた。キャストの感想。窪田正孝のボクサー役は凄い。「初恋」を思い出した。安藤サクラさんは気丈な母親役を見事に演じてました。その義父の柄本明の短いシーンだが謎解きの鍵になる役を怪演。わざとらしい関西弁が逆に面白い。清野菜々さん今年は何本映画撮ってるんだ〜?売れっ子ですね。でんでんも何やらせてもしっくりくるなぁ。仲野太賀はラスト一瞬だけ贅沢に使いましたね。
久々の骨太の邦画ミステリー満足でした👍
ミステリーとしての雰囲気は最高 だが、あの人物の描写がないのが残念
里枝(安藤サクラ)が大祐という人物と再婚して、大祐が事故で死亡した後、大祐が実物とは別人と判明するところから始まる物語です。
結局、原という男が曽根崎という人物と戸籍交換し、さらに大祐と戸籍交換したことが判明します。
肝心の曽根崎という人物についての描写がないため、説明不足に感じました。
最後の弁護士の城戸についても、なりすましを匂わせながら幕を閉じましたが、衝撃はそれ程ありませんでした。
ミステリー映画としての雰囲気は最高ですが、曽根崎という人物の描写は、ある程度いれるべきだったと思います。
追記 ミステリー映画としての引き込み度は、今年のトップクラスだと思います。
塗り替えたい人生
ずいぶん前に原作を読んだが、正直 その時には
それほどピンとくる感じではなかった。
…が、しかし役者に惹かれて鑑賞。
個人的には、原作より分かりやすく面白かった。
安藤サクラは、まさに田舎町の文具屋さんにピッタリの
配役だったし、窪田正孝も親の罪を背負ったような
苦しみを切なく演じている。
それに、妻夫木聡は登場した際に、おやっと思うくらい
雰囲気が変わっていて、弁護士という富裕層の立ち位置と
在日という生まれを背負っている複雑な生い立ちを
良く表現していた。
生きてきたことを何もかもリセットしたい。
そんなふうに思う人は多いのだろう。
この作品は、見方によってそちらにも重心が
置けるし、また 安藤サクラの「ある男」が
結局は、誰でも良かったという「愛」の物語として
感じることもできる、とても面白い映画と思う。
しかし、江本明はどの作品に出てもどんな性格
の人物でも、いったい演技なのか本人なのか…
彼が出演することで、作品の深みが数倍上がる
ようなきがする。
目に見たり、自分が感じた事以外知る必要はあるのか?
人は誰しもが知られたくないことはあるし、話したい事がある。しかし、僕達は色々知りたがるし、噂などに色々踊らされ、その人のイメージを勝手に決めてしまって色眼鏡で見てしまっている。
しかも本人が犯したわけでもないのに、家族であったり、その周りが何かをしたからといって、その人自身が同じと思ったり、否定したりする事は違うが、僕ははそうした部分で同じ括りとして見てしまっている気がして自分の考え方など考えさせられました。
自分が見て感じた部分だけで良いはずなのに。
安藤さくらさんが言っていた、やはり別に知らなくても良かった、みたいなセリフがなんかその通りだなと思いました。もちろん子供の戸籍などはどうするねんみたいな事は抜きにして。
しかしラストのメールの場面も見ると、知ろうとしないとわからない事もあるし、逆に言うと知らない事が幸せな事もあるのかなっと思ったりしました。
最後バーでの話で思ったのですが、これは自分だけなのかもしれませんが、初めて飲み屋で会った人に、仲のいい友達や家族に言えない事を喋ってしまのかなと思ったのですが、それはきっと自分の事を知らないし、自分のバックボーンなど知らないから話せるんだなと思いました。そういう時は自分も何故か本屋で働いてると偽ってたなというどうでもいい事を思い出して映画館を後にしました。
血に抗い、名を変える意味。
原作は未読です。
愛に、過去は必要ですか?
芥川賞作家・平野啓一郎氏の同名小説を「愚行録」で知られる石川慶監督が描くヒューマン・ミステリーです。
妻夫木聡・安藤サクラ・窪田正孝、俳優陣は三者三様の何役を熱演で、物語がとても引き締まりました。きっと、来年の賞レースを席巻すると私は確信しました!!
