ゆれるのレビュー・感想・評価
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香川照之の表情に心がゆれる
香川照之ってこういう掴めない感じの演技が上手いよね。
めちゃくちゃ惹き込まれる。
真面目な兄と遊び人の弟。
兄は橋の上で智恵子を落としたのか、助けようとしたのか。
弟は本当に見ていたのか、兄を庇っているだけなのか。
観ているこっちも思考がずっとゆれる。
衝撃のラストではあるんだけど、解釈が難しい。
最後の兄の笑顔はなんなん。
めっちゃ怖い。
西川美和監督とか、是枝裕和監督とか、中島哲也監督とか、一つの画面に...
西川美和監督とか、是枝裕和監督とか、中島哲也監督とか、一つの画面にいろいろなメッセージを詰め込む監督の映画って、見返せば見返すほど、新たな側面が見えてきて、一度目と二度目の鑑賞では、見方がガラリと変わることがあるんですが、そもそも人間はそこまで注意深く生きてないもので、一度見ただけでもなにがしかの受け止めはあります。
この映画ならば、兄・弟・女の力関係の移り変わりをどれだけ細かく受け止めるかで、多分、見方は全然違う。
弟が東京へ行くまで、女は多分、絶対的な力のある存在だったのでしょう。だから弟が東京へ一緒に行かないかと誘ったとき、断った。だけど弟が東京へ出て、自分が唯一絶対的な存在でなくなったと気付いたとき、女は戸惑っただろうし、それでも兄の存在は、「滑り止め」的なものだとしても、ありがたかった。ここまでの変化は緩やかで、希望のあるものだったでしょう。
ところが弟の帰郷によって起こされた変化は急激で、三人の力関係を混乱させてしまう。その混乱をどこまで細かく掬い取るかで、見方は全然変わりそうです。
私としては、ただ嫉妬で女を追いかけたとばかり思っていた兄の心に、最後のシーンで、純粋無垢な心配があったのだと気付かされたのがとてもショックでした。
香川照之の最後の笑顔については、私はしごく単純に、
エドガーはユーシスを殺したモノだと思い込んだメリーベルが、復讐すべくエドガーがやってくるのを待ち続けていたけれど、エドガーの顔をみた途端、「待ってたんだから!」と泣きながら抱き付いてしまう
……のと同じに受け取りました。
見てるうちに、兄は香川照之そのものに見えてきて、今目の前で見せられているこの兄の人生が、香川照之の人生なのではないかと勘違いしそうになり、非常に混乱しました。
それなのに誰も、香川照之を「カメレオン俳優」なんて呼ばないんですよね。
やっぱりこの人の代わりなんかいないよなぁ……と思ってしまった。
この映画で改めて天才だと認識した役者がもう一人おります。
田口トモロヲさんです。
あの声だよ。どこから発声してんだ。
シナリオは良いのだが・・・
この作品を女性が見て入り込めるのだろうか?少なくとも男の自分にはいまいち演出過剰に見えるのだが、自分だけの感覚だろうか?配役と設定が合ってないのか、設定と配役合ってないのか・・・カメラアングルにはとても才能を感じるのだが・・・
静と動
オダジョーが好きなので観た作品。笑
あまり目立って大きな盛り上がりのない作品が好きで、これも良かったな。リアルだなと感じた。
観終わって思ったのは、出てくる景色が限定的で、その分役者さんの繊細な感情の「ゆれ」が静かながらもかいまみえて、余計なものを排除したシンプルさがとても好きだった。
ゆれた
ずっと見たいと思っていた作品。
想像を超えるほど、こころ揺さぶられました。
兄が抱いていた感情は、言葉で表現すると野暮でカッコ悪くて誰も聞きたくないようなものだけれど、この映画では、ゆっくりじわじわとこころに浸透してきて、それが自分の中の隠れていた感情と共鳴した感じ。
そして、弟の無邪気だけど自分勝手な甘えた自我にもまた気づいて行く。オダギリジョーはカッコ良すぎるけど。
家族は、一番近くて一番長く時間を共にする人間だけれども、それぞれの感情は違っていて、なんと言って良いのか分からないけど、悲しくていとおしい。
真実は一つなのに、それを法廷で明らかにすることは本当に難しい。
ゆれるのは吊り橋と心。 真木よう子が吊り橋から転落死したのは事故か...
