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◆犬猿

家族への愛情もネガティブな感情もまとめて肯定する視線に誠実さを感じる
  吉田恵輔のことはもう"天才"としか言いようがない。何のかって、人間の卑小さを飛翔させる天才であり……いや、なんだかうまいこと言おうとしたみたいになった。とにかくみみっちい自分自身によって追い詰められる小市民の自業自得を、あふれんばかりの共感と笑い、そしてひと匙の悪意をまぶして描かせれば無双状態の名監督である。

  吉田監督(と、コンビを組んでいた故・仁志原了氏)はオリジナル脚本で数々の傑作を生みだしてきたが、新作「犬猿」はオリジナル企画としては5年ぶり。その間に「銀の匙 Silver Spoon」「ヒメアノ〜ル」と2本の原作物で咀嚼能力の高さを見せつけてはいるが、ファンとして誰かに勧める際にはまず吉田ワールドがさく裂するオリジナルをチョイスしたいもの。

  そして満を持して公開される「犬猿」では、5年という久しぶり感をカケラも感じさせず、さらっと名作をものにしてみせているんだから天才とはなんと小憎たらしい生き物か。今回、器の小ささをこれでもかと開陳させられるのはふた組の男女。男女といっても、兄弟と姉妹という関係性にまつわる物語だ。

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  世の中には仲が良い兄弟姉妹もいるだろうが、多くは目の上のたんこぶだったり、コンプレックスの対象だったり、面倒をかけてくる厄介者だったりはしないだろうか。兄弟も姉妹も人と人とが認め合って結ばれる関係ではない。強制的にあてがわれる、友人でもなければ先輩や後輩でもない近しい間柄。それゆえの感情のもつれや面倒くささをこれでもかとネタにしているのだ。

  「犬猿」というタイトルも、窪田正孝新井浩文、ニッチェの江上敬子筧美和子が演じる4人の主人公がそれぞれにタイプが真逆で反りの合わない兄弟姉妹であることに由来している。

  地道でおとなしい営業マンの弟と、ムショ帰りのチンピラでがさつな兄。家業の印刷工場を切り盛りする姉と、姉の下で働く事務員だがタレント事務所にも所属する妹。互いへの妬みや嫉みが暴走してとんでもない事態を引き起こす――と雑な説明をしてみたが、映画ならではの荒唐無稽さと半径2キロメートルくらいの身の周りでありそうなリアリティのさじ加減が本当に上手い。

  また映画が家族の愛憎を描く場合に「やっぱり家族は大切」みたいな結論に着地させがちなところも吉田監督は巧妙に回避する。家族への愛情もネガティブな感情もまとめて肯定する(同時にちゃかしてもいるが)視線に、今回も監督の誠実さを感じてしまうのだ。

(村山章)


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