劇場公開日 1961年8月15日

「冒険活劇の戦争映画の代表的大作にある、映画的な迫力と人間ドラマのバランスの妙」ナバロンの要塞 Gustavさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0冒険活劇の戦争映画の代表的大作にある、映画的な迫力と人間ドラマのバランスの妙

2024年3月25日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル、TV地上波

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興奮

世界中で大ヒットした「戦場にかける橋」の脚本家カール・フォアマンが製作も兼ねて作り上げた冒険活劇ジャンルの戦争映画の傑作。原作は冒険小説家アリステア・マクリーンの代表作。数多く映画化されている中で記憶にあるのが、「八点鐘が鳴るとき」「荒鷲の要塞」「デンジャー・ポイント」など。監督が「北西戦線」「隊長ブーリバ」のJ・リー・トンプソン。その昔テレビ鑑賞だったが夢中になって映画を観ていた中学時代の想い出の作品です。もうあれから50年以上も経ってしまい、流石にラストの大爆発と大砲落下カットは覚えていても、それ以外のアクションシーンは忘れてしまっていた。記憶が蘇ったのが、映画中盤の結婚披露宴兼ねた野外宴会の場面。ナチス・ドイツ占領下のマンドラコス村の人々の中に紛れ込んだマロリー大尉たちが、何故か身元が見抜かれドイツ軍に取り押さえられる。悪天候や危険地帯を潜り抜け敵の追跡から逃げ切って一安心したところでの急展開が、クライマックスの期待感を盛り上げます。

この映画が優れているのは、様々なアクションシーンをそれこそ手を変え品を変えて見せてくれることと、その一難去ってまた一難の連続する緊張感が、途中に挟んだ特殊作戦メンバーの背景や考えの齟齬の人間ドラマを経て変化していく面白さにあります。先鋭部隊6名が乗ったぼろぼろの漁船が嵐に遭うシーンは迫力満点で、ミニチュアと実写の編集も違和感なく、特に難破船と化し座礁するシーンは圧巻です。横殴りの波を受けながらの撮影の本気度と、最後大波が襲い掛かるスペクタクルの見応え。アカデミー特殊効果賞受賞に値する名シーンの1つです。続いて400フィートの絶壁を登るスリリングなシーンでは、滑落の危機に瀕したマロニー大尉をスタブロウ大佐が片手で支える緊迫感。このごく普通にある演出も、嵐のシーンでマロニー大尉がスタブロウ大佐との因縁を隊長のフランクリン少佐に告白していることで、意味深い表現になっています。更にフランクリン少佐が骨折するアクシデントが後半の前途多難な不安感を増幅することになり、色んな局面を経て最後のクライマックスを迎える脚本が実に素晴らしい。勿論原作あっての脚本ですが、映画的に巧みに練られているのには素直に感服します。古代ギリシャ遺跡で地元レジスタンスの女性二人が登場して計8名になり、人間関係が複雑になっても其々のキャラクターが生かされてストーリーが展開する面白さは見事と言っていい。

ドイツ軍の軍服に着替えたメンバーが教会に潜んで最終作戦を練る場面が良いですね。瀕死のフランクリン少佐をドイツ軍に預けて任務遂行を最優先にするマロリー大尉に対して、その非情さを非難するミラー伍長。フランクリン少佐との経緯から軍人として割り切る冷酷さも持つようになった変化を見せます。ミラー伍長が主張する台詞、“何をしても、戦争は終わらない。人類が絶滅するまで戦争は続く”。だから今大切な人を救うのが私の役目なのだと言いたいのだろう。爆薬の専門家であり学者でもあるミラー伍長の価値観が窺われます。一人その場を離れるマロニー大尉の後を追うレジスタンス闘志アンナ。この場面があって、決行当日のスパイ発覚の場面が生きています。マリアも騙し続けていたアンナの複雑な境遇に驚きを隠せないメンバーの葛藤。戦争の地獄は戦場だけではないという事でしょう。この場面の衝撃的な決着と、マロニー大尉とミラー伍長の立場が明確になるところもストーリーとして難攻不落の要塞壊滅の最後のクライマックスを盛り立てる効果になっています。クライマックスは、007映画に匹敵するサスペンスとアクションの連続で、起爆装置を仕掛けたエレベーターが何度も上下するスリルも巧い。そしてケロス島に向かう駆逐艦6隻の本物の迫力と存在感がカットバックされる映画的な醍醐味。犠牲者を出しながら逃げ切ったスタブロウ大佐を海から引き揚げるマロニー大尉のカットは、冒頭の絶壁シーンに対応したものになっています。

現代では娯楽映画として戦場を舞台にする事が時代遅れになってきています。ミラー伍長のいう悲観論が現実的になっては仕方ないことですが、それでも戦争の醜さが込められた映画なら存在価値は無くならないでしょう。この映画の面白さに、戦争をする人間の愚かさを感じ取れば充分評価していいと思います。脚本と演出の充実度、グレゴリー・ペック、デヴィッド・二ーヴン、アンソニー・クィン、スタンリー・ベイカー、アンソニー・クエイル、ジェームズ・ダーレン、イレーネ・パパス、ジア・スカラ、そしてリチャード・ハリスと演技派役者の揃い踏みは、この時代の最高のレベルの高さを見せます。面白く悲しくも圧倒される娯楽戦争映画の傑作でした。

Gustav
活動写真愛好家さんのコメント
2024年3月25日

アンソニー・クインはスゴいですよね‼️今作や「ガンヒルの決斗」みたいな西部劇にも出てるかと思ったら、「アラビアのロレンス」や「道」みたいな名作にも出てらっしゃいますし。イレーネ・パパスは私も好きでした‼️彼女は結構作品に恵まれてますよね‼️「エレクトラ」「その男ゾルバ」「トロイアの女」「1000日のアン」そして「Z」‼️なんかまた観たくなってきた‼️

活動写真愛好家
活動写真愛好家さんのコメント
2024年3月25日

Gustavさん、共感ありがとうございます😊
私もこの作品を初見して35年くらいなりますが、変わらぬ面白さで、今でも年に一回くらい鑑賞しております‼️スリル満点の娯楽大作なんですけど、それゆえに戦争の愚かさが際立っている素晴らしい作品ですよね

活動写真愛好家