出張

劇場公開日:

解説

突然、ゲリラに誘拐された一人のサラリーマンの非哀をブラックユーモアで描く。脚本・監督は「ニュー・ジャック&ベティ」の沖島勲で、撮影は「泪橋」の大津幸四郎がそれぞれ担当。

1989年製作/91分/日本
劇場公開日:1989年9月30日

ストーリー

中年の営業マン・熊井功は、研修会に出席するため、東北地方に出張するところだったが、途中落石事故によって足止めをくらってしまい、仕方なくその晩は、山中の温泉旅館で一泊することになった。翌朝、山道を歩いていた熊井は、山奥から聞こえてくる妙な爆裂音に気付く。そして、その音に近寄っていった時、突然、完全武装した若者に拉致されてしまう。彼は、山中に巣くうゲリラの一味で、その本隊は、眼下の機動隊と銃撃機の真最中だったのだ。その夜、熊井はゲリラの隊長から、自分が人質として捕まっていることを聞かされる。しかし、見かけによらず心の優しい彼らに、いつしか熊井は、親しみさえ覚えてしまうのだった。翌朝、隊長達に呼ばれた熊井は、身代金の交渉の経過を説明され、彼の妻が、全然取り合ってくれないことを知らされる。絶望的になる熊井だったが、結局、会社が身代金を立て替えるという形で釈放されたのだった。家に帰った熊井は、その事を妻に問い質そうとするがかわされてしまい、妻に対する疑念に悩まされてしまうのだった。そして、疲れを癒す間もなく、出張を命じられた熊井は、再び東北地方に出かけていく。その列車の窓から爆弾の飛び交う山に向けて、熊井は「ガンバレヨーッ!」と叫ぶのだった。

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映画レビュー

4.0いいことの後には・・・。

2023年11月30日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 日和見温泉の宿屋に泊まった熊井はフラッと地元の飲み屋で二人の女(亜湖、松井千佳)と盛り上がり、二人を相手にいい思いをする。武装ゲリラに連れられ、身代金のための人質となり、どうなることかと思ったら、かなり丁重な扱いで親しげにされる。国家権力に対する革命とかなんとか、どうも遊び感覚のゲリラにも思える。

 時代はバブル崩壊前の時期だろうか、熊井の会社もコンピュータ関連で急成長を遂げていたようだし、サラリーマン個人よりは金がすべてに優先されている時代。身代金の交渉では熊井の命よりも、会社が生命軽視というバッシングを避けるために仕方なく応じたという皮肉。そして熊井の妻(松尾)が部長と一晩過ごしたという無情な響きもサラリーマンの悲哀を物語っているのだ。そんな下界の冷酷さに比べ、ゲリラたちの生き生きしている様は熊井にとって魅力的に映る。別れ際の寂しさは、そのまま彼が仲間になるんじゃないかとも想像してしまう。

 完全な脚本、というより、あの飲み屋の一件がまったく物語に溶け込んでいないところも魅力の一つかもしれない。普通のエンタメ作品ならゲリラと関係があるはずなのに(笑)

 ゲリラというのが登場した時点で、70年初頭の作品かと思ってしまった。バブル期を考えてみても、時代そのものより、いつの時代でもサラリーマンは寂しいもんだということなんだろうなぁ。なかなか面白い。

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kossy
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