劇場公開日 2023年6月9日

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「監督の製作意図そのものの一本。」M3GAN ミーガン talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0監督の製作意図そのものの一本。

2024年2月26日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
研究では育児時間の78%が基本的なしつけに浪費される。そこで「代役」だ。
そして、聞き上手。
自らも物語を創造して、子供を飽きさせない。
ミーガンに雑用を任せ、自分は大事なことに集中する。

ファービー社が「自動車以来、最大の技術革新」と銘打って大々的に売り出そうとしているのは、バービー人形以来の「夢」の遊び相手。

そして、子供にとっても「夢」であるだけでなく、それは、与える親にとっても「夢」なんですよ、というのがファービー社の売り込み文句。

大人になって、テレビで漫画を観なくなった今もそうかどうかは分かりませんが、評論子の子供時代は、日曜日の朝は、テレビ各局とも子供向けの漫画番組のゴールデン・タイムでした。
月曜の朝から土曜の昼まで働いて(当時は、土曜日はいわゆる半ドンで、週休二日制は普及していなかった)、日曜くらいは「起こさんデー」という大人たちのためのテレビ各局の細(ささ)やかな配慮だったのだろうと思います。

本来であれば、子供のオモチャとしてのミーガンを買うことで、その子の親も、子育ての労苦の大部分から解放されて「夢」のような生活が手に入るはずでした。
しかも「僅か一万ドル」(ファービー社の売り文句)で。

しかし、「夢」は「夢」でも、その文字の前にはもう一文字、「悪」という字がついていたことには(まだまだ技術・能力がミーガンには、実は追いついていなかった?)開発スタッフの誰も気づかなかったということでしょうか。

「これは、殺人人形の映画ではなく、21世紀の子育てについての倫理を問う物語だと思う」という、特典映像の作品解説でのジェラード・ジョンストン監督の意図は、十二分に込められていたと思います。評論子は。

佳作であったと思います。
監督の製作意図が、本作にはちゃんと通低しているという意味では。

(追記)
それにしても、ミーガンの無表情は、怖かった。怖い、怖い。なまじっかに人形(ひとがた)なので、余計に。
本作に登場するのブルース(ジェマが学生時代に研究として作ったというロボット)みたいに、いかにもロボットという外観であれば、そんな感情も湧いたりしないだろうに。

本作中の「ミーガン・ダンス」も不気味と言えば、不気味でしたけれども。
彼女の能面のような無表情さの怖さは、その比ではなかったと思います。評論子は。

考えてみれば、別作品『ブレードランナー』のレプリカントのようなヒューマノイドの怖さは、やっぱり、それらの(人ではないという設定なのに)「人っぽさ」から出てきていることは、間違いがないようです。
いずれ、ミーガンのあの表情が暗闇に浮かんだとしたら、夜中に一人でトイレに行けなくなると思ったのは、独り評論子だけではなかったことと思います。

talkie