イニシェリン島の精霊

劇場公開日:

解説

「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督が、人の死を予告するというアイルランドの精霊・バンシーをモチーフに描いた人間ドラマ。

1923年、アイルランドの小さな孤島イニシェリン島。住民全員が顔見知りのこの島で暮らすパードリックは、長年の友人コルムから絶縁を言い渡されてしまう。理由もわからないまま、妹や風変わりな隣人の力を借りて事態を解決しようとするが、コルムは頑なに彼を拒絶。ついには、これ以上関わろうとするなら自分の指を切り落とすと宣言する。

「ヒットマンズ・レクイエム」でもマクドナー監督と組んだコリン・ファレルとブレンダン・グリーソンが主人公パードリックと友人コルムをそれぞれ演じる。共演は「エターナルズ」のバリー・コーガン、「スリー・ビルボード」のケリー・コンドン。2022年・第79回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門でマーティン・マクドナーが脚本賞を、コリン・ファレルがポルピ杯(最優秀男優賞)をそれぞれ受賞。第95回アカデミー賞でも作品、監督、主演男優(コリン・ファレル)、助演男優(ブレンダン・グリーソン&バリー・コーガン)、助演女優(ケリー・コンドン)ほか8部門9ノミネートを果たした。

2022年製作/114分/PG12/イギリス
原題:The Banshees of Inisherin
配給:ディズニー
劇場公開日:2023年1月27日

スタッフ・キャスト

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受賞歴

第80回 ゴールデングローブ賞(2023年)

受賞

最優秀作品賞(ミュージカル/コメディ)  
最優秀主演男優賞(ミュージカル/コメディ) コリン・ファレル
最優秀脚本賞 マーティン・マクドナー

ノミネート

最優秀助演男優賞 ブレンダン・グリーソン
最優秀助演男優賞 バリー・コーガン
最優秀助演女優賞 ケリー・コンドン
最優秀監督賞 マーティン・マクドナー
最優秀作曲賞 カーター・バーウェル

第79回 ベネチア国際映画祭(2022年)

受賞

ボルピ杯(最優秀男優賞) コリン・ファレル
最優秀脚本賞 マーティン・マクドナー

出品

コンペティション部門 マーティン・マクドナー
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(C)2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

映画レビュー

4.0オッサンの痴話喧嘩が教えてくれるもの。

2023年2月28日
PCから投稿
ネタバレ! クリックして本文を読む
コメントする 1件)
共感した! 8件)
村山章

4.5人間の諍いの愚かしさを突き詰め、神話の域にまで昇華

2023年1月29日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

マーティン・マクドナー監督は、「セブン・サイコパス」や「スリー・ビルボード」など米国を舞台にした大作も撮ってきたので、その出自を気にかけない観客も多いのではと思うが、実は英国とアイルランドの二重国籍を持つという、メジャーな劇作家・映画監督の中ではかなり希少な存在だ。映画に進出する前はアイルランドのアラン諸島を舞台にした戯曲「アラン諸島三部作」(「イニシェリン島の精霊」の原型になった「イニシィア島のバンシー」を含む)を手がけており、自身のアイデンティティに関わるアイルランドについて並々ならぬ思いを抱いてきたことがうかがわれる。

本作の時代設定は1923年で、舞台となる架空のイニシェリン島から海の向こうに望むアイルランド本島ではまさに内戦が進行しており、大砲や銃の音が島に伝わってくる。昨日まで仲の良かった隣人同士、さらには親兄弟までもが、信仰や思想、主義主張の違いから仲たがいし、さらには殺傷し合う内戦の愚かしさと悲劇が、主人公パードリック(コリン・ファレル)と長年の友人コルム(ブレンダン・グリーソン)の関係に投影されている。

絶縁を宣言したコルムの異様なまでの頑なさ。それを受け入れられないパードリックの鈍感さは、彼が飼うロバのように哀れを誘う。傍(はた)から見れば愚かしい諍いが坂道を転がるように悲劇の谷へ向かっていくさまは、コルムがとる人間離れした行動や厳しくも美しい島の景観と相まって、神話のような聖性さえ帯びている。

「スリー・ビルボード」に比べるとゆったりした進行で派手な展開も少なく、やや地味に映るかもしれないが、重厚な見応えと、鑑賞後も人の諍いについて考えさせるようなインパクトの点では、決して引けを取らない。

コメントする (0件)
共感した! 34件)
高森 郁哉

4.0喉越しがざらざらとする寓話的世界。その真意は?

2023年1月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

笑える

悲しい

ある日突然、親友と思っていた相手から「もうお前とは付き合わない」と言われたら、どうする?さらに、「自分に残されたわずかな時間を無駄にしたくない」とトドメを刺されたら!?

舞台は1923年。アイルランドにある架空の孤島、イニシェリン。人々はパブで飲むこと以外に取り立てて楽しみがない日々を過ごしていて、2人の男たちの仲違いは一気に周囲を巻き込んでいく。喧嘩の理由はこの閉塞感なのか、それとも、わざと突き放して相手を試しているのか。物語は方向性を教えないまま強烈な幕切れへと突き進んでいく。

その過程で、徐々に輪郭が見えてくる。諍いが見るも無惨にエスカレートしていく対岸の本島では、同じ民族同士が内戦を戦っている。親しいだけに際限がない男たちの喧嘩は、アイルランド内戦の比喩なのだと。

同じく狭いコミュニティで起きる争いを描いた前作『スリー・ビルボード』に比べると、マーティン・マクドナーの最新作はやや寓話的、戯曲的に過ぎて飲み込み辛い欠点はある。しかし、コリン・ファレル以下、魅力的な俳優たちが織りなす演技的アンサンブルや、ロケ地であるアラン島でのロケーションが、文句なしに映画的醍醐味を味合わせてくれる。何よりも、このざらざらとした喉越しは強烈で、飲み込むとファレルのように眉毛が八の字になるのだ。

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共感した! 24件)
清藤秀人

4.0「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督作というのが重要だと思う作品。賛否は分かれそうな会話劇。

2023年1月27日
PCから投稿

本作は第95回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演男優賞(コリン・ファレル)、助演男優賞(ブレンダン・グリーソンとバリー・コーガン)、助演女優賞(ケリー・コンドン)などで8部門9ノミネートという注目作となっています。
個人的には、【「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー監督による作品】という点が重要なのだと捉えています。
前作の「スリー・ビルボード」もアカデミー賞を席捲した会話劇。こちらは個人的にはとても好きな作品で非常に良く出来ていたと思っています。
大枠の作風は2本とも似た雰囲気を持っています。
ただ、「物語の必然性」という点において、この2作品には大きな違いがあると考えています。
「スリー・ビルボード」の際には「物語の必然性」があり、「この先はどうなっていくのだろうか」というワクワク感のようなものが終始ありました。
一方の本作では、個人的には「物語の必然性」をあまり感じられず、いろんなものが唐突過ぎて、「どうしてこういう展開になるのだろうか?」という不思議さの残る会話劇でした。
ただ、その「物語の必然性」をそれほど重視しないで「そういう流れなのか」と割り切って見ていけば、コリン・ファレルなどの演技も上手く会話劇として集中力は途切れず作品に入り込んでいけます。
「人の死を予告するというアイルランドの精霊・バンシー」をモチーフにしている点がやや分かりにくく、「スリー・ビルボード」のような風格はあるものの「物語の面白さ」という点では割と賛否が分かれそうな作品だと思います。

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細野真宏
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