イノセンツのレビュー・感想・評価
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某作品と似ている、という指摘も頷ける部分はあるものの、無垢と残虐を日常生活の中に埋め込む世界観が強く印象に残る一作
作中のいくつかの場面で、表現にそれなりの規制がかけられている(だからこそ”うまく見せない”手法が洗練されている)ハリウッド映画では見ることのできないような描写が含まれるため、その生々しさ、不気味さが肌に合わない人もいるかも。
しかし全体的に、抑制の効いた演出は効果的で、かつ主人公の少年少女の演技も真に迫るものがあり、サイキックスリラーとして非常に楽しむことができました。
子供達の、超常的な力を得たことを無邪気に喜ぶ表情と、それを他者への攻撃手段として用いる際に見せる残虐さとが、「無垢」さの両面であることを、様々なエピソードを通じて語っています。孤独感と暴力のエスカレーション、その一方で周囲の人々は全く普通に日常生活を営んでいる、という対比的描写がとても鮮烈です。
鉄柱が折れる、水面がさざなみ立つ、といった描写で超能力を表現する手法には、確かに日本のアニメや漫画、特に大友克洋の影響を見出すことができます。一方でエスキル・フォクト監督はそれらの影響を公言しているし、そうした描写の類似性を差し引いても十分独特の世界観を打ち出していて、一つの映画作品として満足できる内容でした。
昔少しだけ読んだ『童夢』を、改めて読み返したくなりました!
サイコスリラー
予告をさらっと見た印象では、アベンジャーズの様な特殊能力を持った子供達の、スタンドバイミーの様な、青春物語かと思いきや…まさかのサイコスリラー😱
怖い❗怖い❗
けど、子役のスキルが凄すぎる‼️
冷静になると、突っ込み処満載だけど、その演技力に、のめり込まされる。
イノセンツ
とんでも無いぞこの映画…。
最高にドキドキワクワク、静かに先行きを見守り、登場人物たちに感情移入していく。
完全に設定勝ちで、一つ一つの設定(自閉症とか)が全部効いてくる。無駄な登場人物は1人もいないし、無駄なシーンは一つもない。
一つ一つが洗練され、考え抜かれたカット、編集、そして演出。見事と言わざるを得ない。
そして、派手な映像的演出を行わなかったのもとても良い。目に見えない超能力というものがどれだけ異物でおかしなものなのかが、一見なんの変哲もない日常と照らし合わせて描くことで上手く描写されている。
まるでシャイニングを思わせるような、子供の残酷さとその怖さ。じわじわくるサスペンスがたまらなく心地いい…。
「人の弱い部分が見えたか」
これに関してはなんとなくなかった気がするが「愚かさ」という部分では大いにあったと思う。しかし、やっぱり大きなドラマや心動かされる体験があったかと言われるとなんだかなかったように思えるので、お話に関しては少し薄っぺらい印象もあった。彼女たちの心にもっと共感し、傷みを一緒に味わうことができたら最高だったのだろうか…。
「謎があったか?」
やはり物語を引っ張るのはこれ。「謎」の存在がやはりでかい。突如使えるようになった超能力の謎がずっといる。ただ、主人公たちがそれを解明しようとしないので、謎を追う物語ではなくとも、そのに謎が生じるだけで客は考え、翻弄されるのだと気づいた。
絶対に謎を追う構図にしなくてもこの面白さは成立するのだ。
このお話での謎は「超能力」とさらには「子供たちの思考」というところにある。
子供たちは、不必要なセリフを話すことはなく、ただ自然に口から出る言葉を吐き出しているだけのように見えた。
「緊張感があったか」
終始緊張感があった。それは、やはりあの男の子の残虐さを見たからだろう。それがあるだけで、主人公たちと男の子の間で緊張感がずっと生まれることになる。ここもやはり美味かった
「すべての事象が繋がっているか」
繋がっていた。なんの疑問も持たなかったし、すべての設定が効果的で生きていたと思う。
薄幸な子供は超能力を持つ
スタイリッシュなポスター/チラシに惹かれた。
観たくてたまらなくなった。
母子家庭で育った主人公の少年。残酷であることに自覚がなく、母親に対する愛情も欠落していた。強い負の力が働いたと思うが、少年の悲劇が語られることはない。
暴走し孤立した。友達になれたであろう少女たちを敵にまわした。他の子供たちすべてを敵に回した。
