その壁を砕け

劇場公開日:

解説

「才女気質」のコンビ、新藤兼人が脚本を書き中平康が監督した裁判劇。撮影は「男が爆発する」の姫田真佐久。

1959年製作/100分/日本
配給:日活
劇場公開日:1959年6月23日

ストーリー

東京--新潟間の国道を吹っとばす一台のワゴン。運転している渡辺三郎は自動車修理工だが念願かなってワゴンを手に入れ、新潟で独立するため、いまそこへ向う途中。新潟には恋人のとし江が待っている。二人は結婚することになっていた。この日のために三郎は東京で、とし江は新潟で懸命に働いてきたのだ。幸福感にひたされ車を走らせる三郎は三国峠で一人の青年を便乗させた。青年は次の駅近くの雑木林で降りた。三郎は駅前広場に差しかかった。と、突然彼は警官に逮捕された。意味の判らぬ逮捕に怒り狂う三郎は刑事に押されて町の郵便局の奥座敷に連行された。部屋は血の海、二人の男女が頭を割られて倒れていた。女の方が顔を上げ、「こいつだ!」と三郎を物凄い形相で睨みつけた。三郎は起訴された。局長・谷川徳蔵を鉈で殺し、その妻・民子に重傷を負わせ十五万円を奪った疑いで。現場に指紋はなく、民子が「こいつだ!」と叫んだことは三郎を不利にした。捜査に活躍した土地の森山巡査は本署勤務に栄転した。が、署長だけは三郎を白と漠然と感じた。裁判は長岡で開かれた。新潟から駈けつけたとし江は長岡駅前の食堂で働きながら三郎を励ました。署長も友人の鮫島弁護士を紹介してくれた。裁判は証拠の発見と凶行時間の空白に争点が絞られた。一方、栄転した森山は刑事になったが、これを機会に結婚しようと考えた。対象は事件の被害者宅の嫁・未亡人の咲子だった。森山は実家へ帰ったという咲子を尋ね佐渡へ行った。が、咲子は、事件発生のころ裏山に働きに来ていた石工と結婚していた。森山は二人の結婚に何か釈然としないものを感ずるとともに三郎が真犯人ではないと感じた。翌日、被害者宅に寄り、何げなく裏の雑木林に行った森山は挙動不審の男を発見、尾行して上野まで来た。男は安ホテルに入ったが森山が踏込んでみると何者かに殺されていた。犯人として検挙された三人の愚連隊は、殺されたのは富永といい、彼が借金を返さないので怒り、殺した末に持っていた十五万円を強奪したと自白した。富永が持っていた十五万円は被害者宅から盗まれた金額と同じである。富永は事件当日、長岡競輪に来ていたことも判った。犯人は富永だったのか?しかし死人に口なし、きめ手は依然ない。が、裁判はやり直しとなり、事件当夜、犯人を目撃したという民子の証言は錯覚と分り、また隣の部屋で寝ていて犯人を見たという咲子も、そのとき裏の納屋で、夫となった石工と寝ていたことがわかった。三郎は晴天白日の身となった。とし江とワゴンに乗った三郎はフルスピードで新潟へ向った。

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スタッフ・キャスト

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映画レビュー

2.0いくら何でも・・・

2023年9月28日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

いくら何でも警察が横暴過ぎ!
殺人が起こった直後に現場を車で通り過ぎただけで、
いきなり車を止めて逮捕するかぁ!?
しかも初めから殺人犯と決めつけてるし・・・
あまりにも強引な話の流れに興醒め!
もうここで、観る気が失せた。

最後も被害者家族の偽証言の所為で犯人扱いされたのに、
本当の事を話したら、涙を流しながら「ありがとう!」って!
普通、激怒するでしょ!?こいつ等の所為で捕まってるのに!!
警察達もよかった、よかった、みたいな態度で他人事。
いやいやいや、お前らが犯人扱いしたんだろう!!

とにかく冤罪としてのきっかけが強引過ぎて、感情移入出来なかった。

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おじ

3.5恋人の力

2023年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

男は恋人(芦川いづみ)を迎えに行くため、車を買い、東京から新潟に向った。
途中で妙な男を乗せたため、殺人強盗事件の犯人と間違えられ、逮捕されてしまう。
無罪を信じた恋人の存在が刑事や弁護士を動かす。
とても面白い裁判劇で、追跡シーンもよくできている。

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いやよセブン

4.5可憐な芦川いづみの表情は必見

2022年7月4日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

新潟駅で待つ恋人・道田とし江(芦川いづみ)に会うため、車でたまたま通りがかった町で冤罪をかけられた渡辺三郎(小高雄二)。一度逮捕した犯人を、おいそれと無罪に出来ない警察組織。
曖昧な目撃証言による冤罪映画の名作があるけれど、「その壁を砕け」も隠れた傑作。よく練られた新藤兼人の脚本、名キャメラマン姫田真佐久の撮影、伊福部昭の音楽、孤高のモダニストと呼ばれた中平康演出など、ベテラン映画人の仕掛けに時間(上映時間100分)も忘れて物語に引き込まれる。
日活黄金期の女優“芦川いづみ”の可憐な笑顔、悲しみ、怒りの表情は必見。
事件の被害者が三郎を指差し「この人です!」と言う曖昧な演技が実にリアルな岸輝子は、劇団俳優座の名優で多くの舞台に立ち、映画でも多くの名作に出演しています。
法廷シーンも映画の見どころの一つ。裁判長役の信欣三が登場すると、社会派ドラマの雰囲気が増す。決定的な証拠がないまま、曖昧な目撃証言で起こる冤罪事件に恐ろしさを感じる。三郎の弁護士役・芦田伸介は、TVドラマ「七人の刑事」の沢田部長刑事役が印象深い。日活アクション映画の常連で、悪役が多かった。「その壁を砕け」では、三郎・とし江を助ける良い弁護士。
映画は、新潟、長岡、柏崎、佐渡へロケーション撮影しており、昭和時代の駅や街並み、度々登場する蒸気機関車、佐渡の桶船などの風景は、昭和時代の映画ならでは。蒸気機関車がトンネルに入ると、機関車の吐く煙が客車内に充満する細かな脚本と演出がリアル。お薦めです。

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papatyan

4.0撮影が鬼すごい。

2022年6月19日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

夜に起こった殺人事件の話だけに、
当然夜のシーンが多いわけですが、
ライトが当たってない(光がない)ところは=全て写らない、わけで、
それを考えただけでも鬼きつい撮影になるのは素人でも想像つく。
その条件下で、よくもこんな「あっちから来てこっち行って、さらに戻ってきて真ん中で止まる」とか、車が猛烈に走り抜けてくシーンとか、よく撮れるよなぁ〜と関心しきりでした。しかもどのカットも長回しなんかも凝りに凝りまくってる。
牢屋でウロウロするシーンなんて、一生懸命ピンスポ数えたけどわからんかったよ(笑)。
脚本には少しだけ「調子よくね?」と思ってしまったけど、最後までどうなるんだろ?!と手に汗握ったから、やっぱり良い本なんでしょうね。
この監督さんの画面作る力量には本当に心から脱帽だ。
かつ話も面白く、いい俳優が名キャラを演じていて、観ていて心から楽しかったです。

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