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◆記者たち 衝撃と畏怖の真実

勝負に勝って試合に負ける、このほろ苦さが現代への教訓
  ロブ・ライナー監督の代表作を挙げるなら、「スタンド・バイ・ミー」「恋人たちの予感」「ア・フュー・グッドメン」あたり。娯楽映画の名手という印象があるが、最新作は意外にも社会派。9.11後のアメリカで、不確かな情報を口実にイラク戦争へ突き進むブッシュ政権に、孤独な戦いを挑んだ記者たちの実話だ。

  新聞社ナイト・リッダーは、日本でこそ知名度は低いものの、当時31の地方紙を傘下に持ち全米第2の規模を誇る名門。そのワシントン支局の記者たちは、「オサマ・ビンラディンをフセイン大統領が支援」「イラクが大量破壊兵器を保有」という政府の主張に疑念を抱き、政府職員や外交官らを地道に取材。大手メディアが政府に迎合するなか、ナイト・リッダーはイラク侵攻の根拠が情報操作されたものであることを暴き、政権を批判する記事を掲載する。

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  権力者の不義に抗う報道機関の実話を描く映画と言えば、「スポットライト 世紀のスクープ」(15)や「ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」(17)など近年力作が続くが、その先輩格はニクソン政権の不正に迫るワシントン・ポストの記者たちをダスティン・ホフマンロバート・レッドフォードが演じた「大統領の陰謀」(76)。中堅と若手の記者コンビをベテラン幹部2人が支えるという構図が、本作のランデー(ウッディ・ハレルソン)とストロベル(ジェームズ・マースデン)、ライナー監督が自ら演じた支局長、重鎮ジャーナリストのギャロウェイ(トミー・リー・ジョーンズ)の4人に引き継がれているのも興味深い(ストロベルが「記者になって失敗した。『大統領の陰謀』のせいだ」とぼやく台詞もある)。

  政権が都合のいい情報を流して世論を誘導したことを、記者たちは調査報道で追及し、結果的に大量破壊兵器は見つからず彼らの正しさが証明された。だが開戦を阻止することはかなわず、イラク人100万人、米兵3万6000人以上が死傷。勝負には勝ったが試合には負けた状況であり、映画の後味もほろ苦い。

  報道機関が権力を監視する役割を後退させ、政府の"広報"に甘んじる状況は、日本も同じ。だが政治もマスコミもその国民を映す鏡だとすれば、嘆くだけではすまされない。ニュースの受け手で有権者の私たちがメディアリテラシーを高め、真実を求める姿勢を正していくことが、政治と報道の質を高めることにつながるはずだし、それこそが本作に込められた願いでもある。

(高森郁哉)


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