劇場公開日 2021年3月12日

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「【“悲しみカエル”2016年の悪夢の米大統領選挙の前から起こっていた”模倣の負の連鎖”。悪意溢れるSNSに利用されたキャラクターや作者が経験した事を描く、恐ろしきポリティカルドキュメンタリー。】」フィールズ・グッド・マン NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0【“悲しみカエル”2016年の悪夢の米大統領選挙の前から起こっていた”模倣の負の連鎖”。悪意溢れるSNSに利用されたキャラクターや作者が経験した事を描く、恐ろしきポリティカルドキュメンタリー。】

2021年5月30日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

怖い

知的

ー サブカル漫画の少しキッチュな主人公ペペは、お気楽なカエルであった。
 だが、劇中で発した一言”FEELS GOOD MAN”が、”ミーム”の対象にされ、作者のマット・フューリーの世界を飛び出し、世に不満を持つ一部の4チャネラーや、人種差別主義者、オルタナティブ右翼(オルト・ライト)、偽ニュースサイト運営者に、イメージを改悪されていく様や、果ては愚かしき米国前大統領の選挙の際に、利用され、ペペとマット・フューリーは、名誉棄損防止同盟から”ヘイトシンボル”として任命されてしまう・・。ー

■感想
・ペペを創作したマット・フューリーの初動対応の拙さが、歯がゆい。何で、早期に著作権違反として、無断使用した連中を告訴しなかったのか?
 彼もまさかあんなことになるとは、思っていなかっただからであろうが、SNSの”負の”拡散威力を目の当たりにし、背筋が寒くなる。

・そもそもミームという言葉自体が、劇中でも説明されていたように、リチャード・ドーキンス博士が遺伝子学の観点から提唱した用語であり、現在の言葉の使われ方も、本来の趣旨とはかけ離れている。

・劇中でも、屡登場する4チャネラーのミルズが、自宅の地下室で語った言葉。温和な表情だけに、逆に怖かった。あの引き籠りの男性は良く、出演を了承したなあ。流石に両親の顔にはモザイクがかかっていたが・・。

・仮想通貨にまで使用されていたとは・・。

・トランプの勝利は、プアホワイトや、国粋主義に染まった人々を巧みに誘導した結果だと思っていたが、今作で描かれた「インフォウォーズ」や、”オルト・ライト”も巻き込んでいたのか・・。
それにしても、ヒラリーがあのタイミングで、ペペ擁護のコメントを出していたとは・・。火に油を注ぐようなものだろう・・。

<結局、マット・フューリーは幼き頃から愛してきた、ペペを自ら葬り、ペペのキャラクター像を悪用した「インフォウォーズ」や、”オルト・ライト”に勝利するのだが・・。
 アンダーグラウンドに蔓延る、”模倣の負の連鎖”の実態に戦慄した作品。
香港では民主化運動のシンボルともなるラストに、少し救われた感があるが、あれも又”善意ある模倣である”と言う事を考えると・・。
 この国も、”悪意ある模倣”が起こりえる国であり、決して対象外ではない・・。>

<2021年5月30日 刈谷日劇にて鑑賞>

NOBU