劇場公開日 2011年8月20日

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「制作意図が不明な映画」シャンハイ Ryuu topiann(リュウとぴあん)さんの映画レビュー(感想・評価)

2.0制作意図が不明な映画

2011年9月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

寝られる

私達が自国の過去の歴史を正しく理解するのは本当に至難の業である。殆んど戦争をした国の総ての国と言っても良いだろうが、過去に戦争を起こした国が、戦争を後世の世代にその歴史を伝える過程は、個人の場合は、家庭で家族に自分の体験を口伝するか、書物、映画、その他の芸術作品等、様々な媒体が存在する。そしてその基となる戦争の体験を証言し、記してゆくのも人間である。そこで、どうしても自国に都合の良い映画制作が成される事があるのもしばしばある。
日本は、敗戦国であるために、特に今でも海外の製作する映画には、残忍極まる非情な旧日本兵が描き続けられている。確かに戦争は残酷で惨たらしく、出来るならこの地球上から戦災と言うものが完全に無くなれば良いと願っている。だが悲しいが現実には戦争は、この世界のどこかの国で必ず起きているのも真実である。そしてまたその戦争で被災する大方の人は一般市民であり、殺されている人々は抵抗の道すら無いのが今、現在の出来事でもある。その現実の中で戦争の無益さ、繰り返してはならない歴史を伝える映画がまた新たな憎しみや、敵対心を煽る様な作品であっては欲しくないものだ。
私達は、過去に徐々に帰って人生を生きて行くのではない。未来へと先へと歩みを進めるのだ。その過程で、過去の失敗は悔い改め、改善して、平和を構築出来る様に生きる事こそ重要である。
この映画ジョン・キューザックやコン・リーと好きな俳優が出ている。渡辺謙も出演しているので、見たかったのだが、どうして今もって未だ、この様な作品を制作し続けるのかアメリカの意図を理解する事は出来ない。現在のアメリカの一部の高校での社会科の授業においては、アメリカが原爆を普通の一般市民が住む町に2度も投下した事を省いている一方で、この1940年代の日本兵の残忍さだけを強調する様な作品を描くのは何故だろうか?それに、J・キューザックとコン・リーが演じる2人の淡い恋心など、当時はあり得ないだろう話しを、まことしやかに描く作品には只只閉口するばかりだ。さりとて、日本軍を全面肯定する、美談ばかりの日本の国策映画が創られるのも、うんざりだ。
夏は季節柄、戦争がテーマの作品が多数公開されるが、その新しい映画によって、新たな憎しみや、差別を産む映画は製作される事は残念だ。『パールハーバー』『オーストラリア』それに続く『シャンハイ』何とも悲しい映画であった。

ryuu topiann