ゆれるのは吊り橋と心。
真木よう子が吊り橋から転落死したのは事故か香川による殺人か。
オダギリは当初は香川を擁護していたが、香川に罵倒されて証人尋問では「香川による殺人」と虚偽の証言をしてしまう。
その香川も一見真面目で誠実な人柄に感じられるのだが、実は自己を卑下し、キレやすいところがある。
素直に応援できない兄弟だ。
ラストは何となくハッピーエンドっぽい雰囲気にはなっていたが、もう一つすっきりしなかった。
面白かった。
何も思わず観たけれども、面白かった。
兄弟のこういう映画ってジャンルとしてあるよね。意識しだしたのはリバーランズスルーイット位からかな。もうちょっと、親のことがスパイスとしてあると尚よかった。
ほぼほぼ
全員勘違い。
オダギリくんじゃなきゃ観てなかった。
映画をよく観るよく知ってる人ならこれは評価高い映画と思わなきゃいけないテイストの映画ね。そうやってノリや真似で映画監督も上手くなっていくのかもしれません。誰のせいでもない。
西川監督作品、迫力に圧倒、脇役にも光る俳優陣
「すばらしき世界」を観て感動し、他の西川監督作品を観たくて借りて観ました。
2作目とは思えない、すごい迫力を感じました。
人の記憶はその時の感情で曲がる、そう考えると裁判も自白も人が発した証言も、すべてが無になってしまう。そう思えてしまいました。
それだけに、状況証拠や人の言葉だけを信じて裁くというのは、注意しなければならないと思いました。
兄弟とは、子供の頃から一緒遊んで成長すると、いつしかお互いのことを妬んだり、羨んだり、糸が絡んでしまうのか。だけど、この作品ではラストシーンでちゃんと光が見えてくる。私には希望の光に見える。
【”兄ちゃん、家に帰ろうよ・・” 西川美和監督のオリジナル脚本のレベルの高さ、映像カッティングの見事さに驚嘆した作品。】
■今更ながらであるが、下記、作品内容に触れています。
ー 恥ずかしながら、初見時の感想は”平和な日々に潜む狂気”であった。
だがその後、西川監督の諸作品を鑑賞するたびに、
”この稀有な才能を持った方は、人間の善性を信じ、映画を製作される方なのだ・・。”
という想いを持つに至った・・。ー
■感想
・序盤、且つて猛(オダギリジョー)と付き合っていた智恵子(真木よう子)が、久しぶりに二人の故郷の田舎町のガソリンスタンドで、出会うシーン。
猛の、智恵子に気付きながらも、気づかないふりをしてガソリンスタンドを後にする姿。
そのガソリンスタンドは、猛の父(伊武雅刀)が経営しており、35歳で独身の冴えない兄稔(香川照之)が働いていた・・。
- 初見時には、この時点で完全に西川監督の脚本にミスリードされていた・・。-
・そして、且つて猛や智恵子や稔たちが、父に連れられて、屡、行っていた峡谷の吊り橋のシーン。
- ここでも、西川監督は決定的なシーンを敢えて写さずに、観る側に判断を委ねる。私は、見事にミスリードされた・・。-
・稔は確かに、”鬱鬱とした感情”を抱えつつ、単調な日々を過ごしていたのだろう。且つては弟の恋人であった智恵子と共に・・。
そして、弟、猛は自分とは違い、都会で成功した写真家として、活躍していることも重々知りつつ・・。
それは、智恵子も同じであった・・。彼女の部屋に置かれた猛の写真集。
”何で、私は貴方と一緒に行かなかったのかな・・”というセリフ。
・そして、始まった稔の殺人容疑の裁判。稔に有利に進んでいた裁判であったが、猛の証言により・・、形勢は逆転する。稔の穏やかな微笑み。
<稔は、確かに智恵子に対し、吊り橋上では、”ある思い”がよぎったのであろう。だから、自ら罪を認めたのであろう・・。