本編は、重厚なストーリーに、この上ない切ない展開で、登場人物の掘り下げも深く丁寧に描いているので、私は序盤から物語に惹き込まれました。
ヒューマン&サスペンス&ラブストーリー&ミステリー、様々なテーマが乱立していますが、ひとつとして悪目立ちせずに自然に溶け込んでいました。まさに石川慶監督の真骨頂であり、プロの手腕に感服しました。
一度は他人と変わってみたい願望がある。
結婚した男が戸籍を売買して得た名前だったら。。。ということが起こり、それを弁護士が探っていくと、戸籍を変えたい背景が浮かび上がってくる。
死刑囚の子ども、温泉旅館のデキの悪い次男。
自分の姿を消して他の人生として生きていくことは、すべてをリセットできるのだろうか。
気持ちや性格はそのままのはず。そう思うとどんなに頑張っても残ってしまう前の人生の残り香をいかに消すか誤魔化すかというプレッシャーも奥底にあるはずだ。
在日の問題もあり、自分ではどうにもならないバックグラウンドをどう背負っていくかを考えさせられる作品である。
描かれない人生まで想像させる役作り
全ての登場人物が描かれていない人生まで
容易に想像させる凄まじい役作り。
本人の意思に関係なく
背負わされる容赦ない現実。
自分の意思を最優先し
他人を慮る気持ちが欠如した
残酷な偏見やヘイト。
普段のニュースでは見えてこない
加害者家族が受ける理不尽で厳しい現実。
何気ない朝の食卓のシーンが
窪田正孝演じる「ある男」にとっては
何ものにも代え難い幸せな時間だったのですね。
当たり前の日常が過ごせるありがたさ。
最後のあのシーンは個人的には蛇足でした。
ドキュメンタリーレベルの素晴らしい作品が
あの場面で急に映画っぽい映画に。
アルオ
「ある男」、もちろん窪田正孝演じる男のことだが、真木よう子の浮気疑惑からラストで(慣れた態度で)自らを偽る至るシークエンスによって、妻夫木聡のことをも指しているのではと感じた。帰化した三世である立場を柄本明のみならず義父までがあけすけに差別する。他人であったらと何度も思ったであろう過去を不遠慮にまさぐる。繰り返し見てきた予告編を裏切る展開に、こちらの気持ちもまさぐられる。
映像は地方ロケも丁寧で美しかった。
気になった点、真島秀和の役は、旅館を立て直した程の男であればあれほど他人をあからさまに傷つける言動はしないのではと思ったし、抑えても嫌悪感は伝えられるのではとおもった。
役者では推しの河合優実に触れなければならないが、清野菜名の役のように現在の見せ場が欲しかった。
丸の内ピカデリーの2階センターで鑑賞。
よく出来た、考えさせられるヒューマンドラマ
「すずめの戸締り」と「ある男」を立て続けに見ました。すずめは高校生の青春成長物語、ある男はヒューマンドラマの秀作。面白かったし考えさせられる。最初に後ろ向き2人の絵画があり、ラストでは後ろ向き2人の映像。後ろからでは誰かよく分からないが、前から見たら名前も正体もわかる。でも1人の人物は前から見ても同じ。でも知らない別人・後ろ姿になって生きていきたいこともある。そもそも人を評価するのに今を評価すれば良いだけなのに、我々は人の過去や私生活等を知りたがる。その人の過去や出生は直接関係ないはずなのに。芸能人も演技だけ評価すれば良い、私生活は関係ない。プロレスラーはリング内のパフォーマンスだけ評価すれば良い、他は関係ない、でも人の覗き見趣味が悲劇も生み出す。そんな人間の心の邪悪を封じ込めるため、災いが起こる前に、邪悪な心の扉を締めて鍵をかけねば🤔
Identity
かなり重い作品であろう事は上映館での予告で何度もリピートされた印象で刷り込まれ、ブッキーの眩しがる顔が目に焼き付かれてしまった程
なにせ、出演俳優の豪華さは最近の作品では類をみない作品である こんな演技力の高さが段違いの集結がどれだけの上質なサスペンスをスクリーンに描くのだろうと相当のハードルを設定して鑑賞した
結論から言うと、多分今年鑑賞した作品中でも最上質の内容に仕上がっていた あれだけ長い期間の予告を流せば何となく飽きも憶えてしまうが、全くそんな心配は無用であり、それ以上にあの予告にはかなりの情報を上手に控えていたことに感謝すら覚える そして意外にも手練手管の俳優陣もさることながら、子役の中学生の息子役の男子の演技にこそ今作品のキモが潜んでいたことを強く感じてしまった 自室での母親とのやり取りは正に落涙を禁じ得なかったクライマックスである