中学時代の同級生を思った。
そう、大きくデフォルメされているとはいえ、現実の世界は類似の悲劇であふれている。
デ・パルマの『キャリー』のように少年の魂が救われることを祈ったのだが、最後まで救われることはなかった。鈍い痛みが残った。
どうしても童夢を夢見てしまう世代
結果的に「童夢」にインスパイアされたというのが最大の引きとなって、観にきてしまった。最大の宣伝文句「童夢」
確かに、と、思えるものもあるが、若干それが邪魔をした。決してサイキック映画ではなくて、子供に巣食う邪念みたいなものが、特殊な力を手に入れるとどうなるか、という方が中心なので。
冒頭から執拗にそのイノセントな邪念がたくさん描写される。姉の設定とその姉と通じるインド系?の女の子の設定が秀逸。
とはいえ、よかったのは、「童夢」もそんなようだったと思うけど、特殊な能力の発露(しかもよくわからない力)はあるが、そのきっかけにはまったく触れないことか。そして「童夢」にせよ「キャリー」にせよ「スキャナーズ」にせよ、80年代サイキックよ派手さとはまったく無縁の、休日の公演の池を挟んで、周りの大人たちは気づかず子供たちだけが注視する静かなる対決は面白かった。
子供の両義性を上手く利用した秀逸ホラー
ゾッとするホラー映画ランキング的には、間違いなくトップクラスの作品でした。主要な登場人物は4人の子供で、その中でも顕著な超能力を持つアナとベンが最終対決をすることになりますが、特に怖かったのは前半部。題名の「イノセンツ」という言葉通り、子供にはイノセント(無実、無邪気な、無知な、悪気のない)なところもあると当時に、その裏返しとして無知ゆえの残酷さとか限度を知らない冷酷さを併せ持つことが遺憾なく表現されていて、ホントにゾッとしました。
本作では猫をマンションの上階から階下に落とすシーンが出て来ますが、自分も子供の頃に悪童連中と蛙に同じことをしていたことを思い出しました。今思えば申し訳ないことというか、実に気味悪いことをしたと思いますが、当時は好奇心が勝っていて、一種の集団トランス状態に陥っていたのかも知れません。そんな程度の未熟な子供が、超能力を持っていたとすれば、確かに本作で描かれるような阿鼻叫喚の世界になるのは必定のような気がしたところです。単なる超能力対決だと、そういう設定の映画ということになり、残虐シーンをエスカレートさせるなどで怖さを増幅させがちですが、本作はどこにでもある子供の残酷さの延長線上にある恐怖を描いており、身体の芯から凍らされました。
出演者の中では、主人公イーダの姉にして、最強の超能力を持つアナを演じたアルバ・ブリンスモ・ラームスタが非常に良かったです。アナは超能力者であると当時に自閉症であり、会話も出来ない状態でしたが、引っ越し先の近所に住むアイシャとの交流を通じて言葉を口にするようになります。この辺りの微妙な表情だったり言葉遣いだったりを、実に上手く演じていたと思います。物語的にも、役者的にも、彼女が本作のMVPであることは間違いないのではと思います。
因みに観た後で知ったのですが、本作は大友克洋原作の「童夢」という漫画にヒントを得た、というか、ほぼ「童夢」の実写版と言ってもいいような作品だそうです。「童夢」を読んでいないので、どの程度似通っているのか私には正確に判別できませんが、「童夢」が日本の話であり、本作が北欧の話であることを除くと、あまり高級ではない「団地」を舞台としていること、「超能力者」同士が対決する物語であること、ラストシーンで「ブランコ」が出て来ることなど、本筋はそっくりなようです。早速「童夢」を注文したので、じっくりと比較してみたいと思っています。
そんな訳で、自分の体験に照らし合わせても、実にゾッとするお話だったので、評価は★4とします。
子供たちの根源的な疑念
シャラマン作品や、同じ北欧の「ミッドサマー」はまだ理解できるが、本作の幼い子供が織り成す超常現象は、ちょっと理解の域を超える。
大人は蚊帳の外で、子供たち同士が超能力の出し合いを行うと、分別がついていない残酷なものになるからだ。
大友克洋の『童夢』に影響を受けた作品らしいが、舞台が同じ団地というだけで、『童夢』を読んだ時に感じた衝撃は全然感じられなかった。
社会福祉が充実していて、子供たちに手厚いはずの北欧社会において、閉鎖的で移民が多い団地がぽつんと存在する。
