劇場公開日 2021年2月26日

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「貴族の中の貴族」あのこは貴族 佐分 利信さんの映画レビュー(感想・評価)

貴族の中の貴族

2021年10月4日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 代々医院を営む裕福な家庭の華子の人生の選択を、秋篠宮家の眞子内親王の生きざまと重ねてしまうのは私だけだろうか。ただし、華子の場合、眞子内親王のように日本のトップクラスの家柄から「降嫁」することとは逆に、自分の家柄よりもハイクラスに属する男性との結婚により、ますます自身の人生への疑問が深まっていくのであるが。
 彼女が美紀の部屋を訪れた時に、この部屋のものはすべて美紀さんのものなのだというセリフが頭に残った。自分の稼いだ金で借りた部屋、買った生活雑貨。これらに囲まれた美紀の生活こそ、自分自身の人生を生きている者の生活なのだと嘆息している華子は強い決心をする。
 きっと眞子内親王も同じような思いでこれまでの人生を歩んできたのではないだろうか。すべてが税によって賄われる人生。それはまぎれもなく特権であり、その裏返しに義務も伴ってくる。そのことを窮屈に思われたのか、物足りなく思われたのか、それは我々が知る由もない。ただ、学生時代に出会った、決して恵まれた家庭に生まれたとは言えない同級生が進もうとするその先に、希望の光を見出し、その人生を共に歩もうとされたのだろう。
 誹謗中傷、無理解、批判は言うに及ばず、罵詈雑言、人格否定など、ひとかどの報道機関ですらそこへ加わる異常なバッシングに耐え、志を貫かれた内親王殿下(このようにお呼びすることもあとわずかであるが)を私は心から尊敬する。
 実家の経済的な支援などほとんどない小室圭氏が、アメリカ留学の資金を工面し、大学を卒業、現地の法律事務所への就職も内定するということも、なみの日本人男性にはなかなか実現できることではない。全国民に注視されるプレッシャーの中で目的を達成した彼も、すごい青年ではないか。
 眞子さまのご両親にはぜひお嬢さんのことを誇りに思って頂きたい。いや、内心そのように思われているのではなかろうか、あっぱれよくやった、と。ただ、お立場上、表に出せないだけなのではなかろうか。
 本日、まさに我が国の正真正銘の貴族たる秋篠宮家の眞子内親王の結婚が正式に発表された。日本の社会に何の未練もなく米国へ行ってしまわれるのかも知れないが、このように思う市井の存在があることもぜひ知っておいてもらいたいものだ。
 映画の話に戻ろう。
 独身にもどり、イベントの仕事をする華子が、元夫の孤独をいちばん理解しているということがよく伝わってくるラストだった。彼女は階段の下から元夫を見上げている。しかし、門脇麦の演技は、この人物が、見上げている相手を羨んだり、尊敬したりはしておらず、温かく労わるように見つめていることをしっかりと観客に伝えている。
 俳優と演技指導者に喝さい。

佐分 利信