在日、死刑囚の息子、詐欺師の発言、というこの日本に於ける被差別者の苦悩をこれでもかと抉り倒すには、その差別者である半径1mの近隣者の無神経且つ執拗な心にない言葉が必要であり、今作品にはそのやり取りが効果的に演出されており、その負の推進力がストーリーをまるで飛んでいく風船のように縦横無尽に動いていくのである その被差別の発覚は唐突であり、観客に驚きと、やっと今作品のテーマを突きつけられて戸惑う そう、本来ならば蓋をしたい問題提起なのだから… そこを予告では綺麗に削ぎ落とし(勿論、原作小説を既読者は頭の中にあるのだが)、今ストーリーを初めて知った人は面くらい、その騙し討ちの様な感覚に戸惑うことだろう
但し、自分は思い当たるフシがある、というか当事者だ(被差別者という意味) あからさまな差別を受けなくてもこの国では真綿で首を絞められる事は日常茶飯事である そんな中で主人公2人の背負ってきた背景の凄まじさは身に沁みる疑似体験としての鑑賞であった。そんな作品なのでパンチラインも心に重くのし掛る 「誰の人生と一緒に生きてきたのか…」「自分は一体何者…」「やっぱ親父の血を継いでるんだな」等々、その台詞に解釈等に不必要なストレートな刃が心を刻んでいく まるで当て書きのような配役の2人が陰と陽の様にキャラ付けされているのも感情移入に一役買っている そしてこれが正にラストのミステリーに重要なファクターなのも仕掛けとして段違いである
今ミステリーを紐解く鍵は"ロンダリング" 戸籍をどうやって交換するのかは今作品では説明していないのは犯罪助長に繋がる理由なのは理解出来るのだが、リアリティを味付けするのにはもう少しパンチが欲しかったのは無い物ねだりか(苦笑 それにしてもその交換を何度も繰り返し"上書き"することで元の名前をウォッシュしてしまう方法は、マネーロンダリングと同様かと気付けば腑に落ちるがやはり、金と戸籍ではイメージが湧かない。そのイマジネーションの朧気さを登場人物の多さと相俟って展開を深霧の中に沈めていくのである そして一応の本物語の終結でのカタルシスで安堵を演出したかと思いきや、実は弁護士の妻が浮気していたという事実に、その弁護士も又自分の出自をロンダリングしたと思わせるバーでの場面でエンドロール。一筋縄では行かない今作品の複雑な構造を堪能できた作品である。社会問題、作品自体の多重な構築、そして自分に当てはまるテーマ内容、どれをとっても没入感、そして憤りと悲しさが綯い交ぜに心に注ぎ込まれた素晴らしい作品であった
リアル日本の「過去の」「戸籍ブローカーもどき」と、そして「今の」それに共通するもの。
今年337本目(合計612本目/今月(2022年11月度)24本目)。
さて、「法律枠」という観点では今週本命で見に行ったし、法律以外にも憲法(人権)などいろいろな論点が絡んでいる作品です。
ただそのことは多くの方が書かれていることですし、多言を要さないでしょう。
映画内で触れられている、「巻き込まれざるを得なかった事情の人たち」は今現在でも存在し、そうした方がこの映画で触れられる悲惨な結果にならないよう、個々人の人権意識を高めていかなければ、という趣旨の作品だと思います。
さて、さっそく採点いきましょう。
やはり行政書士とはいえ資格持ちなので、特にこの映画はいろいろ気になる点が多いです。
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(減点0.3/「戸籍ブローカー」の売買人に関する描写がない)
・ 「戸籍ブローカー」、正式な用語でもなくそもそも「正式な用語」が存在しませんが、「戸籍売買」などでも検索すると今でも存在はするようです(もちろんアウトです)。
ただ、「ブローカー」だろうが「売買」であろうが、あの映画内で収監されている方は、公正証書原本不実記載罪(刑法)や、戸籍法(個別の行政法規の罰則規定)違反の扱いです。これはちらっとですが出ます。