団地の子供たちの家庭は、それぞれに問題を抱えている。怖ろしいと感じたのは、ふがいない大人たちを超能力を持った子供たちが、逆に虐げていく構図になっているということだ。
それは単なる呪いというより、親なり大人の世界に対して抱く子供たちの根源的な疑念のようにも思える。
そこが、なんとも後味の悪い作品になっている所以のような気がした。
子供たちの狂気
子役の演技が凄かった。
映像の美しさと不気味さが融合された世界観。
芸術的なスリラー映画でした。
余談ですが、是枝監督の映画怪物もこういう感じを想像してたけど違った。
最高です。
今年一番の最高傑作。
ホラーだったのね。
猫のシーンはトラウマになります。私もなんにも能力ない人だから、主人公にめちゃ共感します。いや、腕すら曲がらない。。。
見ていてビクッとなって隣のお客さんをびっくりさせてすみませんでした。
地味に凄まじい映画
「童夢」を元にした作品という事で期待して観に行きましたが、期待以上の素晴らしい映画でした。
子役たちの演技は驚異的で、特にアナの存在感は凄かったです。
全体にこけおどしに陥らず、じわじわと迫る怖さに手に汗握ります。
CGは本物に見えるぎりぎりに控えられており、よくある派手にして嘘くさくなるという陥穽に嵌ることを回避しています。
最終決戦は鳥肌が立つほどの出来で、正に「童夢」の理想的な実写化に思えます。
全体に非常に完成度が高く、残念ながら邦画でこのレベルの実写化を作るのはほぼ不可能ではないかと思います。
それは悔しくはありますが、日本の漫画を元によくぞ作ってくれたと思いました。
子どもらしい残酷さに寒気
倫理観が成熟してないがゆえの残酷さや暴走の描き方は抜群に上手いですね。ゾッとしました。
テンポが妙にまだるっこしいのと、中盤からとある母親ずっとほったらかしなのおかしくない?とか幾つか引っ掛かる点があるのが惜しい。
幸福な国だから無邪気な悪も描けるのかな?
北欧産のグロいスリラー、ノルウェーが舞台のようで、平穏な日常が静かに侵食されてゆく恐怖を描く。昨年公開の「ハッチング-孵化-」はフィンランド製、男と女の性差から生ずる恐怖をみるみる攻撃的になる女性がポイントだったが、そっくりそのままそれを「子供」に振り当てたのが本作とも言える。全ては子供の世界だけで生ずる事象で、一切大人の介在する余地も余白もないところに恐怖のポイントを据える。日本でしたら、非常識の一言で窘められる映画のポイントですが、本質的に北欧各国と比較し、子供を守っているとは言えない日本で、だからこそこんな映画は到底日本では創られない。
北欧では、子供に対し積極的に税金を投入し、他の子どもと比較せず、長所を伸ばし個性を尊重する教育が、無償で受けられ、女性の社会進出も支える。2言目には「子供手当」と口にする、金さえ出せばの発想しかない無能な政治家の国とは、全く異なる。社会全体のコンセンサスが確立されているからこそ、無垢の色合いの本質的な攻撃性にテーマを挙げてもこうして成り立つわけで。
舞台は、いわゆる団地で、決して裕福とは言い難い人々が集う。分かり易く言えば多数の移民を受け入れ、多種多様な人種が住んでいる。ここに引っ越したばかりの白人姉妹とラティーノ系とインド系?の4人の子供が主役。「系」としか書けないのは、よく分からないし、そんな事は映画の作者にはどうでもいい事のようだから。姉妹の姉は自閉症のようで、実質妹が本作のメイン。
徐々に徐々に子供達の関係性に不思議な能力を描いてゆく。本作は音楽が秀逸で空気感の描写には舌を巻く。不穏な空気が一瞬のサイキック描写を浮き彫りにし、しかし演出的に過度な描写は一切せず、ってところが本作の良さ。一種の超能力は初めは4人の輪となり潤滑していたものの、次第に攻撃に向くところが恐ろしい。ついに矛先が大人にまで向かうものの、大人社会には一切響かない。何故か? 一種のピーターパン症候群の範疇なのか、世の不可解事件が子供の無垢によって引き起こされていたかも知れないと言うのに。
猫殺害の残忍も無邪気の延長線上にあり、死の認識も出来ない子供達だからこそ平気なのである。当たり前ですが、本当に殺しているはずもなく、この程度の描写で騒いでいたら、日本人甘すぎますと言われますよ。でも流石に子役がこの殺害演技をする辺りはどう説明したのでしょうね?
