劇場公開日 2022年11月25日

ギレルモ・デル・トロのピノッキオのレビュー・感想・評価

全43件中、1~20件目を表示

5.0ストップモーションが材質の違いを強調できる

2022年12月30日
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鑑賞方法:VOD

『ピノッキオ』という題材はストップモーション向きだ。木の人形と人間を絵で描き分けようとした時、その材質の違いまで描きこむことは難しい。関節を人形風のジョイントにするなどして区別させるわけだが、ストップモーションなら材質のレベルで違いを出せる。その違いが全編に渡って大きな効果を上げている。
材質レベルで異なることが映像から実感できるからこそ、ピノッキオの異質さが際立つ。それ故に、彼が迫害されたり物珍しがられる理由も、人間になりたいという夢も切実に伝わる。ブラックファンタジー的なテイストで政治的風刺を含んでいる点も、ディズニー版よりも原作に近い。
狂乱のファシズム時代を背景にしているのは、現代社会に対する警告だろうか。童話の風刺力という物は時代を超えるのだなと思い知らされる作品だ。

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杉本穂高

5.0視覚的に楽しく、胸にもグッとくる。デル・トロらしい翻案ぶりに恐れ入った

2022年12月29日
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造形のこだわりが凄いとか、動きが神がかり的に滑ららかだとか、そういう技術的な側面も素晴らしいが、僕がより感銘を受けたのはこの幾度も映像化された物語を完全なるデル・トロ色に染め上げた翻案ぶりだ。冒頭からトレードマークたる無数の「目」が登場する本作は、全編を通じて”松ぼっくり”と”爆弾”という片や生の根源であり片や死の象徴と呼ぶべきものが交互に登場し、さらに”操り人形”というモチーフを暗に示しながら、ピノキオを亡き息子の型にはめようとする父ゼペットとの関係、カーニバル(「ナイトメア」に続き)の人形ステージ、ファシズム下の自由を失った人間という3つの要素を巧みに展開させていく。そして聖堂に据えられたキリスト像とピノキオをやんわり重ねてみせようとする趣向にも意表を突かれるばかり。子供も安心して楽しめる内容でありながら、デル・トロ好きの大人をもしっかりと魅了するこだわりを挟んだ素晴らしい愛の物語だ。

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牛津厚信

3.5嘘つきとコオロギと猿

2023年10月31日
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鑑賞方法:VOD

2023年10月31日
映画 #ギレルモ・デル・トロのピノッキオ (2022年)鑑賞

ストップモーション・アニメ作品で、wikiでは、開発地獄(development hell)に陥ったとなっている。
子ども向けとしては、少々おどろおどろしいからな。
邦題も監督の名前をつけており、ネームバリューで乗り切る作戦かな。

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とし

5.0親子でぜひ。

2023年6月13日
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親子で見てほしい。

戦争の悲しさ、親が子を失う悲しみ。
いろんなことを教えてくれる。
そしてピノッキオが、なんともまあいじらしいし、いい子なんだ!。
泣きました。

こおろぎ?のセバスチャン、いい味。ユアン最高の吹き替え。

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ゆき@おうちの中の人

4.0今まで見たことあるピノキオで一番好き

2023年5月30日
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鑑賞方法:映画館

いい子じゃなくても、特定のありようでなくても、特定の形状でなくても愛されるべきだし、コオロギはもっといい目を見ていい。それを実現してくれた。

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mikyo

4.0華やかそして、はかなげ

2023年5月19日
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ピノキオ、ゼペットじいさん。
子どもの頃に読んだ絵本の世界が実写で蘇った。
父と子の物語であることはもちろん覚えていたけれど、ピノッキオの勇気にこんなに泣けるとは思っていなかった。

ギレルモ・デル・トロの世界観が好きだ。
映像美のレベルの高さはいつも通り。見世物小屋も船の作りも精巧で美しい。
人や生物はクレイアニメーションのような動きで、温かみがある。
すごく工夫された作品。

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ニモ

3.0うそつきがなんだ!

