幻の傑作「皆殺しの天使」リバイバル公開記念 生前のブニュエルのインタビューを入手!

2017年12月22日 13:00


ルイス・ブニュエル監督
ルイス・ブニュエル監督

[映画.com ニュース]「アンダルシアの犬」「昼顔」などシュルレアリスム、不条理作品で知られる鬼才、ルイス・ブニュエルのメキシコ時代の傑作「皆殺しの天使」が12月23日から36年ぶりにリバイバル公開する。生前のブニュエルが作品を語るインタビューを映画.comが入手した。

--「皆殺しの天使」は、「ビリディアナ」に続きメキシコ人のプロデューサー、グスタボ・アラトリステとの仕事ですね。

ルイス・ブニュエル(以下LB)「理想的にはイギリスで製作できれば良いと思っていた。イギリスには本当の上流階級らしい生き方が存在しているから。だがそれはそれとしてアラトリステと組んだことで完全な自由を得ることができた。彼は話の筋さえ知らなかった。私が彼に言ったことは、一つの部屋から理由がわからずに出られなくなった人々の話である、ということだけだった。彼は私に「続けてください。好きなように製作してください」と言ってくれた」

--「皆殺しの天使」というタイトルはどこから来たのでしょうか?

LB「私は当初、そのタイトルは話の筋と奥深いところで関係があるのだと思った。しかし具体的にどの部分かはわからなかった。結果的には私はこう解釈している。現代の人間社会で人々は時を追うごとに意見を異にしてきている。そのため、お互いの間に争いが起きるのだ。しかし、なぜ理解し合わないのだろう。なぜこの状態から抜け出そうとしないのだろうか。映画の中でも同じだ。なぜ部屋から出る方法を一緒に探さないのだろう」

--「皆殺しの天使」は人間の置かれている状況の比喩なのでしょうか?

LB「ブルジョアの置かれている状況と言った方がいいだろう。労働者では同じようなことにはならないだろう。労働者たちはきっと部屋を抜け出す方法を見つけるに違いない。例えば労働者たちの住む地区で、ある男が自分の娘に洗礼をし、その祝いの席に50人もの仲間が集まり、あとでそこから出られなくなってしまったとしたら……。彼らは最後に出口を見つけると私は思う。なぜか? それは労働者の方が生きていく上で実際に、より多くの困難に出会っているからだ」

--一度見ただけではストーリーがわからないという意見もあります。

LB:「この映画が謎に満ちていて、常識から外れていると言われるのは、人生自体が正しくそのようなものだからだ。この映画は人生そのものを言い当てたもので、私はここに象徴的なことなど少しも盛り込もうとはしなかった。だからこの映画に深い意味などを求めてはいけない。私は動物の中ではネズミが最も好きだ。だからこの映画は、船が難破する前に本能的にそれを察知しながらも、去ることは不可能になるネズミの話だと思って見てもらっていい」

--この作品のテーマと言ってもいい“自由”についてはどう考えますか?

LB:「自由とはひとつの幻想なのだ。このことを私はこれまでも真面目に考えてきたし、いつもそう思っている。自由は霧のような、幻影のようなものだ。人間はそれを追いかけて、手に入れたかと思うと、手のひらにほんのわずかな霧が残っているに過ぎない。私には自由はいつもこのようなイメージで表れてきているのだ」

皆殺しの天使」は、12月23日からシアター・イメージフォーラムで3週間限定公開。公開期間中は、「ビリディアナ」「砂漠のシモン」「アンダルシアの犬」を同時上映する。

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眼球を剃刀で真二つにされる女、路上に切り落とされた手首をみつめる女装の男、痙攣する掌を這い回る蟻の群れ…。ルイス・ブニュエルとサルバトール・ダリが、感性のひらめくままに奔放な映像の断片を積み重ねた、シュルレアリスムの映像詩。
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「アンダルシアの犬」の異才ルイス・ブニュエルが1962年にメキシコで手がけた作品で、ある邸宅に閉じ込められたブルジョワたちがたどる意外な運命を、ブラックなブルジョワ批判を交えつつ描いた不条理劇。

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