劇場公開日 2023年6月9日

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「作家の想像力をアニメーション化」プチ・ニコラ パリがくれた幸せ 杉本穂高さんの映画レビュー(感想・評価)

4.5作家の想像力をアニメーション化

2023年6月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

児童書を単純にアニメーション映画化するのではなく、その児童書を描いた2人の作家の友情と創作過程を見せる二重構造を描いているのが良い。2人の作家が描いた絵が命を持って動き出す、それがアニメーションで生き生きと表現される様は、より2人の作家の内面に切り込んでいくような感覚を与えてくれる。
2人の作家が、二コラという少年に何を託してあのような物語を編み続けていたのか、幼少期の戦争体験など過酷な体験が背景にあることが次第に明かされていく。プチ・二コラの温かい物語はどんな想いで生み出されたのか、その想像力の源泉に、このアニメーション深く迫っていく。本当に素敵な作品だ。
想像力の翼はどこまでも広げることができると素直に信じることは、子どもにはたやすいが大人には難しい。しかし、この2人の作家は大人になってもそういう気持ちを持ち続けた稀有な存在だ。この映画を見ると、プチ・二コラの世界観も好きになるが、それ以上に「こういう大人になりたい」と思わせてくれる、大人のためのメルヘンだ。

杉本穂高