2023年5月6日
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鑑賞方法:VOD

楽しい

単純

幸せ

時代を超える作品だけあって、とても見やすかったです。アニメーションも美しく、歌や音楽でも楽しめました。物語も陽気なイタリア風でポジティブでした。

うそをついたら鼻が伸びるピノッキオ、うそをついても鼻が伸びなかったゼペットじいさんという描写にドキッとしました。大人はいいんだなぁと。

第95回アカデミー長編アニメーション賞受賞として、古くもあり新しくもあるこの作品はふさわしいと思います。時代背景や人形という逆境に負けないピノッキオのたくましさを、今の時代でも忘れないようにしたいと思います。

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sumichiyo

4.5精巧に作り上げられたストップモーションアニメは凄い!

2023年5月4日
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鑑賞方法:VOD

「シェイプ・オブ・ウォーター」などアカデミー賞®受賞 メキシコ人監督ギレルモ・デル・トロと、ストップモーションアニメの巨匠マーク・グスタフソン、カルロ・コッローディ著の名作童話。

ここまで精巧に作り上げられたストップモーションアニメは凄い。ストーリーは冒険物語になっているが、原作を大きく超えた映像の世界を作り出し、見るのもを飽きさせない。
ファンタジーの世界の「パンズ・ラビリンス」に通じるものがある。

メイキングの動画もNetflixで配信されていたので、これも見てみようと思う。

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M.Joe

3.5これが"デルトロの"ピノッキオだ!

2023年4月24日
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あの改悪版の実写化映画を
吹き飛ばすような映画でした

こんなすごいリメイク、あるかね
しかもストップモーションアニメとして。
ピノッキオという物語に対する
これ以上のリスペクトがあるかね。

制作過程のドキュメンタリーも観たけれど、
本当にセットや美術にこだわりまくっているし、かなり時間をかけたのだと思う。

シナリオにもかなり多くの主題が含まれていて、
特に、父たちに抗う子供たちが良かった。

デルトロ味を残しつつ、
原作には最大のリスペクトを込めた
現代に送るべき、アニメ映画でした。

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JYARI

4.5愛するものが多いと言う幸せ

2023年4月8日
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鑑賞方法:映画館

アカデミー受賞作品再演大会で鑑賞。見損ねるところでしたが、観れてラッキw

ムッソリーニ時代にピノキオをぶつけるという発想。デルトロらしい味わいのあるシナリオ。らしいファンタジー仕立て。「動き」の描写の質感の高さ。甘すぎない・辛すぎない・しょっぱすぎない、いい塩梅の物語。国内のアニメ作品も良いですけど、狭すぎる世界観からの大風呂敷、と言う国産アニメ特有のストーリーは、ともすれば子供っぽさが匂ったりするってのもある訳で。デルトロ監修ファンタジーのの、この切なさ漂う雰囲気が好き。

良かった。
とっても。

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bloodtrail

3.0感服

2023年3月29日
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鑑賞方法:VOD

有名な題材を作り直すというエネルギーと
ストップモーションで2時間の映画を作ると言う労力に
感嘆しました。
造形の細部へのこだわりも凄かった。
木の温もりを感じました。

有名なのはディズニー版や
最近のトムハンクスの実写版は
何も知らないピノキオをただひたすら周りが愛する
と言う平坦な物語だけど、

今作には
純粋な子どもから見た世界、
生と死、
ゼペットの孤独と
誰も代わりはいないと言うテーマがあって
深みがあった。
最後のオチも良かった。

みんなが知ってる題材にオリジナリティを加える
作家性も素晴らしかった。

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奥嶋ひろまさ

4.0ストップモーション

2023年3月24日
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鑑賞方法:VOD

CGとは違う味わいのストップモーション・アニメで、2時間近くもある。
有名な童話、ピノキオのアニメ化で知っている話通りに進行する。
監督がデル・トロなのでちょっと心配したが、子供が楽しめる作品でアカデミー賞も納得だ。

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いやよセブン

3.5子供向けとやり過ごすには、もったいない。

2023年3月12日
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鑑賞方法:VOD

観る前は、ピノキオってどんな話だっけ?ってのが正直なところだったけど、このストップモーションアニメーションを前にして、過去の記憶を探ることを諦め、この世界感にどっぷり浸りたいと思わせるほどの映像体験。デルトロ版ピノッキオの「良い子」像は、デルトロそのもののようにも思えた。
そもそもが贅沢すぎるキャスティングだけど、いちばんの驚きはスパッツァトゥーラ(猿)がケイトブランシェットだったってこと。機会があればスクリーンで観ることがオススメ。