だが、稔は幼き猛(稔の腕に残る傷)や、智恵子に対して、確かに、助けの手を差し伸べていたのだ・・。
今春も、この稀有な才能を有する監督の作品「すばらしき世界」が公開された。
人間性肯定の視点に立った素晴らしき映画であった。
寡作な監督ではあるが
ーそれは、非常にレベルの高い「オリジナル脚本」で勝負しているからである。ー
次作を待望している。
「分福」で、若き邦画監督の育成を是枝裕和監督と共に行う姿勢も含め、敬服している監督のお一人である。>
西川美和の代表作
すごい!兄弟の心理描写。タイトル「ゆれる」の通り、吊り橋も揺れたのかもしれないけど、オダギリジョーと香川照之のゆれる思いが見事。まるでスクリーンから客席の間の空気に心が浮かんでいるような雰囲気に包まれていました。だけど、深層心理というか彼らの真実がどこにあるのかと、掴もうとすると逃げていってしまうような・・・だけど、兄思い、弟思いという両者の熱きものが胸に突き刺さってくるような・・・絶望と希望も紙一重なんだと最後にはわかり、人を信ずることの大切さも改めて教えてくれました。
序盤から、何気ないショットだけど凝ったカメラアングルがポイントを押さえ、事件の中心となる吊り橋現場での葛藤、目撃、濁流と緊迫感を生み出す編集効果が目に焼きついてしまう。空白となった智恵子落下シーンは最後まで彼らの記憶に閉じ込めてしまうのです。「あの瞬間、実際には何が起こったんだ」と観客をストーリーにのめり込ませ、オダギリジョーと真木よう子の関係を香川照之がどう感じているのかと疑問を投げかけてくる。裁判が始まるまでの一連の流れにどっぷりとハマると、もう西川美和監督の術中に陥ってしまう仕組みとなっていました・・・
「吊り橋」と「ゆれる」という言葉が映画の中でも様々なことを象徴していましたが、あまりにも揺れすぎたため若干の謎も残してしまいます。問題となった現場は猛にはどんな風に写っていたのか・・・彼がカメラマンということもあって、見た目そのままと思われがちですが、現像し終わってからはその写真を見た印象が人によって違うもの。兄が真木よう子との関係を気づいていたと理解した瞬間から、弟のゆれていた記憶が「兄が突き落とした」と確証に至ったのではないでしょうか。
それにしても香川照之の演技は上手すぎる。弟への猜疑心を胸に秘めながら、殺人者としての今後のことを真剣に悩む。清廉潔白であることよりも罪滅ぼしのために投獄されることを望むといった自暴自棄の精神状態。面会中、弟を「人を信じない奴」と突き放す言葉だって、自ら弟とは絶縁状態にしてもいいと罪滅ぼしの一環だったのかもしれない。そして、法廷での弱々しい彼の演技はそうそう真似できるものではないのでしょうね。
形見分けとか遺産相続についてもサイドストーリーがあるような気がしてならないのですが、父・勇(伊武雅刀)と伯父(蟹江敬三)との会話で「兄さんだけいい思いをして・・・」という勇の言葉にあるように、大学は出してもらって弁護士となった兄とGSという稼業を継いだ弟がその息子たちに違った道を選ばせたという比較が面白そうです。ちなみに香川照之が東大出身ということも・・・
【2006年10月映画館にて】
撮る動機の強さ。
再々…見。
接見、法廷と映画的見せ場多めでリアルに仕上げつつ映らない曖昧さをこそ撮る西川美和の動機の強さと手際を改めて評す。
不気味な内面の多重を軽々と顔だけで演る 香川照之は脚本演出の冴えもあり頭一つ出る。
怒鳴りで魅せる蟹江敬三を偲ぶ。
また見る。
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