「わたしは最悪」の脚本書かれた方が監督だそうで、物事総てが極私に収斂する閉塞感を感じてしまうのは、冬の長い北欧だからこそなんでしょうかね。
ホラーもさることながら人物描写が丁寧
ホラーは苦手だが、この暑いなか、涼しい気分を味わいたくて、あまりグロく痛くなさそうなものをチョイス。
子どもたちが超能力を使ってどんな怖いことをするのかとビクビクしていたが、意外にも超能力を持つ過程とその心情変化が丁寧に描かれており、ストーリーとしてしっかりしていた。
単なるお遊びから、いじめ、親への反抗、そして、生存本能。
子どもたちのケンカに超能力があったらこんなふうになるんだな、とリアリティを感じられた。
『イノセンツ』、という複数形タイトルのとおり超能力を持った子どもたちは複数でてきて、彼らのケンカはなかばドラゴンボールの超サイヤ人によるバトルに見えて少し笑ってしまった。
怖さ自体は音楽による雰囲気程度さほどでもなかったが、ストーリーと子どもたちの名演があいまって全体的に楽しめた。
2023年劇場鑑賞82本目
子供は、純真ではない
北欧発サイコスリラー『イノセンツ』、子供が純真なんて、誰が言ったのだろう。そんな言葉が、聞こえてきそうな作品です。それは、ある意味真実です。あくまで、大人になる手前の存在なのだと。ただ、大人にならずに子供のままだと、それはそれで問題なんですが。
北欧発サイコスリラー
おおよそ、子供が純真だなんて、思わないほうがいい。
赤ちゃんのと時は、別として。
物心ついたあたりから、その本性を表す。
別に子供が、悪魔や怪物であるわけではない。
ただ、彼らは、自分一人では生きて行けないから。
大人にとって都合のいい人間を演じているに過ぎない。
では、その本性とは、ただ未熟な存在というだけなのですが。
未熟さゆえに、その嫉妬心、存在の不確かさから来る攻撃性。
そして、残酷さは特筆すべきものだ。
存在の不確かさの生む残虐性
この映画の大きなテーマ。
子供は、自分の存在が、わからない。
それを確かめるために、他者を傷つけることを平気で、することができる。
それは、弱者に対しであったり、昆虫であったり。
ただ、これが、小動物にまでゆくと、事態は深刻だ。
他者の痛みとはどんなものなのか。
痛みそのもののを、よく理解できていないのでは。
何かを傷つけるというところに、性的サディズムが、加わると。
それが、修正されないままでいると、モンスターが、生まれる。
感受性が強く、特異な力を持つ存在、、、
子供を表現すると、こうとも言えるかもしれない。
全部が、全部そうだとは言えないが。
未熟であるがゆえに、そこに特異な能力が、あるとも言えるのでは。
そんな子供のサイキックな一面を、この映画は、デフォルメさせてみせた。
未熟である存在の子供が、その未熟さを修正されないまま大人になったときは。
そんな、人間の引き起こす事件を、現代人は、嫌というほど見てきているはずだ。
人間とは、じつにわからない存在だ。
子供たちの小さな世界で巻き起こる、とても静かな戦いの物語
非常に味わい深い作品でした。
様々な問題を抱え、孤独に直面した子供たちが、知り合って、触れ合っていったと思ったら、ちょっとした行き違いから、対立が生まれ、彼らの持つ“イノセント”と目覚めた力から悲劇的な展開を迎えてしまうお話です。
決してビッグバジェットな作品ではないため、映像表現としては地味ですが、子役たちの演技に加えて、終始不穏さを醸し出す展開の連続で、行きつく暇はありません。大友克洋の童夢の影響を受けた、という話ですが、「団地」という多様性が押し込められた特有の舞台設定も、今の時代だからこそより意味のあるものになっていたと思います。
ただ、監督がどこまで意図したのかは不明ですが、結果的に被害に被るのが移民の家の子供たちであったり、心の病の下に隠れたピュアさゆえにより「強力な力」に目覚めるアナの設定など、“イノセント”じゃない感情に心がザワつきます。
それら含めて、かなりの傑作だと思います。
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