「ロメール、ゴダール調にブニュエルの混血」ホン・サンス近作を菊地成孔が分析

2012年11月22日 17:00


ホン・サンス「次の朝は他人」について語った菊地成孔
ホン・サンス「次の朝は他人」について語った菊地成孔

[映画.com ニュース]東京・シネマート新宿で開催中のホン・サンス監督の特集上映「ホン・サンス/恋愛についての4つの考察」を記念したトークショーが11月22日あり、ジャズミュージシャンの菊地成孔ホン・サンス作品の魅力を語った。

エリック・ロメールの徒弟、ジャン=リュック・ゴダールの後継者などと呼ばれるホン・サンス監督の作品を「日本でいわゆる韓流シネマと呼ばれるものの中の異端」と紹介。この日上映された「次の朝は他人」を「大変な傑作。どうでもよいような恋愛の話がアートフィルムの域に達している。ホン・サンスにしか成し遂げられなかった偉業、異色作」と絶賛した。

この映画の批評のポイントは「登場人物たちが『小説』というバーに3回行くが、それが連続した3夜ではないということがすべて。差異と反復、多元宇宙といったいくつかの世界で起こっていることを描いている」ことだといい、本作の独特の構成を説明する。

そして「すっかりフランス映画のようで、ソウル市は途中からパリにしか見えない。音楽に着目すると、6小節だと思うが断章と言ってもよい非常に美しいピアノの旋律が、タクシーを待つシーンなど3カ所だけ使われている。ミシェル・ルグランの大量のスコアを全部カットして、4小節だけ使ったという逸話のあるゴダールの『女と男のいる舗道』を想起させる」と音楽家ならではの着眼点を語る。

本作全体を通し「ロメール、ゴダール調は変わらないが、今回私の見立てではルイス・ブニュエルが混血している」と分析し、二人の役を一人の女優が演じているという点、時間や都市の同一性が流れるように崩れていくことなどを挙げ、ブニュエルの「皆殺しの天使」「欲望のあいまいな対象」を参考作品として観客に紹介。また、ホン・サンスはミソジニストではという持論も展開し、観客をうならせていた。

「ホン・サンス/恋愛についての4つの考察」では、第63回カンヌ映画祭ある視点賞グランプリ「ハハハ」をはじめ、「よく知りもしないくせに」「教授とわたし、そして映画」「次の朝は他人」の4本を上映する。

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