「ゴッドファーザー」がさらに面白くなる50のトリビア【公開50周年記念】

2022年2月23日 12:00


未発表の蔵出し写真も入手!
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フランシス・フォード・コッポラ監督作「ゴッドファーザー」は、映画史に輝く傑作だ。

ニューヨークの闇社会を牛耳るイタリア系マフィア、コルレオーネ・ファミリーの台頭と、一大ファミリーを継承するマイケル・コルレオーネ、その家族が辿る壮大なドラマ――。1972年3月24日に全米公開されると、当時の興行記録を塗り替える大ヒットを記録した。

歴史的傑作の公開50周年を記念し、シリーズ3部作がTOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田にて、2月25~27日の3日間限定で公開される。4K版での上映となり、「ゴッドファーザー」は2月25日、「ゴッドファーザーPARTII」は2月26日、「ゴッドファーザー 最終章 マイケル・コルレオーネの最期」は2月27日に披露。なお「ゴッドファーザー 最終章 マイケル・コルレオーネの最期」は、日本初の劇場公開だ。

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興行的・批評的に歴史的な成功を収めた「ゴッドファーザー」。だが、その制作過程では幾多の困難が立ちはだかり、前例を見ない環境の撮影現場では、数々の逸話が生まれている。

ファンの間で都市伝説のように言及されるのが、劇中に登場する“オレンジ”についてだ。有名なビトーの襲撃シーンなど、劇中では幾度も印象的に登場するイタリアの象徴のオレンジ……ファンの間では、その後起こる不吉な出来事の暗示になっているのではないかと噂されていた。

しかし、プロダクション・デザイナーのディーン・タボウラリスが、その“真実”を明らかにしている。その他にも、特殊マウスピースを装着し、人相まで変えて出演したビトー役マーロン・ブランドの役作り、マイケル役に検討されていたレジェンド級の役者たち、「ゴッドファーザー」公開時、あまりの大ヒットに登場した学生のバイト等々、驚きの逸話が多数存在している。

本記事では、未発表の蔵出し写真とともに、50のトリビアを一挙に紹介。

ここで明かされる“真実”を踏まえて鑑賞すれば、「ゴッドファーザー」がさらに面白くなる!


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●制作について

[1]パラマウントのピーター・バートは作品がまだ20ページのあらすじしか出来ていない段階で、マリオ・プーゾ原作の「ゴッドファーザー」の映画化権を獲得している。

[2]新鋭のプロデューサーだったアルバート・S・ラディは、当時のパラマウント・ピクチャーズの重役であったチャールズ・ブルードンに「ゴッドファーザー」について「君の愛する人々についての震えるような映画」と売り込み、プロデューサーに就任した。(※注:チャールズ・ブルードンがマフィアとの繋がりを噂されていたため)

[3]ニューヨーク5大ファミリーの1つ、コロンボ一家のボスであったジョセフ・コロンボと彼が組織した「イタリア系アメリカ人公民権同盟」は「ゴッドファーザー」の制作中止を求める運動を行った。

[4]歌手や俳優として活躍したフランク・シナトラは知り合いのマフィアに依頼し、「ゴッドファーザー」の制作に関わる人間を脅した。

[5]監督のコッポラは、家族がテーブルを囲み食事をとるシーンのリハーサルを即興で行った。これは、主演キャストが殻を破って家族の役を自然に演じられるようにという監督の計らいだった。

[6]予算オーバーだったにも関わらず、コッポラ監督は「ゴッドファーザー」を時代物作品として撮ることをパラマウントに認めさせた。

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[7]マーロン・ブランドは自身が演じるドン・ビトー・コルレオーネを“ブルドッグ”のように見せたいという思いから、口にコットンをふくみ、頬を膨らませてオーディションに挑んだ。実際の撮影は、歯科医に作らせたマウスピースをはめて行われた。このマウスピースは現在もニューヨーク州クイーンにあるミュージアム・オブ・ザ・ムービング・イメージに展示されている。

[8]結婚式のシーンは350人以上ものエキストラを起用し、4日に渡って撮影された。

[9]撮影監督のゴードン・ウィリスは「ゴッドファーザー」のルックを「(年代物の)色の悪い新聞写真」と表現。独自の露光技術を用いて、独特なビジュアルをネガに焼き付けることを徹底した。

[10]「心配するな」(=「I’m going to make him an offer he can’t refuse」)という台詞は「ゴッドファーザー」「ゴッドファーザーPARTII」の両作で使用されている。

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[11]撮影はニューヨークとその周辺の120カ所で行われた。

[12]ベッドで馬の首を発見するシーンが印象的なジャック・ウォルツの家の外観は、ビバリーヒルズにある、「市民ケーン」のモデルとなった新聞王ハースト家によるハースト・エステイトを撮影したものである。