さて「ブローカー」であろうが「売買」であろうが、「1人で」あれこれ勝手に好き勝手あの人この人入れ替えるというのはただの「愉快犯」です。つまり換言すると、こういう「仕事」(「仕事」というのか怪しいですが…。便宜上。以下同じ)が成立するためには、戸籍を「買う側」「売る側」の存在が欠かせません。そうでないと「まとめ役」としての「ブローカー」が成立しないからです。
しかしブローカー(実際に書類を出す側)はもちろん、売る側買う側も、それが違法であることを知っておきながらお願いするというのは、それもそれで法に触れます。もちろん、「何とかプレゼントに当選したので、氏名と住所、電話番号を書いて送ってください」みたいなはがきがきて、まさか悪用されたというような、「被害者側が善意無過失」(=事情を知らず、かつ、過失がない)ケースならともかく、普通は「売る側」「買う側」も当然認識しているため、売る側・買った側も当然逮捕はされえます(主犯と比べると軽くはなるとは思いますが…)。
映画内ではなぜかこの点の描写がないのが謎です。ただこの点を描くとストーリーの大半が崩壊してしまうという論点があるのも確かで(映画のストーリー参照)、仕方なしかなという気がします。
(参考/減点なし/リアル日本の「戸籍ブローカー(もどき)」が起こした現在の闇)
・ このことは実は重要なことで、この映画の「主題」にも一つかかわってきます。
戸籍や住民票は、「自分のもの」なら、身分証明書一つ出せば出してもらえます。最近はコンビニなどでの発行も可能になった自治体もありますね。家族といった「ちょっと広いが、それでも身内といえる範囲」なら、「この人に委任します」というようなものがあれば可能です。しかし、まったく無関係の人の戸籍や住民票を取り出すことは普通できません。
さて、時間軸をリアル日本に戻します。戦後の日本では、この映画のような「戸籍ブローカー」(または、戸籍売買屋、などと呼ばれていた)がいたのは事実です。ただそれは、いわゆる「外国人差別(特に在日韓国/朝鮮人の差別が醜悪だった)」や、「いわゆる同和地区・被差別地区差別」といった問題がリアルで起きており、これらから逃れるためにやむを得ず行われたケースが大半で、これも当然、上記の法には触れますが、事情からして相当「酌むべき事情」が多いので、単なる「お金欲しさ」という事案と比べると、言い渡される刑期などもある程度調整されています。
ところが、これとは別の意味での「戸籍ブローカー」が日本にも存在した歴史が存在します。
日本では、弁護士をはじめとした各種の法律職(行政書士も含む。ほか、司法書士や社労士など、限られた国家資格を持つ人)は、「その職務に必要な範囲で」住民票や戸籍などの情報を得ることができる制度はもともとありました(この制度を「職務上請求」といいます)。
そして、日本では特に「結婚・就職差別」や「同和地区差別」といった事案において、そのリストを作るために延々と職務上請求を繰り返したりといった「趣旨を逸脱する」ものが現れ、あまりに悪質なものは逮捕、そうでなくても廃業命令等厳しい対応が取られています。つまり、「弁護士を頂点とした、弁護士を補う形でそれぞれの専門性を生かして法律のお仕事をする」立場の人たち(もちろん、行政書士=たとえば、外国人の就労支援などをサポートするのが一類型。ほかにもあります)」が加担していたケースすら、昭和~平成1桁の時代には普通にあったのです。これが「ある意味」、もっと悪質な「戸籍ブローカー(もどき)」です。
※ ここでいう「戸籍ブローカー(もどき)」というのは、映画内での描写以外にも、広く「戸籍制度を悪用する」という広い意味です。
このようなことがあまりに多発したので、各業界(例えば、行政書士会等)も研修(人権啓発など)を充実させたほか、これに対応する形で法が改正され、「職務上請求が行われた場合に本人に「請求がされましたよ」という通知が飛ぶ」ようになりました(「本人通知制度」といいます。事前に登録しておく必要があるので注意)。
