劇場公開日 2018年9月7日

「不快・苦痛・忍耐を強いられる作品」フリクリ オルタナ suckermanさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0不快・苦痛・忍耐を強いられる作品

2018年9月12日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

寝られる

映画鑑賞後に劇場が明るくなった瞬間、後ろの席に座っていた男性客二人組が「こりゃ、ダメだ」と呟いて席をたった。「あぁ、おれと同じ気持ちに耐えていた人がずっと傍にいたんだ」ということに気づいたこと。今回劇場に足を運んで一番エモーショナルな場面でした。

OVA版「フリクリ」という作品を貫いていた、画作りのセンス、舌を巻く演出、創造力を爆発させたようなアニメーションの強度は、今回の「オルタナ」には、その僅かな欠片すらも観てとることができませんでした。とにかくまず第一印象としてカッコよくないんです。OVA版だっら、スローや一時停止にして「この画作りやべぇなあー!」とじっくりと観たくなってしまうシーンがいくつもあるのですが、今回の劇場版には、個人的にはそのようなシーンは一か所もありませんでした。

また脚本に関しても一言。とにかくもう酷い仕上がりだと感じました。OVA版では、例えば両親からの見捨てられ不安を抑圧しているニナモリが抱えるアダルトチルドレン的な感情の機微や、ボーダーライン的な心的傾向をもったマミミの負った傷と闇の深さみたいなものを、さり気ない言葉や言外の描写を通してとても繊細に描いていましたが、今回の「オルタナ」では、そうした登場人物たちの心の機微もほとんど台詞で説明してしまう。

もの凄く単純化すると「〇〇だから、私は怒っているんだよぉ~!!」「✕✕だから、私は悲しんでいるんだよぉ~!!」みたいな感じです。「いや、そこら辺の感情の機微は、登場人物たちに言葉で説明させないでみせろよ…」と、なんど心のなかで呟いてしまったか…。観ていて気持ちが萎えてしまい、馬鹿馬鹿しくてとても物語世界に足を踏み入れる気になれませんでした。

まだ「プログレ」は観ていませんが、すくなくとも「オルタナ」に関しては、「フリクリ」という歴史に名を残す素晴らしいアニメーション作品を完全にレイプしていると個人的には感じています。ほんとうに酷いと感じました。

たぶん自分がこうして怒りを感じるのもきっと「フリクリ」という作品をずっと愛してきたからだろうと思います。劇場公開が決定してからもずっと心待ちにしていました。それだけに今回の作品のクオリティには、ほんとうに心から残念で悲しみを覚えます。

「プログレ」も公開されたら観に行くけれど。

suckerman