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ラーメンは味噌。時々淡麗醤油。

4.0父と息子の物語

2023年2月27日
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鑑賞方法:VOD

これまで観たピノキオの映画の中で、一番好きです。

ストップモーションアニメの優しく温もり溢れる質感や、手間と拘りが詰まった美術、素敵な音楽と歌、差し込まれる監督らしい毒気やユーモア、どれもこれも一級品で、素晴らしいアニメーションを観られて大満足。
また、戦争という時代背景を盛り込んだ世界観や、ファンタジーでありながらリアルな人間描写など、大筋はよく知るピノキオの物語ですが、とても深みのある台詞が胸を打ち、新鮮に味わうことができました。

さすが、デルトロ監督。美しくて温かくて、ちょっと不気味で怖い世界観、素晴らしかったです。
あの世(?)のうさぎ達、好き。笑

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まだまだぼのぼの

5.0このピノッキオも好き

2023年2月26日
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本当のピノッキオのガチさと子供ゆえのわがままさ残酷さに振り切っている感じも良かったが、
今作のストップモーションでのピノッキオも最高。

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いたかわ

4.5親子の愛の物語り

2023年2月13日
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鑑賞方法:VOD

ゼペットとピノッキオの愛が溢れる映画でした。
2人が本物の親子になるまでの、そして別れるまでの道のりを、ファンタジー色豊かに描いた、素敵で美しいストップモーションアニメーション映画です。

製作から完成までに13年かかった。
と、ギレルモ監督が語っていましたが、
メイキング「ピノッキオ手彫りの映画、その舞台裏」を観ると
成る程、気の遠くなるような手間と時間が掛かっています。
(このアニメーションは製作費が3千500万ドル)
この作品もNetflixの資本力で完成をみました。

私が以前観たピノッキオはテレビ映画だったのかもしれません。
ピノッキオは手のつけられないほどの悪戯っ子!!
ゼペットは手を焼いて振り回されて大騒動!!
そんな負のイメージを抱いていました。

ところがどうでしょう。
「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」は、
心根の優しい父親想いの〈ラブリーボーイ〉
いっぺんに好きになってしまいました。

ミュージカル・アニメ。
ピノッキオがカーニバルの団長ヴォルペ伯爵の策略に引っかかり
(子供ですもの)
借金を返すためにカーニバルに入るとき歌う、
「ミオパパ」
♪チャオ・パパ♪
♪ミオ・パパ♪
♪さよなら、またね♪
♪マイ・パパ♪
ピノッキオ役のグレゴリー・マンの歌声がチャーミングでとても心に沁みます。
ピノッキオやジュゼッペや他の出演者の歌う挿入歌は
とても美しく親しみやすいメロディラインです。
この映画の語り手であるクリケット(コオロギ)のセバスチャン。
ユアン・マクレガーが演じていますが、軽妙で実に多彩で多才なキャラクター。
ケイト・ブランシェットはスパッツァトゥーラという名前の市長の
ペットの猿の役です
ギレルモ監督のピノッキオなら、
「たとえ1本の鉛筆の役でも出たかった」と述べています。
猿ですのでキャガギャガの擬音だけで台詞はありません。
それでもどうしても出たかったそうです。
今までに観たストップモーションアニメの中でも、最高の出来栄え。
映像の美しさは極め付けだし、
夢溢れる異形のモンスターたちは美しくも怪しく楽しい造形です。
イタリアの町の美しさ。
教会の十字架に架けられたキリスト像。
何から何まで目を奪われます。
ピノッキオの顔そのものがなんとも愛らしい。
やはり松ぼっくりを連想しますね。
お約束の“嘘を吐くと鼻が伸びる“設定も健在で、
枝が伸びて茂り小さな葉をつける様は愉快です。
ピノキオといえば「星に願いを」が有名ですが、
その曲がかからないことを忘れているほど満足度が高い。
そして父親を一途に慕うピノッキオは愛らしく健気。
“木の人形なんか死んだカルロに較べたら、厄介な重荷“
とまでゼペットは言います。
深く傷つくピノッキオです・・・。

