劇場公開日 2009年11月20日

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イングロリアス・バスターズ : インタビュー

2009年11月21日更新

全米では「パルプ・フィクション」を抜いて、タランティーノ映画史上歴代ナンバーワンヒットとなった「イングロリアス・バスターズ」。「自分なりの『特攻大作戦』を書こう」と気合いを入れ、10年前から本作の脚本に取りかかっていたというタランティーノの集大成となった本作について、来日したタランティーノ本人を直撃。脚本完成までの長い道のり、個性的なキャラクター、大ヒットの理由などを語ってもらった。本作のヒロイン・ショシャナ役に大抜擢されたフランス人女優・メラニー・ロランのインタビューとともにお届けする。(取材・文:若林ゆり

クエンティン・タランティーノ監督インタビュー
「本物のストーリーっていうのは常に折り重なって、紆余曲折してなきゃダメだ」

今年で監督デビューから17年。長編映画は本作で7本目となるクエンティン・タランティーノ監督、46歳
今年で監督デビューから17年。長編映画は本作で7本目となるクエンティン・タランティーノ監督、46歳

──この脚本を書いていると聞いたのは10年前でしたが、そもそもの発端は?

ブラピ主演も功を奏した!? タランティーノ映画では最大のヒットに
ブラピ主演も功を奏した!? タランティーノ映画では最大のヒットに

「俺は戦争映画の中でも“ミッションを負った野郎ども”ってサブジャンルが大好きでさ。最初は、それを俺のバージョンとして作れたらクールじゃないかって思ったんだ。エンゾ・カステラーリの『Inglorious Bastards』(邦題『地獄のバスターズ』)ってタイトルがすごくクールだってビデオ屋で働いてたときから思ってたから、使用権を買った。スペルを変えたのはわざとだよ(注:タランティーノ版のスペルは『Inglourious Basterds』)。アルドはああ書くんだ(笑)。イングロリアスにしたって、ああ綴った方がいかにもならず者って感じでクールじゃん? 自分で言葉を作っちまうバスキアみたいなもんなんだよ」

──それから完成までの道のりは?

「書き始めたらアイデアが湧き出てきて、話がどんどん膨れあがっていったんだ。スランプじゃなくて、その逆だったんだよ! それで休止して、2008年の1月に、映画として完成させるべく再び向き合った。俺はキャラクターをすでに書き上げていたし、第1章と第2章はそのままいける。そこで浮かんだのが、ショシャナとツォラーのストーリーだったんだ。ショシャナの映画館で、ナチスが映画のプレミアをやる。“おー、これで映画に出来るぞ!”って思ったよ。とくに、クライマックスのアイデアを思いついたときは、我ながら“俺ってテンサーイ!”って興奮しまくったぜ(笑)。書き終えたときは、俺のキャリアの中でも最高に芸術的な瞬間だった。誇りに思ったよ。つまり古いアイデアを捨て去って、新しいアイデアを入れたストーリーラインを作ったわけさ。同じキャラクターを活かしながらね!」

──今までにも映画愛をたくさん詰め込んで映画を撮ってきたあなたですが、今回はストーリーの中で映画に力を与えたことで、ずっとパーソナルな作品になったのでは?

「その通りだよ。いつも映画愛は盛り込んでいるけど、今回はそれがすごく具体的かつ明確になってる。隠された意味とかじゃなくて、そのまんまストレートに表現されてるからね。なんたって、俺はフィルムプリントの収集家なんだから!(笑)」

──タランティーノ映画の集大成とも言えますね。

タランティーノがこれまで書いた中で最高のキャラ と自画自賛するランダ大佐(クリストフ・ワルツ)
タランティーノがこれまで書いた中で最高のキャラ と自画自賛するランダ大佐(クリストフ・ワルツ)

「俺もそう思うよ! 居酒屋ラ・ルイジアーヌのシーンは『レザボア・ドッグス』を25分にしてドイツ語に変えた、みたいな感じだよね(笑)。組み立て方は『パルプ・フィクション』だ。それに、キャラクターが決して白黒ハッキリしていないって点も俺らしさだよ。バスターズがナチを殺しまくるのは痛快だけど、バスターズはいいヤツらかっていうと、決してそうとは言えない。かなり残虐だからね。ショシャナとツォラーは、とくに最後のシーンは『ロミオとジュリエット』みたいにロマンティックだよね。ツォラーはいいヤツだけど、ナチを鼓舞する英雄だ。ショシャナの計画を邪魔して苦しめているけど、彼はそれを知らないんだ。それからランダ大佐は、俺がこれまでに書いた中でも最高のキャラクターだよ。彼はユダヤ・ハンターで、ユダヤを殺してる。だけど映画が進むにつれて、心をかき乱すくらいのカリスマ性を感じずにはいられなくなるんだ」

──まったく、あなたのキャラクターにはいつも驚かされます!

「それが俺のスタイルなんだよ。俺が最近の映画を見てうんざりするのは、最初の20分で設定をすっかり説明し終えて、残りの時間はお約束通りに進むだけってところさ。だけど俺に言わせれば、そんなのストーリーじゃない。本物のストーリーっていうのは常に折り重なって、紆余曲折してなきゃダメだ。急激な左旋回、右旋回で観客を揺さぶって、観客が予想もしなかったところに連れて行く。サプライズを添えてね。俺はこの映画がヒットしたのは、観客がストーリーに反応して、劇場で楽しい時間を過ごせたからだって思ってるんだ」

インタビュー2 ~メラニー・ロランが振り返る「バスターズ」

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