「映画作りが好きな人の異常性と優しく笑える映画。」ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド エクステンデッド・カット コバヤシマルさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0映画作りが好きな人の異常性と優しく笑える映画。

2023年9月15日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

笑える

楽しい

内容は、映画の中で映画を作る過程を説明した映画である。映画関係者の極度な異常性を監督目線から表現した作品。脚本の内容は、1969年アメリカ🇺🇸の古き良き時代の映画の都ハリウッドを舞台に落ち目の俳優ダントンとダントンのスタントマンであるブースの友情と同時期に活躍した女優シャロンテートとマンソンファミリーが関わる凶行を背景に描いたタランティーノの9作品目のもう一つのあり得たかもしれない妄想の1969年のハリウッドでの物語。
印象的な台詞は『日々役立たなくなる自分を認める事が出来ない…』役者の旬を過ぎた俳優ダントンの葛藤を幼い共演者8歳の女優に涙一杯に語る場面。映画作りに於ける俳優と監督や関係者との関係や苦悩が痛い程伝わってきた。特に面白かったのが編集点の違和感ある編集が、あくまで嘘の世界観ですよと観客に話しかけてる様で面白かった。そして観るも楽しい舞台裏の辛さがコミカルに笑える。
印象的な雰囲気は、1969年のベトナム戦争の反戦ムードと厭世観が蔓延するドラッグ&ドロップヒッピー&フリーセックス・音楽・ダンス・車・ネオン煌く街並みが雰囲気として熱狂的な熱気や臭いが伝わってきそうな空気感は作り込みが凄く映画没入の醍醐味だと感じた。
印象的な場面は、クライマックスの事件であるシャロンテート殺害事件の現場であるハリウッド・ビバリーヒルズ・シエロ・ドライブ10050番地で起こる事件を意図的に描かなかった事だ。タランティーノの積年の思いと優しさが、鎮魂の思いと共に伝わってくる様で、生涯10本しか映画を作らないと公言している監督自身が、この映画の最後に相応しい引き締まったテンポのよい脂の乗った素晴らしい作品です。
実際の事件ではカリフォルニア州チャッワースの西部劇映画撮影用の『スパーン牧場』やザビートルズの通称白盤の『ヘルタースケルター』から過激な思想に傾倒していったマンソンファミリーや大量殺人事件現場のパーティにはスティーブ・マックイーンやブルースリーも招待されていて殺されていた可能性があると思うと映画史の残酷さを感じました。
自分は、まだ生まれてなく後から知った事件ですが、当時としては知らない人はいないと言われる程の世の中を巻き込む事件だったそうです。イタリアの新監督が巻き込む事件にタランティーノが見え隠れしたり、数々の映画のパロディが監督の映画好きを伝えるパースになり、それに対する思いも人一倍強い監督の思い入れが少しは分かる映画鑑賞の醍醐味を感じる映画でした。
ワンス アポン ア タイム イン ハリウッド の如く監督にとって、昔々ハリウッドであり得たかもしれないハッピーエンドな物語を描きたかったのかもしれません。そう思うと悲しくも優しい残酷な気持ちになります。

コバヤシマル