劇場公開日 2006年7月8日

「西川美和監督とか、是枝裕和監督とか、中島哲也監督とか、一つの画面に...」ゆれる さくやさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5西川美和監督とか、是枝裕和監督とか、中島哲也監督とか、一つの画面に...

2023年12月10日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

泣ける

西川美和監督とか、是枝裕和監督とか、中島哲也監督とか、一つの画面にいろいろなメッセージを詰め込む監督の映画って、見返せば見返すほど、新たな側面が見えてきて、一度目と二度目の鑑賞では、見方がガラリと変わることがあるんですが、そもそも人間はそこまで注意深く生きてないもので、一度見ただけでもなにがしかの受け止めはあります。

この映画ならば、兄・弟・女の力関係の移り変わりをどれだけ細かく受け止めるかで、多分、見方は全然違う。
弟が東京へ行くまで、女は多分、絶対的な力のある存在だったのでしょう。だから弟が東京へ一緒に行かないかと誘ったとき、断った。だけど弟が東京へ出て、自分が唯一絶対的な存在でなくなったと気付いたとき、女は戸惑っただろうし、それでも兄の存在は、「滑り止め」的なものだとしても、ありがたかった。ここまでの変化は緩やかで、希望のあるものだったでしょう。

ところが弟の帰郷によって起こされた変化は急激で、三人の力関係を混乱させてしまう。その混乱をどこまで細かく掬い取るかで、見方は全然変わりそうです。

私としては、ただ嫉妬で女を追いかけたとばかり思っていた兄の心に、最後のシーンで、純粋無垢な心配があったのだと気付かされたのがとてもショックでした。

香川照之の最後の笑顔については、私はしごく単純に、

エドガーはユーシスを殺したモノだと思い込んだメリーベルが、復讐すべくエドガーがやってくるのを待ち続けていたけれど、エドガーの顔をみた途端、「待ってたんだから!」と泣きながら抱き付いてしまう

……のと同じに受け取りました。

見てるうちに、兄は香川照之そのものに見えてきて、今目の前で見せられているこの兄の人生が、香川照之の人生なのではないかと勘違いしそうになり、非常に混乱しました。
それなのに誰も、香川照之を「カメレオン俳優」なんて呼ばないんですよね。
やっぱりこの人の代わりなんかいないよなぁ……と思ってしまった。

この映画で改めて天才だと認識した役者がもう一人おります。
田口トモロヲさんです。
あの声だよ。どこから発声してんだ。

さくや