[13]劇中の血は、カロ・シロップという赤や緑の食品着色料を混ぜたものである。

[14]マーロン・ブランドがオープニングシーンで抱いている猫は、当時ニューヨークのハーレムにあったフィルムウェイ・スタジオでコッポラ監督が見つけた野良猫だった。撮影中あまりに大きく喉を鳴らすので、会話部分のみ録り直しされた。

[15]当時、ソニー・コルレオーネの殺害シーンほど暴力的なシーンを写す映画は存在していなかったと言っても過言ではない。ソニー役のジェームズ・カーンは、銃撃を受けるシーンで爆発するように血が入った爆竹を127個も身にまとい、車には200以上の爆竹用の穴がドリルで開けられていた。

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[16]現在ではアイコニックになっている「操り人形風の糸」のロゴは元々、小説が発売された際にグラフィックデザイナーのS・ニール・フジタが作ったものである。また、映画公開時にはタイトルの上部に原作者プーゾの名前が書かれていた。しかしスタジオは当初、映画公開の際にこのデザインを使用したくないと主張していた。だが、プーゾと共同で台本を書いたことを示したいコッポラ監督の強い思いにより、使用されることとなった。

[17]ソニーが殺害されるシーンは、作中で最も費用のかかったシーンであり、10万ドルを要した。

[18]劇中でオレンジが登場すると、不吉な出来事を暗示しているという都市伝説があったが、プロダクション・デザインを担当したディーン・タボウラリスがオレンジを使用した背景には、撮影技師のゴードン・ウィリスが影の多い画を撮る人物であったために、画面に明るさを加えるという意図があった為であった。また、コッポラ監督にとってもオレンジはイタリアを象徴するものであった。

[19]本来であれば上院議員か政治家にさせたかった息子のマイケルに対し、ビトーがゴッドファーザーになるための心得を説く庭園のシーンは、「チャイナタウン」でアカデミー賞を受賞した名脚本家であるロバート・タウンが手掛けた。

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●キャストについて

[20]原作者プーゾは、マーロン・ブランドに「ビトーを演じられるのはブランドだけである」と手紙を送った。

[21]パラマウントの重役はマーロン・ブランドを、収益の見込めない落ち目の俳優と感じていたため「ゴッドファーザー」で起用したがらなかった。

[22]マーロン・ブランドはセットにカンペを持ち込んだが、これはブランドが台詞を暗記せずにアドリブで演じるのを好んだためという説と、ブランドがあまりに台詞を覚えないのでコッポラ監督がスタッフにカンペを準備するよう命じたという説がある。

[23]マーロン・ブランド演じるドン・ビトー・コルレオーネは独特な話し方をするが、これは「暗黒街の首相」と呼ばれた実在のマフィア、フランク・コステロを真似たものである。

[24]「ゴッドファーザー」でマーロン・ブランドがスクリーンに映る時間は実は1時間に満たない。

[25]「ゴッドファーザー」では多くの有名俳優の出演が検討されていた。マイケル役にはウォーレン・ベイティダスティン・ホフマンジャック・ニコルソンロバート・レッドフォードロバート・デ・ニーロなどの名前が挙がった。

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[26]アル・パチーノは「The Gang That Couldn’t Shoot Straight (原題)」の出演契約を結んでおり、「ゴッドファーザー」の撮影スケジュールと重なっていた。ロバート・デ・ニーロが代わりに「The Gang That Couldn’t Shoot Straight (原題)」に出演したため、アル・パチーノは「ゴッドファーザー」への出演を果たすことができた。

[27]「The Gang That Couldn’t Shoot Straight(原題)」へ出演を決めたロバート・デ・ニーロは、「ゴッドファーザー」のポーリー・ガットー役を断念することとなった。

[28]アル・パチーノが「ゴッドファーザー」に主演した際のギャラはたったの3万5000ドルだった。この金額はソニー役のジェームズ・カーンや、ケイ役のダイアン・キートンと同額であり、トム役のロバート・デュバルより1000ドル少なかった。

[29]アル・パチーノの母方の祖父母は、作中のビトー・コルレオーネと同様に、シチリア島のコルレオネからアメリカに来た移民であった。

[30]ジェームズ・カーンアル・パチーノは、母親役を演じたジャズ・シンガーのモーガナ・キングとたった10歳しか離れていなかった。フレド役のジョン・カザールとモーガナは、わずか5歳しか離れていなかった。

[31]「銃は置いとけ ケーキを」というクレメンザの有名な台詞は台本にはなく、リチャード・カステラーノのアドリブであった。

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[32]「ゴッドファーザー」にはコッポラ監督の家族が登場している。