原作は19世紀の児童文学「ピノッキオの冒険」
とても反戦色が強く、学校に通う事の必要性を強く訴える内容とか。
今作の時代設定は第一次世界大戦下のイタリア。
ファシズム時代でムッソリーニが台頭。
ジュゼッペの息子カルロは戦闘機が機体を軽くするために
投下した爆弾で死んでしまいます。
ジュゼッペの悲しみは大きく、酒浸りで世捨て人。
酔っ払った勢いでカルロの形見の松ぼっくりが大きくなった松の木。
それをを切り倒して、木の人形を作って眠り込んでいると
〈木の精霊〉が魂を吹き込み名前をピノッキオと付けて、
言葉を話すようになる。
〈木の精霊〉を演じるのはティルダ・スウィントン。
後半では〈死の精霊〉の役割も果たして、ピノッキオを2度死から
蘇らせます。
青色にキラキラと輝きスフィンクスを思わせる姿は女神のようです。
声にエコーが掛かっているのと、低音で厳かに話すのでとても神秘的。

カーニバルに入ったピノッキオは、
ジュゼッペの借金を返す約束で、カーニバルのスターになり世界を巡業。
べニート・ムッソリーニの御前で芸を披露するものの、
「ムッソリーニをやり込める歌詞の歌」を歌い喝采を浴びる。
カーニバルの団長ヴォルペ伯爵をクリストフ・ヴァルツ。
ファシストの市長役は監督の盟友ロン・パールマン。
敵役で見応えあります。

今回はじめて知ったのですが、ギレルモ監督のお父様が誘拐され、多額の身代金を
要求されて、その身代金をジェームズ・キャメロン監督が一時的に肩代わりした・・
そんな経緯があったそうです。
そのときの辛い体験が、ピノッキオの父想いの優しさに繋がったのでしょうか?

〈死の精霊〉のおかげで2度も生き返るピノッキオ。
大きな魚の怪物に飲み込まれたゼペットも助かり、
瀕死のピノッキオも〈死の精霊=木の精霊〉に、
《本物の少年》として生きなさい、
とそう告げられますが、人間の少年になったという訳でもなさそう。
この辺の解釈はグレーゾーンだと思いました。

人は死ぬ
いつかは死ぬ。
限りない生を精一杯に生きなさいとのメッセージも。

コオロギのセバスチャンも死ぬ。

ピノッキオは世界周遊の旅に出る。
ピノッキオだっていつかは死ぬ。

エンドロールでコオロギのセバスチャンが、か細い足でステップを踏み
踊ります。
ユアン・マクレガーの歌声も軽やかで、ステップを踏むように伸びやかです。

観た後に愛に満たされるのはギレ・ルモ監督の優しさでしょうか。
至る所に優しさと愛がある。
感動せずにはいられませんでした。

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琥珀糖

4.0ラストは違うけど良いラスト

2022年12月29日
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鑑賞方法:VOD

ギレルモ・デル・トロの作品なんでダークファンタジーを想像していましたが
しっかりと素晴らしいピノッキオになっていました。
ミュージカルの要素も含みいい映画でした。
自分が知っているピノッキオとはラストがちょっと違うけど
良いラストじゃないでしょうか。

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tom

3.5レビュー

2022年12月26日
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ギレルモ・デル・トロ監督らしいモンスター造形を楽しみつつ、ピノッキオを通じて改めて命を見つめ直せる映画✨
子供との接し方や愛情についても心動かされました🦊

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みそしる

5.0良かった!

