劇場公開日 2011年8月20日

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「新米母にありがたい、熟年版ハチクロ。」シャンハイ cmaさんの映画レビュー(感想・評価)

2.0新米母にありがたい、熟年版ハチクロ。

2011年9月21日
フィーチャーフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

単純

小さいお人との生活が始まり、映画生活も当然変化した。
これまでは、「心の栄養補給上、理想は一日一本。週末は一日2〜3本!」が信条。はしごするなら、程よい間隔とショバがえがあればベター、と私的タイムテーブルを組むのも密かな楽しみだった。
で、新・映画生活はどうなったか。
現在は、「2〜3日に一本」が、周囲の助けに深い感謝を込めつつ…の理想。そして、「明るいうちに、3時間程度で観て・帰る」ためのタイムテーブルを組む(選ぶ)ことになる。「3時間」という枠は、小さいお人のお食事時間というだけでなく、私自身の生理現象のためにも必須と言える。
…というわけで、「何を観るか」よりも、「いつ、どこで観るか」が優先条件。まず、上映開始時間から絞り込み、終映時間をチェックする。だらだら2時間を越えるような大資本映画は、まずスルー。移動その他の時間を節約するには、近場の映画館で、受付がスムーズにできて…となる。
そんな条件をクリアした貴重な一本が「シャンハイ」。豪華絢爛なキャストを揃え、大作ながら2時間に収めた、新米母にありがたい作品。さらには、ジョン・キューザック×サミュエル・L・ジャクソンのミステリー「1408号室」、アンソニー・ホプキンスの怪演が光る「ザ・ライト エクソシストの真実」監督の新作、という点も、私の興味をくすぐった。プラス、予告編の遠藤憲一の美声も、定番ながらポイントが高く、耳に残っていた。
…で、どうだったか。
…大仕掛けながら、実はとてもシンプルで、肩透かしと感じるくらい直球の恋愛ものだった。
日米開戦直前の魔都・上海で、アメリカ・日本・中国・ドイツ…と国籍を越え繰り広げられる、政治を絡めた男女の駆け引き。お膳立てとして目を引くのは前者だが、主軸は明らかに後者。スパイ、レジスタンス、戦争…といった題材は、おどろおどろしいスパイスにすぎない。登場人物たちは、全員報われない恋愛をする。片思いのすれ違い、絡み合いのオンパレード。…ということで、私がふと思い起こしたのは、あの、ハチクロこと「ハチミツとクローバー」だった。
どちらも絡まりあった男女のせつない片想いが主題。それなのに、十代二十代の男女だと爽やかで甘酸っぱい物語となるところが、熟年男女がやるとこんなに血なまぐさいことに…という点が、何よりの発見だった。多分、現代社会に置き換えても、犯罪に及びかねない愛憎劇となるだろう。中途半端に社会的地位や権力を手にしたオトナは、実に手に負えなくなってしまうのだ。
大人の恋愛は、たやすく溺れてはいけない、溺れるなら切った張ったは覚悟の上で、という教訓が残った。
二本立てなら、「セカンドバージン」よりも是非「ハチクロ」で!

cma