劇場公開日 2019年11月1日

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「鮮烈に、堕ちる…」CLIMAX クライマックス だいふくさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0鮮烈に、堕ちる…

2023年8月24日
PCから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

怖い

ギャスパー・ノエ監督作品ですから。もぅ観る前から深呼吸して気合を入れ外に音が漏れないようにしっかり窓を締め、お酒を飲みながら臨みました。お酒は飲みながらじゃないと耐えれる自信がなかったのです。

前半~中盤はまだまだまだ余裕がありました。ダンサーたちの見事なパフォーマンスと妙に耳に残るミュージックとの見事な融合、そして赤を主体とした原色で描かれる世界、お酒の酔いが回ったダンサーたちのおバカな会話とひたすら繰り返し見せられます。黒人男性のダンサー子供っぽい(下品ですが)エロトークもなかなかニヤッとさせられました。

が、束の間…。いきなり演者とスタッフなどのエンドロール!?が流れます。はい、わかりましたよ…。エンドロールでなく、ここからが狂気の沙汰の始まりなんですね。「お前らここから始まるが耐えれるのか!?自信が無ければここで終われよ!」と言われている気分でした。

そして中盤~後半に突入。もうね、全員がイカレているんですよ。ドラックが回った人間の永遠と意味不明な行動や狂気の沙汰が流され続けるのです。途中いったい何を観せられているのだろうと正直思いました。そして嘔吐感ですら感じました。まさに地獄絵図とはこのことを言うのだと理解できました。

その中でも監督の鬼才っぷりといいますか監督としての技術も見え隠れしました。全編を通し長まわし撮影(演者は大変だろうな)を多用し、人がすれ違いざまにカメラで追う人物を変えたり、しまいには映像を上下さかさま(字幕もさかさま)にするカメラワークを使います。これには嫌悪感が2倍にも3倍にも思えてしまう効果がありました。

それだけでないのですよね。嫌悪スパイスとしては十分すぎるほどの視覚と聴覚の刺激物を投入してきます。前半ではあれだけ見事な色彩感と思っていた色が原色過ぎて気持ち悪く感じられ、鳴り響くパーティーの音楽と共に遠くから聞こえ続ける悲鳴がこれでもかというくらい耳を刺激します。(思わずボリューム下げました…)

がんばって疲弊して観終わった後に何が残るのでしょう。何か心の中にモヤモヤとした感情と共に、ただただ人間が堕ちていく姿にはドラックの怖さは十分に知ることが出来ました。が、ちょっと刺激強すぎて放心状態でした。

だいふく