また、これら職務上請求はどうしても実務上必要なので今でも使われていますが、(例えば、行政書士の場合)その職務上請求の用紙は個人ごとに異なる番号が割り振られて印字され、番号(何枚目、ということ)も付されるようになり、あとから「何のために使ったのか」を調べられるようになり、不正防止がほどこされるようになりました(このように、「誰がいつ使った」は今では即座にわかるようになっていますし、そこでの調査で何ら業務に関係しない個人の情報をのぞき見しましたというのは、基本的にかなり重たい処分になります)。
実はこうした「本来、法を守るべき側の法律職・法律隣接職による、ある意味で戸籍ブローカー」(より正しく言えば、見る必要もなくセンシティブな内容をみだりに見る、という、業務と無関係な乱用)がリアル日本には「存在した」、ということ、それは、一合格者の目線でも忘れてはいけない、そう思います。
つまり、ここまでを換言すると、「リアル日本では、過去に戸籍・住民票を「正規に」手に入れられる職業の方(これらの方は、立場の差はあれ法を順守する、人権を尊重する、という立場に立ちます)が、この映画で描かれているような、今でも続く「差別問題」に手を出していた過去が存在する」ということです(映画内では一切描かれていませんが、このことは日本のこうした人権問題、戸籍をめぐる事件では忘れはいけないことがらです)。
ミステリー & ヒューマンドラマ
たしかに戸籍を変え、違う人として生きたいと思っている人っているかもしれないですね。
窪田正孝さん演じる谷口大祐(偽)は不幸な生立ちだったけれど、戸籍を変え数年でも幸せな人生を歩めて良かったな。
ストーリーは大きな驚きも特になく星3個くらいかなと思っていたけれど、ラスト3分の衝撃で星4個になりました。
【今作は人間のアイデンティティーとは何かを問う作品であり、家族の愛を伝える映画でもある。 真の家族愛とは、血縁が無くても形成されるのである。 偏見と差別の愚かさを描いた作品でもある。】
ー 身内に犯罪者を出した家族が、その町に住めなくなり、失踪するという話は時折聞く。死刑になった男を父に持つ”ある男”(窪田正孝)の苦悩は想像が付かない。
彼の言葉”朝起きて、鏡を見ると、父がいるんですよ・・。”
キツイよなあ・・。”ある男”は、何も悪くないのに・・。-
◆感想
・今作は、アイデンティティーとは何かを見る側に問いかけてくる作品である。
”名前、肩書を越えた自分自身の社会的存在意義とは何か”・・をである。
・それと共に、人は何故、差別・偏見をするのかをも問いかけてくる作品である。
ー 死刑になった父を持つ”ある男”の心の傷を作った一因であるだろうし、在日韓国人への差別。(今作では、亡くなった夫”大佑”の身元調査を妻、里枝(安藤サクラ)から依頼された弁護士の城戸(妻夫木聡)である。
又、随所で流れるヘイトスピーチをする愚かしき人々の罵声と姿。-
・文房具屋を営む、里枝が2歳で亡くした娘の事を思い出しながら、製品を整理している所にフラリと現れた”大佑”。
二人は恋に落ち、娘も出来、幸せな生活を送っているが(”ある男”が、初めて得た家族であり、安穏の日々であったであろう。)林業を営みとした”大佑”は不慮の事故で命を落とす。
一年後、”大佑”の兄、谷口恭一(眞島秀和)は”大祐ではない”と言い、DNA鑑定の結果、別人と分かるシーン。
ー 里枝の”誰と暮らして来たんでしょう・・。”と言う哀しみの言葉と共に、城戸の調査で”大佑”の本当の名が分かる過程が、サスペンスフルで引き込まれる。
戸籍、肩書の軽さ、アイデンティティーの重さを、収監された柄本明が飄々と演じている事で、観る側に上手く伝えてくる。ー
・本当の大祐(仲野大賀)は温泉旅館を営む兄、谷口恭一とも上手く行っておらず、恋人(清野菜名)にも告げず、失踪していた事が分かるシーン。
ー 兄も、何気ない言葉の端々から、偏見を持った男であることが分かる。ー
・城戸も、妻のスマホに送られてきた知らない男のメッセージを見ても、妻には何も言わない・・。
<今作は、人間のアイデンティティーとは何かを問いかけてくる作品であり、偏見、差別を考えさせられる作品であるとともに、真の家族の愛を見る側に伝える映画でもある。
真の家族愛とは、血縁が無くてもキチンと形成されるのである。
人を偏見で見たり、差別する愚かさを描いた作品でもある。>
城ケ崎?はどこ?