2022年12月19日
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人形が徐々に社会の理不尽さを学び自立していき、 本当の人間になるまでを描き、誠実に生きることの大切さが込められ、今日でも通用する普遍的な教育理念が多く詰まった作品 『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』。
悪趣味で奇怪なイマジネーションを、全く臆することなく具現化させ、魅惑の物語を成立させつつ、慣れ親しんだ童話をベースに、オリジナルの奇抜な解釈を付与させ、唯一無二の世界観を構築してきたという感じでした。また、 過酷を極める現実社会を幻想という名のベールで包み、 ゴシック調のホラーを漂わせながら、このうえない多幸感を丁度よく演出する能力にも長けていて、今作はその能力がピノッキオにバッチリハマっていた印象です。
19世紀を舞台にしていた原作とは異なり、時代を「国家ファシスト党」 が席巻する1930年代 (?) へと変更し、 木の人形にまつわる「死」と「不死」のテーマをダークに描き出していました。 木の人形であることを印象づける質感、生みの親も恐怖する不気味さ、それは怪獣やモンスターへの異様ともいえる愛情を持つギレルモだから出来た芸当。そして永久的に死ぬことがないという 利点と、時代を超えて生き続ける重荷を背負ってしまっていると いう過酷な運命にフォーカスし、 幾度となく現れる暗い死の世界 も相まって「死」 が強調されます。
ストップモーションというのもナイスな組み合わせで、 作画によ るアニメーションでは表現し難い “実体感"や、 実写的な温かみを 持つこの手法と、 生命のない人形が生命を得て動き出す「ピノッキオ」という題材と、強調された 「生死」がシンクロし、高い強度を持った映画に仕上がっていました。
“生きている”とは、何なのか。 生命は何のために生きようとするのか。それを「死」を強調することで逆説的に問い直すというのは、黒澤明監督の 『生きる』 を彷彿とさせます。 背景も1930年代近くになることで、ファシスト体制への批判的な視点も起動し、土壇場で自分の良心や、 本来の自分の考えを取り戻し、自身の生き方に誇りを持ち、自主性を持った選択をするドラマがより説得力を帯びている印象でした。
市民の人権を認めず、 国家主義によって反対する人々を弾圧して戦争に向かわせる独裁政治。 国家の目的と市民の目的を一体にさせようとする政治体制であるファシズム。 そこに個人の幸せはと も見いだせる状態ではないはずです。
だからこそ、善悪の問題や政治・信仰の問題を抜きに、 自分の持つ「良心」 や信仰心をもって“生”に意義を見出し、 自分が自分であることを認められ、 ありのままを愛される姿が感動的に見えました。人間ではない存在や、 差別される存在を、とりわけ深い愛情をもって描いてきたギレルモの愛情は、単にオタク的な嗜好だけでなく、彼らが抱える「悲しみ」 にも起因してるらしく、とりわけ日本の妖怪が文化に根付き、時に愛されるキャラとして描かれている美しさとパワーに影響を受けているようです。
故に何か得体の知れない、 奇怪な世界へ誘い込まれる喜びと恍惚感がありながら、 イノセンスと力強さ、 人間的な打算や葛藤とは無縁の率直さを感じ、心のなかで大拍手でした。
人間の「良心」をテーマにするだけではなく、それに連なる、生きることの意味や、 自分が自分らしくあることの意味を、 深い部分で描き出すことになった本作の試みに強く感動しました。以上!

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しをん

4.0音楽を使った知ってるつもりで知らないピノッキオ。

2022年12月17日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

楽しい

内容は、イタリア🇮🇹の童話であるピノッキオを下敷きにしたギレルモ・デル・トロ監督による新たな解釈によるストップモーションアニメ作品。印象に残った台詞は『人生に意味を与える唯一のものーそれは儚さだ。』ピノッキオが死の世界に初めて行った時に精霊🧞に告げられる台詞。生き死の解釈についての物語を言葉で分かりやすく伝える場面は簡単で難しい様に感じましたが、そんなところが好きです。印象的な場面は、あらゆる場面で使われる青色表現の多様さに驚かされたとストップモーションとは思えないほどの素晴らしい滑らかさ。そしてキャラクターや美術の製作者の心意気と愛情が伝わって来そうな所が個人的に好きです。素晴らしくて制作日数15年の歳月を2時間で観るには苦惜しい感を覚えます。個人的にコオロギ🦗のセバスチャン・J・クリケットの部屋にショーペンハウアーの額が飾られている所は、この世界の根本は不条理で盲目的な意思であるとの厭世思想やペシニズムを感じとても楽しく観る事が出来ました。デルトロ監督の世界観と歴史的背景や人物背景には脱帽します。レイヤー構造的で物語の流れに様々な視点を盛り込みまとめ上げた素晴らしい作品だと思いました。ストップモーションアニメは、長い年月が掛かる分、キャラや世界観の作り込みに愛情や魂が乗り移るのて面白い作品が出来るのではと思います。本のピノッキオは最後に本物の人間になりますが、本作では人形のままでピノッキオに出会い関わった人が人形ピノッキオを人間として見る事になり、そこで人形ピノッキオは人間としての自分自身の在り方を見つけるからこそ死を迎えるのではという視点は個人的には好きです。自分はNetflixで見ましたが、特にピノッキオメイキングの30分作品『ピノッキオ手彫りの映画、その舞台裏』が非常に面白くもし見る事が出来るなら見た方が数倍面白くこの作品を鑑賞する事が出来ると思います。

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コバヤシマル