タリア・シャイア(監督の妹):コニー・コルレオーネ役で3部作すべてに出演。

イタリア・コッポラ(監督の母親):レストランの会合シーンでエキストラとして出演。

カーマイン・コッポラ(監督の父親):ピアノを弾くギャングとして警部殺害後のモンタージュに登場。また、演奏している曲の作曲も担当した。

ソフィア・コッポラ(監督の娘):「ゴッドファーザー」で洗礼を受ける赤ん坊マイケル・リッツィとして登場(撮影当時、生後3週目だった)。また、「ゴッドファーザーPARTII」ではエキストラとして出演、「ゴッドファーザーPARTIII」ではメアリー・コルレオーネとして出演した。

▽ジャン=カルロ・コッポラ、ロマン・コッポラ(監督の息子):洗礼式の場面でエキストラとして出演。また、ロマン・コッポラは「ゴッドファーザーPARTII」でシチリア島のシーンで子どもの頃のソニーとして出演。

エレノア・コッポラ(監督の妻):洗礼式の場面でエキストラとして出演。

▽フランチェスコ・ペニーノ(監督の祖父):「ゴッドファーザーPARTII」でビトーがイタリア系移民による劇場で観劇するシーンで、フランチェスコが作曲した音楽が使用されている。

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●映画公開について

[33]コッポラ監督は当初作品を2時間15分以内に収めるようスタジオに言われ、それ以上の場合には編集をサンフランシスコからロサンゼルスに移すと言われた。時間内に収めたものを提出したところ、「映画ではなく予告編を持ってきたのか」と言われ、最終的にはスタジオはより長尺を望んでいることが分かった。そして、尺に関係なく、編集はロサンゼルスへと移された。

[34]結果として、この作品の上映時間は最終的に2時間55分となった。

[35]当初の公開日はクリスマス付近であったが、尺が伸びたために編集が間に合わず、公開日が遅れることとなった。

[36]初公開の際には「ゴッドファーザー」を観にきた人の行列が伝説的であった。LAのウェストウッドでは、列に代わりに並ぶことで5ドルを稼ぐUCLAの学生たちが現れた。

[37]プロデューサーのアルバート・S・ラディは、パラマウントから「ゴッドファーザー」のテープを持ち出し、マフィア向けの独占試写会を行った。

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[38]「ゴッドファーザー」は1972年に最も高い興収を獲得し、翌年「エクソシスト」が公開されるまでこの記録が抜かれることはなかった。

[39]「ゴッドファーザー」は第45回アカデミー賞11部門にノミネート。作品賞、マーロン・ブランドの主演男優賞、コッポラ監督とプーゾの脚色賞と、3冠を達成した。

[40]「ゴッドファーザー」は作品賞を受賞し、コッポラ監督は「ゴッドファーザーPARTII」で監督賞を受賞した。

[41]マーロン・ブランドロバート・デ・ニーロは、どちらもビトー・コルレオーネを演じ、オスカーを受賞した。同一のキャラクターを2人の役者が演じてオスカーを受賞した初めてのケースである。(※のちに、ヒース・レジャーホアキン・フェニックスが、同じジョーカー役で受賞した)

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[42]ネイティブ・アメリカンの血を引く女優のサチーン・リトルフェザーはマーロン・ブランドの代理でアカデミー賞に出席。ハリウッドとアメリカのネイティブ・アメリカンへの扱いに抗議するとし、ブランドはアカデミー賞受賞を辞退した。

[43]「ゴッドファーザー」から、ロバート・デュバルジェームズ・カーンアル・パチーノの3人が、アカデミー助演男優賞に同時にノミネートされた。

[44]当時パラマウントを所有していたGulf&Western社は「ゴッドファーザー」制作に際して、イタリア系アメリカ人コミュニティから数々の否定的なコメントが寄せられた。

[45]「ゴッドファーザー」は1990年にアメリカ国立フィルム登録簿に選出され、「文化的、歴史的、芸術的にきわめて高い価値を持つ」とされた。

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[46]「ゴッドファーザー」はアメリカン・フィルム・インスティテュート(AFI)が選ぶ、アメリカ映画ベスト100で2位を獲得した。

[47]音楽を担当したニーノ・ロータの音楽はアカデミー賞にノミネートされたが、一部は元々1958年のイタリア映画「Fortunella (原題)」用に作曲されたものだと分かり、不適格だとしてノミネートを取り下げられた。

[48]プロデューサーのアルバート・S・ラディは「ロンゲスト・ヤード」を制作するために「ゴッドファーザー」の続編を担当する権利を放棄した。

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●豆知識

[49]マイケルのボディガードが着用しているシチリア島の伝統的な帽子の名前は「コッポラ」である。

[50]「マフィア」や「モブ(マフィアの俗語)」という表現は「ゴッドファーザー」で使用されていない。


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■「ゴッドファーザー」50周年記念上映

<上映スケジュール>
25日(金)「ゴッドファーザー
26日(土)「ゴッドファーザーPARTII
27日(日)「ゴッドファーザー 最終章 マイケル・コルレオーネの最期

<上映劇場>
TOHOシネマズ日比谷、TOHOシネマズ梅田

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