グロリアス 世界を動かした女たち

劇場公開日:

グロリアス 世界を動かした女たち

解説

1960年代から70年代を中心に女性解放運動のパイオニアとして活躍した、アメリカのフェミニズム活動家グロリア・スタイネムの物語を、「アリスのままで」のジュリアン・ムーアと「リリーのすべて」のアリシア・ビカンダーという2人のオスカー女優を主演に描いた伝記ドラマ。大学時代に留学したインドで男性から虐げられている女性たちの悲惨な経験を見聞きしたグロリアは帰国後、ジャーナリストとして働き始める。しかし、社会的なテーマの記事を書きたいと思っても、女だからとファッションや恋愛のコラムしか任せてもらえない。そこで彼女は、高級クラブの「プレイボーイ・クラブ」に自らバニーガールとして潜入し、その内幕を記事にして女性を商品として売り物にする実態を告発する。徐々に女性解放運動の活動家として知られるようになった彼女は1972年、仲間たちとともに女性主体の雑誌「Ms.(ミズ)」を創刊。未婚女性=Miss(ミス)や既婚女性=Mrs.(ミセス)とは別に、未婚・既婚を問わない女性の新しい敬称=Ms.として、全米各地の女性に受け入れられていく。若き日のグロリアをアリシア・ビカンダー、40代以降をジュリアン・ムーアが演じた。監督は「フリーダ」「アクロス・ザ・ユニバース」のジュリー・テイモア。

2020年製作/147分/G/アメリカ
原題:The Glorias
配給:キノシネマ
劇場公開日:2022年5月13日

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(C)2020 The Glorias, LLC

映画レビュー

3.5テイモアらしい映像表現が散りばめられている

2022年5月29日
PCから投稿

ジュリー・テイモアといえば有名な映画監督であると同時に、舞台演出家でもある。かつて「ライオン・キング」などで鳴らしたその鮮烈な手腕を、活動家グロリア・スタイネムの半生を描く本作でどう発揮するのか。私の興味関心はその点に集約されていた。特徴的なところは3つ。すなわち、グロリアの人生を少女時代から描きつつも、時系列ではなく各々の世代が入り乱れて点描されること。多くの場面で車が用いられ、とりわけバスでは「それぞれの世代の私」が乗り合わせ、言葉を交わすこと。また時折、エキセントリックとでも表現したくなるほどの幻想的な心象風景が投下されること、である。試みの全てが成功しているわけではないが、しかしどの場面も独創性にあふれているのは確か。グロリアという人間を表面的に描くのではなく、彼女の内面と外面とを行き来しながら、極めて立体的に人物像を構築していく。テイモアらしい視座と表現性がそこに凝縮されていた。

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牛津厚信

4.0女性の地位向上に貢献した活動家を描き、啓発効果も大。冗長な構成が玉にキズ

2022年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

知的

日本ではかつてウーマンリブ、昨今はフェミニズムという言葉で語られることが多いようだが、社会的に女性が男性よりも低く見られていた時代、男性だけでなく女性の大半もそれが当たり前と思い込んでいた頃に、ジャーナリストとして働き始め、女性解放運動を先導して米国社会を、そして世界を変えていったグロリア・スタイネムの半生を描く伝記ドラマだ。思い起こせば中学の英語では独身女性のミス、既婚女性のミセスという敬称を普通に教わったが、ある頃からじわじわとMs.(ミズ)を見聞きするようになったのは、グロリアが創刊した雑誌のおかげだったということを本作で初めて知った。

日本でも少しずつ女性の社会的地位が向上しているとはいえ、組織や家庭の中で依然として男性優位の状況が残っていることに理不尽な思いをしている女性たちにとっては特に、勇気づけれられる内容になっている。男性観客の中でも、知らず知らずのうちに「男性らしさ」「女性らしさ」というステレオタイプが刷り込まれていた面が少なからずあったと気づかされる人が多いのではないか。

監督・共同脚本は、映画では「フリーダ」「アクロス・ザ・ユニバース」、舞台ではブロードウェイ・ミュージカル「ライオン・キング」などの演出で知られるジュリー・テイモア。グロリアの人生をじっくり丁寧に描くという意図は確かに伝わってくるが、現在69歳、大御所になったせいで周りに意見できるような人がいないのか、世代ごとにグロリアを演じ分けた女優たちが内面を語り合ったりする演劇的なパートがたびたび挿入されるなど、だらだらとした構成が冗長に感じられた。本編147分だが、2時間以内に収まっていたらもっと評価できたように思う。

