劇場公開日 2014年9月27日

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アバウト・タイム 愛おしい時間について : 映画評論・批評

2014年9月24日更新

2014年9月27日よりシネマライズほかにてロードショー

タイムトラベルが教えてくれる、1日1日を生きることの素晴らしさ

一族の男にはタイムトラベル能力がある。自分の過去に戻れるだけで歴史を変えることはできないとはいえ、そんな衝撃の事実を21歳の誕生日に知らされた、恋に不器用な青年ティムを主人公とする物語をリチャード・カーティスが監督した。そう聞けば、誰もが軽快なラブコメディを想像するだろう。実際、ティムが恋を成就するべく、何度もタイムトラベルを繰り返して出会いのシーンで悪戦苦闘する前半は、まさに青春コメディ。「フォー・ウェディング」や「ブリジット・ジョーンズの日記」の脚本も手がけたカーティスは、本作でもウィットに富んだ会話とともに、誰にも身に覚えのある恋愛や人生をめぐるあれこれを描き出して、共感させずにいないのだ。

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だが、これはただ面白おかしいだけのコメディではない。ティムが家庭を持ち、人生の喜びを見いだしていく後半、物語は1日1日を大切に生きることの素晴らしさに気づかせる感動ドラマへと転調する。普遍的なテーマがいっそう胸に深く沁みわたり、温かい涙が止まらなくなるのは、こうした前半とのギャップと、タイムトラベルで結ばれたティムと父親の優しい関係があるからこそ。

穏やかな父親を演じながらもオフビートな空気を漂わせるビル・ナイの存在。「フォー・ウェディング」の主人公やブリジット・ジョーンズと同じく、ここ一番でハズしても憎めないティム。そして、登場人物や市井の人々の幸福な日常風景を織り込む「ラブ・アクチュアリー」なエンディングなどなど、全編にカーティスらしさが香る作品は、エンドロールで流れる主題歌「How Long Will I Love You」もまたその余韻を深くする。そう、音楽も台詞も実に味わい深いので何度も見たくなるのも、カーティス作品ならでは。これが引退作なんて、信じませんよ。

杉谷伸子

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