劇場公開日 2019年3月22日

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バンブルビー : 映画評論・批評

2019年3月19日更新

2019年3月22日よりTOHOシネマズ日比谷ほかにてロードショー

バンブルビーと高校生の友情物語は、80'sレトロを助力にシリーズの原点へ立ち戻る

トラヴィス・ナイト監督による「バンブルビー」は、マイケル・ベイが製作・監督した5本の実写映画「トランスフォーマー」の起源となるエピソードだ。宿敵ディセプティコンとの激戦下、地球をオートボット再編の拠点とする指令を受け、惑星セイバートロンからやってきたバンブルビーことB-127。だが司令官であるオプティマスプライムの息の根を止めようと、ディセプティコンはそんな彼を容赦なく追跡する。

物語はバンブルビーが1987年のカリフォルニアへと飛来し、18歳の高校生チャーリー(ヘイリー・スタインフェルド)とホットな友情を築く過程を捉えていく。父を亡くした喪失感から、母と継父にぎこちない思いを抱くティーンエイジャーと、孤独で大任を背負うオートボットとの接触は、かつてスティーブン・スピルバーグが監督した「E.T.」(82)や、氏がプロデュースしてきた「ハリーとヘンダスン一家」(87)など、アンブリン製作による“異種コンタクト系ファミリーピクチャー”を思わすハートウォーミングなものになっている。それに併せ、なぜB-127はバンブルビーという名を得て、そして声帯を失うことになったのか? といった07年の「トランスフォーマー」へと繋がる要素を満たしていく。

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なによりド派手なアクションを主体とし、クレージーなまでの火薬量で視覚的興奮をグイ上げするベイ監督のアプローチとは異なり、画作りの明瞭さと的確なショット構成が観る者の心を間違いなく掴む。ナイト監督は「KUBO クボ 二本の弦の秘密」(16)で知られたアニメーションの作り手だが、こうして初の実写長編へのターンを見事にこなしている。しかも大状況的なロボットバトルを描くことにエスカレートしてきた過去5作に比べ、チャーリーとバンブルビーの物語にフォーカスを定め、キャラクターそれぞれの芯にしっかりと触れることによって、映画はトランスフォーマーとしての原点に立ち戻るのだ。本作が07年の最初のリリース以来、最も優れた劇場版トランスフォーマーだと評されるのも納得がいく(自分としてはベイヘムな5部作も同等に価値あるものと思っているが)。

1980年代中後期のサブカルチャーが有機的に絡んでいく内容や、青春ムービー「ブレックファスト・クラブ」「ときめきサイエンス」(85)の引用に見え隠れするジョン・ヒューズへのリスペクトなど、時代設定へのこだわりが若年層だけでなく、親世代をもたまらない気持ちにさせる。特に今の最先端を行くポップスターでもあるヘイリー・スタインフェルドの、80'sMTV文化を染み込ませたヴィンテージな佇まいはじつにキュートだ。

尾﨑一男

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