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高森 郁哉

2.0逆に悪い印象を与えてしまったのではないかと心配

2022年5月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 女性の人権活動家グロリア・スタイネムの伝記だが、グロリアの人生を描きたいのか、フェミニズム運動の歴史を描きたいのかがはっきりせず、両方とも中途半端になってしまった感がある。加えて、時系列を行ったり来たりするような変なテクニックのせいで、グロリアの人となりがわかりにくくなってしまった。作品に立体感がない。物語が薄っぺらなのだ。かりにも世界のフェミニズム運動を引っ張ってきた女性なのだから、その人生が薄っぺらな筈はない。

 三つ子の魂百まで。グロリアの中には幼い頃の少女がいつまでも住んでいる。それを描くために後半になっても小さなグロリアを登場させているのかもしれないが、幼い記憶や情緒を抱えているのはグロリアだけではない。「三つ子の魂百まで」は、世界中の誰にとっても同じである。敢えて幼少期を描く必要はなかった。

 インドの経験の描き方も浅い。インド共和国はバラモン教の国で、表向きは民主主義の国だとなっているが、内実はカースト制度による差別の国である。最下位のカーストである不可触賤民は、殺されても警察はろくな捜査もしない。バラモン教はリインカーネーション(輪廻)が主要概念だから、不可触賤民の子孫は必ず不可触賤民である。彼らにとって人生は絶望でしかない。
 同じカースト同士の結婚を描いた映画「グレート・インディアン・キッチン」では、結婚した女性が奴隷のように酷使され、生理中は忌み嫌われる。インドではカーストに関係なく、女性に人権などないのだ。グロリアには、そのあたりの強烈な差別を目の当たりにしてほしかった。

 公然と行なわれる差別は、民主主義教育が行き届いていないということに尽きる。インドでは貧しい家庭は子供を学校にやれない。新しい知識がもたらされないから、親の考えがすべてだ。親はカーストが当然だと考えているから、子供もそうなる。自分たちが不可触賤民であるという認識はある。しかし避妊の知識も道具もないから、子供を作ってしまう。不幸の再生産だ。

 グロリアは得意の文章によって、差別に甘んじてしまう人々を啓蒙していきたいと考えたのだと思うが、本作品ではグロリアの決意の瞬間などが描かれず、なんとなくフェミニズム運動に巻き込まれてしまったかのように見える。フェミニズム運動について、逆に悪い印象を与えてしまったのではないかと心配だ。

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耶馬英彦

4.5嵐を起こした女性たち!

2022年5月20日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

知的

難しい

「えらいこっちゃ!」キャストだけで大興奮してしまう程、期待は膨らみました

…女性解放運動の代表的な存在である
グロリア・スタイネムの半生を綴る作品

人種や宗教…結婚歴
それぞれ境遇は違えれど共通の希望の為に闘う姿に何度か拳を突き上げたくなりました!

グロリアを幼児期から現在まで演じる女優達のタスキの受け渡しの流れが実に自然でいい!
モノクロ画像のバスの中…
全時代のグロリアが語り想いにふける姿は
各女優の力量が多いに発揮されて
素晴らしいにも程がある👏

同じ目標や希望を共有しながらも…対立する事も時折ある事は否めない…
現在にも至る妊娠中絶問題などは特にそうだ

そんな同志同士ですったもんだあれど
少女期のグロリアが有色人種の少女に誘われて床屋でタップを楽しそうに躍る姿
アリシア・ヴィキャンデル時代のグロリアが
インドの列車で現地人男にチャイをぽったくられそうになる時、現地女性達がそれを阻止してくれた
そんな普通の女性同士のさり気ない団結に安堵出来るシーンが大好き!とても印象に残りました

質実剛健な力強さと心懐に沁みる優しさを含み
スタイリッシュな映像…エンターテイメント性も兼ね備えた社会派作品に満足しました⭐️
…も、ちょっと上映館あってもよかろうに…

お懐かしき💦…ティモシー・ハットンさん!「普通の人々」が観たくなりました🤗

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ねもちゃん
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