幼い子供を亡くし離婚して実家の文具店を継いでいる女性(安藤サクラ)
そこにある男(窪田正孝)が訪れ親しくなり結婚。
幸せな日々を過ごしていたが不幸な事故である男が他界してしまう。
夫の実家に連絡すると、ある男が違う人物であるとわかる。
ここまでは安藤サクラ視点で描かれています。
その後、夫の正体を知るため弁護士(妻夫木聡)に相談すると妻夫木聡の視点になる。
他人になりたい人がいるのは解るけど、成り済ました人の実家の話をするのか?
ここは天涯孤独で良かったのではないか。
他人になることで他人の過去まで手に入れたがった男に巻き込まれてしまった感じ。
親の罪や出生という自分ではどうしようもないことで他人から批判されている人たちが、違う人物になることで心の平穏を得ようとしているのか?
最後のシーンは、完結で終わって欲しかったな。さんざん本編で悩まされて最後は見た人にまかせますは、無責任だしせっかくの謎解きも台無し。
絵
待ちに待った映画🎬✨
妻夫木聡さんの揺れ動く表情
笑ってるけど内心笑っていない感情
窪田正孝さん
やはり狂気な演技とても良い
優しいお父さんも善き
安藤サクラさん
子供を亡くして辛い母を演じてます
いつも素晴らしいな
ただ皆さん泣くシーン多いかなぁ
妻夫木聡さんの城戸
最後は
妻に浮気され、義理の父に在日をいびられ、自分の居場所がなくなり
谷口になりすます
あのBARだけだと思うが
それは逃げなのか、保身なのか
戸籍交換、なりすまし、親子が複雑に絡み合うなんとも巧妙な映画
驚愕のラスト3分!!!
さすが妻夫木聡さん!!
そうくるとは予想出来ませんでした!!
うーんなるほど、確かにな〜と思わせるラスト5分あたりの状況そして。。。!
ミステリーなだけでなく、人生についても考えさせられる作品でした。。
ある男って誰なのか??それを追うだけではなく、
あなたの人生は?
。。と問いかけてくる脚本でした。
役者としては小藪さんがまーあいい味出してました!!(笑)ここはちょっと楽しい(笑)小藪さん、もうまんまの性格やん!!って良かったのと、
いやーーやはりひとクセある人物をさせると柄本明さん上手い!!!分かってるけど、作品により悪徳政治家でも誰でも(今回は別に政治家ではありません。)一筋縄にはいかない人物、まーー上手い!!
とりあえず最後の3分の展開で、私はうわーーーーと思いました。ミステリー好き、多少世にも奇妙な。。っぽいテイスト(別にシンプルに現実世界の話だけですが)そういうの好きな方ならオススメです。
なかなか引き込まれる好作品ではあったのだが、妻夫木が大祐なんじゃな...
なかなか引き込まれる好作品ではあったのだが、妻夫木が大祐なんじゃないの?っていう予感が当たってしまったので拍子抜け。意外性の付け方がパターン化しちゃってるから、こういう作品何本か観てると何となく感じちゃうんですよねー。素直にあゝそうだったのか!で観終わった方が楽しいですよね。
全130件中、101~120件目を表示