劇場公開日 2018年9月7日

フリクリ オルタナ : 映画評論・批評

2018年9月4日更新

2018年9月7日よりTOHOシネマズ上野ほかにてロードショー

無軌道な青春エネルギーをそのまま映像化したようなトリップ感満載の破天荒アニメ

世界のアニメファンを興奮の渦に叩き込んだ伝説のアニメ「フリクリ」が18年ぶりに帰ってきた。今回の劇場版の2作は、OVA版で提示された数々の謎に決着をつける、などという意識は微塵もない。フリクリフリークたちが作ったという今回の劇場版は「あの頃の興奮を、もう一度」と言わんばかりのフリクリの興奮の再現を、新たなストーリーで目指したものだ。OVA版を知っている人も知らない人もほとんど同じように楽しめる作りになっている。

「フリクリ」とはどんな作品か、一言で語るのは難しい。数多くの意味深な用語とギミックを配し、奇抜に変化する絵柄に、頭から物体が飛び出すなどの意表をつくギミックが混ぜ合わさり、強烈なトリップ感が生まれている。物語は世界の危機と青春の鬱屈感が等価に展開して豪快に交錯するセカイ系的な展開が特徴で、作品中に数多くの謎が撒かれるが、それらの説明よりもテンションの高さのほうが重視される。

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フリクリ オルタナ」は4人の女子高生に、主人公のハルハラ・ハル子が絡むことで始まる。将来やりたいことの見つからないカナは、ハル子との出会いで頭から妙なものが出る体質になってしまうが、それよりもカナにとっての重大な関心事は3人の親友との関係だ。モデルのような容姿のヒジリー、夢に向かって頑張るモッさん、そして幼い時からいつも一緒にいてくれたペッツと自分を見比べて己の平凡さに苦しんでいる。そんな彼女の悩みと世界存亡の危機が重なり合い、怒涛の勢いで物語がスケールアップしていく。

カナの台詞「たとえ明日が昨日の寄せ集めだとしても」が印象的だ。未来が何も新しくなかったとしても、自分が全然成長できなかったとしても、それでも親友と過ごす日常が続くことはかけがえのない喜びだ。

無軌道な青春パワーをそのまま映像にしたかのような高揚感。「フリクリ」はやはりこうでなくてはと思わせる会心の出来だ。

杉本穂高

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